忍と灰と焚べる者と狩人とダンジョン 連載編 作:noanothermoom
体調不良でこの様です
ヘスティア・ファミリア拠点 【廃教会】
「さて、まずは襲撃者たちについて話すべきだろう」
寝るのなら部屋で寝ろと言う灰の言葉に、半分寝ながら自室へと戻っていく二人を見送り、狩人が話を切り出す。
「襲撃者というのならお前だろう狩人。人違いで冒険者を襲ったんだってな?」
「五月蠅い殺すぞ」
「灰殿、そのように狩人殿を煽るものではありませぬ。狩人殿も殺すなどと...死なず同士の殺し合いなど意味が無いでしょうに」
火の無い灰が狩人を揶揄うように、にやにやと厭らしく笑う。
鋭い目つきで睨みつける狩人との間に緊張が走る。
あわやという空気の中パンパンと手を叩き、九郎が仲裁に入る。
「そうか?不死者同士の殺し合いは火の時代のメジャーな娯楽だぞ?普通の人間にとっても、不死者にとっても。なぁ焚べる者」
「事実だが、貴公話をずらすな。今話しているのは狩人だろうに」
意見の相違という奴だなと笑いう灰に同意を求められた焚べる者は、同意しながらも手で狩人へと話を進めるように促す。
いらだった様子の狩人は一度息を吐き、落ち着いた後血に濡れた歪んだ刃──慈悲の刃を机の上に置く。
「これは...?」
「女神ヘスティアとベルを襲った輩の血だ」
狩人の言葉を聞いた灰があちゃ~と額に手を当てる。
その様子をギロリと睨みつけるように瞳を動かして見つめる狩人。
「その通り。灰が隠していた【怪物祭】の黒幕。フレイヤ・ファミリアの冒険者の...な」
「それで?今から襲撃にでも行くと?」
狩人は血よりその遺志を得る──つまりは取り入れた血の持ち主について情報を得る──ことが出来る。
それ故、【怪物祭】の黒幕について知った狩人のしそうなことを言う灰だったが、狩人は首を振る。
「それについては納得はしていないが、理解はした。過去の所業については見逃すとしてやろう。だが、これからの所業は別だ」
「...別とは...まさか【猛者】オッタルがダンジョンに籠っているのと関係が?」
狩人の言葉に、狼がここの所オッタルの姿がオラリオで見られないことを口にする。
冒険者、それも高位の冒険者の中には、自分一人でもダンジョンに潜る者も少なくない。
だからオラリオで見かけなくても、またダンジョンにでも籠っているのだろうと思われる、それを逆手に取った形だな。
狩人がそう言って前置きをして話した、ベルへとぶつける為の
「...面倒な」
狼が眉間にしわを寄せて呟いた言葉が、この場にいるすべての人物の総意だった。
とは言え放っておくわけにもいかない。
各々が武器を手に取り、ダンジョンへと向かう。
「行くのですね。狼無事に帰ってくるのですよ」
その背に九郎は祈るように手を合わせる。
ダンジョン9階層
「こ、この先の
「ミノタウロスか...」
ダンジョン内で見つけた負傷した冒険者。
ダンジョン内での出来事は自己責任とするのが冒険者の常識だが、ロキ・ファミリア程の大派閥ともなれば見捨てる訳にもいかない。
そうして助けた冒険者が語る話を聞いて、ロキ・ファミリア団長【
その脳裏によぎるのは、前回の遠征から帰ってくるときに自身等の不手際で上層へと逃げたミノタウロスの姿、そしてその後の騒動の後始末に追われる日々。
LV.6の冒険者である自身をして二度としたくないと思わせる、忌まわしい記憶に険しい表情になるのを止められないフィン。
そんな団長へと声をかけるエルフがいた。
「まるでミノタウロスに呪われているかのようだな?」
「呪いかどうかはともかく、後続のことを考えればここで打ち取っておくべきだろう」
【
念密な計算の元に成り立っていた計画が狂っていることに眉を顰めている姿すら、気品とでも言うべきものが漂っている。
不本意な終わりを迎えた前回を踏まえ、今回こそと意気込んだ先に現れた
負傷者への施しは、遠征部隊全体から見れば微々たるものではある。
だがダンジョンに潜ってから、幾人もの負傷者を助けているロキ・ファミリアとしては無視できるものでは無いだろう。
ともすれば物資を運ぶ後続が襲われかねない。
討伐するべく出すべき人員について相談している二人の元に、また新しい負傷者が見つかったとの報告が入る。
「...酷い怪我。大丈夫!?しっかりして」
「冒険者...様...どうか、助けてください...」
ミノタウロスが出たという話を聞いて隊列を離れ、先行していたアイズが見つけたのは頭から血を流している
その言葉に見捨てることは無いと伝えアイズは落ち着かせようとするが、傷ついた小さな体のどこにそんな力があるのか、驚くほどの力でアイズの鎧を握りしめ、うわ言の様に助けを求める。
「アイズ!それが例の負傷者?」
「みんな...」
無理に振りほどくこともできず、どうすればいいか困っていたアイズにロキ・ファミリアの面々が追いつく。
傷の手当てをとフィンが指示すると同時に、荷物の中からポーションや包帯が取り出される。
しかし、手当てしようとする手を振り払い、アイズに縋り少女は懇願する。
「お願い...します...どうかあの人を...ベル様を助けてください」
「っ!!」
少女の治療のために離れようとしていたアイズは、懇願の内容を聞き目を開く。
一体何処で襲われているのかという問いに、意識が朦朧としている少女が何とか絞り出すように答えた場所へと、先に行くとだけ仲間に告げアイズは走る。
まさか、そんなことはあり得ない。走りながらアイズは考える。
上層でミノタウロスに襲われた彼がまた襲われているなんて、そんなことはあり得ない。
だけれど、本当に襲われているのなら彼では勝てない。
いくら成長し、自身との訓練で強くなったとしても、LV.1の冒険者が勝てるほどミノタウロスとは甘いモンスターではない。
脳裏に血に塗れ、ダンジョンの床に倒れ伏す彼の姿がよぎる。
「そんなことはさせない。今行く「よぉ【剣姫】随分急いでいるみたいだがな、残念ここは通行止めだ他所に行きな」」
「【
自身の想像に押されるように足を速めるアイズの前に立ち塞がった人影があった。
鎧を纏った男、火の無い灰だ。
ミノタウロスに襲われているだろうベルと同じファミリアの冒険者である灰が立ち塞がったことに、僅かに動揺するアイズ。
だが、灰に構っている暇など無いと言わんばかりに、魔法を使用し突破しようとする。
しかし詠唱するアイズの足元に矢が突き刺さった事で、詠唱は中断される。
見ればいつの間にか灰の手には、楽器のようにも見える精密な造りのクロスボウがあった。
「私はベルが襲われていると聞いて助けようとしている...あなたは違うの...?」
「あー逃げたおチビから聞いたのか?助けてやりたいという気持ちは分からんでもないが、ベルは戦うことを選んだんでな。邪魔はさせん、それが先達の仕事ってやつだ」
最悪灰を突破しても無防備な背を撃たれると判断したアイズは、何故邪魔をするのかを問う。
問いに対する灰の返答は簡単なものだ、ベルが望んだから。だが、アイズには看過できない言葉だ。
ミノタウロスは、ちょっと強いだけのLV.1が勝てるモンスターではない。
たとえベルから恨まれようと、死んでしまうよりはましだと助ける決意をする。
とは言え、灰はそう簡単に抜かせてくれないだろう。
どうするべきか迷ったアイズの耳へと仲間の声が届く。
「アイズー先走り過ぎー」
「なっ、火の無い灰!?一体何故ここに...」
「おやおやおや、こいつはちょいと不味いな」
最初に現れたのはティオナ。
その後ろから先走っているのはあんたも同じよと、妹を諫めるティオネ。
その後ろからもベート、フィン、リヴェリア、ガレスが現れる。
立ち塞がる灰を見て目を見開くリヴェリア。だが灰も頭に手をやり、困ったようなジェスチャーをする。
それはそうだろう、灰一人に対してアイズ達は七人。
邪魔しようにも、しきれる数ではない。
手荒な真似をした所で、この人数差だ。
如何に灰が強いと言えど、足止めどころか数の暴力で袋叩きにされるのがオチだ。
だが、ロキ・ファミリアの幹部勢に囲まれながらも、灰はその飄々とした態度を変えない。
「仕方がないな、こうしよう」と、言うと同時に手を上にあげる。
「リヴェリア!?」
「なっ!くっ!!」
リヴェリアへと飛んできた手裏剣、それに反応してそれを弾き落としたフィン。
「御免...」
その二人の前に立ち塞がる厳めしい顔つきの忍び。
「ぐっ、がぁ...」
「ベート!?」
後ろから振われた教会の石槌で吹き飛ばされるベートと、吹き飛ばされたベートへと駆けつけるガレス。
「気を抜いたな獣が」
その二人へと鞘代わりの石槌から抜いた直剣を突きつける月の狩人。
VS
【
「みんな!?...きゃっ!!」
「ティオナ!?てめぇ」
仲間が襲撃を受けたことで動揺した隙に攻撃され転がるティオナと、妹を攻撃した乱入者を睨みつけるティオネ。
「しばらく付き合ってもらおう。ミラのルカティエルの伝説朗読会に」
その二人へと正統騎士団の大剣を携え、立ち塞がる絶望を焚べる者。
VS
【
「分断したとはいえ二対一だ、卑怯とは言わないよな?」
「...」
あっという間に分断され再び一人になったアイズへと、灰はロスリック騎士の直剣を突きつける。
無言で愛用のレイピアを突きつけるアイズ。だが一人で切り抜けるとなると厳しいものになるだろう。
「おっとあんただけ一人だったな、まあ残り物どうし仲良くやろうや」
VS
【
今ダンジョンの中で、オラリオ最強とも噂される冒険者達がぶつかろうと...否。
「...ならば俺も勘定に入れてもらおうか」
「あなたは...」
【剣姫】様なら問題はないだろう?と嘲るように笑う灰。
その後ろから切りかかる人影がいた。
意外な人物の登場に目を見開くアイズ。
そこにいたのは【猛者】オッタル。
「へいへいへい。【猛者】様ともあろうお方が二対一で弱い者いじめかい?
オラリオ最強の名が泣くな。
...いやマジな話、俺この二人を同時に相手にすんの?流石にきついぞ!?」
「【猛者】...」
「勘違いするな【剣姫】、俺は灰へと借りを返すだけ。お前の事情など知らん」
言葉通り、他者の事情など知った事かと言わんばかりに、大剣を構えるオッタル。
その姿を見て、とにかく今は灰を倒すことが先決だと構え直すアイズ。
仲良く肩を並べて自身に立ち向かう、
VS
【
こうして、ダンジョン9階層。
観客も、報酬もないままに、
「まったく。これだけ翻弄されると、自分の未熟を嫌と言うほど実感させられる」
「ははっ、同意だね」
大きく跳躍し
それに笑いながら同意するフィンだが、彼らは弱くない。
片や、神の恩恵を受けた冒険者が使える魔法は三つまでという常識を覆し、九つの魔法を使いこなすオラリオ最強の魔導士。
片や、小人族は冒険者として大成できないという常識めいた俗説をひっくり返した、オラリオ最大派閥の団長。
前衛と後衛に分かれ、連携も取れたバランスの良い二人組だが、狼一人に翻弄されている。
「まさか僕の槍を、防ぐでも、弾くでも、避けるでもなく、踏みつけられるとは夢にも思わなかったよ」
「まったくだ」
オラリオには数多の冒険者がおり、それぞれに愛用の武器がある。
争いの火種になる為、誰も口にしないが、当然皆自身の使う武器こそが最強であると思っている。
フィンもその一人だ。
叩く、薙ぐ、切る、突く、と多彩な攻撃方法があり、リーチも長い槍こそが最高の武器だと、そして自身こそがオラリオで最も武器を使いこなしていると自負していた。
長物の弱点であるとされる懐に入り込まれた時も、石突や短く持つことでカバーしてきたし、むしろ近距離戦を狙う相手をカウンターで沈めてきたことは幾度もあった。
だが、狼はその経験を凌駕する。
自身の連撃を見事に捌き切られ、ならばと放った下段の薙ぎをジャンプで躱され自身を蹴り飛ばされる、あまつ渾身の突きをあろうことか狼は上から踏みつけることで防いだのだ。
最早ここまでくると悔しさより先に、称賛の念が湧いてくる。
「私もこれほどまでに魔法の詠唱どころか、何もさせて貰えなかったことは無い」
「まったくだね」
魔法を使う際の詠唱時間。
これをどう捻り出すのかは、魔法を持つ冒険者の、否すべての冒険者にとっての永遠の命題だろう。
魔導士とは大きな大砲。
狙いをつけ、打ち出すまでの時間を稼ぐのは前衛の仕事、例えば攻撃を受けて詠唱が中断されたのなら責任は攻撃を通した前衛にある。魔導士がするべきは打つべき場所に打ち込むだけ。
これが魔導士の一般的な運用であり、多くの場合
だが、一般的な答えをそのまま実行するだけで手に入るほど、オラリオ最強の魔導士の名は安くない。
リヴェリアの魔法は、威力、範囲共に強大なものが多く、故にダンジョン内でもおいそれと打つ訳にはいかない。
だからこそ魔法を使わない戦闘技術も修めており、LV.3ぐらいならば倒すことが出来る。
自身に迫る攻撃を避け、自身に迫るモンスターを倒し、なおかつ魔法の詠唱も途切れさせない。
自分の身を自分で守って初めて、魔導士は
だが、狼は容易くその守りを突破する。
フィンの攻撃を捌きながら、リヴェリアへ向けて手裏剣を放ち。
フィンに隙があれば、リヴェリアへと斬撃を放ち。
リヴェリアがフィンへと援護しようとすれば、爆竹の音と煙で詠唱を中断させる。
動き一つ一つに無駄が無く、戦場をコントロールし続ける。
全くもって手も足も出ない。
それも当然だろう。
ヘスティア・ファミリアにおいて、狼より高い火力を誇る者が居る、狼より多彩な武器を十全に使いこなす者が居る、狼より精神の強さで勝る者も居る、だが人相手の戦いならば右に出る者はいない。
言い方に語弊はあるかもしれないが、モンスターを相手にすることを念頭に置いた冒険者と、最初から人相手に戦うことを想定した忍びが戦えば、忍びが勝つのだ。
だからフィンとリヴェリアの考えは一致した。
勝つことを諦め、対人戦の訓練と割り切る。
事実、これだけ二人を翻弄している狼からすれば、幾度となく彼らにとどめを刺すことはできただろう。にも拘らずフィンもリヴェリアも健在であることが、狼が二人を殺すつもりが無い、足止めを目的としている何よりの証拠であった。
だからこの戦いを通して、狼から盗めるだけ技術を盗む。
強者と呼ばれるようになって久しい自身等が得た、挑戦者の立場での戦い。
この機会を最大限に生かすと決めた二人は、再び狼へと立ち向かう。
「まだ来るか...ならば幾度でも叩き伏せよう...」
息を整える二人を何をするでもなく見ていた狼もまた、二人の挑戦者を迎え入れた。
戦いの終わりは遠い。
「【怪物祭】であたしを助けてくれたのもあんたでしょう?なら何でこんなことするの!?」
「ミラのルカティエルは罪の塔へと至り、彼の地で罪人たちと戦った...」
「ねえ、なんで後輩君を助けるのを邪魔するの!?あんただって他の人を思いやる気持ちが無いわけじゃないんでしょ!?」
ティオナの叫びが戦場にこだまする。
ティオナは戦闘が始まってからずっと焚べる者へと問い続けた、何故こんなことをするのかと。
だが焚べる者の口から出てくる言葉はミラのルカティエルの伝説のみ。彼女の疑問への答えは一向に返ってこない。
それでも、ティオナは諦めない。なお焚べる者へと問い続ける。
「うっせえんだよぉ!!さっきから聞いてもねえ話をぶつぶつ、ぶつぶつ!!」
「ティ、ティオネ!?」
「ティオナもだ!!何考えてるのかなんて、ぼこぼこにして縛り上げた後に聞きゃぁいいんだよ」
この状況に怒りが爆発したのは気の短いティオネだった。
人の話を聞かない
姉の性格を理解していても、否理解しているからこそティオナはその豹変に引き、妹が引いている事実にまたティオネの怒りは煽られ、遂には【
【
ティオネが持つスキルの一つであり、自身の受けたダメージの量と自身の感情によって攻撃力を向上させるものだ。
だが、その特性上発動すれば激情に駆られ、非常に荒々しい戦い方になる。
その戦い方から【
しかし迷いなくティオネはスキルを使用し、ゆらゆらとオーラを立ち昇らせる。
「そっか、ティオネは本気なんだね。ねぇミラのルカティエル、痛くしたらごめんね!!」
「...ミラのルカティエルは逃げない」
姉の姿を見たティオナも【
後ろめたさから
スキルを使い、先ほどまでとは比べ物にならない程の火力を手に入れたヒリュテ姉妹を見て、焚べる者は呟く「ならば見せようミラのルカティエルの伝説を」と。
「ううん、ううん、おおお!!」
「いいい、あああ、おおおお!!」
先程までの敵意と攻撃がおままごとだったかのような、殺意すら感じるアマゾネスの姉妹の猛攻。
だが、焚べる者は涼しい顔で捌いていく。
いやそれも当然だろう。
彼こそが絶望を焚べる者。
ドラングレイグを旅するだけでは飽き足らず、その後の火の時代まで彷徨い続けた不死者。
その旅路において、ミラのルカティエルと、絶望を焚べる者、そして亡者狩りの名を轟かせた火の時代有数の狂人。
ただ力が強いだけなら幾らでもいた、ただ速いだけなら幾らでもいた、ただ数が多いだけなら幾らでもいた。
だが彼はその全てを刈り取り、勝利し、伝説を創り続けた。
単純に技を競うのならばまだしも、殺意を抱いての殺し合いで彼に勝てる道理は無い。
いっそ焚べる者にとって、殺意無き攻撃よりも、殺意がある攻撃の方が対応しやすいのだ。
姉妹故の息の合った連携ならばいざ知らず、スキルによって曇った業では彼に届かない。
「うらああああ」
「ぬる「いやああああ」...!」
しかし、アマゾネスの姉妹も容易くは負けない。
ただスキルを使っただけで勝てないのなら、更にその先へと行く。
スキルの影響で常程思考を回すことが出来ないが、いやだからこそ本能的な嗅覚で、勝利の為に必要なものが力では無く技であると理解し、互いに連携を始める。
平常時とは比べ物にならない程に拙い、ともすれば相打ちすらしかねない連携は、時間と共に洗練されていく。
「なるほど。未だ成長するか...ならば語ろう、ミラのルカティエルの伝説を...」
弾き、防ぎ、叩き。幾度となく攻撃を防ぎ、連携を破り、手痛い傷を負わせながら、なおアマゾネスの姉妹は立ち続ける。
未だ戦意の折れないアマゾネスの姉妹を前に、焚べる者は武器を構え直す。
語るべき伝説は未だ枯れず、故に焚べる者の心も折れない。
戦いの終わりは遠い。
「血にでも迷ったか?貴様がいう所の
「ほざけ!狩人野郎が。てめえこそ何のつもりだ?いつも喧しく囀っている雑魚を守る狩人の使命とやらはどこに行ったんだ?」
ダンジョン9階層にてぶつかった、ロキ・ファミリアとヘスティア・ファミリア──オッタルもいるが──によって起きた戦闘の中で、最も殺意が満ちた戦場がベート・ローガと狩人がぶつかったここだった。
互いにこれまで幾度となくぶつかり、殺し合いの半歩前にまで発展した仲だからこそ理解している互いの嫌う言葉を投げ合い、その言葉に苛立ちを覚える。
他の戦場で、ロキ・ファミリア側はこの後に遠征があることを理解しているから、ヘスティア・ファミリア側はあくまで足止めが狙いだと理解しているから、本気で戦えども怪我をしないように、させないように立ち回り続けている。
無論そのことはベートも狩人も理解している、だがそんなことは関係ないと言わんばかりに、互いの攻撃を避けようともせず血に塗れながら戦い続ける。
「はらわたを晒せ獣ぉ!!...ぐふっ!!」
「ベート!あまり突っ込みすぎるな。
狩人はおぬしを怒らせ、冷静な判断をできんようにしておるのだ。奴の挑発に乗るな!」
「んなこたぁ分かってんだよ...悪ぃ」
ベートの一撃によって飛び散った血。
それがベートの目にかかり生まれた僅かな動揺、いかに鍛えようと、いかに戦意があろうと、前が見えなくなったことで生まれる僅かな隙。
それを見逃す狩人ではない。上半身を弓の様に仰け反らせ、渾身の力での【内臓攻撃】を放とうとした狩人は、ガレスによる横やりを受け大きく吹き飛ばされる。
あわやという所でベートの危機を救った、ガレスからのお説教に反射的に嚙みつくベート。
だが、小さな声で感謝の言葉を呟いたことを聞いたガレスは満足そうに頷き、吹き飛ばされた狩人が舞い上げた煙を警戒する。
(これで終わってくれたのならいいんじゃが...)というガレスの考えを嘲笑うように、煙が収まった後には忌々し気にこちらを睨みつける狩人が立っていた。
「一応直撃したはずじゃがのう。
儂の攻撃を受けてなお健在か、まったくあきれ果てた頑丈さじゃな」
「お前の攻撃などカラスに突かれた程度だ。そんなことよりもベート・ローガ、貴様まさか尾を巻いて逃げるつもりか?」
「はっ!誰が。ただガレスのおっさんが煩いから、前を譲るだけだ」
確かに無防備な所に愛用の斧を叩き込んだはず、と感じた手ごたえを裏切る結果に思わず呆れたような声を出すガレス。
ベートとの戦いのダメージとガレスによる一撃を受けたことで、煙の中輸血液を使ったことなどおくびにも出さずベートへと挑発をする狩人。
ベートは言い返しこそしたものの、先ほどの様に前に出ようとせず、あくまでガレスの援護に徹そうとしている。
その様子に小さく舌打ちをした後、狩人は凝った装飾銃を取り出し、無造作に放つ。
だがその銃口は二人の方を向いていない。
一体何処に向かって撃っているんだと、訝しむ二人。だが、弾が飛んでいった先を見た二人は叫ぶ。
「「アイズ!?避けろ!!」」
「!?」
「ぐっ...」
銃口の先には灰と戦うアイズ達がいた。
放たれた銃弾は切り結ぶ灰とアイズの間をすり抜け、背後から灰に切りかかろうとしていたオッタルの膝に着弾する。
衝撃と痛みに膝から崩れ落ちるオッタル。
「灰を助けるとは随分余裕だなぁ!?」
「灰を助けたわけじゃない。オッタルはもともと気に入らなかった。そして隙があったから撃った、それだけだ」
目の前の二人を見ることすらしないで銃をしまう狩人。
そのあまりにも大きな隙に、ベートが堪え切れず狩人へと攻撃を仕掛ける。
ベートの足と狩人の石鎚のつばぜり合いの最中、味方を助けた狩人へと揶揄するようにベートが叫ぶ。
ベートを押し返しながら、オッタルが現れた時から撃つ機会をうかがっていたと返す狩人。
そのまま押し切られそうになり、鍔迫り合いを解いてガレスの元へと戻るベート。
「出すぎじゃぞ」と諫められるベートを見て、狩人は嘆息する。
忌々しいことだが、ベートの自らが傷つくことを恐れない戦い方は、狩人の戦い方と似通う所がある。
だからこそ、
故に勝つにしろ、負けるにしろ、容易く決着がつくのだが、あの様子ではもう前に出ようとはしないだろう。
鞘より抜いた直剣ではガレスの堅い守りを抜くことは難しい、だが鞘と合体して石鎚とすれば援護するベートの存在もありガレスへと攻撃を当てることは難しくなるだろう。
しかしながら意識を向けてさえいれば、ガレスの遅い攻撃を避けることなど容易い。
互いに決定打に欠ける状態での長引く戦闘を、脳に得た瞳が導き出す。
「狩り切ることは無理か...だがせめてもの嫌がらせだ、最後まで足掻いてやろう」
見えた未来に戦意が萎えかけるが、気を取り直し武器を構え直す。
戦いの終わりは遠い。
「どうしたどうした、随分と消耗しているな?オッタル殿。どこかで女の相手でもしてきたか!!」
「...殺す。ええい、邪魔だ【剣姫】!」
「...邪魔をしているのはそっち」
「ええ...適当な煽りだったのに、無茶苦茶切れてるじゃん」
戦いの最中に放った灰の煽り。
それが、ダンジョン内で
灰へと猛攻を加えようとするが、同じタイミングで攻勢に出ようとしたアイズとぶつかってしまう。
そのことで自身を置いて、仲間内で争い始めかねない勢いの二人を見て、ひく灰。
ダンジョン9階層で起きた、一連の戦い。
その中でも一番
一対一の戦いならばオラリオでも有数の実力者である灰。
オラリオ最強の称号を持つオッタル。
LV.6へとランクアップを果たしたアイズ。
幾ら灰が強者だと言っても、数の上での不利、しかも相手は【剣姫】と【猛者】。
しかし、大方の予想を裏切り、この戦場で優勢を誇るのは灰だった。
仕方の無いことだろう、連携というものは容易く行えるものでは無い。
相方の動きを理解し、その動きを邪魔しないように立ち回る。
言葉にしてしまえば連携とはそれだけのことだが、それが出来るようになるだけでも、長い時間が必要となる。
ましてや二人は異なるファミリアの冒険者。
噂で互いの戦いを耳に挟むことはあったとしても、何をどれだけできるのかを知らない、いやそもそも自身の手札をありのままに明かすことすら難しい間柄だ。
そんな状況では連携した所で、いつもの力を発揮することすら難しい。
一方の灰は手変え品変え武器変え、直剣、大剣、短刀、曲剣、斧、槍、鎌に拳、と様々な武器を使い分け、更には弓と魔法すら使い二人を翻弄する。
その手数の多さは、到底拙い二人の連携で対処できるものでは無い。
浅くない手傷を無数に負いながら、それでもなお敗北していないのは、純粋にアイズとオッタルの強さによるものだ。
「【猛者】!!」
「煩い...騒ぐな...」
「おやおや、あの狩人が獣相手によそ見とは。随分とまあ嫌われたなオッタル殿」
しかし、灰とアイズの間をすり抜け飛んできた一発の銃弾。それが容易く戦況を灰の方へと傾ける。
戦場にアイズの悲鳴が響く。
狩人によって膝を撃ち抜かれたオッタルと、そんなオッタルをにやにやと馬鹿にするように嗤う灰。
だが、嗤われていることすら気にする必要もないと言わんばかりに、オッタルが立ち上がる。
「おいおい、幾らあんたでもその傷じゃあ満足に戦えないだろう?大人しくしてなよ」
「ほざくな...俺は【猛者】オッタル...この程度の傷で俺を止めることは出来ん...」
脱落した、と思っていたにもかかわらずオッタルが立ち上がったことに笑みが引きつる灰は、それでもオッタルの膝が震えているのを見逃さなかった。
両手持ちで直剣を振り下ろせば、受け止め切れず膝をつくオッタル。そこに灰が更なる追撃をしようとすると「させない...」とアイズが間に入る。
「大丈夫...?無理はしない方が...」
「この機会、逃せば次はあるか分からん。今こそ最後のチャンスかもしれんのだ。引くことなぞあり得ん」
無理はしないよう敵である灰はおろか、味方であるアイズからも言われてなお、オッタルの戦意は衰えない。
むしろ無様な自分の姿に対する怒りで、戦意はより燃え上がっている。
「そんなに良い物かね、最強の称号は。大体本気で殺しあえば、最後に立っているのは俺に決まっているんだ。勝利なんてものは空しい物さ」
「だとしても...だとしても!!」
視線だけでも人を殺せそうな目つきで灰を睨みつけながら、武器を構えるオッタル。
その姿には先ほどまでの膝の負傷に苦しんでいた姿は無かった。
だが、オッタルが戦意を燃やせば燃やすほど、灰はやる気をなくしていく。
めんどくさそうにオッタルを見返す灰。
そんな時、奥の
アイズは気がつく。
あの音は魔法だ。ベルが魔法を使っている音だと。
ならばベルは今もミノタウロスと戦っているのか。
俄かには信じられない話だ。
LV.1の冒険者がミノタウロスに狙われていながら、これだけの時間生きていられるなんてオラリオの常識を覆す出来事だった。
「ふん。どうやらあっちも終わりが近いようだ。ならちゃんと相手をしてやる。
...一発だ、一発でかたを付けてやる、いつでもいいぞ打ってこい」
灰は響いた音から、ベルとミノタウロスの戦いの決着もそう遠くない話だと判断したらしい。
オッタルへと向かって、武器を構えいつでもいいぞと、攻撃を誘う。
「お、おおおお!!ヴォオオオオオオオオ!!!」
灰の言葉を聞いて、オッタルが渾身の力を振り絞り武器を振るう。
人間離れした、いっそモンスターの咆哮と言われた方が納得いく声と共に振るわれた武器は、灰へと吸い込まれるように向かい...何の抵抗もなく叩き込まれた。
「なっ...」
「...満足か?じゃあ寝てろ」
何の抵抗もなく灰が攻撃を受け肩から大きく切り裂かれたことと、それでもなお立っていることにアイズが動揺する。
しかし灰は何もなかったかのように、今にも取れそうにぶらぶらと揺れている右腕でオッタルへとカウンターを決める。
最後までまともに相手をされなかった悔しさに眉を顰めるオッタルは、抵抗することもできずその意識を失った。
「どうして一つしか無い命を粗末にしようとするかね」
「灰...まさか...」
「うん?ああ、殺しちゃいねえよ、ちょっと寝てもらっただけだ」
灰の言葉を聞き、よく見れば気を失ったオッタルは、先ほどまでの悔しさに歪んだ顔が嘘のように安らかな顔をしている。
それを見下ろして、最近の若い奴の考えは分からんと呟き、灰は腰にぶら下がっていた瓶──エスト瓶──を手に取り、中身を飲む。
深手、というより最早致命傷であるはずの傷を指さし、どうなっているのか聞こうとするアイズ。
だが、その目に映るものは信じがたい出来事だった。
最早治る治らないの問題ですらない。確実な致命傷だったはずの灰の傷が凄まじい速度で治っていく。
僅か数秒もすると、致命傷だったはずの傷の存在を示すものは、オッタルによって灰の体と同じように切り裂かれた鎧だけになった。
しかしその鎧も、傷口を撫でるように灰が手をかざせば、後には新品のような傷の一つもない鎧が残る。
一体何から聞けばいいのか分からないアイズへと、「しー」と唇に指をあてて口止めをする灰。
「世の中には言うべきで無い事、知るべきでないことがある。誰にも話してくれるなよ」
「えっ...うん」
「それじゃあ俺はベルを回収するか。じゃあな」
自身に背を向けて歩いていく灰を、呆然と見送ることしかできないアイズ。
気がつけば、ヘスティア・ファミリアの冒険者達は全員いつの間にかその姿を消していた。
「アイズ!無事!?」
「うん...みんなは?」
「細かい怪我は沢山あるけれど、幸い大きな怪我は無いね」
「大きな怪我をしなかったと言うよりは、大きな怪我をしないように気を遣われたと言う方がいいじゃろうな」
戦いが終わった仲間達が、アイズのもとに集まる。
皆細かい傷は多くあるが、大きな怪我はない。
明らかに、灰達が大けがをさせないように立ち回った結果だろう。
だがどうして?
どういうことなのかと頭を悩ませている仲間達を見ているうちに、ベルの存在を思い出したアイズは広間へと進み、ロキ・ファミリアの面々も倒れていたオッタルを放っておくわけにもいかずベートが背負い、その後を追う。
「まさか、本当に?」
「信じられない...」
「冗談じゃねえぞ...」
進んだルームの光景に唖然とした声が漏れる。
彼女等が見た物は、倒れ伏す
先程まで灰達は自身達と戦っていた。
ならばこのミノタウロスは、
歴戦の猛者であり、ダンジョンの中で人の常識をはるかに超える出来事と幾度となく遭遇してきたロキ・ファミリアの面々でも、否だからこそ俄かには信じがたい現実。
だが、幾ら疑っても、目をこすっても、現実としてミノタウロスは倒され、
余りにも常識からかけ離れた現実に、思わず呆然とするロキ・ファミリアの面々。
気がつけば、灰達は気を失っているベルを担いで地上へと続く道を進んでおり、目の前には小さな鐘を手にした狩人だけがいた。
「こちらの用事は終わった、私達は帰る。お前達も好きにするがいい。とは言え、そのまま帰すと言うのもな...これは詫びだ」
狩人は言うが早いか、手に持つ鐘を振り鳴らす。
その途端ロキ・ファミリアの面々と、気を失っているオッタルの足元から光の玉が現れる。
一体何事かとアイズ達が狼狽えていると、光の玉はそのまま上へと登っていき、頭の上までくると消えた。
何が起きたのかと、周囲を見回せばいつの間にか狩人の姿もない。
一体何だったのかと、言い合っていると、誰かがポツリと言った。「傷が無い...」
その言葉に弾かれるように自分の体を確かめれば、先ほどまでの激戦が嘘だったかのように傷一つない。
なるほど、先ほどの狩人の詫びというのはこういう事かと狩人の言葉を理解する一同。
類稀なる強者である灰達を相手に戦い、貴重な戦闘経験を積むことが出来、受けた傷も狩人によって治療された以上、これからの遠征に支障もないだろう。
結果だけ見ればプラスになった。
だが...
「なんか納得いかなーーい」
ガオーと咆えたティオナの言葉が、今のロキ・ファミリアの面々の心情をダンジョンに響かせた。
SIDE 火の無い灰 【廃教会】
「全く、ベル君は全く」
「そう言うな、ベルの奴は頑張った。そして生還したんだ。冒険者として褒められることはあっても貶されることは無いはずだぞ?」
ベルがミノタウロスを倒した後ベルとおチビを拾って、俺達は【廃教会】へと帰って来た。
しかし、血に塗れたベルをヘスティアに見られた所為で、ベルたちを寝かしつけた後怒り狂うヘスティアを宥める羽目になった。
全くと怒っているが、俺の方が全くと言いたい。
まあ、ヘスティアが怒り狂うのも無理はない。
可愛い眷族が血まみれで帰ってきて、何があったのかを聞けば、自分よりもはるかに強いモンスターを相手にしたと言うのだから。
しかし、ベルの奴はいつも無茶をするな、見ているしかできないヘスティアとしては気が気じゃないだろう、一体誰の影響だか...俺達か。
ベルが、自分でミノタウロスを倒すことに拘ったことは理解できなくもない。
俺にとって、戦いの誇りだとか、誉だとか、そんなものは遥か昔火の時代。終わりに満ちたあの場所で、死と敗北に埋もれ失われて久しい。
あの旅の中で戦った相手というのは大抵、俺よりもはるかに強い相手だった。
幾たびも挑戦し、幾たびも死んだ。
殺す為ならば手段を選ぶことなく、卑怯、卑劣と言われるような手段を取ることはあっても、正々堂々なんてどこを探してもない。
だがそんな戦いの中でも、こいつは、こいつだけは、俺の手で倒すと決めた相手はいた。
恐らく他の奴らも同じだろう。
戦いの愉悦など知らん、誉も、名誉も、勝利すら要らない、だがこいつの命だけは俺が奪う。そういう相手はいた。
誇りも、誉もない戦いの果てに生まれる拘り。
他の誰でもない、自分自身を納得させるための儀式。
だが、それこそが大切なのだ。人を人足らしめるために、人でなしが人のふりをする為に、どれだけ馬鹿らしく見えたとしてもそれは必要なものなのだ。
...まあ、最早
「しかし、ベルは強くなった。それこそ俺達の想像すら超えるほどにな。これなら安心して任せられる」
怒り狂うヘスティアを宥めながらも、単純な力だけではない、技も、そして心も強くなったベルを見て、俺はある決意をした。
どうも皆さま
まずは言い訳をさせていただきたいのです
先週投稿予約をした後、胃腸風邪で倒れまして
胃腸風邪が治って来たと思ったら今度はぎっくり腰をやってしまいまして
結局はこの様です
いや本当に申し訳ない
二月も半ばというのに雪が降っている地域もあるようですね
雪かきなどで腰を痛めないようにだけお気を付けください
本文に戻りましょう
ベル君がミノタウロスと戦っている後ろで行われた戦闘というのは最初から決めていました
しかし書き終えてから改めて見返すと戦っている人物がめちゃくちゃ豪華ですね
こんな戦いが人知れずダンジョンで行われていたと神が知れば血涙流しそうな戦いです
一応本文では灰達が優勢でしたが、ロキ・ファミリア側がこれから遠征があることを念頭に置いていたこと、あくまで本気の殺し合いでは無い事、あと戦った相手との相性が悪かったことが原因です
本気で戦っていればまた結果は違ったでしょう
...その場合灰達もろくでもない戦法を使いだすのですが
最後におわび代わりと言うのもなんですが
寝込んでいる時に頭の中に降って来たポエムっぽい何かを元にして作った物を置いておきます
お暇な方はどうぞ
そうでない方はお戻りください
それではお疲れさまでしたありがとうございました
【灰】
色を創ろう
色を創ろう
世界に塗る色を創ろう
火に照らされて生まれたすべてを終わりにして
絵具を混ぜるようにすべてを混ぜれば
世界に塗る色が出来上がる
出来た色を世界に塗れば
一面灰だけの終わった世界
俺はその世界で一人笑う
【狩人】
色を創ろう
色を創ろう
空に塗る色を創ろう
夜に流れた血を掬い
全てを飲み込む海と混ぜれば
空に塗る色が出来上がる
出来た色を空に塗れば
星も瞬かぬ深藍の空
夜明け前の最も暗い空
私は一人その空を睨み続ける
【焚べる者】
色を創ろう
色を創ろう
道に塗る色を創ろう
貴女の名前と
私の伝説を混ぜれば
道に塗る色が出来上がる
出来上がった色を道に塗れば
世界のどこにいても見える鮮やかな檸檬の道
由縁を聞かれれば貴女の名前を語る大きな道
私はこの道を歩き続ける
【狼】
色を創ろう
色を創ろう
己に塗る色を創ろう
己が流した血と
己が流させた血を混ぜれば
自分に塗るべき色が出来上がる
出来上がった色を己に塗れば
影と見間違う漆黒の人影
闇に潜む忍びの人影
俺はそれでも貴方の温かさを胸に抱いている
...何でしょうねこれ
本当に寝込んでいる時に急にふっと降りてきた文章が元なんです
寝込んでいることで【悪夢】にでも接続したんでしょうか?