忍と灰と焚べる者と狩人とダンジョン 連載編   作:noanothermoom

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出会い

初めて会うこと或いは偶然に会うこと

人は生れ落ちてから死ぬまでの間出会いに満ちた生を送る
それは人生を鮮やかに彩り故に未だ見ぬ出会いを求める者も少なくない

新たなる出会いを求める姿に人と神の違いはない
その最たるものは神が天界より地上に降りてくることだろう

...だが幾ら何でもダンジョンの中にまで出会いを求めるのは賢い行動だとは言えないだろう



新たな出会い

 「...という訳なんですけど、何かいい解決方法ってありますか?」

 

 「...」

 

 場所はホームの地下室。時間は夕食が終わった後。

 この所、灰さん達がそれぞれの用事で忙しくて、ばらばらに食事をとったり、そもそもホームに帰ってこなかったり。数日前まで賑やかな食事をしていた分、寂しい時間が流れていた地下室。

 

 だが今日は用事に目途がついたとかで、灰さん達がみんな帰ってきて、久しぶりに賑やかな時間が流れていた。

 そんな中僕は、ここの所ずっと抱えていた、「魔石を入れている袋がすぐ一杯になるから満足いくまで戦えない」という悩みを灰さん達に相談する。

 しかし返ってきたのは、困ったような唸り声。

 

 「“べる”殿が使っている袋というのは、どうなのでしょう。普通の冒険者が使っているものと似たようなものなのでしょうか」

 

 「ええ。ギルドでもらえる普通の奴なんですけど。

 ...そうだ灰さん達は深層にずっと潜って魔石を集めているんですよね?そういう時はどうしているんですか?」

 

 「あー、その...だな、俺らはソウルの業ってのがあってだな。ややこしい説明を抜きにすると、幾らでも荷物が持てるんだ」

 

 「荷物が幾らでも?!凄い!!灰さんそれって僕でも使えるようになりますか?」

 

 「いやー無理じゃないか?オラリオで、俺らの他にこれを使えるようになった奴なんて、見たことが無いからな。

 ...それに神によっては絶対に許さない類の業だったりするし

 

 初めに喋りだしたのは九郎さん。

 僕が使っている袋について聞くので、荷物の中から引っ張り出す。ギルドだとか雑貨屋で買えるごくごく普通の麻袋だ。

 「ふむ」と言いながら袋を見つめている九郎さんと一緒に、袋を見つめていると、ふと閃いた。

 

 灰さん達は僕よりずっとダンジョンの奥(ダンジョン深層)まで潜っている。そしてダンジョンの深層で長い間狩りをしている。当然得られる魔石も、僕が上層で拾っている量とは比べ物にならない量のはず。

 なら、何か沢山魔石を運べるような手段があって、それを使っているのかと思い聞いてみる。どうやら灰さんは【ソウルの業】というのを使っているらしい。

 

 【ソウルの業】?

 どこかで聞いたぞ?どこだったっけ。そうだ、神様と出会った僕がオラリオに来た初めての日。

 あの時にこのホーム(【廃教会】)について神様が説明していた時に出てきた言葉だ。

 次元を曲げてだとかなんとか言っていた気がするけれど、幾らでも荷物が持てる?!

 すごいスキルだ。

 僕でも使えるようになるか聞いてみたけれど、普通の人間が使うには大分難しいらしい。...というかさっき灰さん小声でとんでもないこと言っていませんでしたか?!

 灰さんの言葉を追求しようとするも、「まあ、俺らにしてみればご愛敬みたいなもんよ」と流されてしまう。

 

 「大体、俺らも神を嫌っているが、神の方にも俺らの持っている()を無茶苦茶嫌っている奴は少なくないしな。

 お前のナイフを打ったヘファイストスもそうだ。昔狩人の武器を見てひっくり返ってな。それ以来「うちの子にそんなもの見せないで」って出禁になって

 「貴様...その話は今関係ないだろうが」」

 

 「まあまあ。今は“べる”殿の悩みを聞いておるのですから、そうケンカをせずに。」

 

 灰さんは、僕の荷物の中にあるヘスティア・ナイフを指さし、笑いながらしゃべる。

 その言葉に、狩人さんは灰さんを睨みつける。あわやケンカが始まりそうになるが、それを九郎さんが仲裁する。

 

 神様の友神(ヘファイストス様)

 灰さん達曰くオラリオにいる、いやこの地上に降りてきたほとんどの神様の中でも、上位に入る相当の神格者(人格者)らしい。

 そんな神様に出禁にされるって一体何があったのだろうか。...灰さんだって出禁にまでなっていないのに。

 僕が視線を向けると、狩人さんは言いにくそうに顔を帽子で隠した後、話し始める。

 

 「...私の武器はその、形容するのに、呪われただとか、冒涜的なだとかが付くようなものが多くてな。

 鍛冶師の中でも感性の強い者らが見れば、引きずり込まれかねない...らしい。それで眷族にあと一歩で実害が出そうになってな。まあその後の私の対応もまずかったのだが、ひどく怒らせてしまって。それ以来近寄るなと禁じられているのだ」

 

 狩人さんの武器。

 灰さんのコレクションの中にも恐ろしい武器は沢山ある。前に一通り触らせてもらった時に、「これも触るか?」と渡されそうになって「絶対嫌です」と拒否した物もあった。でもその時の物なんて、狩人さんの使っている武器と比べれば、ごくごく普通の武器と言っても良い物だ。

 狩人さんの武器は、それこそおどろおどろしいオーラを纏っているというか、あれが置いてある部屋で寝たらひどい悪夢を見そうなものだ。

 よくあれを使う気になるな、なんて他の冒険者さんたちが話していたのを聞いたことがあるけれど、全面的に同意する。

 

 閑話休題。

 灰さん達がケンカを始める前に、話を元に戻そうと九郎さんとアイコンタクトをする。

 

 「背負い袋を大きいものにしたり、袋を多く持ったりするのはどうなのです?」

 

 「う~ん。それも考えたんですけど、戦闘の邪魔になりそうで」

 

 九郎さんはバッグを新しいものにしたり、袋自体をたくさん持つことを提案するが、戦闘の邪魔になりそうだと考えるとどうしても...と僕はその提案に首を振る。

 灰さんも「武器ならともかく、装備品は詳しくないからな。さてどうしたものか」と考え込む。

  

 「ならば適任者に相談するべきだろう」

 

 そうして僕たちがうんうん唸りながら、良案が無いか考えていると、焚べる者さんが呆れたような口調で語る。

 

 「「「「...適任者?」」」」

 

 

 

 

 

 「...という訳なんです。すいません、こんなことまで相談してしまって」

 

 「...ええ、まずは誤解を解いておきましょうか。私はヘスティア・ファミリアの担当アドバイザー。つまり、何か困った事があったりしたら、どんなことでもいいので相談してくれていいんですよ。

 ...そっちの方が仕事が結果的に減りそうだし。

 しかし得られる魔石の量が多すぎるなんてね、ベル君もそんなこと言うくらい成長したのね。っと分かりましたこちらでサポーターの募集をかけておきますね。

 それにベル君の装備については、私としても気になる所なんです」

 

 そんな会話をした翌日。ギルドでエイナさんに事情を説明して、助言を求める。

 昨日、焚べる者さんの言葉を聞いた灰さん達は、「その通りだ」とエイナさんに相談することに賛成していた。しかし、ギルドの職員であるエイナさんに、こんなこと(装備について)まで相談して仕事の邪魔にならないんだろうか、と思いながら話したところ、むしろ嬉しそうな反応が返ってきた。

 エイナさんはゆっくりと僕に教える様に語る。

 むしろそういう悩みを解決するのが担当アドバイザーの仕事だと、決して何か問題が起きた時に、その対応をするのが仕事ではないと。妙に実感のこもった言葉に、これまで灰さん達がいろいろ起こしてきた問題の対応をしてきたんだろうなあ、とエイナさんに同情する。

 

 エイナさんの話は続く。

 僕の装備は、オラリオに来て二日目に狼さんに買ってもらった物。

 ナイフこそ新しい物(ヘスティア・ナイフ)になったけど、それ以外はずっと同じものを使っている。当然日々の手入れや整備は欠かしていないが、それでも段々へたって来る。そして【怪物祭】の後、灰さん達との訓練によって、へたってきたを通り越してボロボロになっている。

 僕にとって敵の攻撃というのは、基本的に避ける物だから、防具の痛みについてそれほど気にしてはいなかった。だけど周囲、特にエイナさんにとっては、そうも行かないらしい。

 

 防具を新しくしていないのは、僕が冒険者になって間がないルーキーだから。

 だけどそのルーキーが明らかに、これまで無いくらいボロボロの装備をしていたならどうだろうか。

 普通のファミリアなら、冒険者になった以上装備の不備をそのままにして起きた出来事は自己責任、と断じられるだろう。

 だけどとっても評判が悪いファミリア(ヘスティア・ファミリア)なら?

 あそこのファミリアはルーキーのフォローもしないファミリアだ、だとかあそこのファミリアはルーキーを虐めている、なんて悪評が立つだろう。そうなれば担当アドバイザーは何をしているんだ、という話になる。実際の所、ファミリア内について、ギルドは干渉出来ることは限られている。しかし、助言するだとか、何か悩みが無いか聞くだとか、出来ることはあったはずなのに何もしないままというのは、職務怠慢と言われてしまう。

 

 オラリオに来たばかりの僕なら、よく考えずに僕のファミリアはそんな所ではないと否定しただろう。

 というかエイナさんと初めて会った時に、「僕はまだしも、神様や先輩を悪く言われる筋合いはない」とエイナさんに反論していた。だけどオラリオで一ヶ月も冒険者をしていれば、僕のファミリア(ヘスティア・ファミリア)がどういう扱いなのか分かる。

 ...うん、どう考えても何も知らない若者が入るべきファミリアじゃない。あの時はエイナさんに怒ってしまったけれど、こうして時間が経ってから考えると、エイナさんが言っていたことは本当に正論だった。...ごめんなさいエイナさん。

 

 「...だからこれは私にも関係が...聞いてる?ベル君」

 

 「えっ、あっ、ハイ」

 

 僕が自分の昔の行動を反省していると、エイナさんに話を聞いていたか確認される。

 僕が慌てて返事をすると、怪しんでいるような視線をエイナさんは向けていたが、諦めたように頭を振り「じゃあ今日ダンジョンの後にバベルに行くからそのつもりでね」と言った。

 ...え?

 

 

 

 

 

 「ベル君。こっちよ」

 

 「お、お待たせしました」 

 

 エイナさんの言葉に驚き、聞き返そうとしても、すでにエイナさんは仕事に戻っていて。そもそも話を聞いていなかったのがバレれば怒られるだろう。

 僕が悪いんだけど、もやもやした物を持ちながらダンジョンに潜った後。ギルドの外でエイナさんと待ち合わせをした僕たちはバベルへと向かっていた。

 

 横目でエイナさんを盗み見る。

 いつものギルド職員の制服じゃなくて、いつか見たラフな格好だ。

 エイナさんに持っていた仕事ができる女の人というイメージからは少し遠いけど似合っている、いやだからこそ似合うのかな?

 そんなことを考えながら歩いていると、エイナさんが話しかけてくる。

 

 「ベル君は、ヘファイストス・ファミリアみたいな製作系ファミリアの新入りにとって【成長する】ということはどういうことだと思う?」

 

 「え...?えーっと製作系ファミリアってことは、武器とかを作るのが仕事ですよね?鍛冶の腕が上がる...とかですか?」

 

 「それはそうね、だけどその答えでは、【探索系のファミリアの新米の成長とは強くなること】と言っているようなものよ、あまりにも漠然とし過ぎていると思わない?」

 

 「ああ!そうですね。それじゃあ...いろんなものが作れるようになるとか?」

 

 「それも近いわ。答えは「いらっしゃい!いらっしゃい!安いよ!安いよ!」」

 

 製作系ファミリアの新入りにとっての成長?考えたこともなかった事だ。

 一生懸命頭を働かせて考える。一番最初に浮かんだのは【鍛冶の腕前が上がる】だったが、エイナさんの望んでいた答えではないようだ。エイナさんの例えを聞いて、確かに強くなることは僕のような新米にとっての成長ではあるが、あまりにも抽象的過ぎる答えだったと反省する。

 具体的な成長。

 探索系ファミリアなら。いろんな武器が使えるようになるとかだろうか。それを製作系ファミリアに当てはめた僕の答えを聞いたエイナさんが正解を教えようとした時、聞き覚えのある声が耳に入る。

 

 「神様?何しているんですか!神様」

 

 「えっ、ベル君?...君の方こそエイナ君と一体何をしているんだ!」

 

 「お久しぶりです。女神ヘスティア様」

 

 声がした方を見ると赤い服を着た神様がいた。

 驚き、何をしているのか声をかける僕。しかし神様も驚いた後、逆に僕にエイナさんと何をしているのか聞いてくる。そんな中冷静に挨拶をしているエイナさん。

 そんなエイナさんの反応に、神様も落ち着いたようで、二人で「久しぶりだね、エイナ君いつもボクの眷族が迷惑をかけているね」「...ええ本当に」なんて話を始めてしまう。

 

 「それで...一体何を...」 

 

 「バイトだよ。() () ()。ちょっとお金が必要でね、売り上げに貢献してくれてもいいんだぜ?」

 

 神様はバイトをしているらしい。

 そういえばこのお店はヘファイストス・ファミリア(神様の友神のファミリア)のお店だ。

 しかし灰さん達が僕に稽古をつけてくれている。つまりその分ダンジョンに潜っていないから、うちのファミリアの収入は少なくなっているとは思ってたが、神様がバイトを掛け持ちしなければならないくらいだったなんて。

 

 「神様。僕頑張りますからね」

 

 「う、うん?頑張ってね?」

 

 神様に頑張ることを宣言する。

 神様は突然の宣言に驚いたような顔をしていたが、それでいい。いつか神様がお金のことを気にせずに生活できるくらい強く、立派な冒険者になることを改めて胸に誓い、僕はエイナさんの案内に従ってバベルの中を歩く。

 

 新しく踏み入れたフロアは、先ほどのお店と同じようにたくさんの装備が置いてあった。ただここでは先程のようにきれいに並べられておらず、乱雑に置かれている。

 

 「ここは一体...?」

 

 「さっきの問題の答えだけれど、製作系ファミリアの新米の成長とは【鍛冶師としての名前を高めてお客を得る事】よ。ここは製作系ファミリアに所属している鍛冶師の中でも、新入りや名前の売れていない鍛冶師が作ったものが置いてあるの」

 

 たくさん置いてある装備を眺めながら、ここがいったいどういう場所なのかエイナさんへと尋ねる。

 エイナさんが言うには、鍛冶師(スミス)の中でも、冒険者の方から痛んだ装備を直して欲しい、或いはあなたの打った装備が欲しい、と仕事がやってくる信用のある人と、名前の売れていない、名指しでの仕事が来ないような、打った装備を見てもらえないような、信用が無い人がいるらしい。

 

 それはそうだ。僕だって選べるのなら、高名な鍛冶師が打った装備が欲しい。

 これは僕がミーハーだからとかではなく、冒険者として命を懸けてダンジョンに潜っている以上、その命を預ける装備はできるだけ良い物が欲しいというのは当然の考えだ。

 

 しかし当然ながら高名な鍛冶師の人が打った装備は高い。

 だからこそ此処では、並べて売っていた所より安値ではあるものの、新米や名前が売れていない鍛冶師の人が打った装備が置いてあるらしい。

 冒険者は、自分の目で装備の良し悪しを確かめることで、安価でありながら自分の気に入った装備を買うことが出来る。鍛冶師の人は、自身の作品を手に取ってもらうことで、とにかく名前を覚えてもらって新しい顧客を得るチャンスに繋がる。と冒険者にも鍛冶師にもメリットがある売り場のようだ。

 

 それに時々掘り出し物もあるのよ、なんてエイナさんの言葉に押されるようにして、僕は置かれた装備達を手に取る。

 棚に並べられた装備を見るのも楽しいけれど、こういう乱雑に置かれた中から好みのものを探すのも、宝探しをしているようで、僕は好きだ。

 

 そうしてエイナさんと別れていくつか装備を見ていると、一つの軽装(ライトアーマー)が僕の目に入ってくる。

 ウサギの刻印がされたそれを持ってみると思ったよりも軽い。

 刻まれた製作者の名前はヴェルフ・クロッゾ?聞いた事の無い名前だ、灰さん達なら知っているだろうか。エイナさんが、あっちにいいものがあったと声をかけてくれるが、僕はすっかりこの鎧が気に入ってしまった。

 

 「本当に軽装が好きね君は。だけど身の安全には気を付けるのよ?ファミリアの中の問題だから多くは口出しは出来ないけれど、これからは一人で潜るんじゃなくてサポーターと一緒に潜るんだから、十分に注意して...っとお説教はこのくらいにして。これどうぞ私からのプレゼントよ」

 

 ウサギの鎧を買った僕が、バベルの前の広場でエイナさんと別れようとすると、呆れたようにエイナさんが僕を見てくる。

 戦闘スタイルの関係もあり、僕は軽装を好んでいるけれど、エイナさんから見れば危なっかしく思われているようだ。

 軽いお説教が始まったと思ったが、途中でやめたエイナさんは小箱を渡してくる。

 丁寧に包装されたそれを解いてもいいか聞いて開くと、中から緑玉石のプロテクターが出てきた。これは一体?とエイナさんの方を見ると、「新しい階層へと進んだお祝いよ」と笑いかけてくる。こんなの受け取れません、と拒否しようとしたが、お祝いと言われては返すこともできない。僕が受け取ると「今日は楽しかったわ」とエイナさんは帰っていく。

 

 僕もホームへと帰ろう。

 しかし思ったよりも時間がかかったようだ。このままではホームに帰るころには真っ暗になってしまうだろう。近道をする為に、いつもなら通らないような小道に入ると、向こうから小さな人影が出てきてぶつかってしまった。

 

 「うわっ!?」

 

 「っ!!」

 

 「ようやく追いついたこの糞小人がもう逃がさねえぞ」

 

 角の向こうから走ってきた人とぶつかってしまった。

 現状を理解すると同時に、小道に怒号が響く。恐らくは僕がぶつかってしまった人影(これだけ小さいのならきっと小人族(パルゥム)だろう)を追いかけていた人が、武器を抜いてこちらに走ってくる。思わず、僕も武器を抜いて受け止める。

 

 「あの...何も知らない僕がこんなこと言うのもなんですけど、ちょっと落ち着いてください」

 

 「なんだてめえは。そいつの仲間か!?」

 

 僕のナイフと走ってきた男の人の武器がぶつかり合い火花を散らす。

 何があったのかは知らないけれど、武器を振り回すなんて穏やかじゃない。落ち着いてもらおうと声をかけるが、逆効果だったようだ。

 むしろヒートアップして僕の方にも敵意を向けてくる。

 どうしよう。

 灰さん達から習った戦い方は、物騒なものが多すぎて、怪我無く取り押さえるとか穏便に済ませるというのに向いていない。そもそも灰さん達からも「どうしても、という時以外は俺らの教えた技を人間相手に使うなよ」と言われている。

 

 「止めなさい」

 

 僕と冒険者らしき男の人が睨み合っていると、凛とした声が小道に響く。 

 僕と男の人が声のした方を見ると、リューさんがいた。

 

 「街中で武器を抜くなど、穏やかではありませんね」

 

 「あぁっ!?どいつもこいつも邪魔ばかり!」

 

 リューさんは男の人に向かって語り掛けるが、僕が先ほど落ち着くように言った時と同じで、男の人は怒ってしまった。そのまま怒りをリューさんに向けて怒鳴る。

 だがリューさんが纏う空気が変わる。突き刺すような視線を男の人に向け「吠えるな」酷く冷たい声で続く言葉をかき消す。

 リューさんの発する気迫に押されたように、男の人は「覚えていろよ」と捨て台詞を吐いて逃げ出す。

 

 「ありがとうございました。リューさん、おかげで助かりました」

 

 「いえ。貴方なら大丈夫だったでしょう。差し出がましい真似を」

 

 見えなくなるまで警戒を続けていたが、男の人が道の向こう側まで走っていったことで警戒を解く。男の人を追い払ってくれたリューさんへお礼をしなければ。

 しかし、リューさんは「一人でだってどうとでもできたでしょう。強くなりましたね」と僕をほめてくれる。少し照れてしまうが、大切なことを思い出す。

 

 「そうだ、あの子は...いない。驚いて逃げてちゃったのかな?」

 

 倒れていた女の子に声をかけようとしたがすでにいなかった。目の前で武器と武器のぶつかり合いがあって、びっくりしてしまったのだろうか。とにかくいつまでもこうしてはいられない、そもそも急いでホームへと帰る為にこの道に入ったのだから。

 

 リューさんに別れの挨拶をしてホームへの道を急ぐ僕。

 その背中を誰かが見ていることに僕は気が付かなかった。

 

 「新しいカモを見つけました」

 

 




どうも皆さま

いつもいつも思った文字数にならないと思いきやなることに首をかしげている私です

下書きといいますか最初はメモ帳を使って書いているんですよ
次に書き終えた文章をハーメルンの投稿フォームにコピーしてルビやら特殊タグやら誤字脱字チェックをするんですがその工程でやたらと文字数が伸びます

今回も下書きを書き終わってたくさん書いたぞと思っていたのですが六千字ちょっとしか無くて
ちょっと短いかなと思いながらあれこれ直していたらいつの間にやら八千時ぐらいになっていました
不思議ですね

ついでに各話のサブタイトルを考えているとどうも新しいという言葉が付きそうな感じなので章タイトルも変えました。
特にそれ以外の違いはありませんが一応

そんなことより今回は珍しく可哀そうなことが無かったエイナさん
原作では担当していた冒険者がみんな死んでしまったりしたようですが
この小説では担当していたのが灰達なので死んで二度と出会えなかったなんてことはありませんでした
その分苦労している気がしますが

それではお疲れさまでしたありがとうございました。
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