忍と灰と焚べる者と狩人とダンジョン 連載編 作:noanothermoom
ご注意ください
かつて名も知らぬ小人が始まりの火より見出したる暗い魂
それは名も知らぬ小人に連なる全ての
仄暗くそして温かな人の本質となった
人の本質とは決して諦めぬ意志であり
それを魂の奥底に宿すが為に人は遥かなる高みへと挑み続ける
故に火の時代において
挑み続ける意志とは即ち魔法を、呪術を、奇跡を、神秘を、ありとあらゆる
故に
知るがいい
お前達が目を逸らし続けてきたものを
お前達が枷を嵌め押さえ続けてきたものを
闇よりは逃げられぬ
「素晴らしいじゃないか。
だが私達は?」
──発言者 火の無い灰
「...おぉ?寝てしまっていたか」
眠りより一人の男が目覚めた。
僅かに痛む頭に手をやりその端麗な容姿をわずかに歪める。
(今日は実に良い日だった)
男──正確には男神──は自身が寝入るまでの出来事を思い出し、心の中で呟く。
オラリオ最恐とも噂されるヘスティア・ファミリア。
そのヘスティア・ファミリアとアポロン・ファミリアとの【
当然男、否全ての神々はヘスティア・ファミリアによる凄惨な
期待していた物とは違ったが、それもまた
それ故【
「些か飲み過ぎたか?」
のどの渇きと重い鈍痛に眉をひそめた男は水を求め己が眷族を呼ぶ...が返事はない。
窓の外に目をやれば月が冷たい光でオラリオを照らしていた。
すでに寝てしまったのだろうか。
もう一度呼ぶことも考えたが、今の体調を考えると大きな声を出すよりも歩く方が楽だ。
コツ、コツ、コツ...。
静かな拠点内を男の足音だけが響く。
そしてふと気が付く。
冒険者と言う仕事は
無論今何時なのか分かる魔道具もあるにはあるが、そういったものをダンジョンに持ち込んだ所でモンスターとの戦いで壊れてしまうのがおちだ。
そもそもダンジョンの中ではなにか予定外が起きて、予定より戻る時間が早くなったり、或いは遅くなったりするのは日常茶飯事。
故にある程度の規模を持つファミリアの拠点では昼夜問わず
男のファミリアもそれに倣っているはずだが、先程からこの拠点内に響くのは男の足音のみ。
今日は【
僅かに警戒心を滲ませ拠点の中の気配を読もうとした時、莫大な気配が男に圧し掛かった。
耳を澄ませている時に急に耳元で大きな音を鳴らされるように、目を凝らし暗闇を見透かそうとしている時に急に光を当てられた時の様に。
例えるのであれば何十人もの神が思いっきり
「う...ぐ...」
不快な感覚で目が覚める。
一体どうしたのだったか。
男は自身が意識を失う前の事を思い出そうとする。
何か恐ろしい気配が...。
のどの渇きが酷い。
そうだ、水を飲もうと思っていたのだった。
あの気配が何にせよとにかく起き上がるのが先決だと男は起き上がろうとし、そして叫んだ。
「なっ、何だこれは!!」
意識を失う前、男は自身のファミリアの拠点にいた。
ならば目に入るは自身の拠点のはず。
にもかかわらず男が目にしたものは一面の瓦礫の山。
叫んだ喉がひりひりと痛む。
だがそんな痛みなど気にもならない程の光景だった。
地上に降りてきて手にしたすべてを失ったとでも言うのだろうか。
到底信じられない光景にしばし呆然としていた男は気が付く。
「だ、誰か...誰かいないのか!?」
ひりひりと火を飲み干したかのようなのどの痛みも、頭を内側から殴りつけられているかのような頭痛も忘れ叫ぶ。
だが、その声に応える者はいない。
否。
「一体何...がぁ...?」
自身の叫びに応える者が居ないことに起き上がり周囲を探索しようと、地面に手をついた姿勢になった男は口から奇妙な音を漏らした。
自身の意思とはかけ離れた動きに疑問を漏らそうするが、代わりに漏れたのは
何が、と視線を彷徨わせると自身の胸から捩じれた刃が生えていた。
それに気が付くと同時に刃が抜かれる。
声、と言うよりも息が口から洩れ、意味のない音を奏でる。
刃が引き抜かれた勢いで仰向けになった男の目に映ったのは
「ひ...の無い...は...い...?」
火の無い灰がヘルムの奥から感情の読めない瞳で男を見下ろしていた。
何故こんな凶行へ至ったのか、どうやってこんなことをしたのか、自身の眷族達は無事なのか。
余りにも多くの疑問があふれ出るが、それが口から洩れるよりも早く螺旋剣が閃く。
「お休み、或いはおはようか?
何にせよ
気が付けば目の前には首のないマネキンが...否。
それは首を落とされた男の体。
抵抗することはおろか何時切られたかも気が付かないまま男は息絶えた。
「はっ!...ゆ、夢?」
飛び起き自分の首へと手をやる。
自身の拠点は倒壊していないし、当然首は繋がっている。
そのことを確認して男、【酒神ディオニュソス】は安堵の息を漏らした。
そのまま近くのテーブルに置いてあったワインへと手を伸ばそうとして止める。
あんな悪夢を見るなどやはり飲み過ぎたのだろうか。
もう水でも飲んで寝なおしてしまおう。
そう思い
まさか?
ぞッと背筋に冷たいものが走る。
「まさか。あれはただの夢に過ぎない」
口に出して強がるが、もう子ども達を一度呼ぶだけの強さはなかった。
本当に夢の通りだったら?
湧き上がる恐怖を押し殺し水を求めディオニュソスは拠点の中を歩く。
その最中に
だが、ディオニュソスを迎えたのは静謐なる通路。
常に灯っているはずの明かりすら灯っていない闇に呑まれた拠点。
遂に堪え切れず叫ぶ。
「誰か、誰かいないのか!?」
だが、その言葉に応える者はいない。
否。
薄暗がりより風を切り裂きディオニュソスへと迫る
「誰がッぁ!?」
それは矢、それも槍にすら見間違うほどの大矢。
明かり一つない暗がりでありながら狙い過たず命中し、その大きさに見合った破壊力はそれでもなお止まらずディオニュソスを壁に張り付けにする。
まるで虫の標本の様に縫い留められたディオニュソスが苦痛と何とか自由になる為に藻掻いていると足音が響く。
その音は死の時を告げる鐘の音の様に静かに、だが確実にディオニュソスの元へと近づき、遂にその足音の主、火の無い灰が闇より現れる。
「やあやあやあ、さっきぶり。
今夜は良い夜で御座いますね...なぁんてな」
「火の無い灰!?一体何の「ああ、悪いが疑問は聞かん」ギィ!?」
さっきぶり、と言うのであれば先程の夢は
ならばさっきの夢の
だがならば何故自分は生きているのか。
灰の言葉にディオニュソスは混乱する。
だが疑問を口に出そうとした時灰によって矢が放たれる。
それは当然の様にディオニュソスへと命中し、短い悲鳴を上げさせた。
「最近のオラリオを騒がせた新種のモンスターだとか、なぞの
「な...何の話...」
「はぐらかすのか?ならまあいいが。
とりあえず大切なことは、俺達はあんたが一連の事件の関係者だと確信している。
そしてその上でお前がなんと言い訳しようが興味はない」
ゆっくりと噛んで言い含めるように、万が一にも会話の行き違いなど起こり得ないように、小さな子供に言い聞かせるように話しながら火の無い灰は担いでいた大弓、竜狩りの大弓へと新しい大矢をつがえる。
磔にされ身動きが取れないディオニュソスへと見せつけるように、一つ一つの動作をゆっくりとこなしていった灰はギリギリと弦を鳴らしながら最後に、「とりあえずもう一度死んどけ」と言い放ち矢を放つ。
外すなどありえない距離からの一撃はディオニュソスの心臓を貫き死に至らしめた。
「...ハッ!!」
三度の目覚め。
だがそこに現状への疑問はない。
あるのは底の知れない恐怖のみ。
ガタガタと震える体を何とか抑えようとするディオニュソスの前に三度灰が現れる。
「いい気になるなよ。人の身でお前は...ぁ?」
酒神としての権能を使って作った【
そのことに気が付くと同時にディオニュソスの意識は闇に溶ける。
四度目。
なりふり構わない逃亡。
だが暗闇から飛んできた火球によって
五度目。
拠点内の秘密の隠し部屋に逃げ込む。
だが隠し部屋ごと大槌で
六度目。
何とか命乞いをしようとするも灰は全く聞こうともせず短剣で
直剣で
大剣で
特大剣で
斧で、鎌で、槍で、拳で、爪で、弓で。
ありとあらゆる武器で、ありとあらゆる魔法で、ありとあらゆる
殺され、殺され、殺され、殺され、殺され、殺され、殺され、殺された。
だが幾ら殺されようとも目覚めた瞬間に戻り、そしてまた殺される。
痛みも苦しみも気も狂わんほどに受け続けたというのに目覚めると同時にそれも治る。
今度こそ、今度こそは終わった。
その期待はその度に裏切られ。
最早目を開ける事すら拒もうとした時ディオニュソスの頬を焦げ臭い風が撫でた。
風?馬鹿な。いつも目覚めるのは自身の拠点の中だ。
ならば風など入るはずもない。
だが焦げ臭い、と言うよりは最早熱風とすら言っていいこれが気のせいなどありえない。
どうしようもなく外界が気になりその瞳を開け、そして絶望した。
「あ...あああ...」
世界が焼け落ちている。
自身の拠点など瓦礫も残っていない、否オラリオの街すらも破片一つも残っていなかった。
眼前に広がるは一面の灰世界。
これは終わりの世界。
終わりを否定し、繁栄を望み、その果てに太陽すら腐り果てた悍ましい世界。
否、腐り果てたのは世界そのものだ。
死にながら生かされ、終わりながら続けさせられた。
その矛盾の果てに全てが腐り堕ちた。
それは罪。
それは罰。
それは過去。
それは呪い。
世界そのものの生まれる前。
そこにあった悍ましき事実はディオニュソスの心を打ち砕くには十分すぎた。
「さて、ここまで本気を出すのは久しぶりだな。覚悟は...あ?」
「...」
「おい、おーい。...壊れたか?」
いみがないこえがこぼれる。
めのまえのものごとをのうにちょくせつきざみこまれ。
そのないようがくちからこぼれみみからふたたびはいる。
おわりのないくつう。
いやへんかがあるだけよろこばしい。
おわらないせかい。
へんかのないせかい。
へんかしてしまうせかい。
「高々数十回死んだだけだろうに全く」
よろいすがたのおとこがなにかをいうがそのないようがはいってこない。
のろわれたせかい。
のろったせかい。
それからめをはなせないままにただたちすくんでいるとしょうげきをうけた。
「貴様...夢ごと燃やすつもりか?」
「すぐに治るんだからいいだろう?」
そんなこえがきこえ...いしがやみにのまれて...。
「え...?」
そうして正気に戻った。
「ば...か...な」
ディオニュソスの心は砕けた。
二度と立ち上がれない、否立ち上がろうと考える事も出来ない。
残っていたのは僅かに思考するだけの意志、それだけ...だったはずだ。
受けた衝撃を覚えている。
感じた絶望を覚えている。
見出した憎悪の深さを覚えている。
確かに心が砕かれた事実を覚えている。
だというのにその心は何事もなかったかのように機能している。
その事実に気が付いた時死を、終わりを、火の無い灰を恐れていたディオニュソスは気が付く。
この夜の終わりは...一体何処だ?
どうなれば私は解放される?
答えの出ない問いを自問するディオニュソスの前にまた火の無い灰が現れる。
「よう。
夜は永い。だが
俺
終わるのか。遂にこの悪夢が終わるのか。
その言葉に僅かな希望を見出すディオニュソス。
最早反抗する意志すらありはしない。
ましてやかつて──と言っても実際には一夜も経っていないのだが──企んでいた、この世界をかつての
今望むのは平穏。
この未知溢れる地上を去り、安全な天界へと戻る事のみ。
だが俺
火の無い灰の言葉に僅かな引っかかりを覚えると同時に一発の銃声が響く。
それと同時に肉体は意志とは無関係に膝をつき。初めてその時ディオニュソスは膝を撃ち抜かれたことに気が付いた。
音のした方角を見れば未だ煙が立ち上る銃口をこちらに向けた狩人の姿があった。
「狩「黙 れ」かふっ」
現れた狩人は苛立ちを隠そうともせずにディオニュソスが何か喋る前に更に水銀弾を撃ち込む。
水銀弾に込められた狩人の血と神秘はディオニュソスの体内をずたずたに切り裂き、殺した。
「何なのだ...お前達は一体何なのだ...。
私に何をした...。お前達の力は何だッ!!
此処は一体何なんだ!!」
「奴が言わなかったか?それとも聞いていなかったのか?どちらでもいいが」
火の無い灰、狩人。
即ちヘスティア・ファミリアの冒険者。
その力はオラリオでも指折りであり超常的な力を持つ。
だとしても限度という物があるはずだ。
自身の死を無かった事にするのならば──だとしても訳が分からないくらい無茶苦茶だが──まだしも、
終わりすら与えられないなどそんなことがあり得るはずがない。
だが狩人はそんなディオニュソスの悲痛な叫びを一刀両断する。
「ここは夢だ」と。
「ゆ...め...?」
呆然と言われた言葉の意味が分からずただ繰り返したディオニュソスを鼻で嗤い、狩人は語る。
「そうだとも全ては夢。
朝が来れば失われる儚い一夜の夢にすぎん。
苦しみも痛みもお前が死ねば夢となり再び目覚める。
ただそれだけだ」
それこそが真実。
それこそが事実。
ディオニュソスは目覚めそして殺されるたびにその事実を夢として、目覚めをやり直していただけだ。
「ならば、ならば!何故
嫌だ!私はもう嫌だ!!痛みも苦しみももう嫌なんだ!
...助けてくれ...この
だが実際には逃れられない牢獄だ。
否、牢獄よりもなお悪い。
牢獄ならば、いや他の何であれ全てには
だがこれからは文字通り
項垂れ助けてくれとうわ言の様に呟くディオニュソスの頬を狩人の手のひらが優しく包み込む。
「そうか。お前はこの夜に倦み心が折れてしまったのだな」
そうして顔を上げさせた先には幼子を見つめる様な優しい瞳が待ち構えていた。
「終わらぬ夜に疲れ、変わらぬ結果に嘆き、それを招いた過去と変わらぬ今、そしてまだ見えぬ未来を呪う。
その先にすら変わらぬ夜に気が狂ったか」
優しい声で語りディオニュソスの頬を慈しむように撫でる狩人。
その手つきはまるで赤子を撫でるかのように優しい。
だがその手が急にディオニュソスの顔を掴む。
「ああ、何と愚か、何と幼稚。
高々
怪鳥のような狩人の嘲笑が静寂を切り裂く。
その声をディオニュソスはただ聞くしか出来ない。
否。
逃げようとはしているのだ。
だが顔を包むように掴む狩人の十の指が、いやその指は細く、細かく、長く後頭部まで包むほどに伸びその顔をわずかにも動かせない程に締め付ける触手となっていた。
ズルズル、ヌチャヌチャ。
この世のものとは思えない悍ましい水音。
それがディオニュソスの耳より脳を犯す。
それを脳に流し込まれながらもディオニュソスはまるで気にしていなかった。
そんな物よりも今目の前にある狩人の
その瞳は
その口元はマスクの上からでも分かるほどに
相反する
この穴のような顔の何処に表情がある。
穴...?目の前にあるのは
精霊住まう星輪の幹だ。
否、否、否。
狩人。
上位者へと至りし
それは人が人足ることを望むが故に、上位者を呪い、狩り尽くすと誓ったが故に上位者としての姿を厭い、
だが
刻一刻と移り行く狩人の姿。
それこそが夢の主たる
啓蒙とは神秘に
ならば上位者へと
啓蒙を得たが故により深い
より深く
人の身であれば受け入れることが出来ないだろう量の啓蒙も、神の身であれば受け入れられる。
受け入れられてしまう。
故に続く螺旋を終わらせたのはひときわ高い嘲笑の声を響かせた狩人だ。
「夜は明け、夢は覚め。全ては夜の残滓となり忘れられてしまう。
だが悪夢は巡り終わらぬものだ」
高らかに叫びディオニュソスの顔に張り付いていた触手が耳より侵入しその奥、脳へと直接その冒涜的な知識を植え付ける。
その悪夢的冒涜には流石の神と言えど耐え切れず、意識は暗闇に
「ああああああああああ!」
蘇ると共にディオニュソスは絶叫しすぐそばの窓を突き破り走り出した。
ガラスの破片が傷つけたのだろうか、体のあちこちが痛い。
何時も愛用している靴は走るのに向いていない。
そもそも幾度となくこの夢の中で逃亡を試みたのだ。
今更逃げ切れるなどと
それでもなお逃亡を選んだのは純粋なる恐怖からだ。
一秒でも早く、一歩でも遠く。
そんな原始的な衝動に突き動かされディオニュソスは走る。
「ぜえ、ぜえ、ぜえ...」
だが分かるはずだ。
叫び声を上げながらの全力疾走。
それも目的地もないままの逃走など何時までも続くものではない。
人一人いないオラリオの路地でディオニュソスは座り込んだ。
呼吸が辛い。
幾ら息を吸ってもまるで足りない。
肉体の欲するままに酸素を貪り続け、ふと気が付く。
未だに死んでいない。
まさか逃げきれた?
自分でも信じきれない希望を僅かに見出す。
そんな訳がない。
今までの
とにかく少しでも生きながらえる為に。
今更な警戒を周囲に向け、そして気が付く。
オラリオの街が赤で照らされている。
血で塗られたという訳でもない。
むしろ降り注ぐ光が赤いような。
そんなことを考えて
見てしまう。
「あ...あああ...」
朱かった。
空に昇る月は紅く、夜空は青ざめていた。
赤い月はディオニュソスの見ている前で神を呪う狩人の瞳となり。
狩人の瞳は
無貌は唇を吊り上げた狩人の嘲笑顔になる。
そうして気が付けば
「ああああああああ!」
再びの逃走。
否。
未だ体力の回復どころか息も整っていないままの疾走。
その足元はおぼつかず、速さも先程までと比べればまるで話にならない。
それでも走るのだ。
生きる為に、死ぬために。
尊厳ある死を得る為に。
そうして追われる獲物となったディオニュソスの背を見て狩人は嗤う。
「そうだとも。
逃げろ逃げろ。それこそが私達がお前に求める物。
巻き藁なぞを殺したところで準備運動にもならん。
このオラリオより【
ついた錆を落とすくらいには抵抗しろ」
そうして誰も居ないオラリオの街に血生臭い
聞く者のいない悲鳴が木霊した。
SIDE ウラノス
今日はギルドの厄日だ。
そう呟いたのは誰か。
少なくともギルド職員ではあるまい。
そんなことを考えながらギルドの主神ウラノスは戦場のような有様のギルド内を見渡した。
「この書類を3番に!」「これを決済に回して!」「49番でお待ちの方~!」
「何でもいいから早く!」「私は天界に帰るとしても残される子ども達が...」「奴らが、奴らが来る!!」
オラリオの行政機関であるギルドは昼夜を問わず途切れる事の無い利用者と、手続きのための書類仕事で溢れている。
とは言え何時もであれば昼前になればある程度は人も減り猶予が生まれる。
だがもう
その神々と眷族、と言うよりは
今──と言っても
天界では得られない
そんなうたい文句に誘われて天界より
それが地上での
だがどうしても生活が成り立たず天界へと還る神も居ない訳ではない。
しかしながら極々僅かだ。
と言うのも一度地上へと降り立った神が天界へと還った場合、二度と地上へと降り立つことは出来ず。
天界で他の神が
故に幾らギルドと言えど帰還手続きの事例など数えるほどしかなく慣れない仕事である上に、帰還手続き自体も「天界に還らせていただきます」「分かりました」とはいかない。
たとえば地上に残る
ざっと上げただけでも面倒な手続きをこなさなければならないのだ。
幾らギルド職員が優秀なエリート揃いと言えど、そう簡単に捌けるものではない。
ギルドの主神と言う立ち位置にこそいるものの、ギルドと言う行政機関の公平性の為に眷族を持たないウラノスには手伝えることもない。
ただその奮闘が報われるようにと祈っているとヘロヘロのロイマンが客人が来ていると伝えてきた。
「...という訳で【
「...そうか」
自身の居室で灰が語った昨夜に開いた夢と、その夢の中で起きた【
ウラノスとしても【
だが火の無い灰達による【
(何という事だ。我々はまだ見誤っていた!!)
心の中でのみウラノスは叫ぶ。
オラリオに流れる噂を信じず
だがそれでも暗黒時代【
しかし今回の件でこれまでの火の無い灰達に対する脅威判定はまるで足りていなかったと痛感した。
誰が想像できるだろうか。
神すら殺しうるだろう戦士が本当は時代ごと世界を終わりにした世界の破壊者であるなど。
誰か想像できただろうか。
獣と神へと憎悪を募らせる狩人が文字通り
誰も想像できなかっただろう。
心が折れる事すら想像できない狂人が世界が始まる前の世界ですら狂人であり続けたなど。
誰しもが想像できなかった。
ともすれば愛嬌すら感じる忍びが主の命により土着の神すらも殺す人物であったなど。
「お前達はこれからどうするつもりだ」
これだけの危険人物達がそれでも大人しくしていたのは
女神の慈悲は確かに彼等の心を癒し、救ったのだ。
そのことが分かっていてもウラノスは、ギルドの主神であり
神を嫌い嗤う彼は、獣を憎悪し神を唾棄する彼は、己が目的の為ならば何でもする彼は、主の安寧の為ならば修羅にもなる彼は。
その力を持ってオラリオで何を為す。
「そうだな...まずは【
「何?」
返答によってはこの命に代えても。
覚悟を決めたウラノスの言葉への返事はともすればすっとぼけているとすらいえるものだった。
予想だにしない返答に思わず困惑の声を上げるウラノス。
「ベル...ああ、俺達の
そいつが【
まあ
正直な所準備をさぼる為に報告に来たという面もあるんだ」
そんなウラノスの困惑など知った事ではないと話し始めた灰はヘルム越しですら楽しげであることが分かる。
「狩人の奴が何時もの不機嫌そうな顔で飾りつけをしていた」だとか、「焚べる者が訳の分からないマークを作っていた」だとか。
いっそ下らないことと言い切っていい出来事をさも楽しそうに話す灰には他意は見られず。
「そうか...ならば
準備もあるのだろう?」
毒気を抜かれたウラノスはねぎらいの言葉をかけ、依頼の完了を宣言する。
灰の背が部屋より消えた後もそちらへと視線を向け続けていたウラノスは小さく呟く。
「彼らがどうあれ問題はないだろう。
忍と灰と焚べる者と狩人とダンジョン 連載編 ──完
どうも皆さま
私です
遂にです
遂に完結です
嬉しいやら寂しいやら
中々に複雑な心境です
いやまあ完結としましたが一応の完結で
いくつか温めているネタがあるのでそちらもそのうち投稿する予定なのですが
よろしければお気に入り登録したままにしておいていただけると嬉しいです
そんなことよりも本文です
人間性とは何ぞや
人に宿るというのならばそれはダークソウルであり
人だけが持つ意志である
それが失われた時
ベル君のスキルとしての人間性は決してあきらめない意志であり
故に格上にも食いつく力ですが
灰に宿る人間性とは奇跡を
故に神すらも殺す...みたいなそんな感じです
こう、ふわっと受け入れてください
実は灰達が暴れて将来起きる事件の芽を全部潰す
というのは割と初期から決まっていました
寧ろこうすることで書けなくなりそうになったら
全部終わりにするつもりでした
それが想定していた最後までしっかり書けましたのも
読んでくださった皆様のおかげです
感想、お気に入り登録、評価、誤字報告大変ありがとうございました
全て創作活動の糧となりました
改めて皆様にお礼を申し上げます
ありがとうございました
以降はこの小説の登場人物紹介と言いますか初期設定と書いている途中で変わっていった諸々の感想になります
つまりは読まなくとも問題ない奴です
お暇な方はどうぞ
そうでない方はお戻りください
ベル・クラネル
ヘスティア・ファミリアの若き団長
後書きでも時々書いていたが
灰達に対して全幅の信頼を寄せ
灰達に追いつくつもりであるベル君は大概頭がおかしい
まあ灰達の後輩なので頭がおかしいくらいはご愛嬌
私の書くベル君は他所のベル君より2、3歳歳が低いかもしれない
何か最終的に灰達に挑む冒険者への最低ラインとして立ちはだかることで満足していたが...君オラリオに来たのハーレムの為だって覚えてる?
ヘスティア
ヘスティア・ファミリアの主神
初期構成ではヒロインしているはずだったのだがいつの間にか
ファミリアの主神、母親としての面が強く出ていた
どうして...
けどファミリアの親としての役割を果たし続けてきていたのでしょうがないのかもしれない
全くの余談だが灰達の影響を受けてある程度戦えるようになっている
少なくとも戦ったこともない神、アポロンぐらいならばぼこぼこにできる
火の無い灰
ヘスティア・ファミリアの冒険者
初期設定ではもっとドライな性格だったが
いつの間にかベル君を滅茶苦茶可愛がっていた
多分保護者組には内緒とか言って買い食いしたり装備を買ってあげたりしている
そしてバレて怒られている
月の狩人
ヘスティア・ファミリアの冒険者
初期設定ではもう少し落ち着いていたのだが
いつの間にか怒ってるか鬱になってるかのどっちかしかなくなった
基本情緒不安定
幼年期を越えて思春期なのかもしれない
獣扱いされると烈火のごとく怒るが
風呂──というよりも水が──嫌いだったり気まぐれだったり割と猫っぽい
実は
獣に近い生き方をしていたのにベルへの想いで更生する
啓蒙を得ながらそれを求めない
等の点からリリの事をとても高く評価している
リリからは手のかかる先輩扱いである
何故ぇ
絶望を焚べる者
ミラのルカティエルです
冗談はさておきヘスティア・ファミリアの冒険者
フロム主人公勢の中では狼に次いで真人間
しかしそれを上回るほどに胡散臭い
決め台詞だけ出せばどうとでもなる反面
それ以外のセリフをしゃべらせるのに苦労した
初期設定からは全くぶれてない
...というか初期設定がミラのルカティエルですしかない
全くの余談だが
この小説の人間性(ダークソウル)の設定上メンタルオバケである焚べる者なら
深淵すらも気軽に散歩できるし人の闇も使いこなせる...という設定がついさっき生えた
狼
ヘスティア・ファミリアの冒険者
主が生きている以上すべてがハッピーな忍び
弟子もとっていてオラリオ生活を満喫していると思われる
喋らねえなあこいつ
喋る狼とか大分解釈違いなのでしょうがないけれど
初期設定と比べてかなり天然になった冷徹な暗殺者とか書いてあるんですけど?
ベルに対しては基本後方師匠面をしている...いやまあ師匠ではあるけれど
もしも葦名が今しばらく戦渦に巻き込まれなければ
もしも弦一郎が早急な手段を取らなければ
もしも葦名に平和を守るだけの力があれば
何時か自分も義父の様に弟子を取ることもあったかもしれない
そんなことを忍びは考える
九郎
ヘスティア・ファミリアの団員
初期設定は薄幸の美少年だったが
いつの間にかかなり腹黒いし計算高くなった
無駄遣いが多いとリリに怒られたが一向に改めない辺り神経も図太い
まあ葦名人だしね
こう見えて葦名人なのだ
刀を持てばそのうち斬撃の一つも飛ばすようになるかもしれない
リリルカ・アーデ
ヘスティア・ファミリアに改宗したサポーター
ベル様程の心からの信頼を持てずとも
信じようこの人達の事を
みたいなことを考えていたのに
その後の灰達の行動で台無しになった人
何で棘の鎧を着て追いかけてくるんですかね
何で敵を傷つけられないからって本拠地を糞まみれにするんですかね
いや本当になんで?
恩人に常識を求めるのは間違っている...のでしょうね
頑張れリリ
君以外のヘスティア・ファミリアの奴らは基本みんなボケだ
書いているうちにヒロインポイントが爆増した人
...というより
灰達が受け入れる=実質家族みたいなものになる
なのでしょうがない
ヴェルフ・クロッゾ
ヘスティア・ファミリアに改宗した鍛冶師
ベルの事を信頼している
ひたすらに信頼している
かなり重い感情を向けている節もあるが
ベルからヴェルフへの感情も大概重いのでしょうがない
実は灰と波長が合うタイプで
変なことをしでかす組み合わせ
混ぜるな危険
...混ぜなくても危険
命
ヘスティア・ファミリアへと改宗した冒険者
自分を貫くために移籍するノンストップガール
ヘスティア・ファミリアへ移籍したことで師匠が増えた
同時に支障も増えた
全くの余談だが
元主神であるタケミカヅチのことを好きであり
回収する際の問答で
ベル殿のことは好ましいと思っていますがそれはあくまで人としての好ましさでありベル殿のことが好きとかそういう事ではなくてですねいや嫌いなわけではないのですが
みたいな会話をしていた
タケミカヅチ爆ぜろ
リュー・リオン
狩人に頼み込まれ助っ人として参戦したエルフ
強さの割に割を食っている可哀そう
一応狩人からは巻き込まないでおこう
くらいの扱いは受けている
アポロン
アポロン・ファミリアの主神
ベルに一目ぼれして奪う為に戦争遊戯を吹っかけてきたウルトラスーパーバカ
戦争遊戯後はヘスティアにぼこぼこにされて財産の殆どを毟り取られオラリオから追放された
ソウルまで奪われなかっただけまだまし
全くの余談だが
相手にだって愛はあるんだよという程度のアポロンの愛だが
基本的に一方通行で押しつけがましい愛である
万人を分け隔てなく照らす太陽神の愛とはそういう物だ
夏場はそれを実感できる
ヒュアキントス
アポロン・ファミリアの団長
忠誠を誓うアポロンの為にヘスティア・ファミリアとの戦争遊戯という無理ゲーに挑んだ可哀そうな人
こんな忠臣がいるのにベル君にも手を出そうとしたアポロンは糞だな!
オラリオから追放されたアポロンに付き従い何処までも供をしていった
どうあれアポロンからの寵愛を受けている現状を喜んでいるのならば
まあそれでいいのではないかな
カサンドラ
アポロン・ファミリアの冒険者
スキルによって予知夢を見ることが出来るが
その内容を誰かにしゃべっても信じてもらえない呪いもかかっている
正確にはスキル(神の恩恵)ではなくそれ以外の何か、どちらかというとソウルの業とかの分類に入る
何それ恐い
全くの余談だが
ヘスティア・ファミリアとの戦争遊戯が決まると同時に
酷い悪夢を見続けて寝不足になった
そうしてうたた寝をしてまた悪夢を見た
可哀そう
ダフネ
アポロン・ファミリアの冒険者
アポロンのとっておきとして戦争遊戯中盤で
ヘスティア・ファミリアの仮拠点に襲撃をかけたが
そもそも罠だったので
思いっきり作戦にひっかっかった人
戦争遊戯中は隠し玉として息をひそめていたが
結果として罠にかかりそのまま負けてしまった
...もしかして一番働いてないまである
ザニス・ルストラ
団長降格RTA走者
もとい元ソーマ・ファミリア団長
ハイパーミラクルウルトラスーパーバカであり
やることなす事全て裏目に出た人
まあ牢屋の中なら灰達に怯えることもないので
多分幸せ
ソーマ
ソーマ・ファミリア主神
火の無い灰以下ヘスティア・ファミリアが誇る狂人共に襲撃された神
割と可哀そう
眷族の事はどうでもいいとか言いつつ
子どものリリが大きくなるまで面倒を見させているあたり
可愛がっていた節もあるのかな
ディオニュソス
名前が面倒くさい神、もといソード・オラトリアの黒幕
この小説ではベルたちの奮闘にテンションの上がった灰達が闇派閥を殲滅する前の準備運動としてボコり倒された
一応他の奴は一度心をへし折った後は解放されたのにこいつだけ念入りにぼこぼこにされた
喜べよお前が望んだ過去の悲惨な世界とその世界に生きる存在の悲鳴だぞ
...こんな所でしょうか
何か書かれてないよと思うようなことがありましたら
連絡いただけると嬉しいです
それでは私の拙い小説をこんな所まで見て頂きありがとうございました
本当にありがとうございました