忍と灰と焚べる者と狩人とダンジョン 連載編 作:noanothermoom
小説或いは劇の中心となる存在
喜劇に間に合わなくとも、悲劇に間に合わなくとも、始まりに間に合わなくとも
その見せ場と、終わりに間に合えば主人公を名乗ることはできる
それが受け入れられるかはどうかとして
主人公 きたる
「おら、俺たちは忙しいんだ。とっとと帰んな」
その言葉と共に感じる、わずかな時間の浮遊感と衝撃。
ぐぇ、なんてみっともない音が、僕(ベル・クラネル)の口から洩れる
「男なら、一度はハーレムを築き上げようとしなきゃならん」
「ダンジョンには男に必要なものがすべてある、富、名声、冒険」
僕の唯一の家族だった祖父の言葉。
未だ理解できないその言葉を頼りに、祖父が居なくなった後
遠くから馬車に揺られながら街を見たとき、僕の心の中によぎった寝物語の英雄譚。
それは道中出会った、町までの間の話し相手と、手伝いを引き換えに馬車に乗せてくれた、親切な人へお礼をして別れた後、すぐ現実によって潰された。
「いいですか。
まず、ダンジョンに入るためには、ファミリアに入り、ファミリアの主神よりファルナを受ける必要があります。
次にファミリアの先輩達からでも、ギルドの記録からでもいいですが、ダンジョンの危険性について学ぶ必要があります。
次に武器に防具、ダンジョントラップを掻い潜るためのアイテム、怪我を癒す為のポーション、その他必要なものを用意する必要があります。
次に時に助けられ、時に助ける仲間。そして仲間との連携を鍛え、互いに信頼し合い、背中を任せあえるようになる必要があります。
細々としたものを挙げればきりがありませんが、少なくともこれらの条件を満たしていないうちは、ダンジョンに潜るなんて夢のまた夢です。
分かりますか?」
「あー...えっと...つまり僕はダンジョンに入れない?」
「当たり前です。分かったらファミリアに入って、常識を教えてもらいなさい」
オラリオの中心を貫くようにして立つ巨塔バベル。その下にあるというダンジョンに潜る冒険者。
その冒険者となり、冒険をして富と名誉を得る。そして「ハーレム」を作るという僕の夢は、ダンジョンに潜るという第一歩...のかなり前から頓挫していた。
ダンジョンに潜ろうとした僕を待ち構えていたのは、周りの強そうな冒険者達からの変なものを見るような視線と、警備の為にいたギルドの人による「坊主、どこのファミリア所属だ?」という
その質問に答えられないでいると、ギルドの人はため息をついて「新人研修だ」と後ろの方に声をかけ、その声に反応してきれいな女の人が出てきた。
お姉さんの口から飛び出す言葉の数々が僕の心をぼこぼこにする。一時間ほどの授業の後、ファミリアに入って一から学びなおせ、という意味の言葉とともに僕は解放された。
正直かなり心に来たし、お腹は空いたし、気持ちが落ち込むのが分かったけれど、それでも僕は夢をあきらめきれなかった。
そうだダンジョンに入るにはファミリアに入る必要がある、逆に言えばファミリアに入ればダンジョンにも入れる。
そう思えば落ち込んでいる暇なんてない。
「よーし、まずは僕を入れてくれるファミリアを探すぞ!」
そう大きく声に出し気合を入れなおす。
オラリオには数え切れない程のファミリアがあるんだ。僕を入れてくれるファミリアもすぐ見つかるだろう。
そう思ってオラリオ中のファミリアに、入団希望を出しに行ったけど、結果は冒頭の通り。
「何がいけなかったのかな...」
トボトボとオラリオの整備された道を通りながら、僕は反省していた。
今日受けた入団テストはすべて不合格。
確かに僕のこの細い体じゃあ、あの時見た冒険者みたいに強く見えないだろう。
それでも体の大きい、小さいによる差なんて、モンスターと人間の差に比べたら小さいものだ。
その差を埋めるために、冒険者は神の眷族となり、神の恩恵を受ける。
そうして強くなった冒険者は、すごい人ならたった一人で何千人いや何万人という、神の恩恵を受けていない集団に勝利できるようになる...らしい。
とにかく強くなった冒険者はダンジョンに潜り、多くの富を持って帰る。そしてそれを自分の神様に捧げる。
そうやって恩恵を与える神様と、その眷族たちのことをファミリアと呼ぶ。
神の恩恵を受ければ強くなれる、強くなれば富を得られる、富を捧げれば神様にも気に入ってもらえる。
神様に気に入ってもらえれば、ステータス更新によってもっと強くなれる...というのが、ギルドの人による授業で習った、冒険者の生活のサイクルだった。
でも逆に神の恩恵を受けられない、受けられないから強くなれない、強くなれないからお金がない、お金がないから...いや、これ以上は気が滅入る、やめよう。
とにかく僕が、僕の行きつく所かもしれない所から目を逸らしていると、どこからかいい匂いがしてきた。
「いい匂いだなあの屋台。あっ、あっちにはジュースの屋台がある。うう...お腹が鳴りそう」
匂いにつられて歩いていくと、屋台が道の両側にたくさん出ている道出た。
どの屋台からもいい匂いがしてくる。
あんまりたくさんご飯を食べるほうじゃない僕でも、今ならこの道に出ている屋台の食べ物、全部を食べられる気がしてくる...お金さえあれば。
「いや、このお金は僕の大事な生活費。無駄にはできないぞ。
ああ、でもファミリアの入団試験の時にお腹が鳴ったら、それだけで落ちちゃうんじゃ...。
いや、そう考えるなら、今は何も食べずに明日の朝食べるべきだよね?」
財布の中にあるお金とにらめっこしながら、買うものを決めようとするけれど、なかなか決まらない。
いや決まることには決まるのだ。
そのあとすぐ、もっと美味しそうなものが目に入るだけで。
そうなるとまたお金とにらめっこが始まる。
「うわあ!?」
「ふぎゅ?!」
そんな風にしていたからだろう。
周りの物が目に入らなくて、誰か人にぶつかってしまった。
声からすると女の子だ。女の子にぶつかってしまったらしい。大丈夫だろうか。そんなことを考えながら手を差し出す。
「大丈夫ですか?」
「うん?ああ平気さ。ちょっとびっくりしただけ...おーい君の方こそ大丈夫かい?」
「あっ!...えっとごめんなさい。まさか神様が歩いてるなんて思わなくて。」
差し出した手をつかんだのは、黒くて長いきれいな髪を2つ横で結んでいる少女だった。
そのあまりの美しさに見惚れていると、立ち上がった彼女は僕の目の前で手を振りながら 僕に話しかけてくる。
すると、まるで冬に外で雪で遊んだ後、冷えた体をお湯に入れた時みたいに、体中がピリピリする。
これは《神威》!?
ビックリする位きれいな姿に、人間じゃ絶対に出せない《神威》。
僕はどうやら神様にぶつかってしまったらしい。
sideヘスティア
「ヘスティアちゃん、もう上がっていいよ。ああそれにこれも持って帰んな、残してたってどうせ腐るだけなんだから」
「えっ...そんなまだ時間には早いんじゃないかい?それにそんなにたくさんのジャガ丸くんも持って帰っていいのかい?」
「うちの人がね、腰をやっちまってね、どうしようもないんだよ。今から薬を買いに行かなくちゃいけないんだけど、ほらここからじゃ遠いだろう。
いまからじゃあ急いでも書き入れ時は過ぎちまうからね。ならもう店仕舞いしてから行こうと思ってね。」
ボクがジャガ丸くんの屋台で働いていると、店長のおばちゃんからまだ時間じゃないのに上がっていいと言われてボクはびっくりした。
それに余りのジャガ丸くんを沢山持ってきて、持って帰るように言う。
聞いてみると、おばちゃんの旦那さんが腰を痛めてしまったらしい。ボクに何かできることはあるか聞いたけど、おばちゃんは笑って。
いいって、いいって。たまには家に先に帰って、家族にお帰りって言ってやんな。そう言って屋台をしまいに行ってしまう。
「なんだか変な気分」
思ってもみなかった早上がり。
いつもの帰り道もなんだか違う気がする。そのままホームに帰るのは、なんだか勿体ない気がして、寄り道をしてみる。
いつもは一生懸命働いているから、気にしたことはなかったけど。あの屋台美味しそう、あそこの屋台は呼び込みの声が一番大きい。そんなことを考えながら歩いていたからだろうか。
「うわあ!?」
「ふぎゅ?!」
誰かにぶつかってしまったようだ。
「大丈夫ですか?」
「うん?ああ平気さ、ちょっとびっくりしただけ...おーい君の方こそ大丈夫かい?」
「あっ!...えっとごめんなさい。まさか神様が歩いてるなんて思わなくて」
ボクがぶつかってこけた衝撃で、ジャガ丸くんを落とさないようにしていると、僕の前に手が差し伸ばされる。
掛けられた声は多分、さっきボクと同時に悲鳴を上げた声。ボクがぶつかってしまった人物が、手を伸ばしている。
その手をつかんで起き上がり、ジャガ丸くんが無事なことを確認し、無事を伝える。そしてぶつかった相手に向き直り、相手の無事を確認しようとする。
白い髪に赤い瞳、そして全体的に小さい体。
ボクが日頃見ている
そんなウサギを思わせる彼は頬を染め、目を見開き、口は半分空いたまま、視線はどこか宙を彷徨っている。
少し近づき声を掛けながら、顔の前で何度か手を振る。ハッとしたように焦点があった彼は、こちらに謝罪の言葉を投げかけてくる。
続きました
続いてしまいました
少なくともこの連休が続くまでは毎日更新したいですね
ベル君オラリオに降り立つの巻きです
フロムのクロスオーバを名乗るのに
フロムのキャラクターが出てこない小説があるらしいですよ
この作品なんですが
おかしいですね予定ではホームに着いて
ほかの眷族とあいさつする予定だったんですが
私前作の後書きでも似たようなこと言ってましたね
偉大なる先人様たちが書いても書いても
書こうとしている所にたどり着かない
と言っていたのを今実感しています
次の話でこそホームにはたどり着く...はず