忍と灰と焚べる者と狩人とダンジョン 連載編 作:noanothermoom
地上に降りてきた神がその眷族に与える力
冒険者は自身の所属するファミリアの主神よりこれを受け
モンスターに匹敵するほどの力を得た冒険者はダンジョンに潜り富を得る
そしてその富を代償として神に捧げる
かつて天界より降りてきた神は
モンスターに追いやられた人にこの力を与えたという
そして人はその力を使いモンスターと戦い、その種を存続させた
ならば神は何を得たのか
「じゃあ今からボクたちの拠点に案内して...もうこんな時間!少し急ぐよ、ボクの手を離さないで!」
「え...あの神様ぁぁ?」
僕ベル・クラネルはぶつかってしまった神様と意気投合し、ファミリアに入るように誘われた。
だけれど今日一日失敗続きだった僕は、何故?とその理由を聞いた。
それに対する神様の答えはあまりにも簡潔なものだった。
その姿があまりにも美しいから、見惚れながら僕はうなずいていた...。
僕はさっきまでのことを思い出して、必死に今の状況から意識を逸らしていた。
神様が僕の手を取って走り出している。そのことから。
そう今繋いでいる柔らかい手や、その手を通して伝わってくる神様の体温、そしてさっきから後ろについて行っているからか、鼻をくすぐる甘い匂い。
そんなものなんて僕は考えてない。
そんなものなんて僕は感じていない。
「ああよかった、どうやら間に合ったみたいだ。」
「あのー?神様?」
「ああベル君、ここがボクたちヘスティア・ファミリアの拠点さ。」
「えっと...雰囲気のある建物ですね?」
「うん...君のそういう所嫌いじゃないけど、その意見はだいぶ苦しいね。はっきり言っていいんだよ、ぼろっちいって。」
道の奥に入れば入るほど影は濃くなり、道がどんどん複雑になる。
最初は触るのも躊躇った神様の手、それが唯一の道標。
いつの間にかぼくは縋りつくようにして進む。そして気が付けば神様の足が止まっていた、到着したのだろうか、そう思いそっと手を離す。
そんな僕を気にも留めず、こっちを振り向いた神様は、満面の笑みで後ろにある建物を指さし言う。それがファミリアの拠点であると。
何とか振り絞って僕の出した言葉は、苦笑いと共に受け取られ。はっきりと言われる、ぼろっちいと。
屋根は落ちたのか焼けたのか、はたまた飛ばされたのか、半分ほど無くなっており。教会の外の壁には、雨風と時間による汚れが染みつき、更に植物の蔓が絡みついている。
とても人が住んでいるとは思えない建物、それが僕の目の前にあった。
「とりあえず荷物を中に置いて来るけど、ついてくるかい。」
「神様を疑うわけじゃないんですけど、これ入っても大丈夫なんですか?」
「うんまあ、その意見は当然だけど。これでもいろいろ補修してあるから心配しなくても大丈夫だよ。」
「...」
「補修したならもう少し綺麗にしたらどうか、って言いたいんだろうけど、色々あるんだよ。まあおいおいね。」
そんな教会に荷物を置いてくる、そう言って神様はついてくるか聞いてくるが、思わず入っても大丈夫なのか聞く。
僕の問いへの答えは、眷族たちによる補修がなされているから、大丈夫とのこと。 当たり前ではある、誰が好き好んで今にも壊れそうな家に住もうとするのか。
それと同時に湧き出た疑問は、自分の中に押し込めた...そう思っていたが、神様にはお見通しだったようで、いろんな理由があるんだよと肩をすくめられる。
「そこは床が抜けそうだから気を付け「うわぁ!!」ベル君?!」
「ごめんなさい、床を踏み抜いてしまって」
「まあよくあることだから気にしなくていいよ」
「でも家を壊してしまって!!」
「ここには住んでるけど、上はそんなに使っているわけじゃないし、いいよ」
「? それってどういうことですか?」
そんなやり取りの後、扉をくぐって教会に入る神様の後ろに続く。
中に入れば、ある程度綺麗になっているのだろう。その僕の考えはあまり当たっていなかった。
歩くだけでぎしぎしと軋み、今にも穴が空きそうな床。
その有様に「こんなところに住んでいるんですか?」と先程までの疑問が再びもたげる。それが悪かったのだろう、床を踏み抜いてしまった。
謝る僕に神様は「大したことじゃないから気にしないで」と言うが、家を壊してしまったことに僕は落ち込む。
だが神様は「まあ家だけど家じゃないから」なんて言う。その言葉を聞いた僕の頭には、疑問がいっぱいだった。
そしてその疑問は、神様が地下に続く階段を見せてくれたことで解決した。
「よし、今日の晩御飯だしジャガ丸くんはここにおいておけばいいかな」
「神様、少しいいですか。この扉達、なんでこの周りだけ壁が違うんですか?」
「うん?ああそこは君の先輩たちの部屋だよ。確か灰君と狩人くんがこの教会をソウルの業と神秘で補修した時、空間を歪めて「おや?誰かいるのですか?」
地下にこんなペースがあるなんて、まるで秘密基地みたいだ。
物珍しさから周りを見渡していると、そこだけまるで切り取ったみたいに壁が変わっている三つの扉を見つける。
荷物(ジャガ丸くんの入った袋)をテーブルの上に置き、一息ついている神様に尋ねると、先輩団員の部屋であり、空間を歪めている。
そう聞こえ、思わず話を遮りどういう事か聞こうとすると、頭の上で床がきしむ音と少年の声が聞こえた。
「お帰り九郎君、今日はどうだった?」
「ただいま戻りました、“へすてぃあ”様。今日も繁盛しておりましたよ。」
「おや?そこの御仁は?」
「初めまして僕はベル。ベル・クラネルと言います。」
「ベル君は今日から、ボクたちの新しい家族になるんだよ。」
神様と主に上に戻ると、僕よりも小さいくらいの少年がいた。
彼は神様を見つけると頭を下げ、あいさつをする。神様もまた少年に「九郎君お帰り」と声をかける。どうやらヘスティア・ファミリアの団員のようだ。
それが終わると僕の方に目を向け、誰なのか聞いてくる。
彼からすれば僕は。自分の拠点に主神といる見知らぬ人物だ。気になるのも当然だろう。自分の先輩にあたる人物に手を伸ばしながら名乗る。
嬉しさを隠しきれていない声で神様は、僕が新しい入団希望者であることを告げる。
「なんと、世の中は広いですね。まさかこの“ふぁみりあ”に新入りが来るとは。」
「それ、どういう意味だい。」
「言って良いの「聞きたくないね。」
「なら最初から聞かねば良いでしょうに。
ああすいません、“べる”殿と言いましたか。私の名前は九郎。
この“へすてぃあ・ふぁみりあ”の一員です。これよりよろしくお願いいた...」
僕が新しい入団希望者であることを聞いた九郎さんは、目を丸くして僕の方を見ながら首を振る。
その様子にどこか怒ったように神様が問いかけるが、九郎さんが答えようとすると、耳をふさぎ目を閉じ「聞きたくない」そう全身で表現する。
その様子を見て苦笑しながら、再び僕の方を見た九郎さんは、名乗りながら僕の手を握り「よろしく」とあいさつをしようとする。
だがその瞬間、僕の視界はオレンジ色の布で覆われた。
「狼君?!ベル君は怪しい人間じゃないよ」
「狼よ、それなる人物は新たなる私たちの家族。狼藉物ではありません。
放しなさい、私は何も“べる”殿にされていません」
「...御意」
「うわあ!?」
そう思った時には浮遊感を感じ、体の自由が利かない。
何が起こったのかわからず、声も上げられない僕。だが九郎さんと神様の言葉を聞く限り、狼なる人物が僕を捕まえたらしい。
僕の頭の後ろで低い声が聞こえると同時に、自由を取り戻す。
急に体が動くようになり、僕は情けない声を上げる。視界が開けると、九郎さんの前にオレンジ色の服を着た男の人が跪いている。
「大丈夫かいベル君」
「ええはい、えーと何があったんです?」
「すまぬ、“べる”殿。
我が忍び狼が“べる”殿を狼藉物と間違え捕えようとしたのです。
狼よ、そなたも謝りなさい」
「...まことにすまぬ」
解放された僕に神様が近づき無事を確かめる。
何が起きたのだろう、さっきまでこの教会には僕と神様と九郎さんしかいなかったはずなのに。
そう思い尋ねると、九郎さんが答えてくれる。跪いていた狼と呼ばれた人物に再び目を向ける。
忍び或いは忍者。
極東の方を舞台とする英雄譚に時々に出てくる存在だ。思わずまじまじと見ていると、九郎さんに謝るように促され、僕の目の前に来た狼さんが謝る。さっき僕たちが歩いたときは、ギイギイ軋んでいた床の上を音もなく動いている。
「まあとりあえずお帰り狼君、今日はどうだった。」
「...大事なく。」
「狼さんは本当に忍者なんですか!」
「...言えぬ。」
「それってあれですか!!、忍びであることは隠さないといけないっていう!!!」
「...」
「べ、ベル君?少し落ち着こう?狼君も困っているし。」
「ああ、ごめんなさい。でも僕本でしか「そんなことより、もう“ふぁるな”は与えたのですか?」...ファルナ?」
僕に謝った狼さんはそのまま神様とあいさつをしている。
その姿を見て僕は興奮する。いつか読んだ本にあった音もなく歩く姿、それを本当にみられるとは思わなかった。
そのまま本当に忍者なのかを尋ねれば、少し間が空き返ってきたのは短い言葉。それがますます僕を興奮させる。
勢いのままに詰め寄ろうとすると、あんまりだと思ったようで神様が、僕を落ち着けようと声をかける。その言葉に少し落ち着くが、困ったように目を逸らす狼さんに謝りながらも続けようとした言葉は、九郎さんの声にかき消された。
「いやまだなんだ、悪いけどもう少しご飯は待っていてくれるかい。
その代わり今日はベル君の入団祝いだ、ジャガ丸くんも沢山あるよ」
「ふむ、なら私たちはおはぎでも作りましょうか。
狼よ、せっかくじゃ小豆と黄粉を買ってきておくれ」
「…御意!」
「ふふふ、狼も楽しみにしているようですね。
私は調理場でおはぎの準備でもして待っているとしましょう。」
「じゃあベル君、ボクたちはこっちの部屋でするよ」
ファルナ、神様が唯一この地上で振るえる力。
その名前を聞いて、さっきまでとは別の興奮が僕の体を満たす。今晩はごちそうだよと伝えられた九郎さんは、狼さんにお使いを頼んで地下の一部屋に向かう。
神様と僕はまた別の部屋へと向かう。
「じゃあベル君。今から君にファルナ、神の恩恵を刻む。
そのベッドに服を脱いで横になるんだ」
「ひょえっ、か、神様何を」
「…何か変な勘違いをしてないかい。
背中に直接ボクの血を垂らす必要があるんだよ」
「…ごめんなさい」
「よし、これが君のステイタスだよ」
神様から急に、ベッドに服を脱いで横になれと言われてびっくりする。
そんなトラブルもあったけれど、無事神の恩恵を受けることが出来たようだ。思っていたような力が溢れる、なんてこともなく、本当に刻まれたのかなと疑問も抱いたが。神様が見せてくれたステイタスの写しを見れば、間違いなく僕に神の恩恵が刻まれたのだろう。
「じゃあ行くよ」
「「ようこそベル君、ヘスティア・ファミリアへ」殿“へすてぃあ・ふぁみりあ”へ」
「…」
神の恩恵を刻んでもらっている間に、買い物に行っていた狼さんが帰ってきていたようで。
僕と神様が部屋から出ると、そこにはお皿に盛りつけられたジャガ丸くんと、九郎さんたちがいた。
神様と九郎さんが声を合わせて、僕の入団をお祝いしてくれる。狼さんも声は出していないけれど、優しい目で僕を見ている。
それからは大変な騒ぎだった。
食事中に、急にやっとまともにボクを敬ってくれる子供が、と泣き出した神様。そんな神様をなだめようと、九郎さんがその口にジャガ丸くんを突っ込むと、どうやら
大丈夫ですかと僕がのぞき込めば、酒も入っていた...大事はない...そうおはぎを食べながら言う狼さん。
夕食が終わった後、僕は九郎さんによって案内された部屋で横になっていた。
九郎さんはもともと物置なのだが...と困った顔をしていたが、「ほかの人の部屋か元物置の部屋かの二択でこの部屋を選んだのは僕ですから」そう告げると、
「そうかですか?なら明日も早いのでしょうお休みなさい」そう言い残し狼さんと共に扉の向こうに消えていった。
こうして横になっていると今日一日のことが頭の中をめぐる、
オラリオへとやってきたこと
ダンジョンに潜れなかったこと
ファミリアに入れなかったこと
だけど神様に出会ってそして神の恩恵を受けることが出来た。
ついに冒険者になれたんだという実感がわいてきて、僕は小さな声で
「よーし明日から頑張るぞ」
そう気合を入れて目を閉じた。
終わった
忍びと灰と焚べる者と狩人とダンジョン 連載編 完
冗談です
ようやくフロム要素を入れることが出来ました
ようやく九郎様と狼の出番をかけました
でもまだ題名的には1/5しか出てきてないのです
誰だこんな特盛小説を書こうとしたのは
私です
本当はベル君が狼に詰め寄るシーンはもっと長かったのですが
切りのいいところで終わりにするためにカットしました
君は文章を長くする達人なのかいベル君
次回はベル君ダンジョンに潜るの巻きになるはずです
今のところこの後書きの次回予告的中率半分なんですが当たるでしょうか
いやちゃんと書けよって話なんですけどね
所でこの小説を書くためにネットで調べたところ
ヘスティアがヘファイストスファミリアでごろごろして追い出されるまでが三ヶ月間
闇派閥がオラリオで暴れていたのが7年から5年前とありました
ロキ様これはどういうことだ
「独自設定や」
というわけでタグ増やしておきます
申し訳ありませんでした
それではありがとうございました