忍と灰と焚べる者と狩人とダンジョン 連載編   作:noanothermoom

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装備
武器や防具に始まりポーションやその他細々としたものの総称
冒険者たちは命をつなぐためにより良い装備を求める
だが良い装備があれば命がつなげるとは限らない
己の外側を高めると同時に己の内側も鍛えるのだ

今回ポチョタロ様よりいただいた意見を元に文章体を変えてみました
どうでしょうか感想お待ちしています。



装備を整え

 「すまぬ、新しい団員の登録をお願いしたい」

 

 「新しい団員の登録ですね」

 

 「お手数ですが、お名前と所属するファミリアのお名前をお答えください」

 

 「ヘスティア・ファミリア。...狼と呼ばれている」

 

 「え”...ヘスティア・ファミリア?!こほん、失礼しました。

今担当の者が参りますので、しばらくお待ちください」

 

 

 僕がヘスティア・ファミリアに入団した1日が終わり、僕は狼さんと朝早くからギルドに来ていた。

 九郎さんが作ってくれた朝ご飯を食べながら、神様が1日に予定を聞くと、狼さんは短く「…ギルドへ」と、そう答える。

 ギルドに何か用事があるんだろうか、そう考えていると。「狼よ、それでは分からぬ、ちゃんと新人の登録に行くと言うのだ」そう九郎さんが補助をする

 そして「登録には時間がかかる、早めに出た方がいいでしょう」そう言ってお弁当を渡しながら見送ってくれた。

 

 朝の早い時間特有の、湿り気と冷たさが残る空気の中、僕は狼さんの後をついて行く。

 狼さんは最初、教会から出ると同時に、義手になっている左腕から鍵縄を出して壁に引っ掛けて登ろうとしたのだが。

 後ろから聞こえた「狼よ、ちゃんと普通の人でも通れる道で行くのですよ」という九郎さんの言葉に、僕でも通れる道を進んでくれている。

 

 そうしてしばらく歩くと見覚えがある場所、ギルドへと到着する。

 まだ太陽も高く昇っていないのに、多くの人が忙しそうに走り回っている。その様子に僕がびっくりしていると、狼さんは「...空いているな」そう小さくつぶやく。

 これでも空いているんですか?と聞き返そうとしたが、狼さんは空いている窓口に向かって移動していた。おいて行かれないように僕もその背中を追いかける。

 

 僕が追いつくと、狼さんは窓口で手続きをしていた。

 狼さんがファミリアの名前を言うと窓口の人は変な声を上げる。人が少ない(らしい)とはいえ、いや人が少ないからこそだろうか。その声はギルドの中に響き多くの視線が僕たちに刺さる。

 その視線に気を取り直したのか、小さく咳をして窓口の人は担当の人を呼びに行った。

 

 

 「狼さんこれで空いているんですか」

 

 「...ギルドは昼夜問わず働いている...だが冒険者には休息が必要だ...無論例外もあるが」

 

 「いえそうじゃなくて、こんなにたくさん人がいるのに空いてるって...」

 

 「...待たずとも空いている窓口があった、混むときは座って待つこともできない」

 

 「へ~ぇ僕には想像もできません」

 

 「ああああああああああああ!!!!またなの!!!!、また何かあったの!!!!」

 

 

 窓口の人がいない間に、僕はさっきの疑問を狼さんにぶつける。

 狼さんは、ギルドは働いていても冒険者が居ないから、冒険者の少ない朝は対応も丁寧だと返すが、僕が聞きたいことと少しずれている。

 僕が言葉を足して改めて聞くと返ってきた、混んでいれば座って待つこともできない、そんな言葉に僕はギルドの中を見渡し想像もできないそうつぶやく。

 そうしていると窓口の向こうから凄い奇声が聞こえてきた。周囲の視線がその声のした方向へ向く、がすぐに元の仕事へと戻る姿に違和感を覚える。

 そうださっき窓口の人が変な声を上げたときもすぐに元に戻ったのだ、まるでそれが日常であるかのように。

 

 

 「ヘスティア・ファミリア担当のエイナ・チュールです。それでご用件は何でしょうか」

 

 「新しい団員の登録に来た」

 

 「新しい団員の登録ですね...新しい団員?!誰なんですかそんな命知らずは!!

 

 「えっと...僕です」

 

 「白い髪に赤い瞳。君ね、昨日ファミリアにも入らずにダンジョンに行こうとした子っていうのは。

 いいかしら君はまだ若いの、そんなに命を粗末にするようなことをしてはだめよ、大体入るならもっとましなファミリアが────」

 

 「...ギルドの仕事は冒険者の補助、冒険するもしないもその者の自由のはず」

 

 「そうです、僕は冒険者になりにオラリオに来たんです。確かに僕は向こう見ずですけど、神様やほかの団員さんたちを悪く言われるいわれはありません」

 

 「...その通りですね、少し興奮してしまいました」

 

 

 奇声を上げながらやってきたお姉さん(エイナ・チュール)は、狼さんを見ると「なんだ狼さんじゃないの、じゃあ先に言ってよ」そう言い、随分と落ち着いた様子で窓口に座り挨拶をした。

 しかし狼さんがギルドに来た理由を話すと、またしても大声を出し。新しい団員を探し始めるので僕は小さく手を上げる。

 僕のことを目にとめたエイナさんは、僕の肩をつかみ上から下まで見つめると昨日の僕の行いを言い当てる、どうやら噂になっていたようだ。

 

 そしてそのまま僕に対してお説教を始める。

 はじめはそのお説教を聞いていた僕だが、だんだんとその内容がファミリアへの愚痴に近いものになっていくとさすがにムッとする。それは狼さんも同じだったのかギルドとしての職分を超えていると、そう呟き。それに僕も同意する。

 エイナさんは僕たちの言葉で落ち着いた様で、僕の肩から手を離し椅子に座りなおした。

 

 

 

 

 「以上で必要事項は終わりです、何か質問はありますか」

 

 「いえ特には」「...ない」

 

 「ではこれにて手続きは完了しました、処理に1日かかりますので、また明日以降おいでください」

 

 「えっ1日?じゃあ今日はダンジョンは入れないんですか?」

 

 「そうですね、ギルドとしてはまだファミリアに所属していないということになりますので」

 

 

 少し変な人なのかな?そう心の中で思ったが、サクサク必要な書類を用意し手続きを済ませていく姿に、その印象を変える。

 そして最後の書類が終わるとこちら側を見て、何か分からない事は無いか尋ねる。僕も狼さんも特には無かったが、その後続いたエイナさんの言葉に僕は固まる。

 処理は1日かかるらしい、しかもその間ダンジョンには入れないそうだ。

 

 人が増え始めたギルドから出て、1日の予定が崩れ去りどうしようか僕が悩んでいると、狼さんはいくぞ、そう言って進んでいく。

 どこに行くんです。そう、置いて行かれないように少し走りながら背中に問いかけると、狼さんは答える、装備を揃えにと。

 

 

 

 

 

 「わあすごい、この剣すごい立派ですよ狼さん」

 

 「...値段もな」

 

 「...わあすごい、この剣すごい値段ですよ...狼さん」

 

 「...そこではない、こちらだ」

 

 

 狼さんは最初から知っていたそうだ。そりゃそうだ、きっと狼さんが登録した時も1日掛かっただろうから。

 今日がダンジョン初日だ!と気合を入れていたのは僕一人で、九郎さんも手続きが終わった後、装備を買うための予算を、あらかじめ狼さんに渡しておいてくれたらしい。

 狼さんについて行くと着いた場所は、オラリオの中心にある塔バベル。その中にある装備を扱っているお店。

 そのお店のショーケースに飾ってある剣を見て、僕は思わずはしゃぐ。すごい立派な剣だ。しかし狼さんが値札を指さしたことで一気にテンションが下がる、すごい値段の剣だ。とんでもない(ゼロがたくさんついている)値札の剣から目を離す、どう考えてもこんな値段の物を買えるような予算はないだろう。

 

 うなだれる僕に声をかけて、狼さんが店の中に入ろうとして足を一歩踏み入れた途端

ヘスティア・ファミリア襲来ヘスティア・ファミリア襲来
大きな音がした。

 

 

 

 

 「いやすまない、てっきり俺たちは灰がまた来たんだと思ってな」

 

 「...ビックリしました」

 

 「...ベルは明日初めてダンジョンに入る。初心者向けの装備が欲しい。予算はこれだけだ」

 

 「おう、迷惑かけたお詫びだ。いいもん見繕ってくるからちょっと待ってな」

 

 

 その大きな音が周囲に響くと同時にたくさんの人がこっちにやってくる。

 「今日こそ年貢の納め時だ灰の野郎」「今日こそ逃がさねえぞ」

 そんなことを言いながら、手に縄や先の分かれた棒をもって。

 だが狼さんの姿を見ると、「なんだ狼の旦那かお前ら撤収だ」そう言ってほとんどの人が帰って行ってしまい、一人残った人は僕たちに謝る。

 

 まさかいきなり大きな音がするなんて思ってもみなかったし、その後のこと起きたことにもびっくりした僕は、思ったことをそのまま伝える。

 狼さんはそんな僕を見て袋を取り出し、中身を見せて残った店員さんに初心者向けの装備を求める。その注文を聞いた店員さんは、「ちょっと待ってな」そういってお店の後ろに消える。

 

 

 「?...あ!」

 

 「どうした」

 

 「灰って神様も言っていました、僕の先輩ですよね。それに狩人って人もいるって。僕がまだ会っていない団員はその二人だけなんですか」

 

 「...いや焚べる者と言う者もいる」

 

 「焚べる者?でも地下にある部屋の扉は3つだけでしたよね」

 

 「灰と同室だ」

 

 「仲がいいんでしょうか、それにその3人はどこへ?」

 

 

 何も起きなかったように静かになった店内で、僕はこんなに店員さんから恨まれている灰さんにびっくりしていた。うん?灰?どこかで聞いたぞ。

 そう記憶に引っかかる名前に思い出そうとする、そうだ拠点を補修した人の名前が灰だったはず、それと狩人さん。

 

 思い出したときに口から洩れた声を聞いて、不思議そうにこっちを見ていた狼さんに聞く。僕の先輩はその二人かと。

 すると狼さんの口から新しい名前が出てきた、僕の先輩はあと3人いるらしい。でも教会の地下にあった変な扉は3つ、そのうち一つは九郎さんと狼さんの部屋。残りは二部屋のはず、不思議に思って尋ねる。

 

 灰さんと焚べる者さんは同じ部屋らしい。

 狼さんと九郎さんが同じ部屋なのは忍びと主だからだろう、ならその二人の関係性は?それに昨日の食事の時も見なかったし、今朝もみなかった。今拠点にいないのかな?

 質問を狼さんにすると困ったようにうなり声をあげる、以外と狼さんってわかりやすい。

 そんなことをしていると店員さんが戻ってきた。

 

 「まずこいつが武器、ナイフだ。ここの下っ端が作ったんだが、値段の割にいい出来だ。

 次に防具、あんまり重いのはいらんだろう、こいつにしときな。それにこのバッグなんかを引っ掛けるとこもついてるから、何かと便利だ」

 

 「うわ、すごい量ですね」

 

 「まだあるぞ。

 こいつはブーツ。つま先に鉄が仕込んであるからちいと重いが、ゴブリンぐらいなら蹴りだけでやれるだろう。

 こいつは武器だとかを引っ掛けとくベルト。切れやすいから何本か持っておいて予備も切らすなよ。

 こっちはポーションだとかを入れるほうのベルト。中にクッションが入っているから、ぶつかったりしてもなかなか割れない様になっている」

 

 「...幾らだ」

 

 「まあ迷惑料込みで...こんなもんかね」

 

 

 机の上に並べられる装備の数々。思わず目を輝かせる僕に、店員さんは説明していく。

 

 小ぶりなナイフとそれより小さいナイフ何本か。「あんまり大きい物は上手に扱えないだろ」という言葉と共に。

 

 革の鎧。一見すると只の皮の服だが、何枚ものなめした皮を重ねたもので、刃物にも衝撃にも強いらしい。

 

 それにバッグ。中にたくさん入るし、体に掛けるだけじゃなくて、さっきの服にもくっつけることが出来るそうだ。

 

 次にブーツ。鉄が仕込んであるから、手に持った武器が使えないときの武器にもなる。

 

 使わないときに武器をかけておくベルト。消耗品だから何本も買っておいて、切れたら新しいのと交換しろ、ベルトは切れても予備は切らすなそんなギャグと共に。

 

 ポーションなんかを入れておくベルト。割れないよう工夫がしてあるけど、無理をすれば当然割れてしまうから、無茶はするなよなんて言われる。

 

 こうして見ると、武器や防具よりその周りの物の方が工夫を凝らしてある。

 そう口にすれば、狼さんが「武器も防具もある程度は無くてもどうにかなるが、そう言った身の周りの物はずっと必要になる」そう言いながら値段を確かめる。

 

 店員さんも「武器だとか防具だとかにもっと工夫を凝らすようになるのは、もっと上のランクからで、初心者にはこれぐらいシンプルな方が良い」と同意して値段を提示する。

 提示された値段は妥当だったのだろう、支払いを狼さんがする。どうやら予算は足りたようだ。

 

 

 

 

 

 「ああ旦那、訓練場を使うならこっちから連絡しとくがどうする」

 

 「...頼む」

 

 「訓練場?」

 

 「まあちょっとした広場みたいなもんでな、武器の試し振りにはもってこいなのさ。

 新しい武器を買ったやつ、あんた等みたいに新入りを連れてきたやつ、いろんな奴が使ってくとこさ」

 

 お金を受け取った店員さんが、全額しっかりとあることを確認した後、狼さんに聞く、それに狼さんは頼むと返す。

 訓練場?いったい何だろう、僕の口から洩れた言葉に店員さんが説明してくれる。

 

 バベルの中にある、いくらかの広さがある場所で。武器を振ったり練習試合をするのに向いている場所であり、それこそいろんな人が使う。だからあらかじめ場所をお店の方で確保してくれるサービスもあるらしい。

 そうして僕は振り心地を試したり、実際に色々つけて動いてみたり、一休みした後狼さんと戦闘訓練をしてみたり。

 そうしているうちにいつの間にか日が暮れていて、僕たちは拠点へと帰った。

 こうして僕のオラリオ生活2日目は終わった。

 




続いた
続きました
連休中4日続けての更新に成功しました
しかしながら連休が明けますので更新頻度はガクッと下がるはずです
次回はベル君唯に、やっとダンジョンに潜るの巻き
どうぞ気長にお待ちください

ついに名前だけですが灰と狩人と焚べる者が出てきました
次の出番は次章ぐらいになる予定なんですがね

私ついに分かったんですよ
行きたいとこまでの道中で文章が長くなるならワープさせちまえばいいって
そうしてワープさせた結果が五千字オーバーのこの話です
?おかしいですねむしろ伸びてます
初期の前作を読んでいただいた方はご存じかもしれませんが
一万三千字ほどの文章を1話にしてたんですよ
後から余りにも読みにくいだろうと今の形にしたんですが
その経験から大体三千字前後を目安に一話を書いていたはずなんですが
どんどん伸びてます雨の後の雑草かな?

以下は登場人物紹介に書くほどでもない人たちの紹介です
というか登場人物紹介に書くのは主にヘスティアファミリアの人物です
つまりヘスティアファミリア外の人物です

エイナ・チュール
闇派閥とその残党がオラリオから消えたのは大体5年前
エイナさんがギルド職員になったのも大体5年前
ええギルド職員としての職歴ほとんどをヘスティア・ファミリアに埋められた可哀そうな人です
見送った冒険者が帰ってこないそんな経験とは無関係ではありますが間違いなく可哀そうな人です
日々問題児が起こした騒ぎを治めるために翻弄している可哀そうな人です
そのせいで新しい団員であるベル君に考え直すように言いベル君と狼さんに怒られました
ベル君から僕のことはともかく神様と先輩たちのことを悪く言われる筋合いはないと言われましたが
むしろ文句を言う筋合いしかない人です、可哀そう

店員さん
ベル君は店員と勘違いしたが正確には冒険者であり用心棒の依頼を受けていただけの人
ついでに一緒に出てきた人たちも同じ
店のオーナーから灰を捕まえたら特別ボーナスを約束されていたので
ヘスティア・ファミリアの団員が踏むと鳴る警報を設置した仕事熱心な人です
別に店員でもないのに真面目に悩んでベルに初心者向けの装備を用意してくれたいい人です
ちなみに警報は店のオーナー以下全店員から気持ちはわかる痛いほどわかるでも外してと言われ外されました
つけっぱなしでもいいんじゃないかな
ちなみに接客態度が評価されて店員として引き抜きに合うという語られない話があるとかないとか

お疲れさまでした、ありがとうございました
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