忍と灰と焚べる者と狩人とダンジョン 連載編 作:noanothermoom
25日も26日も同じようなものなのできっとセーフでしょう。
そんなことより簡単なおまけになるはずがやたら文字数が増えました。
何度かに分けるか、お暇なときにでもどうぞ。
リリがベル様の胸の中で号泣した翌日のことです。
リリはいつもの噴水で、ダンジョンに連れて行ってくれる冒険者を探していました。
ベル様はリリが裏切ったことを許してくれました。ですがそのままベル様と契約し続けるなんて、リリ自身が許せません。
その為ベル様との契約を切り、リリは新しい契約を探しているのです。
ですがか弱い
分かってはいたことですが、どれだけ売り込んでも結果が帰ってこないことに、少し疲れてしまいました。
噴水の縁に座って、少し休憩します。
何をするでもなく、道を行く人々を眺めます。
明るい顔で駆けていく人、疲れた顔でトボトボ歩く人、うれしさを隠し切れず弾むようにして歩く人。いろんな人が道を歩いていきます。
これまでのリリならなんて事の無い風景として流すか、或いは日向の道を行く人に嫉妬したことでしょう。ですが、ベル様の言葉に癒された今は世界が美しく見えます。
もうひと踏ん張りです。
せめて今日の宿屋代ぐらいは稼がなければいけません。気合いを入れて、立ち上がったリリの耳に聞きなれた声が届きました。
「サポーターさん、サポーターさん。冒険者を探していませんか?」
「ベル様...何で...」
おどけた様な口調でリリへと話しかけたのは、ベル様でした。
何故と問いかけるのが精いっぱいで、その後の言葉が出てこないリリへと、いたずらっ子めいた表情でベル様は続けます。
「混乱しているんですか?確かに急にこんなこと言われても困ってしまいますよね。でも簡単なことなんですよ?
経験豊富なしっかりしたサポーターをの力を借りたい、半人前の世間知らずの冒険者が、売り込みをしているんです。...また僕と一緒にダンジョンに潜ってくれないかな」
混乱から立ち直るとベル様の言葉が、初めてリリがベル様へと話しかけた時の言葉と同じだと気が付きます。違うのは
真剣な表情になったベル様はリリへと手を差し出します。
その手へとリリも手を伸ばし...途中で手が止まります。
「本当に、リリでいいんですか?」
「本当に、リリがいいんだ」
「けどリリは沢山悪いことをしてきました。こんなリリはベル様にふさわしく...」
「これまでの行いの悪さで、
本当にこの手を取ってもいいんでしょうか。リリの存在はベル様の邪魔になるのではないでしょうか。
リリの葛藤を見抜いたように、ベル様がリリの手を取ります。
リリは言います、こんな自分はベル様の隣にいていいはずが無いと。
ベル様は答えます、灰さん達の方がずっと悪いことしてきたから大丈夫だよと。
「もっと役に立てるサポーターは沢山います」
「...ちょっとカッコ悪いから言いたくなかったんだけど、まだ誰もサポーターの応募が無いんだ...」
「なんですか、それ」
もっといいサポーターはいっぱいいるというリリの言葉を聞いたベル様は、さっきまでのカッコよさが嘘のように萎れて、言いにくそうに結局サポーターの応募が無いことを明かします。
なんですかそれ。
先程までの姿との落差に、思わず笑ってしまいます。
「仕方ないですね、でも厳しく行きますからね」
「大丈夫だよ、厳しいのは灰さん達で慣れているから」
思わず笑ってしまったことで認めます。リリの負けです。
これ以上意地を張ることもできません。
ベル様の手を強く握り、厳しいですよ?と言えば、ベル様は灰さん達より厳しくなければ大丈夫と返します。
さっきから何度も出てくる灰達の存在に、思わずもう一度笑うと、ベル様も笑います。
うふふ、あはは。
ベル様とリリは笑いながら、ダンジョンへと向かいました。
ギルドで今日の稼ぎを換金し、これまで別れていた道まで来ました。
リリの方を見て手を振ろうとしているベル様へと、意を決して話しかけます。
「ベル様、お願いがあります。リリをベル様の、ヘスティア・ファミリアのホームへと連れて行ってください」
「...それは...危ないよ?」
リリのお願いに目を見開いたベル様は、しばし沈黙した後、危険であることを口にします。
分かっています。
リリが殺されていないのは、わざわざ殺しに行くまでもないと見逃されているから。わざわざ目の前に、しかも
「それでも...ベル様はリリの過去から逃げずに向き合ってくれました。なら今度はリリがリリの過去に向き合う番です。リリはここで向き合わなかったら胸を張ってベル様の仲間だと言えなくなるのです。お願いします」
「リリ...分かったよ。僕からもできる限りの口添えをする。行こう僕の家へ」
それでもこれは必要なことです。
リリが胸を張ってベル様の仲間だと言う為に、リリが投げ捨てた誇りを取り戻すために、そして何よりリリに真剣に向き合ってくれたベル様に報いるために必要なんです。
頭を下げてお願いするリリを見つめていたベル様は決断してリリへと手を差し伸べます。向かうはヘスティア・ファミリア
ベル様の先導でついに【廃教会】の前にたどり着きました。
崩れかけている教会は、日が落ち、月に照らされていることで、そのおどろおどろしさを増しているように見えます。
悪名高いヘスティア・ファミリアのホームということで、いくつもの怪談のような噂が流れていたのを知っています。
そのほとんどは馬鹿々々しいものだと切り捨ててきましたが、こうしてみるとそんな噂が流れるのも納得がいきます。
「足元が悪いから気を付けて」
「分かりました」
扉に手をかけたベル様はリリへと声をかけた後、扉を開けます。
甲高い軋む音と共に開いた扉の向こう側は、見通すことすら出来ない暗闇が広がっていました。
先に暗闇へと足を踏み入れたベル様に続き、リリもまた【廃教会】に足を踏み入れます。
あらかじめベル様から、教会部分はほとんど使っていなくて、地下室が居住空間と聞いていなければ、本当にここに人が住んでいるのかと疑うようなおんぼろ具合です。
暗闇の中、ベル様の背中について行くリリの耳に涼やかな声が届きました。
「お帰りベル君、今日はお客さんがいるんだね。紹介してくれないかな」
「...ただいま神様。えっと...僕のサポーターをしてくれることになったリリです」
ベル様の背中から覗き込むと、崩れた天井から射す月明かりに照らされた祭壇の上に、美しい少女が腰かけていました。
会話から察するに、彼女がこのファミリアの主神ヘスティア様でしょう。
ベル様によって紹介されたことで、ヘスティア様の視線がベル様からリリへと移ります。
ですが怯みません。リリのこれまでを思えば当然でしょう。
「初めましてヘスティア様「バタン!」なッ!!」
ヘスティア様へと自己紹介をしようとベル様の前に出た時、開きっぱなしだった扉が音を立てて閉まり、ベル様が地面に倒れた音がしました。
思わず振りかえると、ベル様を狼が押さえつけ、こちらへと鋭い視線を向けています。
「そんなに驚かなくてもいいじゃないか、君だって
「...いえ、その必要はありません。なぜベル様は狼様に押さえつけられているか聞いても?」
「これから厳しい話もするからね、ベル君がうるさくするのは想定済みだ。なら予め静かにさせておくべきだと思っただけだよ」
あまりの出来事に驚愕するリリへと、ヘスティア様がいっそ恐ろしさすら感じるほどに平然と言い放ちます。
扉が閉まったのは、リリを逃がすつもりが無いという意志表示。ベル様を動けなくしたのは、話に横入りされない為ですか。
ベル様から痛いほどの視線を感じます。きっと逃げてとか考えているんでしょね...甘いんですよ、ベル様は。
「それでは改めて、初めましてヘスティア様、ベル様のサポーター、リリルカ・アーデと申します。これからよろしくお願いします」
「ふん。ヘスティア・ファミリア主神ヘスティアだよ。早速だけど率直に言おう。ボクは君を信用できない」
改めてヘスティア様へと自己紹介をします。
面白くなさそうに鼻を鳴らしたヘスティア様は、直球で本題へと入りました。
ヘスティア様の言葉に驚いたのか、ベル様が動こうとして狼に制圧されるのが視界の端に映ります。
「大体の君の事情は灰君達から聞いている。同情する所が無いとは言わない、けど可愛い
「分かります。リリのことを信用できないことも、ヘスティア様がベル様のことを大切に思っていることも」
「とはいえだ、こっちとしても無闇に手荒な真似をしたいわけじゃない。ベル君と金輪際関わらないと誓うのなら手切れ金としてこれを渡そう」
ヘスティア様の言葉は実に正論でした。散々盗みを働いたサポーターから、改心したので眷族と一緒にダンジョンを潜るのを許してください、と言われて簡単に頷くような神など、眷族をどうでもいいと思っているソーマ様みたいな神位でしょう。
リリが頷き、理解していることをアピールすると、ヘスティア様は袋をリリの方へと投げます。リリの足元でジャラリと音を響かせ、形を崩した袋の口からヴァリスが覗きます。
ちょっと待ってください、それなりに大きな袋ですよ、まさかこの中にヴァリスが詰まっているとでもいうのですか。
思わず動揺したリリへと、ヘスティア様が語り掛けます。
「一億ヴァリス袋の中に入っている。さっきも言った通り、ベル君に金輪際関わらないというのなら君のも「お断りします」...ひょっとして報復を心配しているのかい?なら宣言しよう【君がこの提案を飲むのなら、ヘスティア・ファミリアは君に今後一切関わらない】女神ヘスティアの名前に誓うよ」
「お断りしますと言っているんです。お金の量や、リリの身の安全の話ではありません。リリはベル様のサポーターです、ベル様と関わらないなんて条件は飲めません」
一億。
提示にされた額に衝撃を受けます。
ですがその提案は飲めません。リリの返事を聞いて少し考えた後、ヘスティア様はリリの身の安全の保障をしました。
ですがやはりその提案は飲めません。きっぱりと断ります。
昔のリリなら喜んで飲んだでしょう、ですが今のリリはベル様のサポーター。ベル様と関わらないという条件は何があっても受け入れることが出来ません。
「決意は固いみたいだね。残念だよ、荒事にしたくないというのは本心だったのだけれど。でもどうしてもベル君から離れないというのなら...」
「お前の首を切り離す必要があるな...残念だ。ベルを頼むといった言葉に嘘は無かったのだがな」
「ッ!!」
リリの意志の硬さを理解したヘスティア様は、残念そうに首を振ります。
そして気が付いた時には、狩人が大鎌をリリの首筋に添えていたのです。
狼の時もそうでしたが、姿を現すまで、いえ存在に気が付くまで一切気配を感じられ無かった事に恐怖します。
これがオラリオ最恐のファミリア、ヘスティア・ファミリアの団員の実力。
隔絶した実力の差に戦慄するリリへと、心底残念そうにお前が獣であるのならば、狩らねばならんと狩人は語ります。
僅かな間【廃教会】にベル様が自由になろうと藻掻く音だけがこだまします。
恐怖に染まりそうになったリリの心でしたが、狩人の言葉がリリに思い出させました。
リリはベル様のサポーターです。
例え本当の意味でのベル様の仲間に成れたのが今日一日だけだったとしても、リリは信頼できる人と一緒にダンジョンに潜れたのです。リリは夢をかなえたのです。
命を粗末にしたいわけではありません。ですが、リリはベル様に受け入れてもらって、胸を張って生きられたのです。後悔はあります、未練もあります。ですがベル様に引き上げてもらったのに、ベル様から離れるくらいなら死んだほうがましです。
「最後に言い残すことはあるかな。もし思い直すのなら今の内だ、ベル君に近寄らないと約束するのなら無事に帰そう、手切れ金も渡そう、これからの身の安全も保障する」
「そうですね。ベル様、たった一日だけ、リリが本当にベル様の仲間に成れたのは今日だけでしたが、楽しかったです。嬉しかったです。どうかご自分のせいでリリが死んだと思わないでください。リリはリリの意志で死へと向かったのですから」
「それが遺言で良いのか?...約束しよう、一撃だ。痛みも苦しみもなく、仕損じることもなく命を摘み取ろう」
ベル様へと遺言を残します。
ベル様は必死に暴れますが、狼に抑え込まれて動くことが出来ません。
低い声で狩人が約束します。
昨日キラーアントに囲まれた時と同じ命の危機。ですがあの時ほど後ろ向きな落ち着きでは無く、前向きな落ち着きに満たされています。
大鎌の刃がリリの首から離れ、振り下ろされようと「女神ヘスティア。飾りが足りない、しまってあった分はあれで全部か?」する前になんか来ました。
「く、焚べる者君?ちょ、ちょっと待っておくれよ、飾りは確か引き出しにもう少し入っていたはずだ」
「了解した。見せてやろうミラのルカティエルの飾りつけ伝説その序章を」
地下から上がって来た
リリたちの思いが統一されます、どうするんですかこの空気。
えっ?まさかリリこの空気の中で死ぬんですか?いや道を違えるくらいなら死を選ぶ覚悟はありましたけど、この空気で?この空気の中でリリ死んじゃうんですか?
明らかに狼狽えているヘスティア様は、ベル様を見てワタワタ、狼を見てワタワタ、狩人を見てワタワタ。一通り狼狽え終わるとコホンと空咳をして「サポーター君。君に後悔はないのかい」と話しました。
あっまだ続けるんですね。
そう思ったのはリリだけでは無かったようで狩人から「まだ続けようとするのか...」と呆れたような呟きが聞こえました。
「うるさいぞ、狩人くん。ううん。...一度考え直すべきだ、いいかい命というのは「おいヘスティア。茶番はまだ終わらないのか料理が冷めるぞ」...」
「...いい加減諦めるべきだろう。リリルカ・アーデが嘘を吐いていないことも分かったのだ。それで満足しておけ」
呆れられているにも拘らず、続けようとしたヘスティア様の努力は、地下から上がって来た灰によって打ち砕かれました。
リリへと指さした姿勢のまま固まってしまったヘスティア様へと狩人が、諦める様に諭します。
どういう事でしょうか。どうやら本気でリリを殺そうとしていなかったようですが、茶番や飾りとは一体何のことでしょうか。
解放されたベル様の背に隠れながら、連れられた地下室には...
【リリルカ・アーデ入団おめでとう】と書かれた横断幕と、机に並べられた料理の数々がリリを出迎えました。
...は?
ええっと、これはどういうことなんですかね?
とりあえず、状況を整理しましょう。
リリはベル様とファミリアの拠点【廃教会】にやってきました。
そこでベル様の主神であるヘスティア様から、ベル様に近づかないように言われ。
それを拒否して殺されそうになったので死ぬことを受け入れていたら、なんか処刑が流れて、その後連れてこられたところでは、入団を歓迎されている。
...どういうことですか。
とりあえずベル様にどういう事か聞こうと思ったのですが、一目見ただけでわかります。あっこれだめですね。
口を半開きにして、目をひん剥き、今にも倒れそうな表情です。
とりあえず、椅子に座らせて介抱していると、ヘスティア様がやってくるのが見えました。
「やあサポーター君、さっきはごめんよ。主神としては君が本当に改心したのか調べなきゃ、ベル君を預けることなんてできないからね。まあこれからは仲良くやろうよ」
先程までの態度と打って変わって、気さくでフレンドリーです。リリのしてきたことを思えば、邪険にされる理由はあっても、こんなに親しくされる理由はありません。
どういうことかと尋ねると、ヘスティア様曰くあれは試験だそうです。
昨日帰ってきたベル様の様子から、リリとの契約を続けるだろうと予想したヘスティア様達は、ベル様に監視を付けていて、何かあれば助けに入れるようにしていたのだとか。何事もなくダンジョンから帰ってきて、別れると思った時に、リリがベル様に【廃教会】に連れて行ってくれるようお願いしだした。お客が来るにも拘らず、何の用意も出来ていないヘスティア様たちは、試験としてさっきの茶番をリリに課し、時間稼ぎを行ったそうです。
...なんなんですか、本当に。
「とは言え、もしも君が逃げ出したり、お金を受け取ったりしたなら、ベル君にふさわしくないと判断して、帰ってもらうつもりだったよ」と話を締めくくったヘスティア様は、これからよろしくとリリに握手を求めます。
リリの目の前に差し出されたヘスティア様の手をリリは...思いっきり弾きました。
「痛ったぁぁぁ、何をするんだい!!」
「何をするんだはこっちのセリフです!!なんなんですか、時間稼ぎのためにリリに死の覚悟をさせたんですか!?。しかも何ですかこの入団おめでとうって。普通あんな経験した後『ウチのファミリアへようこそ』と言われて『わーいこれからよろしくお願いします』なんてことにはなりませんよ!!
大体、リリについて調べたのでしょう?ソーマ・ファミリアについても知ったのでしょう?なら簡単に
叩かれたことで大袈裟に痛がるヘスティア様へと、思いの丈をぶちまけます。
叫んだことで、注目を集めたようです。
いつの間にやら灰がヘスティア様の後ろに立っていました。
「なるほど、つまりはこれからソーマ・ファミリアの拠点に殴り込みをかまして、お前の改宗を認めさせればいいんだな?」
「は?」
「どちらにせよ、
「いやいや、ちょっと?」
「なるほど、ミラのルカティエルの伝説に、また一つ新たな一幕が生まれるな」
「人の話を聞けと言っているんですよぉぉぉぉぉ!!!」
「嗚呼どうして空はあんなに綺麗なのに、リリはこんなに疲れているのでしょう」
今からソーマ・ファミリアにカチコミかまそうとする灰達を止めた後。リリは【廃教会】の前で黄昏ています。
あの後は大変でした。悪乗りする
...何でこのファミリアに一番関係の無いはずのリリが、大嫌いなソーマ・ファミリアを護るために、一番苦労しているんでしょうか。
いっそこのまま帰ってしまおうかとも思いますが、ベル様はここ数日の出来事に疲れてしまったのか、先ほどの騒ぎでも椅子に横になったまま寝ていたのです。
そんな姿のベル様を置いて帰るというのは、どうにも気が進みません。
とは言え、ヘスティア・ファミリアのノリについて行くことが出来ないリリは、こうして喧騒から離れて時間を潰しているのです。
...ですがこのファミリアは、リリを落ち着かせてくれないようです。
「こんなところで黄昏てどうした?ミラのルカティエルの伝説の話する?」
「いえ、まあちょっと疲れてしまいまして...あとルカティエルの話はいりません」
建物の陰から現れたのは、いつぞやカヌゥ達に殴りかかった男。絶望を焚べる者でした。
すでにあの時にはリリのことを怪しんでいて、情報を集めていた時に偶々リリに出会ったそうです。
なんと言いますか、すべて灰達の手のひらの上だった気がして徒労感が凄いです。
ルカティエルの話を断られたからか、少し落ち込んでいる様子の絶望を焚べる者は、ぽつりぽつりと語ります。
「女神ヘスティアの言葉だが、あまり気にしなくて良い。どうせ貴公に当たりが強かった理由の7割ほどは、最近ベルがサポーターの話ばかりするからとかその辺なんだから」
「あーうん...そうなんですね」
改心しましたと言って簡単に信じられるわけがない、というヘスティア様の言葉は、リリに少なくない量刺さっていたというのに、その理由がベル様がリリの話ばかりするからとか。
疲れのあまり、脳内の考えも適当になってきている気がします。ですが、そんな緩い空気も続いた言葉に吹き飛ばされます。
「本当に良かったのか?カチコミまではいかなくても、ソーマ・ファミリアとの縁を切るのに協力位はするぞ?ずっと離れたいと思っていたのだろう?」
「...本当に、なんなんでしょうねあなた方は」
「ミラのルカティエ「それはもういいです」」
「どうなんでしょうね、ベル様の為にも縁を切るべきだとは思うのですよ。ですが、その為にあなた方の力を借りるのは、違うんじゃないでしょうか。
リリはリリの力でソーマ・ファミリアから離れてこそ、本当に胸を張って生きていけるのだと思うのですよ」
戯言のような言葉から、鋭く真実を突き刺す言葉が出てくるのですから、聞いている身としてはたまったものではありません。
思わず漏れた言葉に対して、返って来た戯言を流してリリは考えます。
リリはこれまで流されるまま生きていた弱者でした。ですがベル様のおかげで、自分で決めて、自分の意志で生きる道を歩み始めることが出来ました。なら灰達の力を使って自由になるのは違います、少なくとも与えられてばかりいる
リリの言葉を聞いた絶望を焚べる者は「だ、そうだ」と陰へと声を掛けます。まさか!?
リリの予想は当たりました。
建物の陰からぞろぞろとヘスティア・ファミリアの面々が現れます。
どうやら盗み聞ぎされていたようです。
ばつの悪そうな顔をしたヘスティア様が、リリに話しかけます。
「あーそのー...ごめんね。君の気持ちを考えず、こちらの都合ばかりで動いていると怒られて少し頭が冷めたよ。君にはうちの子になって欲しかったけど、君が決めたのなら諦めるよ。ただこれを受け取って欲しい」
「これは?」
「ヘスティアメダル。うちのファミリアの団員が持つ、団員の証みたいなものだよ。たとえ君がソーマ・ファミリアに所属していても君はもうボク達の家族だ。...嫌だったら返してくれてもいいよ?」
渡されたのは手のひら大のメダリオン。表面に刻まれた【
確かな繋がりの証。ずっとほしかった家族との絆を渡されて思わず涙ぐみます。ヘスティア・ファミリアの皆さんを見つめると、優しく受け入れてくれます。
...ただベル様だけが、奇妙な顔をしています。
どうかしたのか聞いてみると、酷く言いにくそうに「僕それ貰った覚えありません」と言いました。
「え?」 「んん?」 「なんと」 「おやおや」 「おいおい...ヘスティア?」
「え...いや、いやいやいや...そんな...忘れていたなんて、アッ!!」
「忘れていたんだな、忘れていたんだろ、忘れていたと認めろ」
「ご、ごめんよベル君。君にもこれを渡そう」
...本当になんですかね、この人たちは。ですが悪い気はしないのですから、リリも大概なのかもしれませんね?
ヘスティアメダル
ヘスティアの名前が神聖文字で刻まれたメダリオン。
使用することで誓約
ヘスティアは灰達の旅の物語を聞いて
帰る場所の無い彼らの帰る場所となることを決意し
故にファミリアを創ったその決意の証
どうも皆さま
クリスマスの予定?ずっと小説書いてました...私です
総合評価が1000を超えました
ありがとうございます
どころ切り取っても私得しかない拙いこの小説が続きますのも
偏に評価してくださったり、感想を書いてくださったり、見て下さる皆様のおかげです
しかしおかしいです
本当はこのお話
前の話の終わり際にくっつける予定だったのですが
やたらと話が長くなったので他の話とくっつけて
一話とする予定だったんですけどね
この話も無茶苦茶長くなりました
最近話が長くなる病の進行が酷いです
来年はもっとこうサクっと読める小説を書いていきたいですね
とりあえず年内の投稿はこれが最後となります
次の投稿は多分お正月を過ぎてからになりますので
よろしければ気長にお待ちください
それではお疲れさまでしたよいお年を
以下はリリルカ・アーデに関する覚書みたいなものです
つまりは見なくてもいい奴です
お暇な方はどうぞそうでない方はお戻りください
リリルカ・アーデ
種族 小人族
所属 ソーマ・ファミリア
ソーマ・ファミリアに所属する小人族にして、ついていた冒険者から盗みを働いていたサポーター。
盗んだ相手の冒険者に追いかけられていた所、ベルに助けられ次の獲物に選んだ。
その相手がヘスティア・ファミリアの団員とは知らないままに。...可哀そう
時折関わることとなった灰達に怯えながらも、お人好しのベルに感化され世間知らずのお人好しと言いながらサポートするようになった。
自身がかつて盗みを働いた冒険者とベルが話しているのを見て、ベルに見捨てられると思いその前にベルを裏切る。
その結果、同じソーマ・ファミリアの冒険者に嵌められ、命を落としそうになったところをベルに救われ、改心。その後ベルに誘われ正式にベルの仲間になる。
手元にある設定では、ベルに惹かれながらもそんな訳ないと自身の恋心を見ないふりを続けていたとあるのですが、どうですかね。
読み返すとこいつベル君好きすぎない?と思ったり