船の上での世間話
「ねね、最近の流行って何だと思います?」
「え、どした急に?」
「いやーほら、船長もピチピチな17歳じゃないですかー。それなのに最近の流行を知らないじゃちとやばくね?っと思いましてー」
「……ここ船の上だぞ?どう知れっつうんだよ。Wi-fiどころかスマホすらないぞ」
バカな事を言ってきたウチの船長に現実を教える。まあ、そんな現実教えたところで、ウチの船長が逃避することに変わりないが…。というか、ウチの乗組員に新しく乗ってきた奴居るんだから、そいつらから聞きゃいいのに…なんで出航当時からいる俺に聞くかねぇ…。つか、さり気なく17歳と言ったな…俺そろそろ26歳なんだけどな…お前と同い年で。
「そりゃ、そうですけどー」
「俺以外の奴に聞けよ。最近入ってきた奴らいんだろ。そいつらに聞け」
「え〜///だってぇ、船長がそんな新人の子たちとこんな2人っきりな状態で話してしまったら船長の色気にやられて、船長襲われちゃうじゃないですかぁ!」
「…この船で最も強い奴が言うセリフじゃねぇぞ」
「う''るせぇー!!乙女に向かってそんなこと簡単に言うんじゃねぇよぉ!!?」
「お前の方がうっせえわ!それに事実だろうがよ!」
「事実でも言っちゃいけないことぐらいわかんだろぉぉ!!」
「ちょ、何掴みがかるフリして服脱がそうとしてんだ!?やめろ!この万年発情期!!船員の誰か!それか偶に船底で船にひっついてるぐらちゃん!本当に誰でもいいから手を貸してくれ!また船長が暴走したぞ!副船長のピンヂだぞー!!」
「…またですか、副船長」
♢
声を聞いて駆けつけてきてくれた船員の筋肉ムキムキマッチョマン達によって、何とか引き剥がされた船長は部屋の外へと連れていかれ、暫く暴れていた音が響いていたが……やがて静かになった。
今度、宝を見つけた時にはあのムキムキマッチョマン達の報酬は多めにしてあげよう…と心に固く誓った。アーメン。
…あのるしあさんすら丸め込むキレ芸はこの一味での日常的な一部だが、大概的に被害者は俺を中心に船員全員で誰もタイマンでは船長に勝てないので対処に困る。あくまでも-芸なので本気でキレてるわけではない。というか船長がキレてる姿は長い付き合いの俺でも中々見た事がない。まあ、聴いてみると少なからずキレたことは何度かあったようだが…。この話は今はいいだろう。
「ふぅー、ただいまー」
扉を開けて戻ってきた船長の後ろを見ればマッチョマン達の骸(ただ気絶して倒れてるだけ)が…あぁ、すまねぇ…こんな不甲斐ない副船長でよ!いつかこの船長の暴走を止められる様になるまで耐えてくれ…!今のところ勝てるビジョン全く湧いてこないけど!
「おかえりー、つってもここ俺の船室なんだけどな」
「船長がわざわざ隣同士に設計しましたからねー…いつでも襲いに来ていいんですよー?きゃっ!言っちった!」
「大分使い方間違ってると思うが…それに逆だろうがよ。いつも寝ている間に俺の部屋に入ってはベッド潜り込んできてるのそっちだろ」
「えーこんな年若い女と寝れるんなら男として本望じゃないんですかー?」
「お前と一緒に居過ぎるとそういう意識が無くなってくるんだよ。そういう奴だなっていう意識になってくるから。あと、良い奴だなっていう意識で長年一緒にいるせいでもある」
「そりゃないですよぉ。こちとら猛アタック仕掛けてるのにぃ…ぴえん」
「…すまねぇな。ていうか…ぴえんって懐かしいな。確かマリンがアイドルだった頃にネットで流行った奴か」
「お、昔話でもしちゃいますか?」
「そんな昔って訳でもないけどな。するか」
海賊を始める前のマリンは、ただ海賊に憧れていたJKで、金が無いから海賊船が買えないと俺の家によく相談が来ていたなぁ。相談って言うよりかただ金出してくれと言ってたようなもんだったけど…当時の俺は普通の高校生だったのに何で金なんかせがんだんだろうか。
「お前あん時は何で俺が2000万くらい簡単に出せると思ったんだ?」
「いや〜小さい頃から○○には助けて貰ってましたし癖がついたんですかね〜」
「癖で2000万求められてたまるか。…あぁで確かそん時に俺が自分で稼げよつって、冗談半分でアイドル進めたんだっけか」
「あぁー、アレはマジで天啓でしたねぇ」
まさかの大当たりだったんだよなぁ。見た目は可愛かったし、キャラも長い間ずっと居たけど薄れることの無いぐらい濃かったし、ワンチャンあるんじゃ?と思ったがワンチャンどころじゃなかったんだよなぁ。
というかあの会社で所属しているアイドルは全員キャラ濃かったが、全部それぞれの良さが有ったから、上手くやっていたよなぁ本当に……それに、なんでか知らないけどあのアイドル事務所のアイドルの大半がうちの高校の女子生徒だったんだから驚きものだよなぁ。なんかスタンド使いの様に惹かれあってんのかと当時思ったわ。
そして、成功した資金で豪華客船よりもふた回りくらい小さい船が買えたわけだ。今後のことも考えるとそれが限界だった。
いや、それでも十分大きくて乗組員が船長と副船長の2人しかいなかった時は余りに広くて色々とハプニングがあったり、夜なんかじゃ凄い寂しい思いをしたが…今じゃアイドル時代の追っかけの人も混ざったり、他の島からついて来たいと言い出して実際に船に乗ってる人も多くなったからそんなのも感じなくなった。
因みに船長のいつも着ている海賊帽子とあの赤い服は偶然ドンキで見つけたコスプレ道具で、普段着は大体それだ。本人に何度か宝で取った豪華の方の服着ろよ。その方が船長っぽく見えるぞ?と言っても、本人は頑なにそれを拒否するんだから不思議だ。何か特別なことでもあったか?
つかコスプレでも船長として様になってるんだから美人はやっぱ羨ましい。
俺はイケメンってわけじゃないので、最初はなんとか副船長ぽく見せようと、マリンと双対的な色をした青い衣装で繕っていたな…それでもファッションセンスが悪かったのか、顔が悪かったのか、下っ端感強かったから、マリンのコスプレ道具の中から口元を隠す黒い布を貰ってなんとか副船長っぽく見せた。
元々目が超釣り上がっていてキツイお陰でそれっぽくなってたので、初めて自分のコンプレックスに感謝した。
まあ、キツすぎて当たり前の様に人殺してそうとか船員に噂されていたけど。久し振りに言われたせいか地味に傷ついてマリンに相談しに言ったのは懐かしい。そしたらマリンがそんな噂を立てたの誰じゃゴラー!とか言いながら船長室を出てったのはよく覚えている。あとその後に聞こえた悲鳴。
悪いことしちまったなぁ…と後々その船員に謝ったっけ。なんで俺の陰口を言ってた奴に謝りに行ったのか今でも訳わからんが。
「あ!そういえば、私がアイドルになったら真っ先にグッズ集めてたの○○でしたよねぇ!アハハハ!」
「うわー……思い出したくはないけど大切な記憶が掘り返されるぅ…!」
「しかもファンクラブ会長が○○で、それ知った時には本気で笑い死にそうになりましたよ!…グフッ!」
「あの時は本気でお前を応援したかったんだよ!悪いか!?笑うんじゃないよ!」
的確に黒歴史と恥ずかしい事言ってくんなぁ…!本当にこういう時のマリンは容赦ねぇ!!
「いや別に悪かないですけどぉ。凄く嬉しかったですし!」
「お前や他のアイドルの人たちとかそのアイドルの友達とか来る時は上手く隠してたと思ってたんだけどなぁ!そういや何でバレたんだ?」
「ノエルの彼氏さんが最初に気付いたみたいですよ」
「あー…あいつかぁー…そういえばあいつ暗殺が得意とか言ってたからなぁ…観察眼がとんでもないわけだ」
「あと、他にもおかゆ先輩といつもセットのあの人とかぁ、ししろんの彼氏さんとかぁ、ちょこ先生とかぁ…他にはえーと…」
「待って結構いると思って聞いてたけど4,5人くらいじゃないの?」
「いや、ホロライブの人たちだったらほぼ全員じゃないですか?大体が彼氏さんや男友達からの情報らしいですけど」
「アイツら…おんなじ事やってんだからバラすなよって言っておいたのに…」
あの時の会議は一体なんのためにあったんだよ…ん?って事は、他にも俺たちがしていた事ほぼバレてるって事だよなぁ!?いやそりゃ隠してない奴も居たけどさぁ!他にも隠し通しておきたかった派のやつ居ただろぉ!俺みたいにさぁ!
「まあ、彼女には隠し事は出来ないって事ですよ!」
「ホロライブの情報網すげぇなおい…え、待って今更だけどノエルとアイツ付き合ってるの?というかぼたんさんとあの野郎も付き合ったの?」
「あれ?知らなかったんですか?」
「逆に何でお前は知ってんだよ?」
「前回上陸した島に遠征して強化合宿中の白銀騎士団が居たじゃないですか、あの時に、ノエルと2人で飲んでて、『●●との関係はどうよ?』って話を振ってみたらノエルが突然『もう本当に●●って無頓着でさぁ!!散々アプローチしてるのに全く気付いてくれないし、やっと気付いたかと思ったら、お前にはもっと相応しい相手が居る。とか言ったから団長、●●と喧嘩しちゃって、暫く●●と話さなくなったの!そしたら団員のみんなが何か言ってくれたみたいで、あっちから付き合って下さいって言われて、本当にもぉぉ!!嬉しい!!』って酔いのせいか色々端折って言ってくれたので、知りました。そんで、その時に他にも付き合ったメンバー居るみたいだよっていうの教えてくれたので。ただ、ノエルが酔っ払ってて何言ってるか半分くらい分かんなかったし、船長もちょっと酔っちゃってたから少~し不鮮明ですけど」
「少なくともノエルさんとぼたんさんはもう付き合ってんのか…つかマジか、ノエフレに続く夫婦が出来たか…アイツら学生時代からいつかくっつくだろうなと思っていたけど…随分と長かったなぁ…」
「多分、実家がゾルディック家みたいな感じだったから釣り合わないとか思ってたんじゃないですか?」
「あぁー、なるほどなぁ……鬼滅の伊黒さんみたいな感じね。アイツの性格の事だから大体想像つくわ。でも、アイツの気持ちも分かるよ。お前たちアイドルは全員良い女ばっかだったからなぁ…色んな意味で。俺も一時期お前がアイドルになってからお前に相応しい男になりたいと思った時期があったよ…少しだけな「ちょおい!?そこは長々と悩んでくれて良かったんですよ!?」
「いや、お前とこうやって駄弁って楽しむことが俺のやり方だろ?無理に相応しい男になる必要はねぇんだよ。…まあ今は守れる男にはなりたいとは思うけど」
「それって船長を、ですか?それともこの海賊団を、ですか?」
「……急に意地悪になんなよ。というか長い間一緒に居んだからその答え知ってんだろ?」
「えへへ、勿論知ってますよ。でも○○の声で聞いてみたいじゃないですか~」
ドォォオオン!!
突然の砲撃に俺とマリンは驚いたりしない。なに、海賊になったらやがて慣れる音だ。平然と平和にプカプカと浮かんでるだけでも悪い海賊ってのは攻めてくるもんだ。まあ、こっちの旗が見えながら大砲撃ったのなら相手は相当な業者か単なる馬鹿だ。この宝鐘海賊団は世界に伝説を轟かせてる大海賊団だからな。ONE PIECE基準で表したら、俺らは四皇扱いだと自負しているぐらいには規模がでかい。
「船長!東の方角に船が5隻!砲撃を受けました!」
駆け込んできた船員にマリンはムー!と頬を膨らませて、俺はニヤリと笑う…口元見えないけど。
「ちょうど良いタイミングで答えを示す時が来たじゃねぇか」
「え〜!たった数秒で船長か海賊団かって言うだけですよ!?今言ってから行ってくださいよ!」
「新人達のフォローしなきゃいけねぇから俺は先行っとくぜ。じゃあな!」
「あ''ぁ''ーー!!も''お''ぉ''お''!!戦ってる最中じゃわかる訳ないでしょーがー!!」
正直、今回の敵には感謝だな。
これ書いてる途中に知ったのが「アーメン」は現代語訳にすると「それな」らしいです。
(「アーメン」=「その通り」という意味のヘブル語)