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建設途中の遊園地へ魔獣たちが進軍していく。
巨大な傘のような鳥が、まるで投げつけられた槍の様に悪魔へと突き進む。同時に巨大な狗の像が幽霊船団を踏み潰していった。
その様子を見守りながら投入時期を待つ鋼が二体。
光り輝く水銀の鎧を身にまとった女性系のゴーレムか何かに見える。片方は魔獣と同じくメレム・ソロモンが思い描いた人形の悪魔。もう片方は……。
「スヴィン。準備はいいか?」
「はい。先生。何時でも行けます」
もう一人はエルメロイ教室のスヴィン・グラシュエートだ。
女装と言うよりは兜と面貌が女性系と言うのが正しいだろう。それというのもギリギリまで人形と誤認させる為。どちらの方向がメレムの本命かを悟らせない為である。
もちろんメレム本人がこの場に居る必要はない。
居たとしても再想して魔獣たちに形を与え易く成り、戦力として再投入できる程度だ。魔獣たちがアッサリやられてしまう相手に、再投入する意味は薄いので居ないというのは正しい判断だ。
それでもこうやって偽装するのは、敵の首魁であるアルトルージュ・ブリュンスタッドがメレムを狙っているから……らしい。恋愛なのかアルトルージュが持ってない、空想具現化能力の代わりに取り込みたいのかは分からないのだが。魔獣の牽制攻撃を借りれるならば、女装による誤認くらいは易いものだろう。
「いいかスヴィン。決して無理はするな。追い込みさえすれば後はバルトメロイが倒してくれる」
「本当に無理ならそうします。でも可能ならば僕がやり遂げたいんです」
スヴィンにとってフラット・エスカルドスは一言では言い表せない相手だ。
同じエルメロイ教室の最古参であり、切磋琢磨してどちらが一番弟子かを争うライバルとも言えるし友人とも言える。肩を並べて戦ったこともあるし、前衛・後衛と互いの欠点を補い合った事も一度や二度ではない。
きっと一言で言えば『悪友』であろうか。
そんな相手が死にかけて……死んでしまって再生を構想中というのでは放っておけるはずが無かった。助けるにしても、無理だと和逢って引導を渡すにしても自分の役目であると思う。
「そうか。ならば倒すべき敵の事だけを考えろ。データは頭に入っているな」
「はい。気色の悪い趣味ですが、バルトメロイの言う通り自分がうってつけだと思います」
今回の目標は白騎士フィナ=ヴラド・スヴェルテン。
手下の幽霊船団はいましがた魔獣とぶつかり合っているので心配はない。お気に入りの一隻二隻は残しているだろうが、お気に入りだけに壊しはしないと思うのだ。
問題なのは固有結界パレードが不明であることだ。
固有結界とは魔術の中でも秘奥であり、白騎士が魔術を使用する可能性もあった。剣技だけではなく魔術も使う魔導戦士であると想定すべきだろう。
「何度か授業でも出したことがあるが、死徒は吸血鬼とは違う。だが今回に限り限りなく近い事をやって来るだろう」
「唇だけで済めばよいんですけどね……いえ、それも遠慮したいかな」
ヴラドはその……何というか同性愛者なのだ。
それも少年を愛する気質であり、青年に成り切れていないスヴィンは守備範囲だろう。
そして屈強の美少年を屈服させ、下僕にしようとするのは死徒の趣味に叶うだろう。手駒としても恋人としても優秀なコレクションとなるに違いない。だからこそ一撃では殺さない可能性が高かった。
「気を付けるべきは死徒の口吻は友愛行為ということだ。だから殺気は当てにならないから注意しろ。伝承通り数回に分けるなどとは信用するな。一度でも危険と思うべきだな」
「だから一度でも勘弁ですってば!」
それはエルメロイ二世なりのジョークなのだろう。
能力と行動を把握させつつ、スヴィンの緊張を解している。一応は対策の礼装を取らせているとはいえ、戦うスヴィンあってこそだからだ。
そして重要なのは礼装の使い道である。
「パレードは死徒の無限召喚であると仮定する。魔力がある限り無尽蔵に湧いて出るだろうが、こういった手合いには長所と短所がある」
「こちらを消耗させられる事、そして多くの場合は一撃に欠ける事ですね?」
伝承はともかく、死徒は吸血に際して魂を取り込んでリンクを創り上げる。
下僕とした後で、そのラインを使って血を献上させるのだ。ならば固有結界を己の体内と仮定して、このルートを外に出すのは難しくないだろう。
つまり理論的に固有結界パレードは実証できる。
今までソレを為す実力者が居なかったことや、実現したとしても保有する『子』の数が足りないのだろう。だが同性愛者であり無数の『恋人』を確保しているであろうヴラドであれば話が別だ。
「そうだ。勇者を殺すのは何時だって数による殴殺、それも背後からの攻撃だ。しかしソレは同時に火力が足りていないという事でもある」
エルメロイ二世は懐かしそうにそう語った。
かつて英霊イスカンダルと出逢った時に言っていたものだ。『あいつの宝具で我が軍勢を武装させてみたい』と。巨大な魔物相手に苦戦していたこともあって、火力が足りないというのは確かであると思われた。
『王の軍勢』はあくまで英霊を個人的に呼び寄せるだけであり、その英霊が本来所有する宝具までは呼び寄せられないので仕方がない所ではあるのだが。
「そこでこの礼装には主に、二つの機能を持たせてある。一つ目は振動防御による拘束排除。後ろや足元から掴まれて動きを止められることはない」
「それは助かります! 捕まる気はないですが死徒が束になってるんじゃ油断できませんから」
高速で動き回るスヴィンにとって何よりの懸念、それが移動停止だ。
魔術であろうと物量であろうと、動きを止められるのが一番困る。並大抵の相手であれば機動力に追いつけず、捕まえられても構う事はないのだが……。
相手が死徒であればそうもいかない。
人間には到底出せないスピードとパワーを兼ね備え、それが半壊してもまだ動くというのだからいくら注意しても足りることはないだろう。そして組み付かれたら逃れるのは難しい。
「そう言う事だな。もう一つは単純に爪先など表面に水銀の塗布を行える。『銀の装備が無ければ倒せない』などと概念的な防御があっても困るしな」
「確かに。吸血鬼なら定番の能力ですしね」
エルメロイ二世の脳裏によぎったのは、とあるゲームでの台詞だ。
赤毛の勇者の冒険譚の一つに登場する魔導師は、『どうせ銀の装備なしには倒せない』と余裕を見せていたのだ。実際には最強装備よりも銀の装備の方が効果的になる様な補正があったに過ぎないが、二世に決断させるキッカケになった。
もちろんバルトメロイに言われたように、スヴィンを圧倒したヴラドが吸血を行う時に備えた装備でもあるのだが。
「その上で、白騎士は基礎能力だけでもお前を圧倒している。年季では向こうが上だというのを忘れるなよ」
「判ってます。こちらは挑む側。その事を忘れたりはしません」
あくまでヴラド退治は余技である。
聖堂教会の戦力がアルトルージュ一派を倒すのに協力する足止め作業に過ぎないのだ。
その上で策を積めるだけ積み、勝算を上げる事がスヴィンを生きて帰らせる為の方策だからこそ色々と準備しているのである。
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出撃前の僅かな時間。
意外な事に、意外な人物が話しかけてきた。
『黒翼公』グランスルグ・ブラックモア、その人である。
「あ、お兄さん。グレイたんは大丈夫ですか? 今日はいつもみたいに真っ黒な匂いじゃないですけど!」
「その呼び名は不快だ。お前の兄になった覚えはない」
普段はクロンの楽団で門外顧問を務めているMr.0。
ブラックモアの地にて唯一である主人の帰りを待つ使い魔のような男。それが話しかけて来るとは思いもしなかった。
もし話しかけて来る理由があるとすれば、この場に参陣できなかったあの娘の事であろう。
「だが、あのどっちつかずが持ち直したのは確かだな。現在は二つの『アルト』の血が拮抗して安静状態だ。それだけを告げに来た」
「グレイたんが! ありがとうございます、お兄さん!」
この物語に置いて『グレイ』は不参戦である。
聖槍を抜錨すれば上位の死徒とて滅ぼせようが、残念な事に直前に別の事件に巻き込まれてしまったのだ。
そこで『原液』に触れる機会が出てしまい、アルトリア……アーサー王の再現としての力と混濁してしまったのである。それでも『命だけは』保っているのは、どちらも魔術協会に置いて月の加護を示す『アルト』に属するからこそだろう。
「本当はそんなことを言う必要もないのに教えてくれたんだし、やっぱりお兄さんはいい人です!」
「止せと言った。だが……夜の闇と陽の光の間をどっちつかずで歩く、あの愚かな娘を心配しているならば無事に帰って来るがいい」
まるでフラットのように話を聞かないスヴィン。
まるで悪友の真似をしているかのような彼に、ゼロと名乗る男は背を向けて用は終わったとばかりに立ち去っていく。
彼に何か言おうとして、余計な思考がちっとも考えをまとめてくれない。
そうこうする間に出撃時間が来てしまうのだが、もしかしなくても、あえてこの時間を狙ったのだろう。
「……スヴィン」
「判ってます。スヴィン・グラシュエート、行きます!」
エルメロイ二世の反応から、彼も同様の伝言を受け取ったのだと判る。
スヴィンは本来ならば言わない台詞を乱発し、この場に居ない悪友の代わりにネタを入れておいた。
そして水銀礼装には女性系の外見を維持させて、当初の予定通りに囮の役目を果たす。
「あの大きな獣も幽霊船団も居ない……本当に相打ちになったのか」
遊園地の敷地に入るや、意識が時々寸断される。
数層ある結界の外と中で時間の流れが違う為、その間を通り抜ける時、まるで山に登る時の様な違和感と耳鳴りを感じるのだ。
それでもスヴィンは即座に適応し、周囲で溶けていくエーテルの流れを発見した。燃え落ちていく蠟燭の様にそこらかしこで消えて言っている。
「っと! そう都合よくはいかないか。でも、このくらいじゃ当たらない」
地面から浮き上がる様に現れる幽霊船。
衝角を突き出して突撃を掛けるガレー船と、大砲を撃ち始めるキャラック。吸血鬼は水の上を渡れないという伝承があり、死徒もそこまでではないというのに随分と芸達者な事だ。
これらはどうやって集めたのだろうか?
海上で捕獲したのか、それとも港で殲滅でもしたのだろうか。いずれにしても答えは出ないし、当たらないならば無視して通り抜けるまでだ。
「白騎士は何処だ? 確かにこの辺にゼゴビア城をモデルにしたのが……アレか。上水道がコレとして……」
地図は既に頭に叩き込んであるが、相手のプロフィールと合わせて修正していく。
この遊園地で一番立派な建物に御姫様が居ると仮定して、空飛ぶ怪鳥がそこへ一直線。それを迎撃に黒騎士が出たとの事だ。
そしてこの辺りに狗の魔獣が送りこまれているのだが、狙った施設は古代ローマの上水道を模した流れる水路であった。遊具として様々な形状の小舟に乗り、周辺施設を一周できるという。
「居た。多分アレだな」
水路の上に瀟洒な小舟が見える。
特に保証などないのだが、この水路に居る限りはこの遊園地自体を睥睨して回れるのだ。
誰にも見下ろされることなく、同時に姫君を守るべき位置になる。
ゆえに高慢さと義侠に裏打ちされている……という程度の微妙な確信があった。これが現代戦であればただの監視用ドローンに過ぎないのだろうが。
「エルメロイ教室が最古参、スヴィン・グラシュエートが白騎士フィナ=ヴラド・スヴェルテンに一騎打ちを挑む!」
今時、ありえない古風な挑戦。
それを懐かしむ性格だろうか、それとも身の程知らずと侮る性格だろうか。どちらでも良い、今は少しでもプロフィールを集める情報が欲しい。
相手の性質を理解して、上手く乗せなければならないのだ。
もはやこの距離ではメレムの使い魔ではないと判っているだろう。ならば少しでも時間を稼ぎ、この場に縫い止めなければならない。出来る事ならばこの手で倒したいとすら思うのだが。
『では彼らを越えてもらおうか。そうすれば私と愛を語るに相応しい相手だと認めよう』
「それはどうも。……とはいえ、そういう意味で言ったんじゃないけどさ!」
意外な事にヴラドは匂い立つような白皙の青年だった。
少年たちを愛を語っていてもおかしくはない美貌ではある。だが黒騎士の方が『時の呪いに犯されている』という触れ込みから少年風なので、てっきり白騎士の方はもう少し年季の入った少壮の騎士というイメージだったのだ。
しかし考えてみれば、外見など死徒化した時に変わら無くなっているだろうし何なら魔術で幾らでも変えられるだろう。風聞に引きずられていたのかもしれない。
『ご主人様の元へは行かせません!』
水路への道へ至る、あちこちから現れたのは紅顔の少年たちだ。
手に細身の剣を持ち、あるいは身の丈よりも大きなハルバードを振り回してくる。いずれも死徒のパワーで振り回し、一糸乱れぬ陣形を作り上げている様に『見え』ていた。
(命令系統に違和感はない。……とはいえイメージを利用した代役と言う可能性もあるかな。不意を突く気は無くても、優秀な小姓が主人の代役を務めるのは良くある話だ)
ジャンヌ・ダルクと王太子シャルルの寸劇が有名だろうか?
暗殺を警戒して居るというよりも、相手に見抜くだけの眼力があるかを試すような場合もある。もちろん小姓が自分から代役を申し出る場合だってあるだろう。
いずれにせよ今直ぐに戦う訳でもない。
冷静に立ち回りながら、目の前の前座を片付けるべきだった。
『強いぞ、囲め!!』
「今なら判る……以前の僕が無駄な動きをして居た事が。そのレベルなら別に獣化魔術でなくとも良かったという事が……」
迫る死徒は少年たちだ。
吸血鬼化してからの年季の差もあるのだろうが、基本的にそれまでの積み上げが無い。だから才能はあっても技や立ち回りが幼く、死徒の力に任せて攻めて来るだけだ。
それは強化の度合いとしては恐ろしい程だが、あくまでスピードとパワーの差でしかない。そしてかつての自分がそうであるように、優れた強化魔術の使い手でも可能な動きしかしていないのだ。
「少年吸血鬼の騎士団か……確かにこの動きで連携して来るのは凄いよ。でもグレイたんの動きやアッドの力に比べれば鋭さも恐ろしさも無い」
スヴィンはグレイと何度も共闘したし、練習の為に手合わせした事もある。
原液に触れて死徒化しかけた時は、狂乱した彼女と本気で戦ったこともあった。その上で強化の得意な彼女の動き程ではないと思うのだ。
そしてアッドが持つ特殊性を存分に振い、武器の形状を活かし魔力を奪う戦う方に比べれば彼らなど大したことはない。
『駄目だ。全員で掛かれ!』
『こんなやつに総掛かりか!? 仕方ない』
(必要なのは一体一体の動きじゃない。全体の連携で逃げられないように囲まれない事だ、そしてこちらからの動きはソレを助長する事)
スヴィンは幾つかの動きを使い分けていた。
獣のしなやかな動きで即座に加速。しかし一歩の跳躍が10m近い場合もあれば、僅か30cmでステップを刻むときもある。
まるで車にターボやスーパーチャージャーを積んでいるかのようだ。
ある時は高速で突っ走り、別のある時は小刻みな機動を駆けながらも即座にトップスピードを保っている。
『チッ。何人か死ね。ハーティ、ダレット、ミゲル。ボクの両脇と後ろに付け』
『了解。手近な物でペアを組もう』
死徒は既に死し、主人の為に活きているからこそ躊躇いが無い。
自滅覚悟で突っ込み、例え礼装でバラバラにされ、二度と復活できなかったとしても構いはしない。
普通なら考えない密度と速度で同時に突っ込み、スヴィンを摺り潰そうとしてきたのだ。二名がペアを組み、それが二組。合計四名を犠牲にしてきたが、もし有効ならば残りのメンバーも続くだろう。
「無駄だよ」
『やってみなくちゃ分からないさ!』
『もう一度言うよ、ご主人さまの元には行かせない!』
スヴィンはここでも冷静に対応した。
小刻みなステップで行って戻って一回転。即座にもう一回転掛けて勢いを殺さない連続回し蹴りを食らわせたのだ。
ステップは逃げる為ではなく、死徒たちを蹴った衝撃で自分の勢いを殺さない為だけに過ぎなかった。
『動きを止めたな!』
「残念。幾らでも繰り返せるよ」
スヴィンは尻尾を魔力で作り上げて巧ならバランスをとっていた。
人間には不可能な体裁き。仮に蹴りを繰り出した瞬間でも、まるで軸がブレないようにコントロールする為である。
人の体を作り変え、人間では不可能な動きを行う。さらに言えば獣人の筋肉は人間などよりも遥かに強靭なのだ。所詮は壊れても復元するからと許容力を越えて強化しているだけの死徒とは比べ物にならなかった。
「こないだの上級死徒との戦いが役に立ったかな。僕は人間や死徒の真似をする必要はない。人間の出来ることをやって、人間じゃ出来ないことをやれば良いだけだ」
クルクルと回転するような連続蹴りで突撃した四体を撃破。
決死の覚悟がまるで役に立たなかった事で、さしもの死徒たちにも乱れが出た。それでも攻めるのを止めないのは、彼らが主人の『持ち物』であるに過ぎなかった。
スヴィンも手加減などする余裕が無いので、先ほどから少年たちは無残な屍を晒していた。
「これ以上は意味がないと思いますよ。無駄使いは止めたらいかがですか? 必要ならば固有結界の詠唱くらいは待ちますが」
『無駄使い? そんなつもりはないが……それよりも。起きなさいミゲル』
『はい、ご主人様……』
せっかく集めた美少年のコレクション。
それが損壊していくというのに少しの痛痒も見せない。手に入れたら冷淡なのかと思ったがそんな様子ではなさそうだった。
クスクスと笑って小舟に寝そべる少年を抱き起すのだが……その仕草が洒落ているようで、同時に不可思議な光景であった。
「この状況で何を……いや。それ以前に、そいつはさっき確かに倒したはず!?」
「ふふふ。意味は一体、何時から私がパレードを使っていないと思っていたのかね?』
白騎士が抱き起したのは先ほど砕いたはずの少年だった。
その動きは留まることはなく、今度はハーティという少年を呼び覚まさせる。
さあ、思い出すが良い。
エルメロイ二世は固有結界パレードについて、どう説明していた? どんな固有結界であると解釈していたのだろうか。
『まさか、まさかまさか!? あなたは死霊術士!? 魔導剣士であろうとは思っていたが……」
『その通り。君は侵入してきた時から私の領域内にいたのだよ」
白騎士がパチンと指を弾くと、少年たちの死体が崩れ落ちる。
全てが血と肉になりおおせ、スライムの様に寄り集まっていった。そして主人の周りに再び騎士団として再構築されていくのである。
固有結界パレードは、死者を呼び覚まして形を与える術式。そして死者の連続召喚ではないかとエルメロイ二世は推測していたではないか!
『だが……先ほど同じと言うのは芸が無いかな? 可愛いこの子たちを辛い目に合わせるのは忍びないのでね』
「そんなご主人様。我らの生命はご主人様の物です!』
『いかようにでも使い潰し下さい!』
白騎士ヴラドは少年の騎士団を下がらせた。
しかしソレは、彼が単騎でスヴィンと戦うという事を示すわけでは無い。無論仲間を呼びよせるという意味でも、使い魔を召喚するという訳でもなかった。
固有結界パレードは死者を再構築して、無限に召喚する結界である。では……呼べる魂の限界は、何処までなのだろう?
『さて。健闘した褒美に一手踊るとしようか』
『少々、大人げないかもしれないが、ね?』
「……白騎士が二人? 双子……違う……これはまさか!?」
小舟の上に、まるで鏡写しの様にソックリな姿が二つ。
どちらもヴラドであり、微妙に違う意思の元に動く別のヴラドである。片方は少年たちが使用するのと同じ細身の剣を振るい、もう片方は手の先から血流を刃の様に飛ばして来たのであった。
剣と腕を振るえばそれだけで猛威となる。
両手から放たれた血の刃は十字を戦場に刻み、剣は衝撃波すら発生させて大地に痕を刻んで来る!
「避けられない?! なら!」
『前に出るか。良い判断だよ』
『体を震わせて衝撃波を生み出した? 器用な子だね』
スヴィンは衝撃波に突っ込んで最低限のダメージで済ませた。
血流による刃は水圧だけでも危険そうであるが、どんな効果があるか分からないのが問題だった。パレードが死者を操るのであれば、その血肉がスヴィンを拘束しかねなかった。
そして、その考えがスヴィンに一つの結論を導いていった。
「……貴方は自分を召喚したんだ。自分で自分の体を構築して、そこに分霊を封じ込めればいい」
『良く分かったね。流石はエルメロイ二世の弟子』
『エア足しもまた死者であるからね。自分自身ならば血の契約も要らないから面倒が無くていい』
手品の種は術式を事前に組み込めることだった。
魂を分ければ消耗するとしても、消耗など回復してから戦えばよい。パレードを展開した時に、その途中でしか呼べないという制限で良いだろう。
所有する血肉で体を再構築するというのであれば、本体が壊されても再構築できるという事だ。戦いにおいてこれほど利便性のある物はなかった。
『お察しの通り私は降霊術を極めている。血肉を操るネクロマンスもね』
『私が追求する不死の形は再構築。さあ……無限に再生し、分離集合を繰り返す私に抗って見せるが良い』
(くっ……なんて奴だ。でも……このくらい!)
もし事前知識や『よく似た事例』が無ければ心が居れていたかもしれない。
訓練として仮想空間で似たような敵と戦ったことがあったのだ。ソレと比べれば備えている切り札が少ないだけ安心できるとすら思えた。
師であるエルメロイ二世と、こんなことを予測して戦わせてくれたバルトメロイに感謝をしながら白騎士と向き合ったのである。
(強大な個人の霊に魔力で作った体を与え、その霊を括りつけるサーヴァント。英霊現象によく似た存在……それに比べたら宝具が無いだけ何とかなる!)
勝率が百分の一か、それとも千分の一か。
それがどれほど少なかろうと、勝てない訳じゃないさと勇気を奮い起こすのであった。
と言う訳で最終決戦前の一幕になります。
今回はお試し企画でもあるので、この戦いが終わったら終幕です。
昔の資料集から設定を拾って起こしただけの話なので、やりたいこと終えたら
整合性が付いてる間に撤収と言う感じでしょうか。
●ブラックモア
無効化結界を持つガッチャマンな鳥紳士。
特に記載はないので、コードギアスのルルーシュをモデルに変換。
なおグレイが大変な目に合ってるのは、この状況でロンゴミニアドあったら余裕な為。
また偽者の王者たるアルトルージュの同一存在とか言うネタだったら困るので
そもそもいません。
●ヴラド
特に外見の記述が無いのでエスカフローネのアレン・シェザールをモデルに。
あとは部下の美少年として竜撃隊を混ぜてます。
パレードに関しては部下の美少年軍団再生に浸かっても良いけど、自分も増やせる。
使ってる技はファイブスター物語という漫画から幾つかチョイス。
かなり無茶苦茶な相手なのですが……。
サーヴァントと真面目に戦う事を考えれば、宝具がないだけマシな状況ですね。