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アルズベリの計画を叩き潰すにあたり、少し死徒について説明しよう。
月姫2の主要な舞台であり、魔術協会や聖堂教会も絡んで大惨事になる話であるとだけ伝わっている。
ゆえにこの件を紐解くには、朱い月と死徒との関係を考慮せねばならないのだ。
「全ての死徒は大本である『朱い月』をモデルにしている。死徒二十七祖と呼ばれるタイトルは、彼女の血を持つ『不完全な不死者』ということになるかな」
今更、死徒の勉強会が必要な魔術師たちは此処には居ない。
だが魔術協会の中でも頂点であるバルトメロイが知識を開陳するとなれば、それはそれで大事なので、カルデアスに無関係な者たちまで詰めかける大騒ぎになった。
「今回参集された祖とその候補は、全てが『原液持ち』と呼ばれる相手だ。死徒は自らの血を分け与える回数と量で、相手を死徒にするペースとランクが変わるとされているね? これは真祖時代の血なんだよ」
通常、捕食用の雑魚を作る時は血を一度で吸い切るとされる。
相手の血を飲み干し、吸血鬼の血を分け与えられたのだから、その血は吸血鬼の物である。急激な変化に耐えられない対象はその殆どが最低級の死徒となり、『親』とのリンクを保ったまま血を献上し続けるという。厄介な性質としては直接接触せずとも親は子・孫から搾取できるという事だ。
この話を聞いた時、一人の少女……ここではJKとだけ言っておこう。その子が少しだけ震えた。
「申し訳ありません。朱い月は死徒とされていますよね? それは誤解なのでしょうか? それともあえてランクダウンしたのでしょうか?」
「良い質問だね。その疑問は大切だ」
問いを発したのが女性だからかバルトメロイはウインクで返した。
上位者の中には今更な事を言うなと言う者も居たが、バルトメロイが多めに見ているのだから問題にも出来なかった。
「嘘か誠か朱い月は外来種とされているといえば判るかな?」
「抑止案件ですね。……そうか、アラヤとガイヤの抑止から逃れるために自らの身を作り直した……」
月のアルティメットワン『朱い月』、それこそが全ての元凶であった。
彼女を神造コピーした真祖たちは吸血性という『嗜好』を抱えていたし、その劣化コピーである死徒は血を吸う事が『必須』な欠陥品である。
そうした欠点を抜きにしても、外来種である朱い月を放置して地球生命体の危機には晒せない。助けに来た彼女を信じる信じないに関わらず、アラヤもガイアも朱い月排除に出るのは目に見えていた。
「どうにか地球生命体と呼べるまでに自らを作り直した朱い月、それがブリュンスタッドという存在さ。しかしながら皆も知っての通り、死徒は『不完全な不死者だった』これをどうにかするのが、全ての祖に与えられたグランドオーダーと言えるだろうね」
「グランドオーダー……」
古き魔術師たちに伝わる至上命令。
それに例えることで、ほとんどすべての魔術師たちがその重要性を理解した。どんなに諍いを持っていてもこの件に関してだけは祖たちは、他の派閥と争わない。祖たちは己が研究し、追及する不死の形を持っているのだから、その系譜が途切れては困るからだ。
それを説明するのに、グランドオーダーという例えは判り易かった。
「死徒たちはそのシステム上、原液持ちの全てがブリュンスタッドに成り代わる可能性がある。だからこそ祖たちは今回の様な例外を除いて争わない。そして原液を濃くして、そのシステムを流用するのが『闇の六王権』と考えられている」
死徒たちは子から孫から子、子から親へと献上を続ける。
その血と魂の中にリンクシステムが眠っており、通常はどうやっても逆らえないし、親が孫を制圧するのは容易い事だ。
では闇の六王権とはなんぞや? 最初の死徒にして永劫に蘇生する日を眠りて待つ存在とは?
「その結晶を六つ束ね、死に難くブリュンスタッドに限りなく近い正統性と血の力を持つ存在を作り出す。それこそが吸血鬼の宰相として、じゃあここでやって来てる祖のおさらいと行こうか」
他でもない真祖時代であるブリュンスタッドの死体。
それこそが闇の六王権の正体であったらどうだろうか? 大量に溢れる真祖の血、『原液』の塊であり芳醇な魔力を有する存在だ。逆説的に言えば、原液持ちが血を濃くして、ブリュンスタッドの管制化に入ることで成立するのだろう。
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講習会が終われば、これから倒す為の作戦会議ということになる。
聞きたいことは聞いて興味の失せたお偉いさんは去り、戦う可能性のある者たちだけが残っている。
だが数が合わない。シルエットながら映し出された姿は六つでは収まらなかったのだ。
「まずは最大派閥、『白翼公』トラフィム・オーテンロッゼ。能力と成り立ちを一言で言うと、カインとアベルの関係を我が家と延々やってる。死にたくなければ迂闊な発言は避けてね」
「……」
バルトメロイを引き合いに出せば全てが完結する。
これといった特殊性は持たず、ただ吸血鬼としての有り様を追求した存在だと思えばよい。血族の中にも優秀な原液持ちを抱えており、こういう時の穴埋めのために不死の研究はさせているだろう。
数が判らなくなるのはこいつのせいであり、倒すならばこいつからなのだが、良くも悪くもバルトメロイの獲物なので口の挟みようが無かった。
「次にたった四体による最強派閥。アルトルージュ・ブリュンスタッド。ビースト候補や受肉した悪魔を連れたお姫様。まず勝てないから近づかないように」
「び、ビースト……」
「受肉って……本当に居たんだ」
その四つは四つでありながら全てを圧倒していた。
アルトルージュからして強力な祖なのだが、最強の死徒プライミッツマーダーは神代の魔獣であるキャスリバーグと同等の存在だ。『犬』は全てを喰らうとされており、人間である以上は絶対に勝てないと言われているとか。
そして真正悪魔はそれと同等に厄介な相手だし、残る一体も幽霊船団を連れて固有結界を有していると手が付けられそうにない。
「バルトメロイ……そのような相手、いかがするのですか? 戦うどころの話では……」
「ああ、彼女たちに関しては問題ないよ。援護が必要ならボクがやるけど……要らないだろ? ゼロ」
「イエス、マイ・ロード」
青ざめた顔で疑問を呈する魔術師にバルトメロイは後ろを向いた。
そこにはクロンの楽団にて、盤外であるNo.0のコードを持つ存在が居た。奇妙な仮面を付けて、燕尾服とマントをまとった洒落者である。
ゼロと呼ばれたその存在が仮面を剥がすと……そこにはより奇妙なモノがあった。
「と、鳥の顔? 作り物……なのか? どうして仮面の下に仮面を……」
「……」
「面倒だから紹介もボクがしよう。司会をやってるのもボクだしね」
魔術師の言葉にゼロは一切答えなかった。
それと奇妙なのは、バルトメロイを『ハー・マジェスティ』と呼ぶ者はいても『マイ・ロード』と呼ぶ者は少ない。特にこのような場では家名であるバルトメロイと呼ぶ方が正しいのにだ。
それは即ち、契約上の雇用相手でありバルトメロイに敬意など抱いていないことを示している。
「彼が『黒翼公』グランスルグ・ブラックモア。吸血鬼を罰する吸血鬼だよ」
「吸血鬼殺しの一体か!?」
「……殺してなどいない。我が君の下僕たりえぬ者に罰を与えているだけだ」
これまで一切の反応を見せなかったのに、その時だけ応じた。
どんな魔術師もモブとしか思っていないであろうに、『他派閥の死徒を殺す』という罪を押し付けられて黙って居られなかったのだろう。
そして他ならぬ祖が、直ぐそこに居たことに多くの者が恐れおののいていた。
「彼には聖堂教会に所属する祖である、メレム・ソロモンと共にアルトルージュ派に専念してもらう。古い契約があるからなんだけど、こちらにも手を出さないからそこは安心して欲しいかな」
「……」
肯定するのも否定するのも馬鹿馬鹿しい。
そう言わんばかりの態度に一部は怒りを覚えたが、その恐ろしさを再認識して押し黙った。
何しろ相手は最古参の死徒であり、同時期から活躍する『魔術師』なのだ。確かにこの場に居る魔術師の中で、多少でも相手になる者は少ないだろう。
「しかし、しかしです。バルトメロイ。それでは我らは一体何のために?」
「そりゃあ有象無象の死徒たちを相手にする為さ。エースはエースにぶつけて初めて意味が出る。その消耗を避けたり、外来の……ああそうか。招待状のない相手を忘れてた」
最後にバルトメロイは一枚のポートレートを取り出した。
まだ若いころ、人間であった時代に撮ったであろう写真の一枚だ。アナログであるからこそ残っていたのかもしれない。
その一枚をスキャナーで取り込み、髭を付け足して青白さを加えて完成させる。
「おそらくこんな外見だと思うんだけどね。死徒殺しの死徒としては彼こそがその名に相応しい。『復讐騎』エンハウンス。もし彼が現れたら、敵の方へ案内しちゃって。もちろん教会の連中も邪魔しないようにね」
その人物は魔剣と聖別された銃を持つという。
人間の部分がまだ残っており、そんな無茶が可能なのだとか。その矛盾こそが彼の強さであり弱さでもある。
魔剣を使うたびに人間として崩壊し、聖なる銃を放つたびに死徒の体が腐り落ちる。もし切り札を温存する為に命を賭けろというならば、彼を他の祖の元に送り届ける事こそが最重要な課題だろう。
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そんな風に死徒たちの紹介と傾向は伝えられた。
紹介しただけで対策になってないのは、彼らは災害のようなものだからだ。運が悪ければ一瞬で死ぬし、その目的ゆえに出逢わぬ時は殆ど出逢わない。
それはそれとして作戦を練らないわけでもないのだが。
「大過なく過ごすのは問題ありません。しかし狩れますか?」
「切り札はそのためにこそ『複数』用意するってやつかな。一枚目を切る時は、二枚目を隠し持ってから使えって言うよね」
ブラックモアは基本動かない。
相手の陣営にもそれは伝わっているし、こちらの切り札と言うには少し浅い。
ならばバルトメロイ以外にも、屈強な魔術師や礼装を用意するのは当然だ。
「サーヴァントは呼べたとしても一体のみ。決戦術式・英霊召喚はその個体が倒されて、地球のピンチがやって来た時にのみ連鎖的に解放される」
「ラーマ夫妻や三世たちですね」
カルデアスの中には、既に『天界』エリアが構成されている。
そこには召喚されたラーマとシータが仲睦まじく暮らしている他、『ドラゴン公』ヴラド・ツェペシュが吸血鬼ではないという宣伝を行う事を条件に待機している。彼はワラキアの軍神として天界エリアで過ごしていた。
彼らはそれぞれに理由を持つ七騎の英霊であり、天界に住むがゆえに力を借りれないという設定がなされている。逆説的に言えば、彼らが出陣する時は地球のピンチに他ならないのだ。
「と言う訳で令呪は一組を除いて必要ない。英霊たちを縛らないという証拠にこちらへ協力する魔術師たちに配布しちゃって」
「今から渡すと浪費しそうですけどね。了解です」
礼装としての令呪は研究の一環として完成させていた。
とはいえサーヴァントを呼び出せない以上は無用の長物であり、ただの魔力ブースト用礼装でしかない。
「優先順位は? バルトメロイには必要ですか?」
「ボクは要らない。逆にバセットには不要だとしても押し付けといて。『ラック』の能力を少しでも本来の形で引き出せればいい」
切り札として成立させるために、優秀な魔術師へ令呪を配布する。
封印指定執行者であるバセット・フラガ・マクミレッツはその一人であり、現存する宝具の能力を全て引き出せない彼女に渡せば、祖の一人くらいは倒せるモノとして考察されていた。
他にも候補である人間は幾人か居るが、戦闘力よりもその特殊性が重要視されている。
「埋葬機関のカレー……『弓』は微妙かな。有望な拝み屋を連れて来るならアリだけど」
「彼女は魔術を使いたがりませんしね。ともあれその方向で調整します」
特殊性が重要視されるのは、令呪による魔力ブーストで相手の抵抗力を上回れるからだ。
もし一級のエクソシストが来ており、令呪を使えば悪魔祓いも可能かもしれない。もっとも悪魔に関してはその精神性と論理の方が重要ともされる。事実、月姫2ではそれほど才能の無い神父が二人で一人の切り札とされていた。
そしてバルトメロイが現時点で未完成の令呪を欲しないのは、単純に魔術師の中で屈指の魔力を有するからである。それこそ自分の英霊をサーヴァントとして召喚し、専用の術式として組み上げない限りは必要としないだろう。
「後は『死神』と『アレキサンダー』次第かな。できれば戦力は一本化したいところだけど……」
「彼はこの手の騒ぎに協力しないでしょう。それこそ『姫』の為でも無ければ」
こちら側の切り札ではないが、『死神』と死徒業界で呼ばれる謎の存在。
そしてカルデアスでいつかイスカンダルを召喚する為に、前段階として召喚しようとしているアレキサンダー少年が最後の切り札と言えるだろう。
こうして戦いは原作の混沌さよりは、多少マシな様相を呈してきたのである。
今回は死徒ってなーに? と言う話と、戦力換算の話です。
怪しげな理論は原作設定を読みながら、適当に穴埋めした物です。
月姫2に出てくる怪しげな連中をカウントしつつ、どうにか勝てるように算段。
原作では混沌とした状況で人類側が争うのですが、転生者はその辺を調整。
しかし吸血鬼の名前をアダ名付きで読んでるだけなのに、ストーリーが進んだ気がする。
やはりジャンプの何がモノやFSSみたいに、敵幹部の名前連呼は効きますね。
●五人の祖
こんな連中が居るのに、原作では協会も教会も適当にやってたらしい。
全員がゲームの中ボスとか、外伝の大ボスを担当できるレベルの奴ら。
●人間側の切り札
・オルガマリー:戦いません
・シオン:戦えるけど計算してる方が有益
・JK:死徒業界の有望新人でヘッポコ。なおブリーチ世界だったら無敵。
・弓:カレー
・死神:出てこないでしょ
・ダメットさん:正式な月姫世界ではないのでこの世界でもヘッポコ
・カレン:登場時からして重体
●決戦術式・英霊召喚
呼ばないことを前提に、待機だけを了承させた七騎。
彼らはゲスト・サーヴァントが倒されない限りは現れないし
倒されたら地球のピンチとしてやって来る。
●サーヴァント候補
設定的に書きはしますが、出て来るかは不明。
どちらかといえば、考察好き・fate好きな人の為のオマケです。
英霊名(?):『アレキサンダー』
真名:不明
クラス名:プリテンダー
オルガマリーと契約し、彼女の事をマリーと呼んで協力するらしい。
イスカンダル双角王を呼び寄せるため、連鎖召喚する為の存在。
青銅の鎧をまとい、魔力を巡らせると黄金色の鎧を持つ超人に変身する。
ディオソニス信仰と獣人伝承の地に住まう王の一人。
青銅と黄金の差分分銅を所持し、ライダーと名乗るとか名乗らないのだとか。
宝具1:ゴルディアス・ホイール(ゴルディアスに至る轍)
差分分銅に魔力を蓄積し、神に捧げることで鎧が黄金色になり強化される。
鋳造したての青銅は神に捧げられた黄金色をしており、神聖性の象徴だった。
そして差分分銅と秤とは、交易と両替による繁栄の象徴なのだとか。
宝具2:「?」
登場時には封印されている。解放されると死徒も魔術師も滅びる。
なおこの能力は友愛なので、アキレウスにも通じる。