忍と灰と焚べる者と狩人とダンジョン 連載編   作:noanothermoom

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空腹
心が弱るときはお腹が減り体が冷えたとき
空腹時の思い付きにいいものはない
腹が減っては戦はできぬ

そんな言葉と共に知られる
生きていくうえで切り離せないつらい状況

だが生きていれば空腹になるということは
ひっくり返せば空腹であることは生きているということ
そう受け取る者も世の中には多い

いずれにせようまく付き合っていくしかないのだ最期の時まで


空腹を癒して

 神様にぶつかってしまった。

 そう気が付いた僕は、とにかく頭を上下させて謝っていた。

 

 もしかすると神様同士のつながりで、ぶつかってきたのに謝りもしない無礼な奴がいた、なんて伝わるかもしれない。

 そうなれば、ただでさえ希望が見えないファミリアに入る、という僕の目標は絶望的なものになるだろう。そんな考えを含んでいた行動。

 

 だけど一番大きかった理由は、僕は神様が立派なことを知っているからだ。

 

 人はモンスターよりずっと弱い。

 なんでも大昔、ダンジョンからモンスターが出てきた当初は、人間はモンスターに追われて、どんどん住む所が無くなっていったらしい。

 

 このままではどこにも住めなくなる。そんなときに、神様たちが空にある神様の住む世界(天界)から降りてきて、人に神の恩恵を与えたのだ。

 

 神の恩恵を受けた人たちは、モンスターたちに負けないで戦い続けて、いつしか英雄と呼ばれるようになった。

 寝物語でおじいちゃんが話してくれたそれを聞いた時、僕の心には英雄へのあこがれと、神様たちへの感謝の気持ちが生まれた。

 

 だから誠心誠意、心が伝わるように謝ったんだけど、僕がぶつかってしまった神様は、ぽかんとした顔をした後、僕と同じように頭を上下させた。

 

 「そんな...神様頭を上げてください。悪いのは前を見てなかった僕なんですから。」

 

 「いや前を見てなかったというなら、ボクもそうだ。ボクだって悪いんだよ。」

 

 

 そんなことを言いながら、互いに頭を下げて、相手の頭を上げさせようとする。

 そんなやり取りを続けるうちに、「食べ物はまだか」と言わんばかりに、今まで何も食べていなかった僕のお腹から、抗議するようなくきゅるるる...という音が鳴る。その音を聞いた僕と神様は顔を見合わせ、どちらともなく笑いだしていた。

 

 「お腹が空いているのかい?ならこれを分けてあげるよ。バイト先のあまりもので冷えちゃっているけれど、遠慮せずにさあお食べよ。」

 

 「じゃあいただきます。」

 

 

 ひとしきり笑った僕と神様。

 神様は思い出したように、自分の荷物からジャガ丸くんという食べ物を取り出し、僕の手に押し付けるようにして渡した。そして自分も一つ取り出すと齧り付き...

 

 フゴッ!?

 

 奇妙な声を出した。

 

 「だ、大丈夫ですか?」

 

 「いや大丈夫だよ、ちょっと衝撃が強かっただけ...まさか小豆クリーム味が当たるとは

 

 

 目の前で起きたことに驚いた僕は、神様に近づこうとするが、手のひらをこちらに向けて制止する神様。

 その言葉通り、驚いただけで特に何かがあったわけでもないようだ。

 そんな出来事の後で、手の中にあるこれ(ジャガ丸くん)を口にするのは勇気のいることだけど、思い切って口にする。

 

 ...おいしい。

 かみしめる度おいしい味が染み出てくる。お腹が空いていたこともあり、僕はすぐに、食べることに夢中になった。

 

 

 

 

 

 「ふーん、じゃあベル君はそのおじいちゃんの言葉がきっかけでオラリオに?」

 

 「そうです。僕の唯一の家族だったから...ちょっと変わった所もあったけど」

 

 

 それほど大きいわけでもないジャガ丸くん、それを食べきるのにそれほど時間はかからなかった。

 僕が食べ終わるのとほぼ同時に、神様も食べ終わる。お腹に食べ物が入り、動く気にならずゆったりする僕に、神様はいろいろと話しかけてきた。

 ジャガ丸くんの屋台で働いていること、そこの旦那さんが腰を痛めてしまい、薬を買いに女将さんが行かなくちゃいけなくなったこと、そのおかげで早く帰れること、お土産としてもらったのがさっき分けてもらったジャガ丸くん(の一部)だということ。

 

 そのおかげで僕はジャガ丸くんをもらえたんですから、旦那さんには悪いですけどラッキーですね。

 そう言った僕に対して神様は「次は君の番だぜ」といった視線を向けてくる。

 

 お腹が空いているところに、食べ物を恵んでもらった僕には、断るという選択肢はなく、僕は自分の話を話し始める。

 

 田舎で祖父...おじいちゃんと二人暮らしだったこと、おじいちゃんから毎夜寝物語としていろいろな英雄譚を聞かされたこと、おじいちゃんが居なくなった後英雄になろうとオラリオを目指したこと、...そして今日一日のこと。

 

 

 

 「うん...なら...これを...したら...

 ベル君。ボクは君さえよければ君をボクのファミリアへ勧誘したいと思っているよ」

 

 「えぇっ一体何でですか僕なんて...」

 

 「理由?そんなものボクがしたいから。それだけで十分さ」

 

 間に挟まれる相槌に促され。うっかり、とてつもなく恥ずかしい今日一日の出来事まで話してしまった。そのことに気が付き僕は頭を抱える。

 そんな僕を無視して、神様は何かつぶやいている。

 そう思っていると急に名前を呼ばれる。

 びっくりして跳ねるように背を伸ばす僕に、神様はファミリアへの入団のお誘いをかけてきた。

 

 突然のことにびっくりして、何を言えばいいかわからない。

 途切れ途切れ何とか口にしたのは、何故?という疑問。

 

 それを打ち砕くように、胸を張り断言する神様。

 その姿があまりにも美しく見えたから僕は

 「はい、よろしくお願いします。」

 そう返事をしていた。

 

 運命の瞬間と言うには、あまりにもきっかけが馬鹿らしく。思い出と言うには、あまりにもありふれた場所での出来事。

 それでも僕の運命はこの時大きく変わったんだ。

 

 

 

Sideヘスティア

 

 ぶつかってしまった。そう気が付いた少年は、頭を上げたり下げたりして謝っている。

 その必死な様子を見れば、彼が上辺だけの謝罪を繰り返しているのではなく、本心から相手を敬い、そして謝っているのが解る。

 

 ボクはめったに見られない本気の謝罪に気を取られ、一瞬ポカンとするがすぐに謝る。

 

 只でさえ評判の良くないボクのファミリア(ヘスティア・ファミリア)、その主神である僕が、見るからにオラリオになじめていない新人に一方的に謝らせていた。

 そんな風説がたてば、新しい加入者(眷族)は絶望的だろう。そういう考えも心のどこかにあった。

 

 だがボクを動かしたのは、久しく向けられていなかった、まじりっけなしの敬意だった。

 

 勘違いしてほしくないのは、ボクはボクの子どもに対して、不満を持ち続けているわけではないということだ。

 ただ日ごろから、もっとボクのことを敬ってもいいだろう。そう思い日々過ごしているだけで。

 そんな中久しぶりに受けた崇拝の念。

 多少の失敗も許すのが神情というものだろう?そう心の中で誰も聞いてないし、知られて居ないのに言い訳する。

 

「そんな...神様頭を上げてください。悪いのは前を見てなかった僕なんですから。」

 

「いや前を見てなかったというならボクもそうだ、ボクだって悪いんだよ。」

 

 互いに謝りあいながら、ボクと少年は相手に謝罪を受け取らせようとする。

 ふと、何やっているんだボクは。そんな気持ちが浮かんだ瞬間、くきゅるるる...少年のお腹が鳴いた。

 思わず顔を上げれば、お腹を押さえ恥ずかしそうに、こちらを見る少年と目が合い、思わず吹き出してしまう。そしてそれにつられるように笑いだす少年。

 

 「お腹が空いているのかい?ならこれを分けてあげるよ。バイト先のあまりもので冷えちゃっているけれど、遠慮せずに、さあお食べよ。」

 

 「じゃあいただきます。」

 

 ひとしきり笑い、ボクは荷物からお土産にと渡されたジャガ丸くんを渡す。

 少し冷めてしまっているだろうが、それでも十分に美味しいだろう。

 少年(ベル君)の手に押し付けるようにして渡した後。ボクの分も取り出し、かぶりつく。

 途端に口の中に広がる、小豆の風味とクリームの甘み、あまりの衝撃にちょっと変な声が出る。

 

 ジャガ丸くん小豆クリーム味

 その名前から想像されるゲテモノ感とは裏腹に、品質の良い小豆と甘さ控えめのクリーム、そしてそれらをしっかりと受け止めるジャガイモ自体の旨味。これらを絶妙なバランスで成り立たせた一品。熱狂的なファンも多い。

 

 そんな食レポじみた考えが脳裏をよぎる。

 美味しいのだ...美味しい事は美味しいのだ。

 ただ覚悟せずに口の中に入れる味ではないだけで。

 

 「だ、大丈夫ですか?」

 

 「いや大丈夫だよ、ちょっと衝撃が強かっただけ...まさか小豆クリーム味が当たるとは

 

 

 こちらを心配するベル君に、手のひらを向け制止する。

 事実変なものが入っているわけでもなく、ビックリしただけなのだから。落ち着いたボクは、おっかなびっくりかじりつき、味を確かめるように咀嚼し、そのおいしさに目を光らせるベル君を眺める。

 よかった、これで妙な味に当たったら罪悪感がひどい。そう考えながらボク自身ももう一口食べる、衝撃に備えながら。

 

 

 

 

 

 「ふーん、じゃあベル君はそのおじいちゃんの言葉がきっかけでオラリオに?」

 

 「そうです。僕の唯一の家族だったから...ちょっと変わった所もあったけど」

 

 

 食べ終わった後。

 お腹をさすりながら、ゆっくりするベル君にボクは色々話しかける。

 アルバイトをしていること、アルバイト先の旦那さんが腰を痛めて早上がりになったこと、さっき分けたのはお土産にともらったものなこと。

 話し終わったボクにベル君は、いたずらっ子めいた表情で、そのおかげで一緒に食べられて幸運だったと言う。

 

 その表情にドキッとしたのを隠しながら、「ベル君の話が聞きたいな」そう口にすることなく見つめると、伝わったのか話してくれる。

 

 田舎でおじいちゃんと二人暮らしだったこと、毎夜寝かしつけるために話してくれた英雄譚、そしてそこに登場する英雄に憧れたこと、おじいちゃんが居なくなった後オラリオを目指して英雄になろうと決めたこと、そして今日一日中オラリオ中のファミリアに入ろうとしたがどこもダメだったこと。

 

 

 

 

 

 「うん、どこにも所属してないなら問題ないよね。これを逃したらきっと後悔する。

 ベル君。ボクは君さえよければ君をボクのファミリアへ勧誘したいと思っているよ」

 

 「えぇっ一体何でですか、僕なんて...」

 

 「理由?そんなものボクがしたいから。それだけで十分さ」

 

 

 頭を抱えているベル君に聞かれないよう、小さくつぶやきながらボクは考えを纏める。

 意を結して声をかける、弾かれたように背を伸ばすベル君。

 ファミリアへの勧誘を行うと、混乱しているのが目に見える。

 

 伸ばした背をだんだん曲げながら、ベル君は問う。勧誘した理由は何ですかと。

 

 ボクは胸を張って答える、理由なんてない。

 

 しばらくの沈黙...十秒か一分か。

 そんなに経って居ないなんて分かり切っているのに、長く感じる無言の時間。

 

 もっとしっかりと考えてから答えるべきだった。そう後悔の念が頭をよぎると同時に

 「はい、よろしくお願いします。」

 ベル君はうなずいてボクの手を取った。

 

 これが運命だなんてボクは言わない。出会いの場所もあまりにも様にならない。

 だけどオラリオの暗黒時代。そういわれたあの時に小道で出会った彼、その時と同じくらい、いやもっと大きな出会いだとボクは確信している

 




ごめんなさい
またしてもホームまでたどり着きませんでした
大丈夫かベル君、君はいつになったらダンジョンに行けるんだベル君
このままダンジョンに潜らずエタる危険性もあるぞベル君

まあ冗談はさておき
プロローグ入れて三話もたつのに題名に入っている要素がいまだ一つも出てこない小説があるらしいです
この小説なんですがね
大丈夫ですかね読者の皆様詐欺だと怒ってませんかね
次は、次こそはフロム要素が出てくるはずですのでお許しください

またおまけ程度の登場人物紹介も投稿予定です
ケーキを買った時のフィルムについているクリームぐらいの気持ちでお楽しみいただければ幸いです
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