忍と灰と焚べる者と狩人とダンジョン 連載編 作:noanothermoom
ダンジョン内の37階層以降を示し
最も深い階層であることも同時に示す
それまでの下層と呼ばれる階層よりもはるかに危険であり
多くの上位の探索系ファミリアによる遠征が行われているが
未だダンジョンの終点を見た者はいない
人は未知を解き明かし、神は未知を求めた
故にオラリオは発展した
だが探るべきでない“未知”は存在するのかもしれない
深い底から或いはダンジョンの悪夢
ダンジョンへの遠征
それは大規模なダンジョン攻略であり、ファミリアの威信をかけて成功させるべきもの。
ロキ・ファミリア団長、フィン・ディムナもまた、成功させるべく必要なものを準備し、物資、人員、できる限りの準備をしてこの遠征を行った。
だがダンジョンの底知れぬ悪意には、なお準備不足だったと言わざるを得ない。そう悔いていた。
ダンジョン深層
ダンジョン内で確認されているもっとも深い階層であり、ロキ・ファミリア程の大派閥でもなければその情報を知ることすら出来ない、ダンジョンの最奥部。
これまでの下層と呼ばれる階層ですら、この階層と比べれば楽園に思えるだろう。
だが、ロキ・ファミリアの幹部の面々は、さらなる深みを踏破せんと遠征に臨み。
その道中51階層で初めて出会った極彩色の魔石を持つモンスターの、体液によって装備を腐食させる特性と、その体液を吹きかけることによる遠距離からの攻撃に苦しめられた。
ついには彼らはモンスターを踏破したが、消耗もまた大きかった。故に後方にあった二軍らが物資と共にキャンプをしていた拠点へと下がった。
だがダンジョンの悪意は、その気のゆるみを許さなかった。
キャンプへと下がった彼らが見たものは、先ほど苦しめられた極彩色の魔石を持つモンスターによって襲撃を受けるキャンプだった。
だがそれだけで折れるのならば、ロキ・ファミリアはオラリオ最大のファミリアと呼ばれない、彼らはロキ・ファミリアの幹部にまで成り上がれない、彼らは数多の悪意をその力をもって打ち砕いた。
だが後方にいた団員の被害は少ないものではなく、それ以上に多くの物資に被害を受けていた。
極彩色の魔石を持つ新種の魔物、その情報を遠征の成果として、地上に帰ることで意見が一致したその時、今いる階層より下の階層へ続く階段より足音がした。
それぞれが音のした方向と、それ以外の方向を警戒する中、足音はだんだんと近くへとやってきて足音の主がその姿を彼らの前に表す。
「おや?これはロキ・ファミリアの皆様、このようなところで会うなんて奇遇ですね?...なあんてね」
まるで鎧を着たまま火葬されたかのような火と灰の香り、誰かがうめくように言う
騎士に扮したように、兜を被り、鎧を付け、手甲と足甲を身に着けた、だが纏う気配はその装備が示すはずの誠実さを打ち消して有り余る。
装備と立ち振る舞いがちぐはぐな、いっそわざとやっているのでは無いのかとすら思える怪しい男は軽薄そうな口調で語る。
「それで?どうするんだ、互いに見なかったことにして別れるのが最上だと思うが」
モンスターによる襲撃を受け、周囲に今だ血痕が残る中でなお、隠し切れない血の匂い、怯えたように誰かが言う
黒いコートを纏い、羽を模した飾りが付いた帽子を被り、そしてマスクで目元以外のほぼすべてを覆う、だが纏う気配はその装備が抑えつけんとした剣呑な空気を感じさせる。
体内で暴れる怒りを隠そうともせず、男はひどく苛立たしげに語る
「ミラのルカティエルです...。ならば語らねばなるまい、ミラのルカティエルの伝説を」
誰も彼もがその姿から目を離せない、だが誰も彼もが意識して視界に入れないようにする、ゆえに誰にも名前を呼ばれない男は、仕方がないので自ら名乗る、己の2つ名を。
皮でできた服と、ズボンと、手袋を身に纏い、そして祭典用の帽子に縫い付けてある翁の仮面を被った、だが纏う気配はその装備から感じる溢れんばかりの怪しさを更なる怪しさで塗りつぶしてなお有り余る。
奇怪な装備など気にならない程奇怪な、しかし他の者に無視された男は心なしかしょんぼりとした様子で語る
最悪だ。その言葉は誰の脳内に流れた考えか。
痛みにあえぐ負傷者か、未だ周囲を警戒する幹部たちの誰かか、はたまた僕か。ロキ・ファミリアと今現れた三人が所属するヘスティア・ファミリアは非常に仲が悪い。
いや団員同士全員が仲が悪いというわけではないが、主神同士が顔を見合わせれば喧嘩ばかりしているのならば、団員も仲が良くならないのは道理というものだ。
おまけに彼らがいるここは深層ダンジョン攻略の最前線。
どこのファミリアが何階まで攻略したのか、それはオラリオ中の興味を引くものだ。そしてヘスティア・ファミリアが到達されたとされる最深到達階層、それよりはるかに深い
オラリオに流れる噂の数々。そしてその中のいくつかは真実であることを知る者らは恐怖に怯える。だが僕は決断し声をかける。
「私の話を聞いていなかったのか?それとも聞いても理解できない程に愚かだったのか?どちらだフィン・ディムナ」
「どちらでもないさ、どちらにとっても見なかったことにするより得があるように交渉をしているのさ」
「ふ~ん、雇うというが、ここに我々三人を雇えるだけのものがあるのかねフィン団長殿」
「もちろんあるとも。ああ、でも僕たちはさっきまで後方のキャンプが襲撃にあってドタバタしてたんだ。
そしてなぜ君たちがこんなところにいるのか、僕たちは知らないし興味もない。
だから契約する際に場所をきちんと示しておかなければ、君たちと会った階層を間違えてしまうかもしれない。」
途端に酷く苛立たし気な狩人が、最早憎悪すら感じさる口調で詰め寄ろうとする、それに反応して気の短いティオネが前に出ようとする。
それを手で押しとどめながら語る、その言葉に狩人は苛立たし気な態度を変えることはないが、いったん引きティオネもまた引く。
灰が代わりに前に出てしゃべる。
ここが勝負どころだと感じる。気まぐれなように見えて、この三人は自身のあり方その根を揺らがさない、そして灰は報酬に対して非常に厳しい。
言外にお前たちがこの階層まで潜っていたことを黙っていてやる、と匂わせながら言葉を口にする。
「ミラのルカティエルです...ここで皆殺しのルカティエル伝説を作るその選択肢もあるが?」
「できるのかい?誰一人として取りこぼさずダンジョン内を逃げ回る全員を殺し切ることが」
灰と狩人が互いに顔を近づけ、相談しようとする。そのすきに仮面の男が前に出て語る。
その言葉に舌打ちをしたくなる気持ちを抑えて、冷静に告げる。冒険者同士手を取り合おうだとか、そんなことをすればオラリオがどうなるだとか、そんな言葉は間違いなく響かないだろう、だからこそここにいるロキ・ファミリアの団員すべての命を掛けて圧をかける。
やるかやらないか、この男が言い出したなら可能性は常に半分だ、そしてやるとなれば間違いなくやり抜くだろう。
「辞めろ、みっともない獣じゃないんだ落ち着け」
そのまま睨み合えば、しばらくした後、後ろから狩人が声をかけ下がらせる。
下がるときにミラのルカティエルがこちらに美しいお辞儀をするのを見て、自分の英雄になるという夢もたいがいだが、彼のそれはもはや呪いか何かだな。と考える。
「ああもちろん危険なダンジョン内を移動してもらうんだそれなりの報酬は払うよ」
「いくらだい」
「フィン」
この階層にいたことを広めない、その言葉に好意的な様子の彼らに、さらに報酬の上乗せを口にする。
その言葉にすぐさま灰が食いつき、ファミリアの金庫内容を知っているリヴェリアが止めようとする。
「五千万ヴァリス、当然一人あたりだ」
「フィン!!」
「よし決まりだ」
ここでもし渋れば交渉は簡単に水の泡となり、良くて放置、悪ければ命を懸けた鬼ごっこが始まる。
そのことを理解していてなお震えそうになる口から出たのは、
本来のロキ・ファミリアならば払えない報酬ではない。そして目の前にいる存在らを契約で縛り安全に地上へ帰る、そのことを考えればむしろ安いとすらいえる。
だが遠征を実質失敗し、多くの物資を失い、幹部たちが愛用する武器が痛みそれを修繕し、さらにその武器に匹敵するようなものをそろえる必要もあることを考えれば、たとえ無事地上に戻れたとしてもファミリアの家計は火の車どころではないだろう。
だがそれを否定する声を塗りつぶすように灰が承諾の声を上げる。
「それじゃあ移動するためにも、荷物をまとめるのを手伝ってほしいんだが。」
「おう任せろ。」
「見せてやろうミラのルカティエルの伝説、その一端荷集め伝説を。」
快諾する灰と手を取り契約を交わし終えた後、荷造りを手伝ってほしいと口にすれば足取り軽く灰は向かい、ルカティエルもまたいつもの文句を口にして仕事に取り掛かる。
残るは依然苛立たしげに、こちらを睨む狩人だが、観念したように動き出し、すれ違いざまに耳打ちをする。
「...迷惑をかけた、私の分は要らん」
「は~あ」
「お疲れ様でした。」
弱弱しい声と共に腰砕けになる僕をベートとガレスが支え、行き場のない手を差し出していたティオネは舌打ちをする、そしてアイズがねぎらいの言葉を口にし何とか地上に帰る算段は目星がついた。
ダンジョン中層
この地に生まれ落ちたモンスターたちは災害に見舞われていた。
ロキ・ファミリアの幹部だけでも、LV.5の冒険者が4人LV.6が3人だ。中層の適正レベルなどぶっちぎっており、ともすれば一人で攻略することすら可能とする冒険者の集団。だが不運はそれだけに収まらない。
「あっはっはっはっは、たまにはここら辺のモンスターとするのも気分が変わっていい。」
「死ね、死ね、死ね、腸を晒して死に果てろ。」
「ならば語らねばなるまい、ミラのルカティエルの伝説を。」
楽し気な笑い声を響かせ、綻び刀を振るう灰。
あまりにも殺意が強すぎる呪詛を振りまきながら、ノコ鉈を振るう狩人。
いつも通りの文句を告げながら、亡者狩りの大剣を振るうルカティエル。
彼らは普通の冒険者よりも残酷に、残虐に。そして無慈悲に、湧き出るモンスターを殲滅する。
そうして彼らが通った後には、モンスターの死体それから魔石とドロップアイテムを拾い集めるロキ・ファミリアの面々。
不幸中の幸いというべきか、物資の多くが駄目になり、破棄したことによって生まれたスペースによって、先に進む3人が無視している、拾い物を入れる余裕は十二分にあるのだから。
モンスターの湧きが収まり、小休憩をはさむ最中。
僕はルカティエルに物資を分けてもらう。ルカティエルと刻印がされたそれ────いったいどこから取り出したのか、なんて疑問を口にすることなどない
その取引額約二千五百万ヴァリス。
こうしてフィンは狂気の沙汰とまで言われた契約から、実質半分の値段にまで報酬を引き下げ、補填のための収集も行い、また必要な物資の補充もこなした。まさしくロキ・ファミリアの団長にふさわしい頭脳と雄姿だろう。
だがそう気が緩んだ時に不幸とは起きるものだ。
一行が入ったある部屋、その壁から次々とミノタウロスが出てくる、怪物の宴(モンスター・パーティー)────ある特定の場所で大量にモンスターが発生すること────だ。
だが体の調子がどれだけ戻ったかのいい試金石だ、そうロキ・ファミリアの面々は襲い掛かり。
俺たちの前に出てきたのが悪い、そう言わんばかりにヘスティア・ファミリアの三人も襲い掛かる。
あまりにもひどい戦力差、次々と灰に帰っていく同胞に怯えたように未だ残る生き残りが逃げ出す。
「あっ逃げた」
「ふっざけんな!背中見せて逃げるモンスターがあるか」
「待てあの方角は、上への階段がある方角だぞ」
そうベートとティオナが口にするが、ミノタウロスは後ろも振り向かずに一心不乱に逃げ出す、只逃げているだけなら良い。だが逃げ出した方角には上層への階段がある。
ダンジョン内で生まれたモンスターは基本生まれた階層に留まり続ける、だが時として緊急事態や偶然によってほかの階層へと移動することがある、今がその時だ。
そしてここにいる面々にとってはおもちゃに近い扱いを受けるミノタウロスだが、それが上の階に行けばLv.1の冒険者たちを虐殺するだろう。
僕はそのことに気が付いた瞬間追いかけるように指示を出すが、部屋の壁に次々とひびが入りモンスターが生れ落ちる。
まるでダンジョン自身が、追わせないという意思を持つかのように。
だがこの階層に生まれるモンスターなど僕らの敵ではない。
「アイズ、ベート、君たちは先に行ってくれ」
「私も行こう」
「...頼む」
幹部のうち機動力に優れる二人を選び逃げ出したモンスターを追わせる、返事をする時間も惜しみ、二人は逃げ出したモンスターを追いかける。
そしてその後に続く、血の匂いをまとった黒い影、狩人だ。低く自身もモンスターを追いかけようと提案する彼に、僅かなためらいの後頼む。
「これで最後...か?」
「さすがに疲れたー」
「なぜまたこんなタイミングで」
「そんなことより先に行った彼らを追いかけるぞ」
数ばかりが多いモンスター、いたずらに時間がかかる、まるで時間稼ぎをされているような、そんな考えを振り払い武器を振るう。
そうしているうちに壁からモンスターの出現が止まり、もう新しく生まれないことを確認すると、ティオナが疲れを口にし、リヴェリアが理由を考えようとする、だが先に行った3人に合流するのが先だと、僕たちは追いかける。
「あーうん、ほら色々あってびっくりしただけだって。血もよく落ちる洗濯方法知ってるから、教えてあげるから。」
「...」
「あーっはっはっはっは、イヒヒヒヒ、駄目だわ笑い死ぬ」
ダンジョン5層
上層と呼ばれる場所で、後を追いかけた僕たちが見たものは、返り血を受けたアイズとそんなアイズを一生懸命元気付けようとしている狩人、そしてバカ笑いをしているベートであった。
普段身に纏っている苛立ちと狂気。
それをどこに置いてきたのか、まるで拗ねてしまった愛娘の機嫌を取る父親のような狩人の姿に、話しかけるのが躊躇われた僕は、笑い続けるベートに話を聞く。
何でも最初は順調に逃げ出したミノタウロスに追いつき倒していたらしい、ほかの冒険者が襲われた形跡や、襲われている姿もなく。残るは最後の一体。
それを追いかけているとミノタウロスに追い込まれている冒険者、あわやほかのファミリアの冒険者に被害が。そう思った瞬間アイズが自身の魔法を使い加速し、そのままの勢いでミノタウロスを討伐。その
その結果アイズは拗ねてしまい、その様子を見た狩人がいらない失言をしたことでより拗ねたアイズをなだめる為に、この面白光景が出来たらしい。
返り血を浴びたアイズを見たときは、最悪の事態が頭をよぎった一同の空気が緩み、僕は「気を緩めるなあと5層だ」そう口にするが自身の口元が緩むのを抑えられなかった。
「ありがとう、君たちがいなければ我々は無事地上に戻れなかったかもしれない」
「フィン団長殿...誠意とは金の形であるって言葉知ってます?」
「...うんまあ君がそういう人だと知っていたよ」
ダンジョン入り口に、ロキ・ファミリアの面々とヘスティア・ファミリアの3人がいた。
僕が別れの挨拶をしようとすれば、灰が報酬の件を忘れるなと言ってくる。
命の危機すらあったこの遠征より、無事に帰ってこれた喜び、返ってこられなかった戦友への悲しみ、それらがあちこちで発散されている中。
そんな空気なぞ知らん、と言わんばかりの発言に頭の中で「いやでもこういう人だって知ってた、感動の別れなんてしようとした自分が悪い」そう考え、浮かんだ罵倒を飲み込む。
ロキ・ファミリアの面々が出ていけば騒ぎになるからその前に行くわ、そう言った3人を見送り、僕はこの遠征最後の仕事をする。
どうも皆様
初めての投稿はお盆休みで毎日投稿から始まった作者です
何が言いたいのかというと連休が明け週一投稿予定のこの小説ですが
毎日投稿から週一投稿に変わってそのままエタるんじゃないかと
ほかならぬ作者が心配していたということです
いやあ後書きを書いているときは気が楽でいいですね
そんなことより
やっとだ
やっと灰と狩人と焚べる者の出番が来ましたよ
だけどこの話の主人公はフィン
そして気が付く
焚べる者、基本ミラのルカティエルを名乗るから本名を知らないほかの冒険者視点だと
焚べる者の名前が出ない
...まあ本望でしょう
フィン団長の凄い計略
普通の冒険者なら見た途端逃げ出すヘスティアファミリアの3人組を雇おうとする
恐らく隠しておきたい深層最下層にいる事実を黙っといてあげるよ~と仄めかす
(仄めかすのが重要はっきり口にすると隠しておきたいということが分かっていると相手にばれる)
全員ぶち殺してもいいけど?と聞いてきた相手にできるの?と逆に強気に出る
黙っていてもらえるという時点で相手が乗ってもいいと思っている交渉に大金をぶつけることで相手に即答させる
(性根が優しい狩人がいや...流石に悪いだろ...自分の分返すわ...となるのを見越して)
ダンジョン内で魔石やドロップアイテムに興味を示さない3人を先行させることでそれらを自分のファミリアのものにする
ミラのルカティエルが持つルカティエル商会との取引をして武器や防具、雑貨などを充実させて団員の士気を高める
ついでに今後を見据えて、大口取引をすることで割引を図る
しれっと取引額を報酬のうちに入れてルカティエルの分の報酬を半額に値切る
このことに灰が気が付くがまああいつらの金だし~と思って何も言わないことを見通す
これがフィン団長の雄姿だ
所で書いた本編を一度見直したら雄姿の部分が融資になっててそのままにするかどうか少し悩みました
お疲れさまでした、ありがとうございました