忍と灰と焚べる者と狩人とダンジョン 連載編 作:noanothermoom
表の反対或いは隠されたもの、後ろめたいものを示す言葉
表があれば裏がある
ならばただ見える面だけでなく、それ以外の面が存在するのは必然だ
だが忘れるなかれ
その表と裏、その両方の面がそろってこその、そのものであるのだと
どちらか一方だけが嘘であることなど、ありえない
「朝...ですか...」
寝床にしている安宿の、薄い壁を通して聞こえた足音に、
朝、リリが二番目に嫌いな物です。
毎日、毎日リリは眠る前に、願います。
朝なんて来なければいいのに、このままずっと狭いベットの中で、二度と光の下になんて出れなくていいから、だからリリに安らかな眠りをください、と。
ですが今の所その願いが神か、あるいはそれに準ずるものに届いたことはありません。
いえ届いてはいるのかもしれません、ですがそうなら、神はリリの祈りを無視しているのでしょう。
それも当然のことです。リリの所属するソーマ・ファミリアの主神、ソーマ様のことを思えば、同じ神と呼ばれる存在が人の祈りに耳を貸すとは思えません。いえ、他のファミリアの主神の話を聞く限り、祈っているその無様な姿を見て、嘲笑っているのかもしれません。
どちらにせよ、祈った所で神様は何もしてくれません。これまでも、そしてこれからも。
だったらリリは、この小さな弱い手で必死に生きなければいけないじゃないですか。それが神にすら見放されたか弱い
「...意味の無いことですね」
ぐるぐると回る思考を切り替えるために、小さく呟きます。
いくらこんなことを考えたところで、1ヴァリスにもなりません。そんなことを考えるよりも、昨日の出来事について考える方が有意義です。
リリは昨日とてもツイていました。
当然ながら、助けられたことを指して、ツイていたと言っているのではないです。
冒険者
ならきっとリリを助けた、なんていうのはあくまで結果的にそうなっただけで。たまたま新米の虫の居所が悪かったとかそんな理由で、リリを追いかけていた冒険者
まあ、新米にいいようにされていた、あの冒険者
散々人のことを役立たずだの、使えないクズだの言っていた割に、簡単にその使えないクズに武器を盗られる上に、新米にあっさりと負かされ、挙句の果てにはメイドに気圧されて、捨て台詞を吐いて逃げるのですから、笑ってしまいますね?
ですが、注目するべきは、そんな無様な冒険者
あの白髪の新米と、冒険者
武器を抜く際見えた、鞘に刻まれたヘファイストスの刻印。間違いなくあのナイフは、ヘファイストス・ファミリアのブランド品です。
盗んで盗品店にでも持っていけば、どれだけの値段が付くか...それこそ豪邸すら立てることのできる値段が付くことは、間違いが無いです。
あれを売り払えば、リリの目的のための貯金は目標金額に至るどころかおつりが返ってくるでしょう。
そんな超高級品を新米が持っているのです。
勿体ないじゃないですか、リリがしっかりと持つべき人の元へと行くお手伝いをしようと思うのも当たり前ですね?
リリが、昨日初めて会った彼を新米と断言できるのは、その特徴的な白髪故にです。
大体一ヶ月ほど前に、【ファミリアにも入っていない新米が、ダンジョンに潜ろうとした】という噂が流れたのです。しかもその後流れた噂では、廃教会をホームとしている零細ファミリアに入ったとも聞きました。
ろくな運営すらされていないソーマ・ファミリアだって、ホームはある程度整えられています。一体どんな神と眷族ならホームを廃教会なんて、ほとんど廃屋と変わらないような建物のままにしておけるのでしょうか。
まあ、リリには関係の無い話です。
何故、零細ファミリアに入ったはずの新米がそんな超高級品を持っているのか、なんてこともリリには関係の無いことです。
リリにとって重要なことは、零細ファミリア故にあの新米がサポーターすら雇っておらず、その為新しく七階層まで潜るようになったが、ダンジョン内で得た魔石を持ち帰るのに苦労している、という話を酒場で聞いたことです。
幾ら、あんな超高級品を警戒すら無く振り回している新米とはいえ、理由もなく近づけば警戒されるでしょう。ですが、サポーターとして近づけば?
所詮は新米にすぎません、適当な誉め言葉を並べておけば、警戒することもなくダンジョンへと同行できるでしょう。例え上手くいかなくても、サポーターと契約すらできない程の零細ファミリアです、契約金や報酬を出来る限り低いものにすればすぐに食いついてくるはずです。
そうなればこちらの物です、ダンジョンの中でならばどうとでもできるでしょう。
ひどいなんて言わないでくださいね?こんな罠にも気が付かないような迂闊な新米など、そう遠くない内にダンジョンの染みになってしまいます。ですから、そうなる前にダンジョンと、冒険者の恐ろしさを教えてあげるのです。命を失うことに比べたら、武器を盗まれるなんて安いものでしょう。まあ武器も持たずダンジョンの中を歩くことになるなんて、か弱いリリには考えるだけでも恐ろしいことですが。
寝る前にまとめた考えを、再び思い出していたリリは計画を始める為に、まずは身支度を始めます。
明日(つまりは今日です)ギルドの周辺に潜んで、あの新米が来たなら後を付けて、本当にサポーターと契約していないことを確認したら、サポーターとしてリリを売り込む。それがリリが立てた計画の第一歩でした。
身支度を済ませ、宿から出ようとしたリリは、ふと忘れ物を思い出し鏡の前に来ます。
安宿の歪み曇った鏡に
これで良し、どこからどう見ても気弱で、戦うことなんてできない、困っている美少女の
リリはツイています。
思わず鼻歌の一つも出そうになるほどでしたが、それは我慢します。今のリリは、お金を自分で稼ぐとこもできない可哀そうな犬人です。鼻歌なんて似合いません。
ですが今なら居るかどうかわからない神様に、感謝のお祈りを捧げてもいいくらいリリは上機嫌でした。
ギルドの周辺に潜んで少し経つと、昨日の新米が来ました。
足取り軽くギルドに入っていた新米は、出てきたときにはうなだれ、傍から見ていても分かる位落ち込んでいました。
それこそ、今日はダンジョンに潜るのをやめにしそうなほどの落ち込み具合に、一体何があったのかと人込みに紛れて近付き、ぶつぶつと呟いている言葉を盗み聞きます。
...なんとまあ新米は可哀そうなことに【サポーターを募集したのに誰も応募してくれなかった】と落ち込んでいるではないですか。
これはもう神様が、リリにあの武器を盗めと言っているのも同然でしょう。
とぼとぼ歩く新米から離れ先回りします。
そしてさも、今までこの噴水の近くでダンジョンに連れて行ってくれる冒険者
声をかけた時の新米...ベル様の様子ったら、何を言われたのかわからず停止した後、全身を使って喜びを表現していました。本当にその喜び様は、そばにいたリリの方が恥ずかしくなるくらいでした。
それでも昨日ぶつかった時に、顔を見られていたようで。一瞬リリのことを怪しんだようでしたが、ローブを取り頭に生えた耳を見せれば気のせいだと思ったようで、しばらくダンジョンに潜りたい理由などを話していれば、リリを疑っていたことすら綺麗さっぱり忘れて信用したようです。
...いいですねお強い冒険者
一瞬よぎった言葉を忘れる様に、リリは今朝鏡の中で作った
想定外です。
噂では白髪の新米は、最近七層に降りたばかりということでしたし、事実ベル様も「最近七層付近に降りてきたばかりで、勝手が分からなくて困っていた」なんて言っていましたが、その戦闘力は凄まじいものでした。
【新米殺し】の名で知られるキラーアントをナイフの一撃で、その硬い外殻ごと切り裂き、パープル・モスが頭上を飛べば、いつの間にか拾っていた石で撃ち落とす、キラーアントと同じ【新米殺し】の名前を持つウォーシャドウに対峙すれば、鋭い鉤爪に怯えることもなく、攻撃を掻い潜って逆に切り裂く。
新米にありがちな、【攻勢だけを考えた勢い任せな戦い】と言えばそうでしょう。
ですが勢い任せな戦いであったとしても、対峙したモンスターを一撃で倒し続けているのならば、それは最早
戦う冒険者
そもそも、サポーターとしての仕事はあくまで、ベル様の持っている武器を盗む為に近づく口実に過ぎないはずなのです、なのに未だ盗む算段すらついていません。
ベル様がモンスターを倒す速度が速すぎるのです...というよりもあまりにも無防備すぎるのです。頭の中に【モンスターとの接敵を避ける】という考えすらないのではないのでしょうか。
第二層でゴブリンがたむろしている道を堂々と進もうとしているのを見たときは、思わず頭を叩きそうになりました。
確かにこれだけの戦闘力を持つのならば、わざわざ避ける必要もないというのはその通りでしょうが、無駄に消耗する必要もないのです。リリが先導してモンスターを避けながら七層まで進むと、まるで子供のように「凄い!こんなに簡単に七層まで来られるなんて!!」と喜んでいましたが、むしろ今まで出てくるモンスター全てを倒して進んでいたのでしょうか。
とにかく、ベル様は隠れたり、やり過ごしたり、といった基本的なことすらほとんどできていないのです。
普通の新米ならモンスターの数に押されて、ダンジョンの壁のしみになるような無謀な行動の数々。ですがベル様の戦闘力と合わさることで、次々と現れるモンスターを倒し続けることになり、結果として凄まじい戦果を挙げているわけです。
...まあそのおかげで次々現れるモンスターから隠れたり、倒したモンスターから魔石を集めたり、リリがサポーターとしての仕事に追われているせいで、武器を盗もうとすることすらできないくらい忙しくなっているのは、本当に想定外ですが。
戦闘が終わり、リリは安全を確保するためにナイフで壁を傷つけます。
ベル様はリリの手伝いを申し出ていましたが「サポーターとしての仕事すらさせてもらえないのは...」なんて言って断りました。
幾ら偽りの仕事とはいえ、最低限の仕事すらしないのは如何なものでしょう。それに、ベル様と一緒にダンジョンに潜ってから混乱し通しの頭を整理する必要もありました。
ベル様はどうなっているのでしょうか。
七層のモンスター相手に無双する、新米、いえLV.1とすら思えないほどの凄まじい戦闘力の反面、先ほどリリが行ったダンジョン内での安全確保の方法も知らない程にダンジョンに対する知識は、冒険者にとっての常識のようなことすら知らない。
一体どんなファミリアに所属していればこんな新米が生まれるのでしょうか。
ベル様のファミリアについては、考えれば考えるほどリリの頭を悩まします。
直接聞けば、警戒心というものをどこかに落として来たベル様のことです、きっとありのまますべてを話してくれるでしょう。ですが、話の流れでリリのファミリアの方へ話が飛ぶ可能性を考えると、黙っておくのが賢いでしょう。
代わりに、ベル様の持つ武器をほめます。
思った通り少し誘えば、ベル様は何の疑いもなく自身の武器について話し始めました。
...こんな高価なものを贈り物として贈られた、そんな話をするなんてとらえ方によっては嫌味や自慢に聞こえますよ?なんて、思っていても口に出せない考えを頭のどこかへと追いやりながら、ベル様の話に対応します。
しかしここで問題が一つ、リリのバックパックが一杯になってしまいました。
思えば七層についてから、ずっと戦い続けたと言ってもいいほどの連戦に次ぐ連戦でした。当然のごとく、モンスターの魔石の量も戦闘の数に見合うだけの量があります。その魔石の量はリリの大きなバックパックすら埋めるほどの量があったのです。
これ以上は魔石を拾うことが出来ない以上、地上へと戻るほかないのですが、ベル様は今波に乗っています。
こういう時にその勢いをそぐような言葉を口にするとどうなるのかは、サポーターとして活動しているうちに理解しました。ですが、口にしない訳にはいきません。
どう切り出したものかと頭を悩ませていると、ベル様はリリの方へと来てどこか怪我でも?とリリの心配を始めます。
甘ちゃんです、こんな役に立たないサポーターの心配をするなんて。
とは言え好都合ではあります。申し訳なさそうにして、もう魔石を入れるスペースが無いことを伝えると、ベル様はあっさり地上に戻ることを了承しました。
リリだって口惜しくはあるのです、ここまで上手く行ったのに、ダンジョンに入ってからは全く計画を進めることが出来なかったのですから。ですがサポーターとして契約したのですから焦る必要はありません。
七層から地上へと戻る際にもベル様は何かと、リリのことを心配する言葉をかけてきます。まさか本当に
そんなはずはありません。どうせベル様もそこいらの冒険者
ベル様は本当に凄かったです。
三万ヴァリス。それが今リリたちの目の前にあるお金です。
これはベル様が倒したモンスターの落とした魔石や、ドロップアイテムを換金した結果。つまりは今日のベル様の収入になります。
七層で稼いでいる平均的な五人パーティが一日に、大体二万五千ヴァリスぐらいを稼ぐのですから、この稼ぎは平均を超えた凄い稼ぎです。
それもベル様一人で稼いだのですから、パーティなら頭割りをする必要があることを考えれば、収入の量で言えばずっとずーっと沢山稼いだことになります。
これだけの収入ならば、もしかすると報酬が五千は貰えるかもしれない。そんなあまりにも浅はかな考えが、リリの頭をよぎった時です、血生臭い恐怖の臭いがしました。
ありえません。
血の臭いに振り返るとそこに立っていたのは、【血にまみれた処刑人】狩人でした。
蜘蛛の子を散らすように冒険者たちが逃げていくのにも構わず、狩人はギルドの中をまっすぐに進んでいます。その先には、狩人が冒険者溢れるギルドに現れたことに混乱するリリと、この状況を理解できているとは思えないベル様がいます。
今すぐこの場所を離れる為に、ベル様の服を掴み引っ張ろうとしましたが、すでにベル様は狩人に向かって歩き出しています。「危険です、危ない」思わず口から悲鳴が漏れそうになりました。
きっとベル様は何も知りませんから、先ほどまで周囲にいた冒険者達が逃げ出したことを不思議に思って、何が起きたのか確かめようとしたのでしょう。ベル様が向かった先にいる狩人が、オラリオでも恐れられているヘスティア・ファミリアの中でも最も恐れられている冒険者であることも知らないままに。
リリは今すぐベル様を狩人から引きはがして、オラリオの常識を教え込む
ベル様が...狩人の後輩?
震える声で何とか絞り出した問いは、ベル様によって無情にも肯定されました。
あまりのことに呆然とするリリに、ベル様は無邪気に狩人を紹介します。
蒼い蒼い、深い海のような瞳がリリを捕らえます。どのような偽りも嘘も見抜くと裏の世界で恐れられる、狩人の瞳がリリを映しています。
正気に返ったリリは、
訳が分かりません。
ギルドから逃げ出したリリは、裏路地の一角で息を整えていました。ですが息が荒いのは、ここまで走ってきたからだけではありません。
ベル様があのヘスティア・ファミリアの新入り?
当然ヘスティア・ファミリアに新しく冒険者が入ったという噂はリリの耳にも入っています。ですが先ほど、ベル様が自己紹介するまで、いえベル様の口から「狩人さんの後輩だ」という言葉が出るまで。リリの頭の中では、ヘスティア・ファミリアの新入りとベル様が全く繋がらなかったのです。
もしベル様がヘスティア・ファミリアの新入りだと知っていれば、決してベル様をターゲットにしなかったのに。
焼けつくような焦燥感と共にあまりにも遅すぎる後悔が頭をよぎり...よぎった後悔がいったい何を示しているのかを理解した時、先ほどまでの焼けつくような焦燥感は冷水を浴びせられたかのように消え失せ、代わりに凍り付くような恐怖がリリの体を支配します。
「うっ...おえぇぇ...」
あまりの恐怖に、内側からせりあがってきた吐き気を抑えることすらできずに、口から漏れ出します。
びちゃびちゃと地面に落ちたそれは飛び散り、周囲を汚し、飛沫はリリの着ていたローブも汚します。ですがそんなことはどうでもいいのです。
灰達がヘスティア・ファミリアの冒険者であることは、オラリオの冒険者なら常識です。そしてそのヘスティア・ファミリアに新しい冒険者が入ったと言う噂は、驚きと共にオラリオを駆け巡りました。...その冒険者が白髪であるという情報と共に。
そうです、リリはヘスティア・ファミリアが灰達の所属している魔境だと知っています。そしてベル様がこの一ヶ月ぐらいで冒険者になったばかりの、新米であることも知っています。さらにはヘスティア・ファミリアに新しく新入りが入ったことも知っているのです。いえそもそも、廃教会をホームとするような頭のおかしいファミリアなどこのオラリオに、ヘスティア・ファミリア以外に存在するはずありません。
なのに今日一日リリの頭には、ちらりともベル様がヘスティア・ファミリアの新人である可能性がよぎらなかったのです。
明らかにおかしいことです。
神か魔法か、あるいはそれ以外の何かか。なんにせよ、誰かしらが何らかの理由で、ベル様とヘスティア・ファミリアの新入りが繋がらなくしたのです。リリが気が付いた時の状況を考えると、ベル様自身からヘスティア・ファミリアの新人=ベル様ということを聞かされると、この違和感に気が付ける様になるのでしょう。
...いえ、そんなことを考えている場合ではありません。
だれが、何のために、どうやってか、なんてことはどうでもいいことです。重要なのはベル様がヘスティア・ファミリアの新入りであることであり、そのことが隠されていることです。
罠でしょう。どう考えてもたまたまそうなった、なんてことはあり得ません。一体何の為なのかは解りませんが、これが罠で、ベル様が罠の餌、そしてリリが罠に陥った哀れなネズミであることは分かりました。
罠にかかったリリには、今から何が起きるのでしょうか、...それともすでに何か起きているのでしょうか。
そう疑い出すと、今にもこの裏路地の陰から【片腕の影】狼が出てくるのではないか、向こう側から【嗤う凶刃】灰の笑い声が聞こえるのではないか、リリの全く予想しない所から【伝播する狂気】ミラのルカティエルが現れるのではないか、悪い想像だけが膨らみます。
息を整えているはずなのに、息を吸っているはずなのに、どんどん息苦しくなります。今リリは息を吸っているのでしょうか、それとも息を吐いているのでしょうか、それすらも分からなくなり、視界が暗く染まっていきます。そうして恐怖に溺れそうになった時、ベル様の声が聞こえました。
馬鹿なのでしょうか。
ベル様はびっくりすることに、逃げ出したサポーターの為に報酬を持って追いかけてきたのです。馬鹿ですね、馬鹿に違いありません。
しかも聞けば狩人が呼び止めようとするのを振り切って追いかけてきたというではありませんか。馬鹿にもほどがあります。
しかもベル様の持ってきた報酬は
思わず先程までの恐怖すら忘れて、ベル様へと冒険者の常識を叫んでいました。ですがベル様の馬鹿さ加減に限界というものは無いのでしょうか、ベル様は報酬を受け取り、あまつさえ様付を止めるよう要求してきたのです。あまりにも想定外のベル様の言葉に、リリもベル様へと言い返したことによって、報酬を値切りたいサポーターと報酬を山分けしたい冒険者という馬鹿みたいな口論にまで発展してしまいました。
口論が終わったことで報酬を受け取り、幾分か冷めた頭でさっきまで自分たちのしていたことを考えれば、あまりの馬鹿々々しさに笑いを止めることはできませんでした。
どういうことなのでしょうか。
リリとベル様の笑いを引き裂くように、影より狩人が現れました。
悍ましさすら感じる空気を纏う狩人に、さっき吐いていなければ今吐いていたでしょう。
ですが、そんな空気を読むというようなこともベル様は出来ないようです。
狩人へ無遠慮な言葉をぶつけます、ですがそれに対する狩人の返事は軽く睨むだけの物でした。
目の前で行われている、まるで
未だに理解が追いつかず、混乱しているリリに狩人は言います。ベル様と仲良くしてくれと。その言葉を聞いたリリはもう限界でした。
先ほどギルドから逃げ出した時に残した、最低限の取り繕った言葉すら忘れて、この場所から逃げ出しました。
その背中にベル様の言葉を聞きながら。
由縁隠しの秘匿
灰と狩人がベルへと施した超常の力
これを纏うものについて本来なら導かれる答えへの道を隠すことが出来る
その旅路で常に偏見の眼差しを向けられた彼らは
自身の後輩がその眼差しを向けられないことを願いこの力を施した
多くの秘匿を破り、秘密を暴いた彼らは知る
秘密を隠すのに最も良い方法は、秘密へと至る道を隠すことだ
どうも皆さま
ベル君がいい感じにヘスティア・ファミリアになじんできたので、一般冒険者から見たヘスティア・ファミリアとはどんなのなのか書こう、ということで書いている私です
必死に生存フラグを立てているリリ
頑張れリリ君の生存の道は見えているぞ
なお今回だけでも
ベルの後を付けているときに灰達がいたら「なんか居る」で
ベル君とダンジョンに潜っているときに何かしようとしていたら狩人の獣センサーに引っかかり「お前獣だな?」で
犬人に化けていなければ、「獣の臭いがする、お前獣だな」で
死亡フラグが立ちました
リリと最初に会うのが狩人で無ければ、狩人が獣(犬人)かぁ~となり、リリイベントのフラグが折れリリイベントが強制終了します。
リリイベントが強制終了するとリリは二度とベルの前に現れず
そのうちソーマが灰達の手によって天界へと送還され
ステイタスの恩恵を受けられなくなったリリはオラリオかダンジョンのどこかで
泣きゲーのヒロインが誰にも知られずに力尽きるときみたいな主人公(ベル君)との生活の回想をはさんで野垂れ死にしたでしょう
今回だけでも四回は死亡フラグを避けたリリの明日はきっと明るい
頑張れリリ、負けるなリリ
我ながら書いていてわかりにくいと思ったので由縁隠しの秘匿についての補足を
簡単に言うとA+B=Cとなるとき=を消します
本編では
A、ベルはヘスティア・ファミリアの新入りである
B、ヘスティア・ファミリアは灰達が所属するファミリアである
C、ベルは灰達の後輩である
となる所を
=を消すので
Cのベルは灰達の後輩であるという答えにたどり着けなくなり
灰達に後輩が出来たという噂が流れても
その後輩がベルであるという噂にはならないということです
...自分で書いていてなんだかわからなくなってきました
まあとにかくそのせいでリリはベルを普通のヘファイストスブランドの武器を持つ新米だと思ったわけです
...普通とは一体
なおリリは罠にかかったと怯えていますが実際には
灰「うちに新入り来たけどこのままだとみんなにビビられるよな」
狩人「まあそうだな」
灰「じゃあ何とかしてやるか」
ぐらいの軽い感じで施された秘匿です
それではお疲れさまでした、ありがとうございました