忍と灰と焚べる者と狩人とダンジョン 連載編   作:noanothermoom

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皆様新年あけましておめでとうございます。
...まあも三が日も過ぎたのですが。

皆様に新年の挨拶をしたいという気持ちと、年末に沢山投稿したしなあという気持ち、あと年末年始の雪かきのダメージによってこんなタイミングでの投稿となりました。

短いですがどうぞ


次なるざわめき

 【バベル フレイヤの居室】

 

 「そう、あの子は見捨てなかったのね」

 

 静寂が満ちた部屋に、部屋の主フレイヤの声が響く。

 

 「...如何なさいますか。邪魔だとおっしゃるのなら...」

 

 「いいえ。あの子は護ると決め、それを達成した。魂の輝きはより増したわ。」

 

 フレイヤの前に跪くオッタルは、必要ならあの小人を消すことを進言しようとするが、それをフレイヤは首を振り止める。

 むしろ覚悟故により輝きが増したことを喜び、笑みを浮かべる。

 美しい笑み。男なら、いや女であったとしても見惚れるその笑み。

 

 「だけど、人の成長には冒険が付きものよ。あのままでは()を破ることが出来ないわね」

 

 「...新たな試練を課すと?灰達が黙ってはいないでしょう」

 

 だがその笑みは長くは続かなかった。

 更なる輝きを、更なる成長を、促す主神の言葉に、オッタルは思わず口をはさむ。

 以前の邂逅は、警告で済んだ。だが二度目となれば、ただでは済まないだろうと。

 

 「あら?あなたにとってもいい機会じゃないかしら。譲られた勝利、虚構の最強の名を真実にするいい機会でしょう?」

 

 「そのようなことは...御身にもしものことがあれば...」

 

 危険であると止めようとする眷族の姿に、楽し気に灰とぶつかることこそが、あなたの願いでしょう?と揶揄う様に笑うフレイヤ。

 その言葉に、頭に焼き付いた嘲笑うような灰の視線、挑めど、挑めど、のらりくらりと躱され相手にされなかった記憶甦る。だが、気を悪くした素振りも見せずオッタルは、続けて忠告しようとする。

 だが、フレイヤからの言葉に、オッタルの言葉は止まる。

 

 どんなに誤魔化したってダメよ。だってあなた

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

 楽しげに笑うフレイヤの目の前、恭しく主神を見つめるオッタルの顔は、主神に劣らず楽し気に歪んでいた。

 

 

 

 

 

 【ダンジョン10階層】

 

 「また...話せなかった...」

 

 焼き焦げた跡が残るダンジョンの一角にて、アイズは小さく呟いた。

 

 バベルの中にある、ゴブニュ・ファミリアの工房へと寄った帰り道。

 ギルド職員であるエイナ・チュールと出会い、担当している冒険者を助けて頂いてありがとうございます、とお礼をされて、彼女があのウサギのような冒険者の担当をしていることを知ったアイズ。

 彼とは幾度となく出会い、謝る機会はあった。なのに、いつも逃げられてしまったり、気を失っていたり、どうにも間が悪く、未だ謝れていない。

 ひょっとして彼に怖がられていて、避けられているのではないかとすら疑っていたアイズは、むしろ感謝していました、というエイナの言葉に救われた気持ちになった。

 さらにエイナの口から、彼が僅か一ヶ月ほどで10階層まで潜れるようになったということを聞き、初めて会った時はミノタウロスに怯えるだけだった彼が、急成長を遂げた秘密は何だろうか、それを知ることでさらなる成長を自身も望めるのではないかと、一度ゆっくりと話をしたい新たな理由も生まれた。

 

 そんな時、彼のサポーターとなった小人族が、何かしらの企みに巻き込まれていることを知ったエイナが、アイズへと手助けを求め、アイズはそれに答えた。

 だが、上手く行けば話の一つも出来るかもしれないと期待を胸に、10階層へと急いだアイズを待ち受けていた物は、激しい戦いが行われた跡だけ。草原を広範囲に焼き尽くした跡を見て、こんなことをできるのは、同じファミリアのリヴェリアを除けば、灰位の物だと考える。

 彼の先輩である灰がすでに彼を助けていて、事は終わってしまったのだと理解したアイズは肩を落とし、落ち込んだ。

 

 「どうしていつもこうなのかな...」

 

 エイナとの会話によって、彼との会話を楽しみにしていた分、その悲しみもまた深いものになってしまった。

 人形のような、いっそ作り物めいた物すら感じる美しい顔に、悲しみを滲ませて落ち込むアイズ。

 その美しい外見とは裏腹に、行動はまるっきりいじけてしまった子どものようだった。

 それこそ、ここがダンジョンで無ければ、蹴り飛ばす為の石ころでも探している子どもと見間違えられてしまう様に、下を向いていたアイズだが、その視界の端に光るものを認め、それに注視する。

 

 「これは...?」

 

 ダンジョンの地面に落ちていた、激しい戦闘に巻き込まれなかった幸運な緑玉石のプロテクターを拾ったアイズは、一人首を傾げた。

 

 

 

 

 

 【ソーマ・ファミリア 拠点】

 

 ソーマ・ファミリアのホームにて怒号が響く。

 声の主はザニス・ルストラ。

 

 ソーマ・ファミリアの団長であり、主神(ソーマ)が興味を示さない為ファミリアの経営を一任されている男だ。

 尤も、ソーマに経営を任されていることを良い事に、上納金の一部を懐に入れる、【神酒(ソーマ)】を餌に団員に犯罪をさせる、など私利私欲を満たしており、ソーマ・ファミリアの悪評の殆どの責任はこの男にあると言っていいだろう。

 当然、ザニスにすり寄り、甘い汁を啜っている団員以外からの評判は悪い。それでも、ソーマが酒造り以外に興味を示さない事と、LV.2というオラリオの冒険者の中でも上澄みに位置する強さで、自身に異を唱える団員を排除し続け、自身の地位を守っていた。

 

 確かに、団長という地位と、LV.2という力、どちらも強大な物であり、逆らうことは難しいだろう。...あくまでソーマ・ファミリアの中ではだが。

 

 例えば、オラリオ最大派閥の片割れロキ・ファミリアの幹部陣とは比べるまでもない。

 例え二軍、いや三軍と呼ばれるような名の売れていない団員であったとしても、ザニスよりも強い者は大派閥、中派閥になれば幾らでも居るだろう。

 だからこそ、団員達をコントロールし、他のファミリアとの小競り合いが起きればその団員を切り捨て、大事になることを避け続けてきた。

 

 自身の欲を満たすのに危険を他者に押し付け、冒険なんて危険な行動からは距離を置く。

 これまでも、そしてこれからも、逆らえない団員と無関心な主神をうまく使い、賢く生きていくのだと、笑っていられたのはソーマ・ファミリアのホームに送り付けられた三人の首を見るまでだった。

 

 一体どれだけの苦痛を味わえば、これほどまでに人の表情というものは歪むのか。

 死体程度で揺らぐ繊細さなんてものを持ち合わせていないだろう自身の取り巻き達ですら、思わず目を背け、中には堪え切れず吐きだす者もいる。

 

 「間違いない。ヘスティア・ファミリアからの【贈り物(ギフト)】だ...」

 

 「なっ、こいつらについて何か知っているのか!」

 

 ガタガタと体を震わせながら、一人の団員が呟く。

 部屋にいた全員の視線がその男に突き刺さる。

 怯えながら男が語った事には、送り付けられた首の持ち主、カヌゥとその取り巻きは、小人族のサポーターが金をため込んでいると聞いて、ダンジョンの中で嵌める計画を立てていたらしい。

 その後ダンジョンで何があったのかは分からないが、間違いなくヘスティア・ファミリアの怒りを買ったのは確かだろう。

 

 「ヘスティア・ファミリアと揉めたってのか」

 

 声が震えなかったのは奇跡に近い。

 それでも、怯えを隠し切れない言葉だった。

 

 ヘスティア・ファミリア。

 僅か五人、片手で足りるだけの人数しか眷族がいないファミリアである。にも拘らず、最恐と恐れられている理由の一つに、ギフトと呼ばれる警告方法がある。

 とあるファミリアに属する人物とヘスティア・ファミリアが揉めた後、そのファミリアの拠点へと揉めた人物の首が送られてきたのだ。

 それだけなら、質の悪い挑発と取れるだろう。

 だが、この【贈り物】が恐れられた理由は、送られてきたのを見たのが誰もいないことと、何があろうと必ず送り届けられるという点だ。

 

 曰くある闇派閥が刺客を送り込んだ。

 当然、その刺客は失敗したが、首は厳重に隠されていたはずのアジトの最奥部に、いつの間にか置かれていた。

 

 曰くある悪徳商人が、暗殺者に依頼をした。

 当然、その暗殺者は失敗したが、首は暗殺者と直接会ったこともないはずの商人の元へと届けられた。

 

 曰くあるオラリオ外の国が、ちょっかいをかけた。

 当然、何もできず送り込まれた人材は殺されたが、首はその日のうちにオラリオから遠いその国の玉座の上に鎮座していた。

 曰く、曰く...

 

 【贈り物】とは、ヘスティア・ファミリアからのお前のことを知っている、お前を殺すのはたやすいという脅しだと、裏の世界で囁かれる様になるのにそれほど時間はかからなかった。

 

 【贈り物】を受け取った相手に出来ることは二つ。

 ヘスティア・ファミリアから手を引き何も無かった事にするか、警告を無視して全滅するか。

 

 「ど、どうするんだ」

 

 縋りつくようにザニスへと、怯えた団員達がどうするのか尋ねる。

 

 「どうするも、こうするも。ヘスティア・ファミリアと揉めたのはあいつらだ。ソーマ・ファミリアは関係ねえ」

 

 吐き捨てる様にザニスが知った事じゃないと切り捨てる。

 ともすれば、団員を切り捨てたとすらとられかねない決断。

 だが、その決断を聞いた周囲の団員は露骨に安心している。

 

 その様子を見ながら、ザニスは考える。

 小人族のサポーター。

 十中八九リリルカ・アーデのことだろう。

 あいつの魔法はとてつもない価値があった。だが、

 

 死ぬのなら自分達だけで死にやがれ!!

 

 心の中で絶叫し、頭と運の悪い(死んだ)団員のことを忘れる。




どうも皆さま

雪かきで腕が痛い...私です

前書きにも書いたのですが年末の連続投稿と、皆様へ新年の挨拶をしたい気持ちがせめぎあった結果が、この微妙な量の文章と、微妙な時間の投稿です

今年も私とこの小説をどうぞよろしくお願いします

それではお疲れさまでしたありがとうございました
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