亡国機業の妖精   作:妖精騎士コスプレをさせられるランスロ

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第二回モンド・グロッソ(前)

 インフィニット・ストラトス。世界各国が誇る軍事兵器、既知の人類の叡智を悉く叩き潰し、介入する間もなく世界を一変させてしまった存在。

 または、使うほどに使いやすくなっていく理想の道具。亡国機業実働部隊としてスカウトされたミア、ランスロットのやることは単純だった。仕事をこなし高い給料を貰う、これだけである。初めこそ実働部隊としての戦闘力テストやらマニュアルを頭へ叩き込んだりとやることは多かった。ISを常時起動したり部分的に起動したりシールドバリアのみを展開したりなどISのできる事をどんどんと増やしていった。とくに常時起動などは国家代表でもなかなかできない行為で秘密結社故にできる代物だろう。気づけばランスロットは実働部隊の切り札のような扱いになっていた。

 同じく実働部隊としてISを所持しているスコール、オータムに比べ仕事は少なく自由が多かった。これは二人が潜入工作などエージェントとしての側面を持った活動をしているのに対しランスロットは純粋な暴力装置としての役割しか持たない為だ。同じく暴力装置のエムは遠距離狙撃が可能な為ランスロットより出番があった。

 だからランスロットは休暇があれば思い出の湖の畔で一人、風に揺れる湖面と空を眺めていた。セシリアに逢いたいという想いと両親の死の原因となった自身が会うべきではないという自責による代償行動だと彼女自身は気付いていない。

 そんな時期にランスロットへと仕事が舞い込んだ。内容はシンプル、誘拐だ。だがそのリスクは計り知れない。第二回モンド・グロッソの場で初代ブリュンヒルデ織斑千冬の弟、織斑一夏を誘拐しろと言うのだ。

 目的は最優先として第二回モンド・グロッソにおける千冬の棄権ないし失格、次に一夏を鍵として千冬の亡国機業への参加を促すこと。その為一夏への対応は慎重を機してスコールの選抜したエージェントチームが行うこととなった。

 ランスロットの役目は面子を潰されたことに全力で攻勢に出るであろうドイツの撃退だ。ランスロットのISは完全なる所属不明機、誘拐の母体が何処のものか惑わせることもできる。その隙に千冬との交渉をエージェント達が行う予定である。

 作戦説明とエージェント達との顔合わせが終わった後、オータムに呼び止められた。

 

「おいおいテメェ、まさかそんな格好で今回の任務に出る気か?」

「……何か問題でも?」

「大有りだ、目立ちすぎだろその格好は。夜会にでもに行くんじゃねえんだぞ」

「つまり似合ってないと?」

「そうは言ってねえだろ。似合いすぎだ。道ゆく人々全員振り返らせてどうすんだよ」

「……確かに、わざわざ美貌を晒す意味もないか」

「おい誰か助けてくれエムのやつの方がよっぽどマシだぞ」

 

 ツッコミをすることも面倒くさくなったオータムだがしっかりとランスロットが絶妙に目立たない程度に野暮ったい変装を施し、作戦の地ドイツへと飛んだ。

 

「……暇」

 

 モンド・グロッソの行われている会場から少し離れた街でのんびりとアイスクリームを食べているランスロットの姿があった。思いの外警備が頑強で、一夏を誘拐するのに手間取っているようだ。主に試合時間がすぐ終わることとそれ以外の時は千冬が一夏にべったりなのが原因らしい。そこは他の国家代表諸君に頑張ってもらうしかない。

 

『対象を確保。移動経路を出します』

 

 ランスロットがネット越しに織斑千冬の準決勝の実況を聞いていると、エージェント達が誘拐に成功したようだった。移動経路にはアイスを食べて寛いでいるこの街も含まれている。

 

『GSG9の通信量増大、誘拐が悟られたわよ』

 

 スコールから通信が入る。ドイツの誇る対テロ組織内の通信量が激増しているらしい。街道を誘拐した車両が走り抜けていった後、ハイパーセンサーが上空を飛行するISの存在を捉えた。

 対テロ組織GSG9の保有する第二世代型ISラファール・リヴァイヴのフルカスタム機、ブンデスポリツァイ・ランツェだ。最新鋭のレールガンユニットを備え超遠隔からの狙撃によりテロリストを無効化することを主眼に置いた遠距離型のISだ。

 即座にISを展開し、瞬時加速(イグニッション・ブースト)。射線に割り込んだ。対人を想定し人質に被害を出さないよう威力を調整された弾丸が盾に容易く弾かれる。

 

「ッ! ISだと!?」

 

 いかに全方位への探知能力を持とうと、狙撃に際してその探知範囲は極端に狭まる。本来なら観測手、狙撃手に役割を分担したブンデスポリツァイン・ランツェ二機で行う任務を緊急とはいえ一人で行ったのが仇となっていた。

 狙撃には邪魔となっていた大型スラスター、装甲類を具現化し戦闘態勢に入る。手に持つレールガン式狙撃銃が口を開けるようにスライドし、使用可能な弾頭口径を対IS用に切り替えた。

 しかし下から突っ込んでくるランスロットになかなか攻撃を行うことができない。外せば下の街への被害は免れないからだ。

 距離が縮まり必中距離となった瞬間レールガンが火花を撒き散らしながら火薬では至れない超高速に弾頭を加速。それを躱すのではなく両手に備えられた盾で斜めに弾き逸らした。

 更なる加速を行い突き出されたレーザーブレード・アロンダイトをギリギリの所で相手も躱し、射線上に空しかなくなったとレールガンを乱射する。それを不規則に幻惑するように躱され、特殊部隊の女は変な笑いが出そうになってしまった。

 量子通信で本部へ現在の任務の危険度の格上げを申請しつつ少しでも援軍が間に合うよう時間稼ぎを試みた。

 

「だめだよそれじゃ」

「ぐっ!!」

「そんな後ろ向きな気構えじゃ僕は止められない」

 

 後方へブーストを吹かしたにも関わらず全く距離が変わらない。それはつまり完全に読まれ合わせられたと言うことだ。両手のレーザーブレードの乱打にブンデスポリツァイン・ランツェは大破させられ墜落していく。それを見送って、ランスロットもまた超低空を飛行しエージェント達の車両にトランクから乗り込んだ

 安全のために重ねた毛布に包まれてベルトで締めて転がされている織斑一夏の横顔を眺めつつ車に揺られることしばらく。

 当初の予定通りセーフルームに入り込み、エージェント達が交渉の準備を進めているので隔離部屋でのんびりと一夏と対面することとなった。意外にも暴れ散らかす様子もなく落ち着いていた。

 

「……ねえ君も捕まったのか?」

「ん? 違うよ?」

 

 ランスロットが入ってきたのを見て案じるような顔をしていた一夏が呆気に取られた。

 

「な、なんで君みたいな小さい子が」

「見かけで判断するなんて今時遅れてるよ。まぁ僕が小さいのが悪いのかな?」

「……ごめん……じゃない! なんのつもりで俺をこんな所に!」

「まぁまぁ落ち着いて。紅茶でも飲む?」

「飲まねぇ!」

 

 能天気にケトルからお湯を注ぐ様子にペースを崩されながらも一夏が立ち上がってランスロットに掴みかかる。逃げ出そうとどうやら考えているらしいが、その初動は掴んだランスロットが微動だにしなかった事で挫かれた。

 

「んなっギッ!?」

「危ないよ。火傷の危険があるからね。君を傷つけるつもりは無いんだ」

 

 軽く腕を締め上げながら柔らかいソファーの上にボスンと寝転がし、その胴体の上に馬乗りになる。手に持つティーカップを一口飲んでから、熱かったようで涙目になりながら舌をちろりと出して気を取り直す。異常とも言える軽さに一夏は逆に目の前の少女へ不気味さを強く感じた。

 

「そんな殺気立たないで、のんびりしなよ。僕たちは君と、君のお姉さんと仲良くしたいんだ。なんで仲良くしたいかは知らないけど」

「千冬姉と……!?」

「失礼」

 

 エージェントが部屋に入ってきて一夏に構う事なく耳打ちをした。

 

「成る程。一夏くん。今回は君の客人扱いは終わりだね申し訳ない。また今度、予定でも合えばのんびりとお茶でもしよう」

 

 馬乗りから降りるや否やエージェントに殴られ一夏は気を失った。

 

「偽の犯行声明文は用意した?」

「完了しています。対象は近隣の廃工場に移送します」

「わかった。僕が時間稼ぎをするから移送が終わり次第撤収しよう」

「……ご武運を」

「任せてよ」

 

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