忍と灰と焚べる者と狩人とダンジョン 連載編   作:noanothermoom

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私は月曜もお盆休みなので月曜日はまだセーフ...という事にしてください


裏はかかれあい戦略は破綻する

SIDE 火の無い灰

 

 悠々と歩き門を開いた小人族(ルアン・エスペル)へと声をかける。

 

「よくやったおチビ。誰にもばれてないか?」

 

「ええ、全く。疑われもしていませんよ」

 

 俺の言葉に笑う小人族(ルアン)、いや小人族(ルアン)に化けたおチビ(リリルカ)

 

 俺達がこの【戦争遊戯(ウォーゲーム)】において一番問題視していた(面倒くさいと思った)のは、砦に侵入するまでだ。

 当然こんな砦俺達が本気を出せば更地にするのに一時間と掛からないだろう。

 だが、俺達は砦を破壊できないという制約(ルール)がある。

 

 ならばアポロン・ファミリアとしてはひたすらに砦の中に籠って制限時間(三日間)を耐えようとするだろう。

 まあそうなったらそうなったでどうとでもできるんだがな。

 だが、面倒くさい。

 

 だからこそ俺達が注目したのはおチビの魔法(【シンダー・エラ】)だ。

 同じくらいの体格の別人に化けられるおチビの魔法を使って、攫ったアポロン・ファミリアの小人族(ルアン)とおチビは入れ替わり。

 こうして今砦の門を開け放ったという訳だ。

 強固な城壁を備えた拠点が内側からの手引きによって陥落するのは火の時代(大昔)から変わらんらしい。

 

 或いはおチビ(ベルのパーティのサポーター)まで警戒していれば防げたかもしれんが、まあ俺達の対策を取るのに必死だったんだろう。

 分からんでもない。

 アポロン・ファミリアとしては俺達をどうにかすれば勝ちは確実だろうからな。

 制約(ルール)で俺達を縛って負け確の戦いに勝機を見出す、か完璧な作戦だな、その程度の縛りでは俺達を縛るのは無理ってことを除けば。

 

「それではリリはまたアポロン・ファミリアの中に紛れていますね。

 ...どうも想定以上の防衛が砦内にも敷かれています。

 それにアポロン・ファミリア以外の冒険者達の姿もありました。

 どうかお気を付けて」

 

 ペコリと頭を下げて走っていくルアン(おチビ)

 しかしまあ、外見だけでは全く見分けがつかんな。

 ソウルの業を使え(ソウルを認識すれ)ば話は別だが。

 しかし、想定以上の防衛...ね。

 

 臭う。

 ダンジョンで、オラリオで、そしてロスリックで嗅ぎなれた(悪意)の臭い。

 鼻が腐り落ちる程に香しく、反吐が出そうな程に麗しい。

 素晴らしいじゃあないか。

 ヘルムの中顔が歪むのを自覚する。

 

「さあ、戦いを始めよう。おままごとの様に幼稚で、地獄の様に終わりのない争いを」

 

 アポロン・ファミリア()に、神々(観客)に、そしてヘスティア・ファミリア(仲間)に宣言し俺は歩を進めた。

 

 

 

 

 

SIDE ヘスティア

 

「せっかくの【戦争遊戯(ウォーゲーム)】だってのに、自分達が造った防衛線に引きこもってるファミリアがいるってマジ!?」

 

「しょうがないだろう!?ほかにどうやって勝てと言うんだ!!」

 

 灰君が砦に侵入して数分。

 神々のテンションはいまいち盛り上がりに欠けていた。

 と言うのも灰君の前に立ち塞がったのは、アポロン・ファミリアが築き上げた強固な防衛線。

 

 灰君は制約によって砦を破壊するような攻撃をすることが出来ないため、防衛線を破壊することが出来ず、アポロン・ファミリアはそしてその防衛線の物陰からちまちまと弓で攻撃してくるだけ。

 灰君による凄惨な戦い(ショー)を期待していた神々としては当てが外れたと言ったところだろう。

 事実、画面の中の灰君もヘルム越しですらわかるほどに面倒臭そうな表情をしている。

 

 だが、アポロンの言葉も尤もだ。

 そもそもアポロン・ファミリアの唯一の勝ち筋は時間切れまで砦に籠る事。

 その前提が僅か十数分で崩れたんだ。

 愚痴の一つも言いたくもなるだろう。

 

 まあ、実際に砦に籠っていたのなら灰君達はその身体能力で城壁を飛び越して強襲しただろうけれど。

 つまりはアポロン側に勝機なんて最初っから無かったのさ。

 南無。

 

 今も戦況は膠着状態にあるとはいえ、灰君は雨の様に降り注ぐ魔法と矢の隙間から反撃し、僅かばかりと言えどもアポロン・ファミリアに被害を出している。

 このまま時間をかければ幾ら灰君の苦手な状況(多対一)とは言え、防衛線ごとアポロン・ファミリアがすり潰されるのは目に見えている。

 

「そこだー!」「いけー!」「やれー!」

 

 終わり(敗北)が見えているのならばせめて最後くらいは派手に散れ、と言わんばかりに周囲の神々が焚きつける。

 身勝手な、なんて思わないでもない。

 けれど、このままゴリ押せばボク達の勝ちは見えている。

 ならば降伏の勧告でもするべきだろうか。

 

「ふ、ふふふ。本当に終わりだと思っているのかね。私達がこのまま負けを認めるしかないとでも?」

 

 僅かに悩んでいるとアポロンが笑いだす。

 何かあるというのだろうか。

 灰君に砦に入り込まれ、防衛線で辛うじて食い止めているこの状況で。

 

「そろそろだ、そろそろ...来た!」

 

「っ!?馬鹿なっ!」

 

 画面の中、起きた出来事に思わず叫ぶ。

 増援。

 砦の内外で起きている戦闘に新たなアポロン・ファミリアの冒険者が追加される。

 それだけならばボクもこんなに動揺しない。

 それでも思わず叫んでしまったのには理由がある。

 

 アポロン・ファミリアは大体100人前後の団員を誇る中規模のファミリアだ。

 そして目視ではあるが、命くんが足止めしているのが20人、リュー君が戦っているのが30人、灰君を釘づけにしているのが50人程。

 あの日に灰君達にぼこぼこにされて怪我が治っていない子ども(眷族)もいるだろうから、どう頑張ってもアポロンが出せる人数は百人が限界のはず。

 あくまで目視での計算だが現状でもアポロン・ファミリアの総力戦と言っていいはずだ。

 

 当然ずれはあるだろうが、それでも10人単位で間違っていることなどないだろう。

 だというのに新たに今まで相手をしていた数と同じくらいの数がやって来たのだ。

 明らかにおかしい。

 

「アポロン!何をした!」

 

「そう叫ばなくとも聞こえているとも、助っ人だよ」

 

 厭らしく笑ったアポロンの答えに絶句する。

 助っ人だって!?

 

「君も言っていただろう?【助っ人を禁じる項目はない】。

 なら私達が助っ人を呼んだとしても問題はない。

 そうだろう?」

 

「それは...そうだけど...。

 だとしても、あの数!

 あれだけの数をどうやって集めた!?」

 

 アポロンの言う通りボク達(ヘスティア・ファミリア)が助っ人を求めた様に、アポロン達(アポロン・ファミリア)が助っ人を集めるのは想定内だ。

 だが、その為のソーマ・ファミリアへの襲撃だ。

 

 ただアポロンの口車に乗っただけの野次馬ならば、アポロン・ファミリアの、そしてソーマ・ファミリアの惨状を見て一抜けをするはず。

 そうなれば必然アポロン・ファミリアの兵力は少なくなる。

 だというのに一体何処からあれだけの兵力を集めてきたというのか。

 

「ヘスティア、君は君の眷族(火の無い灰)の価値をもっと知るべきだ」

 

「灰君の()()だって?」

 

「そう、火の無い灰に勝利したという価値をね」

 

 アポロンはいっそ楽しげにすら言う。

 火の無い灰はフレイヤの所のオッタルと双璧を成すオラリオ最強の冒険者。

 その火の無い灰を相手に死の危険がなく挑める、そして幾重にも制約がかかった上で戦えるのならば世界最強を打ち負かせる(勝てる)かもしれない。

 その機会(チャンス)があるのならば飛びつく冒険者は幾らでもいる、と。

 

「そんな...そんな馬鹿な!

 世界最強!?()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ヘスティア。(最強の称号を持つ側)には分からないかもしれないが、冒険者とは、いや子ども達(人間達)、否男ならば誰しもその称号を目指す物なのだよ」

 

 到底信じられない話だ。

 だって、灰君だ。あの灰君だ。

 灰君についての信じがたい事実()を嘘と否定して挑むのならばまだわかる。

 だが、先日のあの戦いを見て、灰君の強さ(最強である)を理解するからこそ挑むだって!?

 

 混乱するボクへといっそ温かさすら感じる目を向けたアポロンは宣言する。

 

「憧憬は止められぬのだ。たとえ我々()であったとしても」

 

 

 

 

 

SIDE 【戦争遊戯(ウォーゲーム)

 

(これは...少し...不味いかもしれませんね)

 

 新たに現れた冒険者達を見て命は心の中で呟く。

 

 既に自身の魔法(【フツノミタマ】)がどういう効果を持つのかは看破されてしまったようで、新たに現れた冒険者達は近づこうとせず、命が力尽きるまで待つつもりの様で万が一にも逃さぬ様に距離を取って囲んでいた。

 

 不用意に遠距離攻撃をするか、近づいてくれるのならば魔法(【フツノミタマ】)で防ぐなり拘束できたのだが、こうして待たれてしまってはどうしようもない。

 否、敗北するのは仕方がないとしても力尽きるぎりぎりになれば、囲む必要もないと他の戦場へと行かれてしまうだろう。

 そうなってしまえば任された先鋒()という任された役割すら果たせない。

 

 どうする。

 いっそ力尽きる前に魔法(【フツノミタマ】)を解いてわざと魔力暴発(イグニス・ファトゥス)に巻き込むか。

 出来る限り多くの敵を倒す為の選択(自爆)を選び、魔法を解こうとした時、声がした。

 

「友への献身こそこの世における最大の美徳である。

 故に貴公の行いを咎めはしないが...多少は私にも譲ってくれてもよいのではないかね?」

 

「貴様!?」

 

「焚べる者...殿」

 

 人が倒れる音と共に響いた声にその場の全員の視線が向く。

 果たしてその先には見慣れた(見慣れたくない)仮面。

 怯えた様に叫ぶ冒険者達と途切れ途切れに名を呼んだ命に返事をするように一礼をし、その名を名乗る。

 

「ミラのルカティエルです」

 

 

 

 

 

 

「同胞の郷を焼いた魔剣を使うなど!恥を知れ!!」

 

 叫ぶと同時に同胞(エルフ)がリューへと襲い掛かる。

 その言葉を聞き眉を顰めるリュー。

 

 何時からだろうか、【誇り高い同胞】が【傲慢なだけの人物】に見えるようになったのは。

 何時からだろうか、【特別な責務を持つ誇り】が【他者を見下す理由】にしか見えなくなったのは。

 だからこそリュー・リオンは故郷を離れ、オラリオへと来た。

 

 故にリューの心には【魔剣を使うことへの恥】などありはしない。

 そのことを同胞(エルフ)へと叫び返そうとした時、風が変わった。

 血生臭く、悍ましい、淀んだ風。

 

 反射的に下がったリューとエルフの間から凄まじい音が響く。

 思わず耳を抑え防ごうとした一同が顔を上げた時、そこには黒いコートを身に纏った狩人が苛立たし気に立っていた。

 

「吠えるな、駄犬が。

 厭うと言うのであれば何故オラリオに存在する工房を襲わない?武器屋の在庫を破壊しない?

 それもしない程度の憎悪如きが喧しい」

 

「か、狩人...」

 

 ギロリと向けられた瞳の鋭さにリューを囲んでいた冒険者達がたじろぐ。

 

「助けに来た...という事ですか?貴方は共闘が苦手だったはずでは?」

 

「言うじゃないか。現役を引いた身で...精々足を引かぬ様にしろ」

 

 かつて暗黒時代と言われたオラリオで追う側(リュー)追われる側(狩人)であった者が並び立つ。

 

 何時ぞや溢した言葉を揶揄うように口にしたリューへと面白くなさそうに鼻を鳴らす狩人。

 だが、忌々し気に顔を歪めると「前はお前だ」と言葉数少なく連携を確かめる。

 

(ベル・クラネル。貴方はやはり不思議な方だ)

 

 かつてであれば夢にも思わなかった現実に、それを実現させた少年へと敬意を向けるリュー。

 そうして周囲を睨みつけ、仕切りなおす。

 

 

 

 

 

 

「狩人とミラのルカティエル(焚べる者)が現れただと!?」

「火の無い灰はどうなっている!!」「まだ抑えています!!」「ならば馬の用意を!」

 

(おっと)

 

 砦の中。

 目の前を騒がしく走って行った冒険者達とぶつかりそうになりヴェルフは急いで身を引っ込める。

 そのまま走って行った背を見送り再び歩を進める。

 

 当然ヘスティア・ファミリアとの【戦争遊戯(ウォーゲーム)】中であるこの砦において、ヘスティア・ファミリアへと【改宗(コンバージョン)】したヴェルフが見つかれば騒ぎになるのは避けられない。

 だが、目の前を走って行ったにもかかわらず冒険者達がヴェルフに気がつかなかったのは、ただ急いでいたからではない。

 

(しっかしまあすげえなこの【月隠の飴】ってのは)

 

 口の中に広がる甘味(メロン味の飴)を堪能しながら、ヴェルフは心の中で呟く。

 

 最初ヘスティア・ファミリアでも最大の常識人()によっていきなり口の中に飴を放り込まれ、奇妙な体勢(座禅)を取らされた時は一体何事かと思ったが、その効果はすぐに目に見えた、いや見えなかった。

 

 奇妙な表現だが、それもそうだろう。

 ヴェルフは見えなくなって(透けて)いたのだ。

 どういうことかと狼に問いただせば、それこそがヴェルフの口に放り込まれた【月隠の飴】と奇妙な体勢(【月隠】のポーズ)の効果だという。

 目の前に立たない限りは戦いに備え、気が高ぶっている冒険者ですら気が付けない隠密性を与えるこの飴を使い、ヴェルフは密かに砦の中を進んでいた。

 

 なるほど、確かに灰は強い。だがそれは相手も重々承知だろう。

 だからこそ灰達が姿を現せばそっちに目が行く。

 その間に密やかに大将首(ヒュアキントス)を狙う。

 それがヴェルフ達に与えられた役割だった。

 

(次はここを右に...あっぶねえ!!

 

「!?

 て、敵襲!!」

 

 ひょっとするとこのまま大将(ヒュアキントス)の元まで辿り着けるかもしれない。

 そんなことを考えながら道を進んだヴェルフを待ち構えていたのは火球(魔法)

 思わず叫び大きく下がる(動く)

 それと同時にヴェルフを包んでいた霧が掻き消え、その姿が露になる。

 当然周囲の冒険者達に発見されると同時にあたりに緊急事態を知らせる鐘が鳴る。

 

「あ、あなたがここに来ることは分かっていました。ここから先は行かせません」

 

 何故バレた?

 そんなヴェルフの思考を許さないと言わんばかりに立ち塞がったのはカサンドラ・イリオンとその後ろに並ぶ射手達。

 

(ヤベェ。入れる物陰(遮蔽物)がねえ)

 

 当然ヴェルフに対応できるものではない。

 何とか防ごうと物陰を探すが、まるでこの場所に来ることが分かっていた(バレていた)かのように何もない。

 降りかかる矢の雨にどうすることも出来ず受る事しか出来ないのかと思った時。

 

 

巴流秘伝・桜舞い

 

 風が渦巻いた。

 

「怪我は無いか」

 

「っ!!済まねえ狼の旦那。助かった!」

 

「狼!!」「忍だ!!」

 

 気が付けばヴェルフに降り注がんとしていた矢は全て切り払われ、後には狼のみがただ一人立っていた。

 呆然と立っている狼を見上げていたヴェルフだったが、狼が自身へと手を差し伸べている事に気が付くと同時に感謝し立ち上がる。

 それと同時に何が起きたのか理解した射手たちは騒ぎ、逃がさないと注視する。

 

 

 

 

 

 

(全部()()なのに)

 

 互いに武器を構え相対する中、カサンドラは一人ため息を心の中で吐く。

 彼女は未来の出来事を夢で見ることの出来る予知夢のスキルを持っている。

 だが、同時に彼女のスキルはその言葉を周囲が決して信じない効果も持ち合わせているようで、この【戦争遊戯(ウォーゲーム)】についても幾度となく主神(アポロン)団長(ヒュアキントス)親友(ダフネ)へと提言していたのだが、全て受け入れてもらえなかった。

 

 それでも一応任された役割を果たす為にこの場所(予知夢で見た敵の攻めてくる地点)に先回りして待ち伏せしていたのだが、やはり夢の通りに防がれてしまった。

 夢で見た結果(予知夢の内容)を変えることが出来ないのならば、自分達のやっていること(努力)は何なのだろうか。

 そんな投げやりな気持ちになる。

 

(ダフネちゃんは大丈夫かな)

 

 そうしてまた別の役割を与えられた親友(ダフネ)が無事であることを祈る。

 結果は夢で見たとは言え、友の無事を祈るくらいの自由はあってもいいはずだ。

 

 

 

 

 

 

「はっはっは。あっちこっちでやり始めたか」

 

 砦の庭。

 自身に雨と降り注ぐ魔法と矢を防ぎながらソウルの反応から仲間達が戦い始めたことを知り、灰は笑う。

 

 結局のところ先鋒(リューと命)は囮だが、自身()も囮だ。

 真っ当な戦いにおいて防衛側が強固な拠点を築き上げているのを攻め落とすには三倍の兵力が必要だと言われている。

 尤もそれは神が下りてくる(人に神の恩恵が与えられる)前の考え(常識)であり、どれだけLVが高い眷族を集められるか、が今の戦いの焦点となっている。

 

 まあそんなことは置いておいて(閑話休題)

 普通に戦えばともかく、多くの制約を受けた上では砦に籠ったままの相手を倒すには流石の灰達と言えど少々骨が折れる。

 だからこその()だ。

 (自分達)食いついた(反応した)アポロン・ファミリア達を仲間(焚べる者、狩人、狼)がすり潰していく予定だった。

 

 それは全くもって予定通り進んでいる。

 唯一の想定外は自分の所(ここに居る冒険者)だけでも想定していた兵数を超えている点か。

 

(全く、ヘスティアめ...うん?)

 

 心の中で自信満々にアポロン・ファミリアの兵数を説明していた主神にツッコミを入れ...ふと気が付く。

 

(...()の所には焚べる者が、リュー(助っ人)の所には狩人が、ヴェルフ(鍛冶師)の所には狼が)

 

「...俺は?」

 

 砦の中外で戦闘を繰り広げている仲間達は助っ人であったり、ベルの為にと【改宗(コンバージョン)】した奴と共に戦っている。

 だが自分は?

 

 この砦の中外で一番冒険者達が集まっているのが此処だ。

 で、あるにもかかわらず、自分だけ一人で戦っていることに気が付いてしまい思わず小さく呟く。

 それと同時に鎧を掠める弓矢。

 

「うお!?あっぶねえな」

 

 物陰に隠れなおし、何はともあれ先ずはこの戦いを制してからだ、と気合を入れなおす。

 

「そもそも俺達は一人での戦いの方が慣れてるし、寂しくなんてないし...ないし」

 

 ...入れられていなかったかもしれない。

 

 

 

 

 

SIDE ヘスティア

 

「来た来た来た来たキター!」「今狼浮いてなかったか?」

「俺だー!ミラのルカティエルー!こっち見んなー!!」

 

 先程までの盛り下がりが嘘だったかのように盛り上がる神々。

 その視線は画面の中で暴れ回る灰君達に釘付けだ。

 

「ふ、フフフフフ」

 

「アポロン?」

 

「ありがとうヘスティア。これで私達の勝ちだ!」

 

「なっ...!?」

 

 そんな中アポロンが再び笑う。

 何処かやけくそめいた先程の笑いとは違う、思い通りと言った響きのあるそれに疑問の言葉を漏らせば、アポロンは勝利宣言をする。

 神々も画面から目を離し、一体アポロンが何を言い出すのかと注視している。

 

「君は私の子ども達(アポロン・ファミリア)がまんまと囮に引っかかって砦から引きずり出されたと思っているだろうが、それはこちらとて同じこと。

 君の眷族の居場所が全てわかればこそ、打てる手もあるのだから」

 

 満面の笑みで語るアポロンの言葉を待っていたかのように画面の中でも動きがあった。

 

 砦の四方にある出入口。

 灰君が潜った方角でも、リュー君と狩人君が戦っている方角でも、命君と焚べる者君が戦っている方角でもない。

 唯一誰も居ない出入口が開く。

 そしてそこには馬に乗ったアポロン・ファミリアの(アポロンのシンボルを掲げた)冒険者達が隊列を組んでいた。

 

「あれは!?」「増援か?」「いや違う」「また増援なのか!?」

「どういうことだ説明しろアポロン!」

 

 アポロン・ファミリア(アポロン側)の増援に対抗してヘスティア・ファミリア(ボク達側)増援(焚べる者君達)によって、戦況は五分に持ち直した。

 それはボク達の侵攻も食い止められたという事だが、同時にアポロン側も眷族達がすり潰されていく状況という事だ。

 

 そんな中現れた馬に乗った一団(新しい兵力)に神々は何が起きるのかと期待し、アポロンへと説明を求める。

 

「そうだね...まずは...ヘスティア。君達が行ったソーマ・ファミリアへの襲撃について感謝しよう」

 

「何?」

 

 アポロンの言葉に疑問を覚えるボクとは対称的に上機嫌なアポロンは楽しげに語る。

 

 ボク達のソーマ・ファミリアへの襲撃。

 それは確かにアポロン側の兵力(助っ人)を削る効果があったが、同時に選別する効果もあったと。

 

「そもそも私に協力してくれた子ども達(助っ人)は勝馬に乗ろうとした者が多かった。

 だが君達の行いによってその多くが逃げ出した。後に残ったのは君の子ども(火の無い灰)に勝とうという気概のある者達だ。

 だからこそ練度の高い動き(連携)を取れるようになった。

 

 こうして最後まで私のとっておき(精鋭達)を温存できるほどに」

 

 アポロンが画面の中の子ども達(馬に乗った一団)を指さすと同時に彼らは動き出す。

 その先には...。

 

「そう。君の子ども達が昨日一日過ごしていた拠点(建物)がある。

 いるんだろう?この局面になってもなお盤面に姿を現していない君の子ども(ベルきゅん)が!」

 

 この【戦争遊戯(ウォーゲーム)】の勝利条件はアポロン側(防衛側)は【三日間耐える】で、ボク達(攻撃側)は【砦を陥落させる】だ。

 だが、それ以外にも勝敗が付くことがある。

 相手に大将(団長)が捕らえられた時だ。

 

 砦から解き放たれたアポロン・ファミリアの精鋭達が猟犬のようにヘスティア・ファミリアの拠点へ襲い掛かろうとする。

 

「ベルきゅんって...」「きゅんはないわー」「やっぱ(センス)アポロンか」

 

 ...ついでに神々の罵倒もアポロンを襲った。

 

 

 

 

 

 

SIDE ダフネ・ラウロス

 

「見えてきた」

 

 馬に乗ってしばらく駆けると建物が見えてきた。

 ウチは率いていた団員達に指示を出して万が一にも逃がさないように建物を囲ませる。

 

 これでようやくこの馬鹿げた【戦争遊戯(ウォーゲーム)】も幕を閉じる。

 ようやく終わりが見えてきたことによって少しばかり余裕が出てきた。

 それと同時にウチの親友(カサンドラ)の事を思い出す。

 

 ウチの親友は辛気臭いというか、陰気と言うか。

 外見からしておどおどとしているし、本人が言っているようにジメジメしている。

 いい所もいっぱいあるんだけどね。

 

 だけどそういう陰気さをより深めているのが、時折口にする悲惨な未来()の話だ。

 本人は予知夢(スキル)だって言ってるけれど、ウチは、いや他の誰もそんなスキルがあるなんて聞いたことない。

 だから誰も信じないんだけど、それでもカサンドラは口にするのを止めない。

 

 この【戦争遊戯(ウォーゲーム)】が始まる前も必死に止めるよう言ってたけど...そういえば今日は何も言わずに、何時もの卑屈な笑みを浮かべているだけだった。

 何とかして耐久戦に持ち込もうとしているウチらをみて「大丈夫だよダフネちゃん今日でこの戦いは終わるから」とか言ってたね、そういや。

 

 そんなことを考えていると建物の包囲が完了した合図があった。

 どっちにしろ、ここで相手の団長(ベル・クラネル)を捕まえればウチらの勝ちに変わりはないんだから。

 

 あえて足音を鳴らして建物に近づく。

 中にいる奴に囲まれていることを分からせるために。

 そして思いっきり扉を蹴り開けたウチが見た物は。

 極東のテーブル(ちゃぶ台)とその上に載った()()()コップ(ゆのみ)

 そしてこっちを向いて満面の笑みを浮かべた少年(九郎)だった。

 

「残念。大外れ!」

 

 

 

 

 

 ...は?




どうも皆さま

私です

ええそうです
何時もの無駄に長くなる病が発病いたしました
この話お盆中に終わりにするのは無理かもしれんな

そんなことよりも
前回の最後の灰の登場が皆様に好評なようでうれしいです
そして何なら今回も開幕で中二っぽい事を言っていたのにいまいち締まらない灰
何故なのか

いやまあ、私が書いたんですけどね
灰だけ一人だと気が付いてしまったら書かざるを得なかったんです
許しておくれ

それではお疲れさまでしたありがとうございました
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