保健室とウマ娘   作:フムフムヌクヌクアプアア

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イベントの配布石で単発ガチャ回して激熱扇子で「おおーっ!」と感激したらメジロマックイーンでした。

四度目ですわ~!
石貰ってガチャ回してストゼロ飲んで永久コンボの完成ですわ。泣

スズカさん来てくださいお願いします。


サイレンススズカと保健室4

血を吐くような絶叫と共にスズカは固まった。

 

目は見開いて、口はあんぐり開けて呆けている。

さて、どうするべきか。今までも何度もやり取りはしてきたことがあるが、やっぱり気が滅入る。

今まで「ウマ娘にチ〇コついてんのかよ。気持ち悪い」と化け物扱いされたからな。正直トレセン学園に来るまで堂々と言うことが出来なかった。

同じ体質な人もいるにはいるが、遺伝子の問題で大抵は短命。生まれながらにして病弱で三歳なるまで死ぬのがほとんど。むしろ30まで生きている俺が可笑しいレベルだ。

 

まぁ、そんな事スズカに言う必要は無いか。

「驚いただろう?ごめんね、ハッキリ言わなくて」

「いいえ。……でも」

スズカは言葉を選ぶように俯くと、きっぱりと俺の目を見て言った。

「先生は、先生です。たとえ男性であろうと、ウマ娘であろうと綺麗でカッコよくて優しくて。私たちの保健室の先生には変わりないじゃないですか」

そう言うと笑ってくれた。

天使かな?ヤバい。泣きそう。目を閉じて我慢する。もうおっさんなんだから、泣くな俺。

「ありがとう。スズカ」

鼻水が出そうになるのを必死に抑えながら言った。

トレセン学園に来て、ここの生徒達にはつくづく驚かせられる。色んな奴がいるが、みんな純粋で他人を思いやる優しさを持っている。

俺に女装とか勧めてくるのも気を使ってくれて話しかけてるれる訳だし。

本当にこんな俺を受け入れてくれて感謝しかない。

スズカはキョトンとした表情をすると少し意地の悪い微笑を浮かべ聞いてきた。

「ん?あれ、先生。泣いているんですか?目、赤いですよ?」

「泣いてないよ。……花粉症さ、フフフ」

笑って誤魔化すしか俺には出来なかった。

「ふうん?でも、なんだかちょっぴり悔しいです。狐に化かされたみたいで」

「あははは、そうかもね。ちょうど尻尾と耳もあるから、あながち間違いじゃないかもな。何かお詫びでもしようか?」

なんとなく俺はそう言うとスズカは目を輝かせて言った。

「それなら私と一本走ってもらえますか?」

「俺と?まぁ一本なら良いが、俺は昔の怪我が原因で相手になるか自信ないぜ?」

正直本気で走ると足首がへし折れる可能性がある。俺が本気で走るときは死にそうな患者を救うときだけだ。

「良いんです。よくベテランのトレーナーさんが言うじゃないですか、『走り方で今までの人生をどう駆けてきたか分かる』って。私もそれをやってみたくて……ダメですか?」

「いいや、そんなことないよ。偶には運動しないとな」

俺は背伸びをしながら言った。はやりと言うべきか、走るとなるとウマ娘の本能が疼きだす。

 

「距離はここからだと、一周回ってゴールまで2400位だな」

「はい、東京優駿と同じですね」

会話をしながら俺はストレッチを念入りにやる。そして、靴と靴下を脱いで裸足になった。

「えっ、裸足で走るんですか?」

「ああ。運動靴じゃないしな。まして蹄鉄なんてないし。あまり勧められたものではないが、まぁそこは目をつむってくれ」

三度その場でジャンプをして気合を入れる。

 

「さぁ、やろうか。合図はそっちに任せる」

「はい。じゃあ行きますよ。……位置について、よーい、ドン!」

スズカの合図とともに俺は芝を強く蹴りこんだ。

 

 

 

 

……凄い。

先生の走りを見てその一言だけ浮かんでくる。

まずスタートの加速が恐ろしいほど速かった。そもそも先生はスタートの姿勢を取らないで、棒立ちだったのに関わらず、まるでゲームやアニメみたいに一瞬で私と1バ身の差を開けた。

 

走りの技術と言うよりは、武術の技術なんではないかと思う。居合の達人が高速で抜刀したような速さだった。

スタートの声かけと、先生のスタートに度肝を抜かれた私は出遅れてしまった。

 

スタートを鋭く飛び出した先生は、前傾姿勢で頭を低く下げ芝の上を駆けていく。

 

足の指を広げ、芝を掴むように足の指をしっかり食い込ませて走っているのが分かった。

 

普通だったら裸足なんて芝で滑って走れたモノじゃない。ましてや爪が割れる可能性もある。

リスクがあるのもお構いなしに、今あるだけの技術と出せるだけの力を最大限に発揮して走っていた。

 

――私は今に命を懸ける。

 

 

先生はそう言ってた。

まさに有言実行。

コーナーに入ると先生の走りに僅かな変化が生まれた。

 

僅かだが、尻尾が左右に揺れているよう見える。相変わらず前傾姿勢の疾走だが、コーナーの内側に姿勢を倒している。それのバランスをとるために尻尾を使っているのだろう。

この走り方にはどこかで見たような……?

(思い出した!会長の技術(スキル)!弧線のプロフェッサー!)

 

速くコーナーを走れば遠心力で外側に膨らむのを抑え、綺麗なコーナリングで最速で無駄なく走る技法。生徒会長以外でこんな走りをするウマ娘初めて見た。

(先生、この勝負負けません)

 

先生の走りを見るつもりだったが気持ちは変わった。

この最高の走者を相手に手を抜くわけにはいかない。私も全力で走らなきゃ先生の走りに対して失礼だ。

私も全力で背中を追いかけるとその差はどんどん無くなって行く。

そもそも、私はジャージに運動靴。先生は私服に裸足。装備の差もある。

2コーナーを過ぎ横一列に並んだところで、私は更にギアを上げ先生を抜こうと一歩強く踏み込んだ。

景色が後ろへ過ぎ去って、先生も置いていく。

 

 

 

………つもりだった。

 

「加速!first gear!」

 

先生が吼え、私と同じタイミングで加速をし、変わらず横一列のまま直線へと入った。

 

「second gear!」

更に先生が吼えると加速してゆく。一歩先を行く先生に私はついていくのに精いっぱいだ。

 

「third gear!!」

先生との差がどんどん開いて3バ身まで広がった。第3コーナーを過ぎるが差は縮まらない。

 

「あとは勇気だけだ!!Max gear!!」

第4コーナを過ぎて先生が光のトンネルを爆走しているように見えた。

差は5バ身になっていた。

――負けた。

 

悔しさは無かった。ただただ先生の走りに感服するしかなかった。先生の駆け抜けてきた人生を走りで見ることができた。それで満足だった。

あとは直線300m。その時だった。

 

「いやもう無理ぃ~!!」

先生が女の子みたいな高い声で叫ぶとどんどん減速していく。

 

そしてゴール手前で私は先生を抜き去り、逆転。一着を勝ち取った。

 

 

「びゅしゅー!ぜひゅー!……ゲホゲホっ」

「せ、先生?大丈夫ですか?」

四つん這いで荒い呼吸を繰り返す先生の背中を私はさすっていた。

 

「ああ、ごめん。大丈夫。……俺も歳喰ったな」

先生はふらつきながら立ち上がって笑っていた。

「ペース配分とか考えてなかった。もう口の中が血の味で一杯だ」

「うふふ、運動不足に気を付けないといけませんね」

「全くだよ。それで、楽しかったかい?」

先生の質問に私は晴れやかに答えた。

「はい。気持ちよかったです。先生速いですね」

「いやいや、結構プレッシャー掛けてスズカの集中乱していたんだけど、こっちのスタミナ切れで全部台無しになったね」

やはり先生のあの走りは作戦だったんだと改めて思った。

「あのスタートダッシュとかですか?」

「それもあるね。元々身体鍛えるために空手とか柔道とかやってて、その時に先手必勝で勝つためにスタートダッシュを鍛えていて、それの応用みたいなもん」

やはり武術を身に着けていたんだと知って、なんだか答え合わせをしているみたいで楽しくなってきた。

「じゃあ、あのコーナーの走りはどうやって身に着けたんですか?」

「ん?うーん、覚えてないな」

「嘘でしょ……。先生って天才ですか?」

「うーん、どうだろうか?まぁ凡人が医者なんてやらないからね。そこそこ頭良くなきゃやれないから」

「でもその割には最後可愛い声出てましたけど?」

「はいそこ、余計な事言わない」

「うふふ」

少し恥ずかしそうにいう先生が可愛くて思わず笑ってしまった。

 

「さて、帰るか。明日も学校あるしな、帰って風呂入って寝なよ。ストレッチ忘れずにな」

先生は脱ぎ捨てた靴を履きなおして私と寮の前へと一緒に来た。私は先生へと向きなおして改めてお礼を言った。

 

「先生ありがとうございました」

「なにもしていないよ。俺のことで驚かせてしまったしな」

「良いんです。先生から勇気を貰いましたから。それと……」

私はそこまで言うと口を噤んだ。先生は首を傾げて訊ねてきた。

「ん、どうした?」

「いいえ、何でもないです」

「そうか。まぁまた何かあればいつでも保健室に来るといい。私でよければ相談に乗るよ」

「はい、ありがとうございます。それではおやすみなさい」

「はい、おやすみ」

先生はそう言うとのんびりと歩いて行った。

先生の綺麗な髪の毛と尻尾は月の光に照らされて、黒曜石のように輝いている。

満天の星空のもと保健室に戻る先生の後ろ姿を見えなくなるまで私は見ていた。

 

 

――先生、助けてくれてありがとうございます。

 

瞳を閉じて先生の走る後ろ姿を思い出す。

私の前を歩いて導いてくれた先生。

「レースで先頭の景色は譲らないつもりだったけど先生なら良いかな?」

むしろ先生じゃなきゃダメだ。私の目の前を走っていいウマ娘はこれからも先生だけだ。

 

その為には……。

 

 

やっぱり逃げ切ってレースに勝つしかない。先生以外に譲るつもりは無い。

「明日トレーナさんに相談してみようかしら?」

 

気持ちは決まった。私は足取り軽やかに自分の部屋に戻っていった。

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