忍と灰と焚べる者と狩人とダンジョン 連載編   作:noanothermoom

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導き
目的へと行くために辿るべきもの
或いは先に立つ者が後のものへと残したもの
多くの者は忘れていることだが
誰による導きであるかよりも
どこへ続く導きであるのか
そのことが大切だ

己のいだく夢へと進みたいなら

カズゴウ様 誤字報告ありがとうございます

やってしまいましたね、誤字脱字ならまだしもまさかの下書き用注釈の消し忘れとは恥ずかしい
しかしながら誤字報告は読み込んでいただけている証拠と思っておりますので見つけたら報告お願いします
...いや誤字脱字をなくすのが一番いいのはわかっているんですけどね


先達の導き

 夢を見ている。

 

 夢の中で僕は生まれ育った僕の家、その寝室で横になっている。

 そしてそのベッドの隣に座っているのはもういなくなってしまった僕の唯一の家族(おじいちゃん)

 

 「ねえねえお話しして」

 夢の中の僕はおじいちゃんにねだる

 「そうだなぁ、何のお話がいい?」

 おじいちゃんは優しく微笑んで僕に聞く

 「────のお話がいい」

 ...?僕は今なんて言った?そんな僕の疑問を置いて夢は進む。

 

 「はっはっは、ベルは────の話が好きだなあ」

 おじいちゃんが笑う

 「だって一番古いお話なんでしょう」

 夢の中の僕も笑う。

 「ああそうだ、今じゃ神様だって覚えていない古い古いお話だ。だからベルお前は覚えていておくれよ」

 ?おじいちゃんどうしてそんなに悲しそうなの?そんな僕の問いかけは夢に何も影響を与えずおじいちゃんは話を始める

 

 「むかしむかし、世界には岩のようなドラゴンと大樹だけが存在した、だがある時その世界に...が...た」?おじいちゃんなんて言ったの

 

 「そうして世界には...と...が生まれ...」...おじいちゃん?

 

 「そして....は【始まりの火】より....」おじいちゃん、おじいちゃん!

 

 

 

 

 

 

 「おじいちゃん!!!」

 

 手を伸ばしたまま僕は上半身を起こして夢から覚めた。

 

 「今の夢は...?ってまた知らない所だー!!」

 

 今のは夢だと改めて気が付いた僕はその夢について考えようとする、僕がおじいちゃんと暮らしていたころはいつも眠る前おじいちゃんにお話をねだった。

 ダンジョンと冒険者の話、神様と人間の話、ほかにもたくさんのお話。

 だけど夢の中でおじいちゃんが覚えておいておくれ、そう言ったお話はよく聞こえなかった、あれは一体何の話だったんだろう。

 少しでも聞こえてきた内容を思い出そうとしていると単語だけが思い出される

 

 【始まりの火】

 

 その言葉を頼りに記憶の中のお話を思い出そうとする、だけどその前に僕の顔を風が撫でる。

 風?おかしいなここは僕の部屋(地下)のはずなら風なんて入らないのに、そう思って閉じていた眼を開くと...目に入ってきたのは一面真っ白の世界。

 

 「え...雪?!...じゃない灰かな?いや灰でもおかしいよね、なんでこんなに灰がいっぱい」

 

 驚いた僕は思わずベッドから降りて地面に降りる、軟らかい感触が僕を迎える────冷たくない?手で触ってみると僕の手を汚しながらぼろぼろとこぼれていく()()

 色からして灰だろうか、周りを見渡しても目に入るのは一面の雪景色いや灰景色?それと僕が寝ていたベッドがぽつんとあるだけ。こんな灰しかない所にベッドだけぽつんと置いてあるのもおかしいけど、こんなに灰がいっぱいあるのもおかしい。

 

 もしこれがモンスターを倒した後の残った灰ならどれだけのモンスターを倒せばいいのか見当もつかない、この灰が何かを燃やした後に残った灰なら一体どれだけ燃やし続けたならこんなにたくさんの灰が生まれるんだろう。

 そんな場違いなことを考えることが出来るほど僕には余裕があった、きっとこれは昨日と同じ、先輩たちの誰かの部屋なんだろう────昨日目を覚ました時居た部屋はあとで狩人さんの部屋だと本人から教えてもらった、狼さんと九郎さんの部屋がこんな風だとは思えない────消去法で灰さんと焚べる者さんの部屋なんだろうな、そう見当はついていたから。

 

 手についた灰を服で拭いながらどうしようか考える、狩人さんの部屋と同じならどこかに扉があるはずだけど、どこを見渡しても視界を遮るものもなく見えるのは灰だけ。当てもなく歩いていくというのは見える限り何もないこの光景からして賢い考えではないだろう。

 

 「うん?ああ起きてたのか気分はどうだ」

 

 「灰さん!!」

 

 「元気みたいだな、出口はこっちだついてきな」

 

 そう僕が悩んでいるとどこからともなく灰さんの声がする、そっちを見ると片手をあげて僕に挨拶している灰さんの姿があった。

 駆け寄る僕の体を見て元気そうだなそら遅れるなよ、そう言って迷いなく進んでいってしまう、その後に急いでついて行く。

 灰さんに遅れないようにその背を追いかけるうちに、僕はもうさっきまで考えていた夢のことを忘れていた

 

 ずんずん進んでいく灰さんについて行くと一つ不思議なことに気が付いた。灰さんは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そのはずだ。

 なのに灰さんが進んでいく方()を見ても()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 どういう事なんだろう、そう思ってどうやって僕が寝ていたベッドのところまで来たのか聞こうとすると灰さんが口を開いた。

 

 「ヘスティアのことだがな、あいつを嫌わんでやってくれ。あいつにとってお前は初めての()()()()()()だ、多少過保護にもなるってもんだ」

 

 「へ...?あ、はい分かっています英雄になるという僕の夢が困難なことも、神様が僕のことを考えてくれているからこそ反対していたというのも。それでも僕には譲ることのできないものがあっただけですから」

 

 「英雄...ね、まあ俺らが見てきた英雄サマなんてのとはきっと違うんだろうな、お前がなりたいのは。まああいつらみたいにならないようにしてやるのも先達の仕事かね」

 

 神様を嫌う?昨日神様が僕の夢に反対したことを僕が恨んでいるんじゃないかと灰さんは考えていたようだ。

 僕はもちろんそんなことはしない、僕の英雄になるという夢が厳しいものであることも、神様が反対したのが僕のことを思ってだということも僕はわかっているつもりだ、神様のその思いは嬉しいけどそれでも譲れない夢があった、それだけの話だ。

 そう僕が考えを口にすれば灰さんはぼやくようになにか呟く、あまり聞こえなかったそれになんて言ったのか聞こうとした時灰さんが急に足を止める。

 

 「ほれ、着いたぞここから外に出れる。聞きたいことだらけって顔だが俺らはまだしもお前はこんなとこで落ち着いて話が出来んだろう、ホームに帰ってからゆっくりと話をしてやる」

 

 「はい...えっとこの扉をくぐればいいんですよね」

 

 なにかあったのかと灰さんを見上げれば前を指さす灰さん、その先には地下で見た扉の一つが立っていた。狩人さんの部屋と同じように周囲に何もなく扉だけが立っている。

 その扉をくぐればホームへ帰れるんですよねそう灰さんに確認すると灰さんはうなずく。

 僕は扉に手をかけて開く、と同時にひどい眩暈とふらつきが僕を襲い────自分が立っているのか倒れているのかわからないそんな感覚────気が付けば僕と灰さんはホームの地下にいた。

 

 

 

 

 

 

 そして気が付けば目の前に神様がいる、気にはしていないと灰さんには言ったけど、こうして顔を合わせると少し気まずいものがある。

 それは神様も同じなのかいつもよりもぶっきらぼうな様子でまずは僕に座るように言おうとしたのを灰さんが遮ってお腹が空いたから朝食を食べてもいいかと聞く、そしていつの間にか隣に立っていた狩人さんに無言で頭をたたかれていた。

 何すんだ、そう灰さんが狩人さんの方を向いて睨む、狩人さんも無言で睨み返す。

 

 先ほどまでの気まずさも忘れて僕と神様が急に始まったケンカにポカンと口を開けていると、九郎さんが灰さんと狩人さんを止めて朝食を持ってきてくれる、そして促されるまま僕は椅子に座っていた。

 

 「「「ごちそうさまでした」」」

 

 三人の声────僕、九郎さん、神様────が重なり朝食が終わった。

 朝食の途中で気が付いたが、狼さんと焚べる者さんは先に食べていたようで部屋の隅で待っていた、そして灰さんと狩人さんは食べ終わっても無言のままだった────ところでヘルムとマスクを取らずにどうやって朝食を食べたのだろう、食卓に同席していた僕でもわからなかった。

 

 「...朝食も終わったことだし、話を始めようかベル君、ボクも女神だ一度言った言葉を曲げるような真似はしない。君の夢を諦めろとは言わないだがその夢を外で言うんじゃないよ、ボクにだって外聞というものがあるんだ。」

 

 そして神様が僕に声をかけ話が始まる、どうやら昨日言ったように僕の夢を諦めさせることはしないようだ、だけど僕の夢を外で言ってはいけないとは一体?

 そう僕が首をかしげていると神様の言葉を聞いて狩人さんが今更気にするような外聞があるとは思えないがな、そう小さくつぶやく。それを聞き逃さなかった神様が狩人さんの方に振り向き何か言ったかい?そう問い詰める、怖い。

 

 「神様外で言うなって「分かったかい」はい」

 

 神様が外で言うなというのなら神様は【ハーレム】について知っているのだろうか、怖い様子の神様にそのことを聞く恐怖と未だに何も知らない【ハーレム】についての情報どちらが重いか、僕は少し悩んだ後外で言うなと言うならホームの中ならいいだろう、そう思い神様に【ハーレム】について聞こうとする。

 しかし僕の言葉を塗りつぶすように放たれた神様の言葉の圧に負けて返事をしていた。とても怖い。

 

 

 

 

 

 

 「話はこれだけじゃないんだ。ベル君、君は強くなりたいと言っていたね。ならこのファミリアが誇る眷族に鍛えてもらうのが早いだろう」

 

 「つまり俺らがベルのことを鍛えてやるってことだ、おっと勘違いするなよ昨日お前がした生きるか死ぬかそんなのじゃない。いわゆる()()()()()()()()みたいに稽古をつけてやったり、ダンジョンでの色々を教えてやろうって話だ」

 

 「...途中で話を盗られたけどそういうことだよ。人格は決して褒められたものじゃないけど、その戦闘能力はオラリオでも十本指にすら入るような冒険者たちだ。きっと強くなれるよ」

 

 一度咳払いをした後神様は明るい声で僕に語り掛けてくる、先輩たちに鍛えてもらうことが強くなるための近道だと言いたいらしい。その言葉に同意するけれど、昨日の気が狂ったような戦闘を思うと顔が引きつる、あれは僕の夢を諦めない意志だなんて格好つけたけど毎日やれと言われたら流石に無理だ。

 僕がそう思っていることに気づかれたようで、話を途中で奪った灰さんが普通のファミリアと同じような方法だと言う。

 話を奪い返した神様はきっと強くなれると言う、それはその通りだと思いますけどその前に不安になるようなことを言わないでくれますか。

 

 「まあ私たちが人格破綻者なのは事実だが、強いのもまた事実だ。教えを受けるだけ受ければいい、その中から自分に合うものを探し身に着けていけ」

 

 「...はい、お願いします」

 

 狩人さんが教わったこと全部を覚える必要はない必要なことだけを身につければいい、と言うがそのことよりその前のことの方が気になります。でもそんなことを言う必要もないしとりあえずお願いしますと挨拶をする。

 

 「とはいえ、昨日のこともあって灰君を最初に持ってくると言うのも不安だ、今日焚べる者君には頼みたいことがある...」

 

 「という訳で今日は私がお前を指導しよう、ベル・クラネル」

 

 すると神様が灰さんを僕の指導に付けることに難色を示す、まあ僕も昨日のことがあってすぐお願いしますとは言いにくい、そして焚べる者さんには頼みたいことがあるらしい。

 なら今日僕を指導してくれるのは...と狩人さんを見るとこちらに手を差し出しながら今日の指導者は自分だと伝えてくる。

 

 

 

 

 

 「まずはギルドへ行く。昨日のこともある、何かが起きたとき時間がかかっても正しい情報が知りたければギルドで情報を集めろ、逆に正確性が低くとも時間がない時は酒場などで情報を集めるべきだ」

 

 「昨日のというと灰さんが使った()()ですよね?」

 

 「その通りだ、あれは効果中ずっと範囲内のモンスターを呼び集め続ける、お前が生きている以上モンスターはすべて狩りつくしたはずだが、ギルドがそう判断するかは別の話だ。

 

 ロキ・ファミリアの対応も少しばかり気になる、もし下から出てきたモンスターのせいだと思われたなら、被害の責任を取らされるのを避けるためにダンジョンの異変がないか確認が終わるまでダンジョンに入ることが出来なくなるかもしれないからな。もしそうなったらどこか訓練できるような場所を探す必要がある」

 

 朝食とその後の話し合い、それが終わった後狩人さんと共にホームを出る。

 最初に狩人さんがギルドで昨日の出来事について情報を集めると言う、昨日と言えば灰さんがダンジョンで使ったモンスター寄せの件だろうか、今更ながらあんなものを使うなんて正気だとは思えない。そう思っていると狩人さんから下の階層から登ってきたミノタウロスのせいだと思われるかもしれない、そういわれて罪悪感を感じる。モンスターの移動がまだ終わっていないとギルドが判断すればダンジョンに入れないかもしれない、もしそうなったらどこか適当な場所を探さなければならないとも。

 

 

 

 

 

 

 「だから俺たちはそんなことが聞きてえんじゃねえんだよ、いったい何があったのかが知りてえんだ」

 

 「ですからその件についてはただいま調査中でして」

 

 「ふざけんな」「そうだ、ギルドが知らねえなら誰が知ってんだ」「ロキ・ファミリアはどういってんだ」

 

 「ロキ・ファミリアについては只今あちら方との交渉中でして」

 

 「昨日()()()()が戻ってきたって話もあるんだ」

 

 「その件につきましては...」

 

 

 ギルドにつくと外にまで人が溢れていて口々に叫んでいる、その様子に僕は少しひるむが狩人さんは全く気にせずに進んでいく。

 人混みの中を強引に押し入り、無理やり進んでいく狩人さんに怒り、睨む人もいるけれどそれが狩人さんだと気が付くと距離を取ろうとしていく。その後を僕もついて行こうとするけれどすぐに戻っていく人波に呑まれて前に進めない。

 

 「大丈夫か」

 

 「!あなたは、あの時はありがとうございました」

 

 「無事に地上に戻ってきてたようで俺らも安心したよ」

 

 そうしてもがいていると誰かから後ろに引っ張られて人混みから抜けでる、かけられた言葉にそっちを見るとそこにはダンジョンで出会ったパーティのリーダーさんがいた。感謝の気持ちを口にするとリーダーさんもまた安心したと口にする。

 

 「すごい人ですね」

 

 「詳しい話は俺も知らないんだがダンジョン上層ですごい数のモンスターを見かけたとかでな、だけど噂ばかりが先に来ていったい何があったのか誰も知らないんだ、おまけにこの件にあんたのとこのファミリアが関わっているなんて噂まである。みんな何が起きたのか知りたくてしょうがないんだよ」

 

 「そうなんですね、...すごい数のモンスターって誰かそれに襲われたりしたんですか?」

 

 「いや今のところ誰かが怪我をしたって話は聞いてないな、ほらロキ・ファミリアの遠征部隊が戻ってきてただろそれでほとんどの奴はずっとダンジョンに潜ってなかったそうだ。モンスターについてもギルドからの依頼でダンジョンに潜っていた冒険者が遠目に見ただけらしい」

 

 せっかく助けてもらったんだからもう一度あの人混みの中に戻っていくのはさすがに勘弁したい、そう思ってリーダーさんと話をする。リーダーさんが言うには昨日の夜ダンジョン上層ですごい数のモンスターが一定の方向へ移動していたのが目撃されたらしい、上層の比較的弱いモンスターたちとは言えモンスターの大移動だ、何かあったんじゃないかとギルドの皆さんも冒険者の皆さんも大慌てらしい。...すいませんそれ僕と灰さんの所為です、とは流石に言えない。

 代わりに誰か襲われたりしていないか聞くと、どうやら遠征部隊が起こすモンスターの大移動から逃れるためにほとんどの人はダンジョンに潜っていなかったらしい。とりあえず巻き込まれた人がいないと聞いて僕は安心する。

 

 「ベル見てきたがダンジョンに入るのは自己責任というのがギルドの決定のようだ上層に行くぞ。...おまえは焚べる者の知り合いだったか」

 

 「昨日僕をダンジョンで助けてくれたんです」

 

 「そうかなら先達として私からも礼を言おう」

 

 「礼なんて、俺たちは人として当然のことをしたまでで、気にしないでください」

 

 ギルドからあふれている人たちを見ながらリーダーさんと話をしていると狩人さんが戻ってきてダンジョンへは入れるから上層で討伐をすると僕に声をかける。そのあと狩人さんはリーダーさんを見て少し固まった後、焚べる者と一緒にいるのを見たことがあるとそうつぶやく。

 

 僕がダンジョンで助けてもらったことを言うと狩人さんはリーダーさんにお辞儀をしてお礼を口にする、冒険者とは命と名誉を秤にかける仕事、ダンジョンでは何があっても自己責任だからこそ助けられた以上その恩はしっかりと返す必要があるとも口にする。するとリーダーさんは照れたように手を振りながらそんな大層なことをしたつもりはありませんってと口にする。

 

 かっこいい、自分がしたことを無闇に誇らない確かな強者の空気がするそう僕がしびれているといつまでもこうしているわけにはいかない、そう狩人さんが言い僕たちはリーダーさんに別れの挨拶をしてダンジョンへと向かった。

 

 

 

 

 

「...」

 

「狩人さん?どうかしたんですか」

 

「いや...何でもない、まずはベルお前がどれだけ動けるのか見たい、まずはいつものようにモンスターを狩れ」

 

「分かりました」

 

 ダンジョンの入口────普段なら中に入る人と中から出てくる人でごった返しているそこは今僕たち以外の姿はない。ほとんどの人はダンジョンに入ることを断念したのだろう、いつも通っている場所のいつもと違う姿に僕が少し緊張していると狩人さんが虚空を見つめているのに気が付く。

 どうかしたのだろうかまさか緊張しているわけでもないだろうけど、そう思い聞いてみると何でもない、そう狩人さんは返事をしてまずはいつものようにモンスターと戦ってみろと言いダンジョンの中に入っていく、僕もその後ろについて行きながらモンスターを探し始める。

 

 「どうでしたか僕の戦いは」

 

 「...お前に戦い方を教えたのは狼だったな?」

 

 「はい僕に色々教えてくれました。それが何か?」

 

 「いや、ならばお前に最初に教えるのはこっちの方がいいかと思っただけだ」

 

 ダンジョン一層のとある部屋、僕はモンスターとの戦闘に勝利して戦いを見ていた狩人さんにどうだったか聞く。わずかな間の後狩人さんは僕に戦い方を教えてくれたのは狼さんだったなと確認してくる、その通り僕に戦い方を教えてくれたのは狼さんだ何か問題でもあっただろうか。そう思い聞くと狩人さんは何でもないと言いながら軽く頭を振り、見ておけ、そう言って新しく生まれたゴブリンに向かっていく。

 

 狩人さんとゴブリンの間が縮まっていく、狩人さんは何もせずにただ歩いている。

 

 ゴブリンが狩人さんに気付いたようで狩人さんへ突っ込んでくる、狩人さんは何もせず歩いている。

 

 ゴブリンが腕を振り上げる、狩人さんは何もせず歩いている。

 

 ゴブリンが腕を振り下ろし────狩人さんが消えた。

 

 「えっ」「ぐきゃ?」

 

 僕とゴブリンが困惑の声を上げる、ゴブリンは目の前にいた狩人さんがいきなり消えたことで。

 僕はゴブリンの前にいたはずの狩人さんがゴブリンの後ろに現れたことで。

 

 「これがヤーナムの狩人が獣と戦うために編み出した走法。通称【ヤーナムステップ】だ」

 

 そのままゴブリンを背後からの一撃で叩き潰した狩人さんはいつの間にか僕の隣に立っていて今何が起きたのかを解説してくれる。

 

 「ヤーナムステップ...?」

 

 「その通りだヤーナムの狩りにおいて鎧や盾など役に立たない、獣の腕力の前には紙切れのようなものだ。だからこそ始まりの狩人は鎧を纏わず軽装で獣の腕を掻い潜り獣を狩る(すべ)を見出した、その基本だ。おまえもまた強固な鎧を纏うことなく戦う身だ、ならばこれを覚えておいて損はない、まずは足を開いて...」

 

 

 僕が混乱と共に辛うじて口にしたそれを聞き狩人さんは満足そうにする、そうして今度は僕に真似をするように言ってゆっくりとその動きを僕に見せ、僕もそれをマネする。

 神様と先輩たちによって与えられた強くなるための機会無駄にはしないぞ、そう胸に誓って。

 

 

 

 

 

【ヘスティア・ファミリアホーム廃教会 ベルたちが出て行ったあと】

 

 

 

 

 

 

 

 話は【豊穣の女主人】での宴会が終わりロキ・ファミリアの面々が拠点である【黄昏の館】へ帰ってきた時まで遡る、ラウルは主神であるロキより呼び出されていた。

 ロキの居室、その扉をノックしラウルは声をかける。しばらくの間の後「入ってええで」と言うロキの声に促され入室するとそこには部屋の主であるロキと団長のフィンがいた。

 

 「とりあえず来てほしいって聞いたんですけど何か用っすかね」

 ロキだけでなく団長までいる、そのことに嫌な予感がしていたラウルであるがまずは何故自身を呼んだのかを尋ねる。

 

 「先ほどの【豊穣の女主人】で起きたベートと狩人の喧嘩については知っているね」

 フィンが口にしたのはロキ・ファミリアの幹部の一人ベートとヘスティア・ファミリアの眷族の一人狩人の喧嘩の件

 「ええまあその時俺は席を外していて直接見ていたわけじゃないですけど、ミアの女将さんに叩かれて仲裁されたって聞いてるっす」トイレに行っていて帰ってきたらベートは縛り上げられているわ、狩人がいるわで驚いた光景を思い出しながら答えるラウルにフィンは頷く。

 「その通りや、幸い被害はぼこぼこにされたベートだけで済んだんやが、ファミリアとしてはそれで済ますわけにはいかんのや」それを見ていたロキが口を開く

 

 「まさかヘスティア・ファミリアと戦争遊戯(ウォーゲーム)でも始めるつもりっすか、冗談きついっすよ」その言葉にまさかヘスティア・ファミリアと事を構えるのかと思いラウルは止めようとするがロキより厳しい突込みが返ってくる

 「ンなわけあるかい、むしろその逆やあのドちびン所と要らん諍い起こさんように詫び状を持ってくんや」

 「じゃあもっていけばいいじゃないっすか」主神であるロキがそう決め、団長であるフィンもそれに賛成しているならすればいい、思ったことをそのまま口にするラウルだがその提案は難しい顔をしたフィンに否定される

 

 「話はそう簡単じゃないんだ、今回の件はおおよそこちら(ロキ・ファミリア)の落ち度だが喧嘩を売ってきたのはあちら(ヘスティア・ファミリア)だ。そのまま詫びの手紙を出せば()が下の相手に下手に出すぎだと嘲笑されることになる、それはロキ・ファミリアとしては看過しがたい事態だ。

 ただでさえ未発見のモンスターの情報を持ち帰ったとはいえ実質遠征は失敗に終わったんだもうすぐ【神の宴】もある、神々に話題の種を提供する必要はない」

 

 「ややこしいんすね、それであらためてなんすけどなんで俺が呼ばれたんですかね」()だとかが出てきた時点で自分が判断する領域ではない、そう考えラウルはなぜ自分が呼ばれたかが理解できず入室した時と同じ疑問を再び口にする。

 「うちらが事を荒立てたくないのと同じでドチビの所もうちと事を構えたいわけやない、せやからうちからはうちとフィン(主神と団長)の連名の詫び状を眷族一人が持って行って、あっちはそれをドチビと眷族で受け取る。

 うちらからはうちとフィンが直接出向かんことで下手に出とるわけやないと言うことを、あっちからは主神と眷族で受け取ることでうちらのことを軽んじとるわけやないと示すことで合意したんや」

 

 その言葉を聞いたとき嫌な感じがラウルを襲った、そして逃げ出そうとしたラウルはロキとフィンに捕らえられ洗の...もとい説得され廃教会へと手紙を運ぶことになったのだった。

 

 

 しかしヘスティア・ファミリアのホームである廃教会に足を踏み入れ、そこで待っていた人物を見た途端。ラウル・ノールドは団長フィンの口車に乗せられてここまで足を運んだことを早くも後悔していた。

 

 

 

 

 廃教会へと入ったラウルを迎えたのはヘスティアとミラのルカティエルであった。正直先日もめ事を起こした狩人が受け取り人になることはないだろう、ならば残りは灰、ルカティエル、狼、九郎だ。まともな二人にあたる可能性は二分の一だと考えていたがその期待はあっさり打ち砕かれた。

 寄りにもよって何故ミラのルカティエルなのか、せめて狼だろう、そう考えるが実際何かを言うことはない。

 

 「ロキ・ファミリア団員、ラウル・ノールドです」

 「ヘスティア・ファミリア、主神ヘスティアだよ」

 「ヘスティア・ファミリア、団員ミラのルカティエルです...」

 

 とりあえず自己紹介をする、相手が自分のことを知っているかどうかはこの際重要ではない、自分の立場を明確にしてこの手紙が手打ちの手紙であると証明するためのものだ。

 そんなラウルの思考を無視したかのように相手がミラのルカティエル(偽名)を名乗る。

 こっちは団長みたいに腹芸が得意じゃないんだいったい何のつもりなんだ、そう思うが何かを言う前に仕事を終わりにしてしまえばいいそう、思いなおし仕事を続ける。

 

 「これがこちらからの手紙です」

 「確かに受け取ったよ、これで今回の件については終わりだ」

 

 ラウルは運んできた手紙────内容は色々あったけどまあなかったことにしようぜというものだ────を渡しヘスティアがそれを受け取る。

 ラウルとしてはその隣に座っているルカティエルに例えば手打ちの場所で仮面を被ってんじゃねーよだとか、ミラのルカティエルは偽名だろとか、武器ぐらい手放して来いよだとか、突っ込みたいことが多すぎて何から言えばいいかわからなくなっていたが、仕事を終えた以上ラウルはルカティエルに対してはオラリオの常識を適応する────すなわち見るな、聞くな、関わるなである。

 とにもかくにも仕事が終わった以上長居する気はない、別れの挨拶もそこそこにラウルは廃教会を後にする。

 拠点に帰ると新しくダンジョン内でモンスターの大移動が行われた形跡があるとかで、終わったはずのミノタウロスの件について頭を悩ませている団長たちが待ち受けていて、あちらこちらへのメッセンジャーとしてこき使われるとは知らず。

 

 




どうも皆さま

段々と後書きに書くことが思いつかなくなってきた私です
まあ後書きなんて見ない人は飛ばすでしょうからなくてもいいと思うんですがね
それでも本編を書き終わった解放感から脳死で書いていくのが楽しいので
お暇な方はお付き合いください

色々伏線を撒く回です
どうなっているのと思われる方は気長にお付き合いいただければ
いつかは明らかになるんじゃないですかね私が忘れない限り

色々書いたり見たりして三千字は短いんじゃないか?と思ってとりあえず切りのいいとこまで書いた結果がこれです
私文章は長ければ長いほど楽しい時間が続くので嬉しいタイプなんですがどうでしょうね
とりあえずこれからは6000字~8000字ぐらいを目安に書いていきましょうか

それではお疲れさまでした
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