特級ヴィラン「真人」   作:うたたね。

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前半以外は全て書き直しました。
それぞれのキャラ設定もちょこっと変えました。申し訳ないです!

あと、沢山のお気に入りと感想と評価をありがとうございます!
まさかもう色がつくとは思わなんだ。
あと、みんな真人好きなんだね。


第一話 邂逅

 

『彼』が生まれたのは、ある研究がきっかけだった。

 個性因子。

 人間に異能力を発現させるその細胞は、ブラックボックスだ。あらゆる異能を発現させるその原理は、破片も解明されていない。今もなお米国のとある研究機関で、世界各国から集められたスペシャリストたちが研究を続けているのにも関わらず、だ。

 だが、ブラックボックスは、逆に言えば無限の可能性を内包しているということだ。

 そんなものに、最低最悪のヴィランと呼ばれるオール・フォー・ワンが目をつけない筈がなかった。

 ドクターと呼ばれる、かつて『個性特異点』と呼ばれる眉唾物の論文を掲げた男と共にAFOは"個性"の研究を行った。

 "個性"を奪い、与える"個性"──そんな凶悪な力を持つAFOにとって、個性因子の研究は必須と言えた。

 

「心の力というものを信じるかい、ドクター?」

 

 それは、"個性"の研究が進み、ドクターが個性因子の複製を可能とし始めたある日のことだった。

 突如、AFOがドクターにそんな問いかけをした。

 

「珍しいの、先生がそんなことを口にするとは。ワシが答えるまでもなく、分かっておるじゃろうに」

「君の口から聞きたいんだよ。

 確かに僕は万能だが、全知全能というわけではない。医学においては君の方が僕よりもずっとモノを知っている」

 

 そう言って、巨悪は笑う。

 

「心──精神状態、感情の種類、確かにそれらは身体機能に大きく直結する。

 精神状態が良好な人間ほど、病気にも罹りづらく、罹ったとしても症状は軽く、治りも速い。

 応援されることでパフォーマンスが向上する、というのも確かにある。

 もしや先生、貴方は──」

「ふふ。気づいたかい? やはり君は聡いな」

 

 ドクターは、AFOが何を考えているかを悟った。

 

「個性因子は、身体機能のひとつ──ならば、感情の振れ幅にも大きく作用するのではないかい?

 僕は思いついた。

 ならば、感情に方向性を与えることで、個性因子にも何らかのアプローチが期待出来るんじゃないか、とね」

「確かに。『感情抽出』の個性があれば、非常に容易い。本来なら他人の感情を取り入れることは人格の崩壊にも繋がることじゃが、先生であれば問題はないじゃろう」

 

 個性因子複製の研究と同時並行に行っていた、人造人間の製造──『プロジェクト:脳無』

『マスターピース』へ至るための過程で生まれた副産物のような物ではあるが、それ故に脳無に対して一定の評価が得られれば、そのまま流用することが可能だ。

 上手くいけば、計画を大きく短縮することが出来るかもしれない。

 

「きっと成功するさ。()()()()()()()()()()()()()()

 あの子は精神状態がぐちゃぐちゃだ。それ故に『特異点』に到達しているのにも関わらず、出力は著しく低い。

 抑制が可能ならば、その逆だって出来る筈さ」

「じゃな」

 

 前例がいる。

 ならば、出来ない筈がない。

 

 

 

 AFOとドクターは、早速取り掛かることにした。

 用意したのは1000人分の感情──その中でも負の感情を彼らは利用することにした。

 感情の中でも、負の感情は一際強い。それこそ、容易く人の命を奪ってしまいかねないほどに。

 何より、悪意が人の形を成したAFOが裏社会を掌握()()()()ことがそれを証明していた。

 

「それに、そっちの方が面白いじゃないか」

 

 おもちゃを与えられた子供のように笑いながら、AFOはそう語った。

 

 実験は簡単だった。何せ、感情を抽出し、それを人間に加えるだけでいいのだ。

 無論、ただの人間ではない。常人であれば1000人分の負の感情などに耐えられる筈がないからだ。廃人と化し、すぐに崩壊してしまう。

 彼らが欲しているのは、あくまで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()"()()"()()()()()()()()()()()、そのデータだ。

 用意したのは、試験管ベビー。AFOの遺伝子から創り出した、クローンのようなものだ。

 常人であれば、耐えられない──ならば、耐えられる人間を作ればいいだけのこと。

 今現在、AFOは10000の負の感情を内包していながら、当然の如く自我を保っている。彼にとって、悪意とは当然のもの。飲み干せない道理はない。

 そんな彼の遺伝子から生まれた人間であれば、常人よりは耐えられる可能性は増える。

 

 

「おいおい。クローンだってのに僕の面影が少ないんじゃないかい?」

「性格もそうじゃが、顔つきや体格も過ごしてきた環境によって変わるものじゃ。全く同じ、というわけにはいかんよ」

 

 計画を思いついてから、1ヶ月が経った。

 二人の目の前には、薄緑色の培養液に浮かぶ青年の姿が写っている。成長促進剤で成長を促したため、髪の毛は腰まで延びている。

 

「年齢はこれくらいでいいだろう。ちょうど弔と同い年くらいだ」

「もしや、死柄木弔と共に育てるつもりか?」

「期待通りの結果が出れば、ね。使えなさそうであれば脳無として運用すればいいだけの話さ」

 

 あっけらかんと恐ろしいことを口にするAFOだが、ドクターは気に留めなかった。

 慣れている。

 それに、ドクターも彼と同じように思っている。使えないのであれば、処理するだけのことだ。

 

「さて──じゃあ始めようか」

 

 その言葉と共に、ドクターが機械を操作する。カタカタカタ、と数秒コマンドを打ち込むと、カプセルの中の培養液が抜け、浮かんでいた人造人間が地に落ちる。

 

「──」

 

 培養液の中で呼吸器を通して、酸素を送っていたため、むせるようなことはなかった。意識を失っているのか、ピクリとも動かない『彼』に、AFOは軽やかな足取りで近寄った。

 

「ああ、こうして同じ空間に立てば分かるよ。君は確かに僕の血筋さ。そして、()()()()()()

 

 鑑定系の"個性"を使用するまでもない。()()()()()()()()()()、AFOにそう確信させていた。

 邪悪な笑みを浮かべながら、AFOは『彼』の頭に手を添える。

 そして。

 

 

「ハッピーバースデー──僕の息子よ」

 

 

 そしてこの日、新たな悪意の体現者が、産声を上げた。

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 とある町にひっそりと佇む低層ビル。その中には隠れ家を思わせるバーがある。表には看板はなく、窓もないため外から様子を伺うことは出来ない。

 知る人ぞ知る名店──棚に並ぶ年季のある酒の数から、そう思う者もいるかもしれないが、その実態はバーとは大きく異なる。

 

 ──(ヴィラン)連合

 

 そう自らを呼称する犯罪組織の根城。

 それこそが、このバーの正体である。

 故に、この場に一般の客は来ない。やって来るのは、連合の構成員のみだ。

 

「それで、黒霧……説明しろ。そいつは一体誰なんだ?」

 

 カウンターに座る、腕を模したマスクを顔に嵌めた細身の青年が、苛立ちを隠さない声色で黒霧と呼ばれた頭部が黒い靄で覆われた男に問いかける。

 

「あのお方からは"協力者"、とだけ聞いています」

 

「先生が……?」

 

 青年──死柄木の視線の先。そこには黒コートに身を包んだ長髪の青年がいた。柔和な笑みを浮かべた、整った顔立ちをしている。

 だが、露出している肌には皮膚を継ぎ接いだ跡が至る所に存在している。おそらく、コートを脱げば全身に継ぎ接ぎがあるのだろう。

 纏っている雰囲気も何処か不気味で、悍ましさを感じる。

 

 その青年は、つい先ほど黒霧が連れてきた。

 “先生”──育ての親である男が黒霧に頼んだようではあるが、ハッキリ言って死柄木は青年のことが嫌いだった。

 こちらを値踏みしている──いや、見透かしているような、そんな目を向けてくる。堪らなく気持ち悪く、不快だ。

 

「そんな目をしないでよ。俺たちは仲間、だろ?」

 

 困ったように青年が肩を竦める。

 

「死ね。自分の名前を言わない礼儀知らず……何より、オマエのその目、気持ちが悪い」

 

「ひっどいなぁ」

 

 死柄木の罵倒も気にした様子はなく、青年はクスクスと笑う。それがまた、死柄木の精神を逆撫でしてゆく。

 

「……黒霧、コイツ追い返せ」

 

「しかし、死柄木弔。彼は──」

 

「分かって言ってるんだっ。“先生”のよこした奴だとか知るか。俺はコイツが嫌いだ」

 

 死柄木の無茶振りに黒霧は否定の意を示すが、問答無用でそれを一蹴される。

 こうなった死柄木は意思を変えることはない。それは、死柄木と関わりの深い黒霧は誰よりも分かっていた。

 死柄木は子供だ。自分の気に入らないものは遠ざけるか、壊すか。

 許容するということをしないのだ。

 いつもであれば死柄木の言う通りにするのだが、しかし今回はそういうわけにはいかなかった。

 

(あの方からは、彼を死柄木弔の側に置くように言われている。返すことは出来ない……)

 

 厄介な命令(オーダー)ではあるが、黒霧に拒否する権利はない。

 あのお方──巨悪の魔王、オール・フォー・ワンは、常に先を見据えている。この青年の存在が、死柄木に大きく作用する、ということなのだろう。

 

 さて、どう説得するべきか──黒霧が策を考えようとしたその時だった。

 

「"あいつ"目も節穴かよ。こんなガキを後継者だなんて──笑える」

 

「あ?」

 

 継ぎ接ぎの青年が軽薄な笑みを浮かべ、死柄木を嘲ったのだ。

 

 空気が凍る。

 どろり、と。悍ましい気配が部屋を支配する。

 発生源は死柄木弔。

 これは彼の──殺意だ。

 しかし、それを真正面から受けてもなお、継ぎ接ぎの青年は笑みを崩さない。

 それどころか、彼は更に煽る。

 

「図星か? 冗談キツイよ。俺にガキのお守りなんて勘弁してほしいっての」

 

「 ──殺す 」

 

 ぶちり、という何かが切れた音を黒霧は聞いた。

 瞬間、死柄木は椅子を倒すことなど構わず、床を蹴り、その手を継ぎ接ぎの青年へと伸ばす。

 青年は更に笑みを深め、応対すべく構えを取った。

 死柄木の掌──正確にはその五指には、凶悪な能力が宿っている。

 彼に触れられれば、その末路は想像に難くない。

 

(止めなくては…! それに、この青年からも嫌な予感がする…! 被害が出る前に)

 

 死柄木の五指が、青年の顔面に。

 青年の(てのひら)が死柄木の胸元に。

 

 しかし、それよりも早く──互いが触れるその寸前に、黒霧が"個性"を発動していた。

 

 個性:ワープゲート

 

 小さなゲートを死柄木と青年の手首より先に作り出すことで、あらぬ方向へと攻撃を逸らすことに成功していた。

 

「黒霧……! 邪魔をするな……!」

 

「おやめください……! 死柄木弔、彼は“先生”から遣わされた協力者、こちらの利になる人物です! 安直な考えで殺し合うのは辞めてください!」

 

「ハハ、惜しいな。()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()()()

 

「貴方もです。“先生”から話は聞いているでしょう。死柄木弔を挑発するのはやめてほしい」

 

「はいはい」

 

 黒霧の叱咤に、死柄木は渋々と、青年はヘラヘラと引き下がる。

 バーを支配していたおどろおどろしい空気は鳴りを潜めた。しかし、二人の間には嫌悪なムードが残っている。

 黒霧はため息を吐く。

 

 そんな時だった。

 

『──助かったよ、黒霧。どうなるものかとヒヤヒヤしてしまった』

 

 設置されてある、薄型テレビ。

 そこから響く声の主は、瞬く間にこの場の空気を支配した。

 

 主の名はオール・フォー・ワン

 

 裏社会の伝説的なヴィランであり、死柄木弔の育ての親。

 そして、継ぎ接ぎの青年の──

 

「先生……! 説明しろ! このムカつくクソ野郎は一体誰だッ! 何でこんな奴を寄越した!」

 

『すまないな、弔。君にはきちんと説明しておくべきだったよ。

 こんなことになるとは思ってもみなかったんだ』

 

 いけしゃあしゃあと嘘を吐くAFOに、青年は吹き出しそうになる。

 確実にこうなることが分かって、あえて死柄木に自分のことを話さなかったのだろう。そういう悪意(いたずら)には青年は敏感だった。

 

『紹介するよ。弔、黒霧。

 

 ──彼の名は真人(まひと)

 

 死柄木弔──君にとってははじめての、敵仲間(スクールメイト)という奴さ』

 

 




【キャラ紹介】
《真人》
原作では、人が人を恐れる腹から生まれた呪霊。数々のネームドキャラをぶち殺したやばい奴。設定的には我々の息子。
本作では人間の悪意にプラスして魔王のDNAを使うことで生まれた。たぶん変異体脳無的な。

《死柄木弔》
私の推し。かっこいいよね。
改稿前は精神状態を向上させたが、やっぱし元通りにした。ステイン編以降の彼の成長具合が窺えるシーンが好き。

《黒霧》
苦労人

《オール・フォー・ワン》
AFO「思いつきの計画を立てたらなんかやべーやつ生まれててワロタ」
真人の"個性"を利用し、肉体の回復を図ろうとしたが、彼から溢れる並々ならぬ悪意を懸念し、断念した。

《ドクター》
ドクター「先生の思いつきの計画を実行したらやべーやつ生まれててワロタ」
真人の個性を複製しようとしているが、難航中。

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