忍と灰と焚べる者と狩人とダンジョン 連載編   作:noanothermoom

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主につき従うもの或いは光の当たらない場所

何処までも本体と同じ場所へと行く影
それは主の行く場所について回っているのか
それとも主の足を引き続けているのか

影をどこへと導くのか
影に何処へと導かれるのか

予定投稿をしたつもりが出来ていませんでした
いつもより少し遅れての投稿です
申し訳ありません


蠢く影

 

 

 「あ...さ?は、ははは。朝です、太陽です」

 

 寝床としている安宿。そのベッドの上でリリは朝が来たことに喜びの声を上げます。

 これほどまでに朝が来たことが喜ばしいことはありませんでした。

 安宿故にお世辞にも日当たりがいいとは言えない立地、しかも汚い薄汚れた窓ガラスを通して部屋へと差し込む光は、部屋の中を満足に照らし出すことすら出来ない、弱々しい光です。

 ですが今のリリにとってその光は、今まで生きてきた中で一番の輝きを持っているように思えました。

 

 リリが新しいカモとして狙いを付けたベル様────冒険者の常識すら知らない新米で、ダンジョンの中でもサポーター(リリ)のことを気遣うような甘ちゃんです────が噂のヘスティア・ファミリアの新入りだと知って一夜明けました。

 

 昨日のことを思うとリリは満足に寝ることもできず、どこかからヘスティア・ファミリアの冒険者が、リリの所に来るのではないかという不安に魘されていましたが、朝です。リリは生き残ったのです。

 

 「はははははは、あはははは」

 

 リリの口から抑えられない安堵の笑いが溢れます、否今のリリに笑いを抑える気などないのです。

 笑うということは、余裕があるということ。

 これまでの人生でリリ(弱者)に何か余裕があれば、それを冒険者(強者)が奪い取ろうとすることを学びました。だからリリはもう長い間本当の意味で笑っていませんでした。

 ですが、【生きている】。この喜びは抑えきれるものではありません。

 

 リリはそうやって笑っているうちに、昨日のベル様の言葉を思い出します。

 

 「リリ!明日もあの噴水で待っているからね!!」

 

 ...馬鹿なのでしょうか。

 狩人の手の中から逃げ出せたにもかかわらず、再びその手の中に戻るような真似をする獲物がいるはずもないのに。

 そうです、リリは罠から逃げ出せたのです。もうヘスティア・ファミリアなんて恐ろしい冒険者の巣窟とは無縁の人生を歩むのです。

 

 そもそも、狩人に見られた時点で、リリについては知られたと思っていいでしょう。

 ならあの後狩人によって、リリのことはあきらめる様に言われているかもしれません。例えそうでなかったとしても一日たって、気が変わっているかもしれません。ギルドに出していた募集でもっといいサポーターが見つかっているかもしれません。

 そうです、たとえ今日あの場所に行ったとしても、ベル様は居ないかもしれません。

 いえ、そうに決まっています。

 リリはソーマ・ファミリアの、薄汚れた盗人でしかありません。なら幾ら甘ちゃんのベル様だってリリのことを、サポーターとして雇い続けるなんて選択をするなんてことあり得ません。

 分かっているのです、リリのようなサポーターを雇い続ける理由なんてないと、ベル様がリリを求め続けてくれる訳なんてないのだと。

 

 ですが、リリの頭とは裏腹に体は、今日ダンジョンでサポーターをする準備をしているのです。

 ...いえ、これは昨日の狩人の言葉が理由です。

 ベルと仲良くしてやってくれという言葉には、ベル様と仲良くしている内は見逃してやろうという意味が込められていたのかもしれません。

 ならば、あの噴水に行かないのは悪手ですよね。

 頭の中から消えないベル様の顔を、頭を振ることで消そうとしながら、リリは安宿を後にしました。

 そうです、これはあの狩人の言葉が理由です。ベル様との約束を破らないために、あの場所へと向かっているのではありません...そのはずです。

 

 「リリ!昨日はごめんね」

 

 「いえ、ベル様の謝ることではありません。それに謝るのはリリの方です」

 

 噴水の縁に座って、来るかも分からないベル様を待ちます。

 それほど経たないうちに、周囲をきょろきょろと見渡しながらベル様がやってくるのが見えました。

 

 お上りさん丸出しの、事情を知らなければ丸々と太った美味しそうなカモに見える、いえ事情を知っているリリですらカモにしか見えない姿です。

 声をかけるとどこか不安そうな表情をしながら歩いていたベル様は笑顔になり、リリの方へと手を振りながらやってきました。そして開口一番昨日のことを謝り始めます。

 

 リリも昨日の去り際のことを謝り、()()()()ということにしようとしたのですが、ベル様は「騙したみたいになっちゃったし」とまだ昨日のことを気にしているようです。

 仕方のない人ですね。

 

 「実はリリ荷物を整理して、昨日よりも魔石を入れられるようにしてきたんです。その分ベル様には昨日よりも頑張ってもらいますよ?」

 

 「うん分かったよ、でもバックパックが重かったりしたらすぐに言ってね?」

 

 嘘は言っていません。

 リリの荷物の中から、冒険者サマを嵌める為の諸々を抜いて、昨日より沢山魔石を運べるようになったのは本当なのですから。

 リリのそんな考えを知らないベル様は、相も変わらずサポーター(リリ)の心配をしています。

 ...本当に仕方のない人です。

 

 

 

 

 

 

 ベル様と一緒にダンジョン探索をする日々は、リリにとって初めてダンジョンに潜ることが楽しいと思えた日々でした。

 サポーターだって、実際に戦わないとはいえ冒険者と同じようにダンジョンに潜り、モンスターと対峙するのです。

 ついて行く冒険者によっては、こちら(サポーター)にまでモンスターがやってくる、どころかサポーターなどいざという時の囮ぐらいにしか思っていない冒険者だっています。

 ですが、ベル様はすさまじい速度でモンスターを倒していき、こちらにモンスターがやってくる暇もありません。

 むしろリリが魔石を拾い集めたり、モンスターの死体を邪魔にならない場所に動かすのが間に合わないくらいです。

 サポーターの扱いについても、「危なくなったら僕を見捨てて逃げてね」なんて言うくらいです。思わず「そんなことしたら、ベル様の先輩たちにどんな目にあわされるか」と返せば、苦笑いが帰ってきました。

 ...愛されているんです、自分の身を大切にしてくださいね。

 サポーターとしての扱いは文句ありませんし、報酬についても、いつも半分(山分け)です。

 こんな好待遇でのサポーターなんて初めてです。

 

 とはいえ、ベル様にも欠点というべきところはあります。

 優しすぎる、いえ甘ちゃんな所もそうですが、変なところで無知なのです。

 

 「ポーションが足りなくなったから買ってくるね」と言い、主神(ヘスティア)知り合いの神のファミリア(ミアハ・ファミリア)で買い物をしているときも、思いっきりぼったくられているというのに、一切気が付いていないのですから。

 リリがいなければ気が付かないまま、ぼったくられ続けていたでしょう。ベル様は「灰さん達はこういうポーションとか使わないから、よく教わってなくて」なんて言っていましたが、武器や雑貨なんかと比べて高すぎるとは思わなかったのでしょうか。

 

 ギルドで買っておくよう勧められた備品を、全部持ち続けていたこともありました。

 確かにソロでやっていく分には────そもそも新米がソロでダンジョンに潜ること自体が間違っていることは、この際横に置いておきます────どんな状況にも対処できるように、備えるのは大切でしょう。ですが今はサポーター(リリ)がいるんです、「いくら何でも荷物が多すぎます!!」と思わず叫んでしまいました。

 

 ただ一番困るのは、探索を終えてギルドに戻ると、ベル様の先輩(灰達)が待ち構えていることです。

 大体ダンジョンから帰ってきて、魔石や何やらを換金し終えたタイミングでやってくるのですが、あまりにも露骨すぎてベル様でさえ何かあると気が付いています。

 何かされたわけではありません。ただリリの方を見て、ベル様のことをよろしく頼むと言われるだけと言えばそうです。

 狩人の次は狼が、狼の次は灰が、灰の次はミラのルカティエルが────実は()()絶望を焚べる者というのが本当の名前らしいですね、ベル様が言っていました────代わる代わるギルドで待っているのです、正直な話また狩人が出てくるんじゃないかと心配していましたが、そんなこともなく一安心です。

 後輩についた怪しいサポーターを警戒しているのかと思いきや、リリを一瞥するとベル様のことをよろしく頼むと言い消えるのですから訳が分かりません。...まあ彼らからすればリリ程度()()()()()()()()()()()なのかもしれませんが。

 

 とにかく、ベル様との日々は刺激的で、大変だけど、毎日が楽しく。リリは久しぶりに明日が来るのを心待ちにしながら眠りにつく日々を送っていました。...だからでしょうリリはしくじったのです。

 

 

 

 

 

 

 オラリオ路地裏 ベルが酒を飲んで倒れた頃

 

 「よお、最近羽振りがいいらしいじゃねえか、ええ?羨ましいねえ」

 

 ベル様と別れ、宿へと向かうリリに声をかけたのは、リリと同じソーマ・ファミリアの冒険者、カヌゥ。

 強欲で、非道で、サポーターを使い潰すことを何とも思っていない男。

 つまりはリリの一番嫌いな言葉(冒険者サマ)を体現したような存在です。

 そんな男がニヤニヤと笑いながらリリへと近寄ってきます。

 咄嗟に周囲を見渡し逃げ道を探りますが、手下らしき幾人かの男たちによって道が封鎖されています。

 

 冒険者にその日の収入をカツアゲされるのは、初めてではありません。

 強いもの(冒険者)弱者(リリ)から奪う。ソーマ・ファミリアでは、いえこのオラリオのどこでも見ることのできる光景です。当然こんなときどうするべきかは、リリも分かっています。ベル様と出会うまではリリもそんな世界にいたのですから。だからリリは有り金を差し出して、嵐が過ぎるのを待つべきなのです。それが賢い選択です、そうして生きてきました、生き延びてきました。

 ...ですが、リリの懐にあるお金の入った袋を取り出した時、このお金を差し出してきたベル様の笑顔が浮かびました。

 

 リリがなかなか渡そうとしなかったからでしょう、カヌゥがリリの手から無理やり袋を奪い取ります。

 

 「ほーなかなかあんじゃねぇか

 ...なんだその目は。何か言いてぇのか。

 てめえみたいな役に立たねぇサポーターがソーマ・ファミリアの一員でいられるのは誰のおかげだ?

 俺たち冒険者様のおかげだろうが!だったらてめぇが稼いだ金を差し出すのは当然だ!!」

 

 最悪です。カヌゥを怒らせてしまったようです。

 怒鳴り散らしただけでは怒りが収まらないカヌゥは、手下たちへとリリに痛い目を見せてやるように指示を出します。或いは最初っからそのつもりだったのかもしれません。

 生意気なサポーターが新米にうまく取り入って、稼いでいるらしい。ならそのサポーターを躾けてやるついでに、その稼ぎを奪ってやろうと。

 

 自分より弱いリリをいたぶれることにニヤニヤと下品な笑みを浮かべる男たちを見ながら、「ローブで隠せない所に傷をつけられないと良いな。もし顔に傷がついたら明日、ベル様になんて言い訳しようか」なんて考えていると声がしました。

 

 「貴公ら随分と穏やかじゃないな」

 

 カヌゥ達が振りかえると道の奥には、鮮やかな緑色の腰布と首元を護るように肩回りに毛皮が付いている鎧を纏い、そして僅かなTのような隙間以外はすべて顔を覆う兜をかぶった人物がいました。

 これほど特徴的でありながら、噂にすら聞いた覚えのない装備に、カヌゥ達はその勢いを殺されます。

 

 「あ?てめぇに関係ねえだろうが。これはうちのファミリア、ソーマ・ファミリアの問題だ!口を挟まないでもらおうか」

 

 しかし見慣れぬ装備にひるんだのも一瞬。

 カヌゥは脅すようにその人影へと凄み始め、手下たちも口々にヤジを飛ばし始めます。

 

 「痛い目を見たいのか」 「とっとと消えろ」 「そもそも何者だ」

 

 「ミ...道に迷ってしまった、ただの冒険者さ。私も痛い目を見たいわけでもないのでな、そちらがやるというのなら抵抗させてもらうが?」

 

 噛んだのでしょうか、何か言いかけた後に道に迷っただけだと答えると、男はカヌゥ達へと殴り掛かります。

 いきなり襲われるとは思わず虚を突かれたこともあり、カヌゥ達は混乱していて数の有利を生かせていません。

 その隙にリリはカヌゥの手からこぼれた袋を拾い上げ逃げ出します。

 よかったです、ベル様に余計な心配をかけずに済みました。

 無事お金を取り返すことが出来たことよりも、ベル様へと心配をかけずに済んだことに安堵している自分に気が付かないまま、裏路地を走り抜けました。

 

 殴り倒されたカヌゥ達も逃げ出し、静寂が戻った路地。

 その路地で一人立つ男────絶望を焚べる者は小さく呟く

 

 「ソーマ・ファミリア...か」

 

 

 

 

 ギルド ベルとリリが換金して立ち去った後

 

 日が落ち、ダンジョンから帰ってきた冒険者による長い行列もついには無くなり、ギルド内に平穏が訪れる。

 一日で最も忙しい時間帯が過ぎたことで、あちらこちらのギルド職員達から安堵のため息が漏れ聞こえてくる。

 私、エイナ・チュールもそのうちの一人だ。

 

 ギルドの職員として勤めるようになってからそれなりの年月が経っているが、どれだけ経ったとしてもこの時間帯の忙しさは変わらない。

 近くにいる同僚と今日の冒険者達について、なんやかんや言いながら残りの仕事を片付けていると、ギルドでは聞きなれない声がした。

 

 「申し訳ありませぬ。“へすてぃあ・ふぁみりあ”団長九郎です“えいな”殿はおいででしょうか」

 

 「あら、九郎さんじゃないですかんっん...それで九郎氏何の御用でしょうか」

 

 ヘスティア・ファミリアの団長でありながら、冒険者として活動していない為、滅多にギルドで見る事の無い九郎さんの姿に、思わず気を抜いた返事を返してしまい、空咳をして仕切りなおす。

 

 「どうやらお仕事は落ち着いていた様子。実は火急の用がありまして」

 

 「それは...穏やかではありませんね?何があったのですか」

 

 しかし、仕切りなおしてもなお漂っていた気の抜けた空気は、九郎さんの言葉により霧散していく。

 火急の用。

 お飾りであるとはいえ、ヘスティア・ファミリアの冒険者達をある程度は団長として纏め上げている、九郎さんだ。その九郎さんが火急の用とまで言うのだ、何か大きな問題でもあったのかと詳しく話を聞こうとすると、ギルドに怒号がこだまする。

 

 「ああ?ふざけんじゃねえぞ!!」

 

 「...()()は?」

 

 「ソーマ・ファミリアの冒険者ですね。換金結果に納得がいかないとかで問題を起こす人はそこそこいますけど、あそこのファミリアはそういう人が多くて。私たちも困っているんです」

 

 「なるほど、狼!」

 

 「御意」

 

 思わず私と九郎さんがその声がした方を見ると、冒険者が換金所前で喚いている。

 わずかに眉を顰める九郎さんの問いに私が答えると、九郎さんはいつの間にか後ろに控えていた狼さんへと命じる。

 呟くようにその命に応じた狼さんは足音すらさせず、騒いでいる男の方へと進む。

 「こんなんじゃ...」と先程までの姿が嘘のように、うなだれている男へと近づいた狼さんが言葉をかければ、たちまち男は脱兎の如く逃げ出す。

 

 その背中を目で追っていると、先ほどまで立っていた所から狼さんが消えている。一体どこに...と探せば、目の前にいる九郎さんの背後に控えているのに気が付く。

 灰さん達に隠れがちだが、狼さんだってオラリオでも有数の実力者なのだ。

 その実力を改めて確認した私に向かって九郎さんは用件を切り出す。

 

 「それでは話をしましょうか、偶然というべきか私の持ってきた話もソーマ・ファミリアについてなのです」

 

 

 

  

 

 

 

 ロキ・ファミリアホーム【黄昏の館】 ベルがダンジョンに潜っているころ

 

 「あー退屈やわぁ。なんやおもろい事でもないかな、ウチが地上へ降りてきたんは、こんな思いする為とちゃうんやけどな~。なあフィンどう思う?」

 

 「仕事の邪魔だから、どっか行ってほしいと思っているよ」 

 

 オラリオ最大党派の片割れロキ・ファミリア。

 そのファミリアの団長フィン・マックイールへとダルがらみする神がおった、というかロキ(ウチ)やった。

 お気に入りの冒険者(アイズたん)はダンジョンに潜りに行っているし、この間の遠征の失敗から団員の多くが忙しく働きまわっているせいで、揶揄って遊ぶこともできない。

 詰まる所ウチはとっても暇やった。

 

 「いけず~。それにしても暇や、いっそなんかお客でもこんかな~」

 

 「そんなに暇ならちょっと俺に付き合っておくれよ」

 

 「そうだ、灰の言うとおりだ。そんなに暇なら灰の手伝いでも...灰!?

 

 仕方がないから書類仕事をしとるフィンに絡むんやが、適当に流される。

 そのまま床を転がりながら暇や暇やと言っていると、ある提案がなされる。

 灰の手伝いか、あいつのことは正直好きやないんやが、背に腹は代えられん...灰ィ!?

 

 うちとフィンが声がした方に振りかえる。そこには不法侵入者(火の無い灰)が片手をあげて挨拶しとった。

 

 「何の用だ灰」

 

 「ちょっとロキに聞きたいことがあってな。どうだロキ、そんなに暇なら俺とお話しするだけの簡単なお仕事をしないか?」

 

 「信用できるとでも?ロキを殺そうとしたことのある君を」

 

 フィンが愛用の槍を灰へと突きつけ、尋問を始める。

 フィンがその気になればいつでも命を奪える状況やが、灰はフィンを一瞥もせずウチへと話しかける。

 その言葉にウチがどう返そうか考える前に、フィンが吐き捨てる様に信用できないと切り捨てる。

 

 「やれやれ、【勇者(ブレイバー)】様はせっかちだな。あんなの(殺そうとする)なんて、じゃれあいみたいなもんだろうに」

 

 「灰ィ、そんなこと言ってスケベなことす「ロキ!!」とりあえず落ち着きフィン」

 

 殺伐とした空気が部屋に漂うが、灰はそんなもん知らんと言わんばかりに、こちらを小ばかにした姿勢を崩そうともしない。

 ウチもそれに乗って、空気を換えてやろうとするもフィンは乗ってくれへん、とりあえず落ち付くようにたしなめる。

 

 「そんで?まさか手ぶらで来たとは言わんやろ?」

 

 「もちろんだとも、ほら【神酒(ソーマ)】だ」

 

 そのまま灰へと尋ねる。

 フィンがこんだけ怒ったるんや、面白そうな匂いがしてもなんも持ってきてないと言われれば断るつもりやった。しかし灰がどこからか取り出した酒瓶。それを見た途端うちはフィンに制止される前に手を伸ばし、抱きしめる。

 うへへへ、ホンマに【ソーマ】や、間違いなくホンマもんの【ソーマ】や。

 

 「ロキ!まさかとは思うが、灰に協力するつもりなのか!?」

 

 「そないなこと言うもんやないで。せっかく来てくれたんや、ちょっとぐらい話をしてもばちは当たらん」

 

 フィンはウチに止めるように言っとるが、うちは灰に協力する気になっとった。

 灰が手土産に持ってきた【ソーマ】も理由の一つや。

 けど協力しようと思った最大の理由は、灰について知るチャンスが来たからや。

 

 天界ならいざ知らず、地上に降りてきた時点でウチら神はその力を大きく制限される。

 それでも、子ども(人間)の言葉が嘘か本当かくらいは分かる。

 そして困ったことに、灰の訳の分からない言葉の多くは嘘じゃない。

 さっきの「あんなことなんてじゃれあいみたいなもんだろうに」という言葉にも嘘はなかった。

 つまり灰にとって本当に、殺そうとしたことはじゃれあいに過ぎないということや。

 

 ...ありえへん。

 一体どんな所なら、命のやり取りがじゃれあいになるというんや。

 灰からはウチら神が求め続ける“未知”の匂いがプンプンしとった。けど、かつてウチの行いによって灰はウチのことを警戒しとる。

 目の前に“未知(面白そうなもん)”があるのに、それに触れられない歯がゆい思いをしていた所に来た、思いがけないチャンス。

 これを逃すなんてありえへん。

 

 ウチの考えを知ってか知らずか、それともどうでもいいと思っとるんか、灰はウチに向かって宣言する。

 

 「俺に協力してもらえるってことでいいのかな?ならお前の知る限りを話してもらうぞ。ソーマ・ファミリアについてな」

 

 

 

 

 

 ダンジョン18層 ベルがダンジョンへと潜る前

 

 ダンジョンには安全階層(セーフティポイント)と呼ばれる、モンスターの生まれない階層がいくつか存在する。その中でも迷宮の楽園(アンダーリゾート)とも呼ばれる、最も浅い階層である18層。

 ダンジョンに潜る冒険者たちはこの地に物資を持ち寄り、遂にはこの階層に街を作った。

 それがリヴィラの街。

 

 人が集まり、物が集まる。

 ならば、そのうち地上ならば扱えないような後ろめたいものを取り扱うものが現れ、いつしかこの街で取引されるようになったのも当然だろう。

 ここはダンジョンの中、それもある程度の強さを持つ者で無ければ来ることもできない中層。

 ならば、ギルドの目も届かないこの地でこそ咲く花もあろうというものだ。

 故にこその迷宮の楽園という呼び名だ。迷宮に出来た楽園、迷宮であるが故の楽園。

 

 だが、楽園であったとしても迷宮(ダンジョン)であることには変わりはない。

 18層では、モンスターは生まれない。しかし他の階層で生まれたモンスターが、この階層に来ない訳ではないのだ。

 事実この街が生まれてから、300回はそうした()()()によって壊滅的な被害を受けている。

 その度に町は再建され、この階層にて冒険者達を待ち受け続ける。

 人の情熱と欲望に果ては無く、故にこの町は不滅である。

 

 だがその日の楽園には、恐怖の悲鳴がこだました。

 

「ゆ、許してくれよ。俺はただここで情報を売っているだけの情報屋だ。あんたに睨まれるような覚えはねえよ」

 

 怯えたように、店をめちゃくちゃにした襲撃者へと懇願する。

 俺は情報屋として、ダンジョン内の情報から冒険者のステイタスについてまで、それこそ地上ならば違法と断じられるものまで、様々な情報を取り扱っている。

 だからこそ、いくつもの恨みを買っていることは自覚していたし、俺自身に降りかかる火の粉を払う程度の自衛力は持っている。正直な話、情報が漏れたとかで俺を恨むのは逆恨み、情報を漏らした間抜けな自分を恨むのが筋ってもんだろうと思っていた。

 だが備えってもんは幾らしても足りないってことはない、特にこんな町では。

 

 だから出来る限りの備えをし続けた。

 仕込まれた罠、隠された武器、そして誰にも知られていない逃げ道。

 それだけの備えをしていたからこそ、俺はこの商売を続けることが出来たし、俺よりも不注意な奴らが失敗するのを見て幾度となく笑っていられた。

 本当に必要なものは、降りかかってきた災厄をはらうだけの力では無く、そもそも災厄が降りかかってこないようにする知恵だと。

 だが今日俺の店を襲った襲撃者には、そんなものは関係がない。いや、襲撃者の姿を一目見た時点で、俺から反抗しようという意志すら失われていた。

 

 小さく体を縮めながら、必死に襲撃者より自身を守ろうとする姿。

 こんな姿をほかの住人に見られたのならば、明日からこの街でどうやって過ごせばいいかわからない無様な姿。だがどんな奴だってこの襲撃者の前じゃ同じだろう黒いコートと血を纏った(狩人)の前じゃ。

 

 「...私の言葉を聞いていなかったのか?私の聞いたことに答えろと言っているんだ」

 

 「あんたが襲ってきた時点で何も聞いちゃねえよ、客だってんだったらそれなりの入店の仕方があるだろう」

 

 俺の必死の命乞いに心を動かされた様子もなく、冷徹な言葉を狩人はかけやがる。

 だがその言葉の内容が問題だ。

 こいつは俺の店に客としてきたのか?思わず、ならそれ相応の礼儀ってもんがあるだろと叫ぶが、狩人は何かしたか?と言わんばかりの表情をする。

 こいつにとって、半殺しにしたチンピラを使って扉をぶち破るのは普通の行動らしい。

 俺の店の扉を突き破って血塗れの人が突っ込んできたなら、お前の言っていたことなんて耳に入らねえよと喉も裂けよと絶叫する。

 そんな俺の様子を見て、仕方がないと言わんばかりに肩をすくめた狩人はもう一度欲しい情報を口にする。

 

 「ソーマ・ファミリアとその団長についての情報をよこせ」

 

 

 

 

 

 過去からは逃げられない、運命はその背に追いついた。

 だが未来はいまだ白紙だ、願わくば後悔無き選択を。

 





どうも皆さま
寒くなると指先がかじかんで上手く文字が打てなくなる私です

まあそんなことよりも
少し前からダンまち本編を見返す目的でダンメモをインストールしたんですが
リリ可愛いですね
私ヘスティア様派なんですがリリ派になりそう
そんな可愛いリリを沢山虐めてきた気がしますが
まあしょうがないですね

ちなみに灰達がギルドに来たのは
リリにベルをよろしくと言いに来たのと
狩人「リリとかいうベルと契約したサポーターにビビられていた気がする...」
狼「聞けば犬人なのだろう?お前の普段の行いを考えればな...明日は俺が行こう」

狼「無茶苦茶怯えられた...」
灰「お前らみたいな陰気なのが行くからだよ、俺の陽気な話術で笑わせてやるから」

灰「ダメだったわ...」
焚べる者「揃いも揃って挨拶に行くのに手土産もなしとはな、ミラのルカティエルの挨拶を知るがいい」

焚べる者「ダメだった...クッキーより饅頭の方が良かったか?」

なんて会話があったからです
なおリリの胃へのダメージ

まったくこれぽっちもそんなこと考えていませんでしたが
今度の更新はクリスマスになりそうですね
私からの皆様へのプレゼントになればと思います
...えっ?クリスマスのプレゼントなら24日の夜に投稿しろ?
聞こえませんね

それではお疲れさまでした、ありがとうございました
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