忍と灰と焚べる者と狩人とダンジョン 連載編 作:noanothermoom
胸にいだいた目標
或いは寝ているときに見る記憶の整理から零れ落ちるかけら
どちらにせよそれとの付き合い方を間違えれば己を苦しめる
どちらも己の中から生じるものでありながら
【ダンジョン入り口近く】
気を失ったベルを背負いながら灰と焚べる者がダンジョンの入口へと姿を現す、灰によって無茶な連続戦闘をさせられたベルは気を失い、なお戦闘を強要させようとする灰を焚べる者が止めたためホームへと帰ることにした不死者2人と人間1人。
ホームへの帰り道を進もうとしたとき「待ってください」涼しげな声がする。
灰は楽し気に、焚べる者は特に反応を見せずにその声の元へと視線を向ける、そこにいたのはアイズ・ヴァレンシュタインだった。
「なんだあんたか、俺らの後をずっとつけてたのかい?熱い視線の割にシャイなんだな」楽しげに語る灰に怪訝そうな視線を向けたアイズは「何の話です...?私は今ここであなたたちに出会ったのですよ...??」そう話が見えないと言わんばかりに疑問の声を上げる。
「...そうかい、まあそうだろうな気にするなこっちの話だ。それで何か用なのかい?まさかこんな夜更けに知り合いにあったから声をかけただけとは言わないだろう」困惑するアイズをしばらく観察した後気にするな、そう言って灰は何か用か聞く。
「彼をどうするつもりですか」アイズは先ほどまでの困惑がまるで夢であったかのような強い意志を感じさせる瞳で二人を見据える「どう、と言われてもな」反対に灰は先ほどまでのアイズのように困惑しながら返す。「なら言い方を変えましょう、彼に何をしたのですか」なお視線を強めアイズは詰問する「強くなりたいと言ったから強くするための訓練をしただけだぞ...?」灰はますます困惑の色を強くする。
「訓練?!訓練など「ミラのルカティエルです、まずは互いに落ち着くべきだと思うが?」...ッ!!」ついに怒りを爆発させようとするアイズ。
だがその鼻先を焚べる者がくじく「互いの立場を明確にすることがより良き交互理解への第一歩とルカティエルの伝説にもある通り挨拶は重要だ」思わぬところから思わぬ言葉が出たことに驚きを隠せないアイズと灰。
だがその後に続く何時も通りの焚べる者のセリフに思わずため息が漏れ、息を吸う。図らずも一呼吸置き少しは冷えた頭でアイズは尋ねる。
「彼と一体どんな関係なんですか、強くなりたいと言われたからと言って無関係の人物を鍛えるほど貴方は慈悲深い人ではないでしょう」灰と言う人物かつて戦った時感じたその在り方に間違いはないだろう、そう確信して放たれたその言葉に灰は答える「こいつはうちの新入りで俺との関係は先輩後輩だ、後輩が強くなりたいというのだ手を貸すのが先達の務めだろう」
「え...先輩?」
「ああその通りだ。で、もう行っていいかヘスティアから早く帰ってこいと言われてるからさっさと帰らないと説教を受ける羽目になる」
「え...先輩?」
「おい、おーい聞いてるか?...聞いてないか、ならこのまま放置すっか、おーい行くぞ」
「...かくして我らは出会い、うん?ああ行くのか、ならこの話の続きはまた今度だ」
その答えを聞いた途端固まるアイズ、目の前で灰が手を振っても瞬きをすることすらなくまるで人形にでもなったかのように固まりただ同じ言葉を繰り返し続ける。そんなアイズに何度か声をかけたが反応がなかった為灰は、1人ミラのルカティエルの伝説を語り続けていた焚べる者に声をかけ帰り道を急ぐ。
───アイズが正気に戻った時にはもう誰もおらずアイズはトボトボと自身のホームへと帰る羽目になった。
なんだか暖かい、それが僕の最初の思考だった。
「えっと...?僕は確かダンジョンで灰さんの問いに肯定して...。というかここどこですかあ!!!」
パチパチと薪が爆ぜる音につられて目を覚ませば見たことのない部屋に僕は寝ていた、何があったのかを思い出そうと思い出せる限り記憶をを辿ろうとするが、ダンジョンで灰さんが頭蓋骨を床に叩きつけてモンスターがすごい勢いで向かってきて...それからが思い出せない。
何か周りにヒントになる物はないかと視線を巡らせるもどれもこれも見覚えのない物ばかり...というかここは一体どこなんだ?そこまで頭が回った途端僕は絶叫していた。
「こんにちは、ベル様。私は人形、この狩人の夢で狩人様から命じられあなたのお世話をしていたものです」
「うう、なんだか汚いというか埃っぽいというかなんで僕ここで寝てたんだ?」
とりあえず落ち着いて周りを見渡す。まず目に入るのは大量の本だろう、だがこの部屋の持ち主は本に興味があるとは思えない本棚に並べられた本よりも床に山積みになっている本の方が多い。次に床にひかれている絨毯、これもきっちりと敷いてあるとは言い難い、曲がっているだけならまだしも複数の絨毯が敷いてあると言うより揉みくちゃに置かれていると言った方が近い置き方を押されている。そして最後にベッド、このベッドだけ他の家具よりもきれいで清潔だがその分部屋から浮いており、なんだか無理やりベッドを置いたような感じがする。
部屋自体もよく言えば年季を感じさせる、悪く言えば今にも壊れそうな感じで、そこらへんに置いてある本や家具にも埃が積もっている、そんな部屋に暖炉があり火が付きっぱなしになっているのだからいつ火事になってもおかしくない。本当になんで
「ダンジョンより戻ったあなたの姿を見た狩人様が怒り狂ってご自分の部屋であなたを休ませたのです」
「うわっ!!!...なんだ大きな人形か...綺麗な人形だけどこんなに大きいとちょっと怖いな。」
そうして部屋の中を見回していると1つの大きな人影いや1つの大きな人形が目に入る。
すごい、人形の中にはそれこそ何百万ヴァリウスもするようなものもあるって聞いたことがあるけれどきっとこの人形も同じぐらい高いんだろうな、そう思わせるほどしっかりと作りこまれている、着ている服も細かいところまでしっかりと作られているしサイズも大きい...いや大きすぎないか?!間違いなくこの人形立たせたら僕どころかほとんどの人より大きいぞ。
床に座るようにして置いてあるからいいけどこれが立った姿勢で置いてあったら悲鳴を上げてたと思う。細かいところまでしっかり作ってあってぱっと見は本当の人間みたいなのに2メドルはあって
「そのように褒められると照れてしまいます私に血は通っていないのですが。私が大きいのは私のモデルとなった方が背の高い方だったからです、ヤーナムに住む者らはみな大きいのです」
「とりあえずこの部屋から出てみよう...うわぁ?!あいたたた。...これ部屋というより小屋だったんだ。しかも扉をくぐると急に坂道になってるし、転んじゃったよ...」
じっと見ていると人形が動き出しそうで怖くなった僕はとりあえずこの部屋を出ることにして、扉をくぐり一歩踏み出...せなかった。足の下に何もない感覚、視界が勝手に変わっていく、転んだんだそう気が付いた時はすでに地面が目の前にあって、そのまま僕は顔をぶつけてしまった。
ぶつけた顔をさすりながら起き上がり振り向くと、先ほど出てきた扉の上に何かある。そのまま見上げると屋根があり、さっきまでいたところが部屋でなく小屋であることに僕は気が付く。なんでこの小屋は出口からいきなり坂道になっているんだろう。
「大丈夫ですかベル様、この狩人の隠れ家はあまり住むのに適しているとは言えないのです、気を付けてくださいね」
「うわぁ...あれなんだろう霧の中に何か柱みたいなのが立ってるのかな?...ってこれお墓?こっちのもそっちのも、まさかこの庭の石全部お墓?」
振り返って小屋を見上げていた僕はいつまでも見上げていてもしょうがないと周りを見渡す、しかし目に入るのは霧と遠くに見える柱のような何か。それをよく見ようと庭を囲む柵ぎりぎりまで近づこうとして...足元にある石がお墓だと気が付いた。周りをよく見てみればあっちっこっちにたくさん同じような石が置いてある、ここ墓場なの?!
「この墓石はかつてこの夢を訪れた狩人様達の名残です、もうこの墓石が増えることもないのでしょう」
「と、とりあえずこっちの方に行こう。ってこっちもお墓だらけじゃないか、うん?あの扉は見覚えがあるような...。
そうだホームの地下にあった扉の一つだ、なんでこんな庭の真ん中にぽつんと立っているんだろう。反対側から覗いても、うん何もないこれじゃあ開いても意味がないんじゃないかな
「そこは出入口です、開けることでこの空間から出ていくことが出来ます」
...だけどこうしていても仕方がないどこかに繋がっていますように」
沢山のお墓その中で騒いでしまったことに気がとがめた僕が庭の道に従って進むと、大きな木と広い広場のようになっている空間そしてそれを取り囲むように置いてあるたくさんのお墓を見つけた。どこに行ってもお墓ばかりで気が滅入る、そう思った僕の目に見覚えのある扉が庭の真ん中に立っているのが映る。
どこかで見た扉に近づいてまじまじと見るとこれはホームの地下室にあった扉とそっくりだそう気が付く。でもなんでこんなところにホームの地下にあった扉そっくりなものが置いてあるの?大体周りを見渡すまでもない広い空間にポツンと扉だけあっても何にもならない、そう思っていた僕だけどこのままいてもしょうがないとりあえず扉を開いてみようそう決めた...何か起きるといいけど、何も起きなかったらあの小屋に戻ろうと決めて僕は扉をくぐった。
その背後で何かが聞こえた気がするけれど気のせいだろう
「さようならお客様、貴方の目覚めが有意なものでありますように」
扉をくぐると同時に僕を襲ったのは馬車に乗っていて酔った時の感覚を何十倍にもしたような感覚、目を開けていられない、足を踏ん張っていられない、地面に倒れてしまう、いやそもそも地面はどこだ?僕は今本当に倒れているのか?落ちているんじゃないか?そんな疑問が頭の中を回り...気が付くと僕はホームの地下に立っていた。
「まったく信じられないよ、ボクは灰君たちが帰ってきたと聞いてバイトの打ち上げを早く済ませてきたっていうのに君たちは
ボクが怒っているのは封印してあった
あんなもの使えば強くなる前にモンスターにひき肉にされるなんてこと分かり切っていただろうに、ベル君が死んでいないのは全く奇跡と言って「神様!!」...ベル君!!」
「僕一体何があったのかさっぱり覚えてないんですけど、何があったんですか」
眩暈がまだ引いてないせいでグラグラする視界に神様がいる、ひどく怒っている様子で何か喋っている神様に話しかけると神様がこちらに振り返っって笑顔を見せてくれる。
本当に何があったんですか?!
それからはすごかった、バタバタと足音がしたかと思えば九郎さんと狼さんに抱き着かれていて沢山お説教をされた。神様も心配したんだからねと今にも泣きそうな顔で言ってくるからごめんなさいと僕はただ謝ることしかできなかった。
「...えっと、貴方たちは一体...?」
「まあとりあえず自己紹介をするべきだろう。私は月の狩人、気軽に狩人でいい」
「俺はもう自己紹介した...そんな睨むなよちょっとしたジョークじゃん。俺は火のない灰、灰でいいぜ」
「じゃああなたは焚べる者さん?」
「...ミラのルカティエルです」
「...こいつの言うことは気にしなくていい、お前が言うとおりこいつは絶望を焚べる者、焚べる者とでも呼べばいい」
ひと段落すると、灰さんの隣に二人見たことのない人が立っていた。誰か尋ねようとすると帽子をかぶった方の人が自己紹介をしてくれた、そのまま灰さんに手を振り自己紹介を促す。自己紹介はもうしたからと言おうとした灰さんは凄い目つきで睨みつけられて自己紹介をする、狩人さんに灰さんなら最後の一人は焚べる者さん────そう思って尋ねると返ってきたのはミラのルカティエルさん...?
狩人さんがため息をついて補足してくれる、やっぱり焚べる者さんでいいらしい。
「じゃあダンジョンから戻ってきたんですね、でもいつ戻ってきたんですか」
「数日前には地上に帰ってきていたんだが、
おまけにこの阿呆が諸々の道具を持っていたせいで、放置して帰るという訳にもいかずホームに戻るのが遅れてしまったんだ。」
でもいつダンジョンから帰ってきたのか、そう思って尋ねると狩人さんが大きくため息をついて経緯を話してくれる。しかし冒険者の多くは命を懸ける仕事だから思い残すことが無いようにお金を派手に使うというのは聞いていたけどこんなにひどいお金の使い方は初めて聞く。
「そんなことより、なんだって君はこんな無茶をしたんだい」
「僕は...強くなりたいんです、強くなって僕の夢に胸を張っていられる自分になりたい。そのためなら何度だって無茶をします」
僕たちの間に流れた微妙な空気を換える様に神様が僕にどうして無茶をしたのかを尋ねる。確かに僕のしたことは賢い行いじゃない、でももし灰さんの問いに答える前に戻れたとしても僕は同じことをするだろう────引き際を見極められずに一人で5層まで潜って死にかけたあの時とは違う、灰さんの問いに答えたのは僕の夢を諦めないという決意の上での行動だ────そうでなければ僕は僕の夢に胸を張れない、僕は
神様はぐむむむ...と唸りながら僕の方を見てくる、どう説得したものか考えているのだろう。だけど僕もそう簡単に僕の決意を曲げないそう目に力を入れて見返す。
「諦めよ神ヘスティア、この子どもいやベルからは強い意志を感じる。まるで初めて会った時のルカティエルのようだ」
「ルカティエル云々はさておき、俺も同意だぜヘスティア。ベルは俺の圧にも耐えて夢への第一歩を踏み出したんだ、それを受け入れてやるのが
「焚べる者君?!灰君?!」
そう神様とにらみ合っていると、焚べる者さんが神様に諦めるよう言い、それに灰さんも続く。神様は信じられないといった声を上げるが諦めるように言ったのはその二人だけではなかった。
「いつかその庇護下から飛び出し広い世界を知る、そういうものだ
「倅に敗れる、存外心地よい物よ────そう我が義父は申しておりました」
「狩人君...狼君...」
狩人さんも狼さんも僕の側についてくれる、神様からは先ほどまでの強い意志は感じられず小さくつぶやくように狩人さんと狼さんの名前を呼ぶ。
「もういいのではないのですか“へすてぃあ”様、“べる”の夢に反対しているのは御身だけですよ。それにこれだけの者らが“べる”の夢を後押ししているのです、どのような夢であったとしても決して叶えることが不可能ではないでしょう」
「九郎君まで...ならしょうがないボクもその夢を追いかけるのを反対はしないよ」
九郎さんが神様を説得してくれる、先ほどまでの覇気はなく落ち込んだ様子の神様は弱弱しい声で僕の夢を認めてくれる。
「ありがとうございます神さ「だけど、危険なことばかりするんじゃないぞ。あんまりひどいようだったらボクにだって考えがあるんだ」...考え?」
「ああそうさ、エイナ君に君達の行動を全部告げ口してやるんだ。君達み~んなお説教されればいいんだ」
夢を認めてもらったそう思ってお礼を言おうとすると力なくうなだれていた神様が顔を上げる。その目にはいたずらを思いついたような何か危ない輝きがある、そしてあんまり危ないことばかりをしているとエイナさんに告げ口をすると言われ僕だけでなく他の人たちも慌てる。
「そういえば、それほど執着する“べる”の夢とはいったい何なのです」
そんな空気を変えようとしてか九郎さんが僕の夢を聞いてくる。僕は胸を張り答える
「はい!僕の夢はダンジョンで冒険して英雄になって【
「“はあれむ”ですか、聞き覚えのない言葉ですね。狼そなたは知って「いえさっぱりです、灰らならば知っているでしょう」
九郎さんは首をかしげる、そうだ僕も【ハーレム】とは何なのか知らないんだ。ついにその意味を知れるのかと狼さんを見つめようとした途端、九郎さんの言葉を遮るように狼さんは知らないと答える、そして灰さんたちなら知っているだろうとも。
「まじか狼の野郎俺らを秒で売りやがった。...あーあれだ俺ら不死者は死ぬたびに色々忘れちまうからきっとそん時に忘れたんだ。な、焚べる者」
「ミラのルカティエルではありません」
「なんかバグってる?!」
頭を抱えるようにしていた灰さんはあっちこっちに目線をやった後、知らないと言葉を絞り出し焚べる者さんに同意を求めるが、焚べる者さんは仮面の上からでもわかるくらい呆然として同じ言葉を繰り返している。それを見た灰さんは驚愕する。
「だから奴らに呪いを、赤子の赤子そのまた先の赤子まで呪われるがいい」
「こっちもなんかおかしい!!」
灰さんをはさんで反対側に立っていた狩人さんは虚空を眺めながらぶつぶつと何かをつぶやいている、そのことに気が付いた灰さんはまたもや驚愕する。
「べ~る~く~ん~」
「なんで怒っているんですか神様ぁ~」
そんな知り合ってから短い時間しかたっていない僕にも明らかに様子がおかしいと解る灰さんたちにびっくりして、ぼうっと見ているとを神様が低い声で僕の名前を呼ぶ。
振り向きたくない、でも振り向かなくちゃいけない。
僕は振りむく、そして後悔する
怒っている、すごくすごく怒っている
怒った神様との鬼ごっこは正気を取り戻した灰さんが神様を捕まえてくれるまで続いた。
どうしてこうなったんだ
どうも皆さま
先日この小説のお気に入り数が
100を突破しました
ありがとうございます
お気に入り登録してくださった方にも、していないけど見に来てくださっている方にも楽しんでいただけるようこれからも精進していきます。
ついに書きたかった場面の一つベル君ハーレムの夢を語るが書けました
どうしても書きたかったんです
どうしても主人公勢が予想外の言葉に大混乱に陥る姿が描きたかったんです
そして見直していて気が付く空気さんがまた死んでいる
きっとこれからも空気さんはその尊い命を散らすことでしょう
所でベル君が眠りから覚めた場所、狩人の夢
その場所には啓蒙を持つ者にしか見えない文字があるとか
啓蒙を持たない人もドラッグすると文字が浮かび上がるそうです
私は特別な知恵があるから知っているんだ
それではお疲れさまでした、ありがとうございました