捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強へ 作:月城 友麻
翌日、ギルドに行くと、ロビーでジャックたちと談笑してたギルドマスターがうれしそうに声をかけてきた。
「ヘイ! ヴィッキー! 噂をすれば何とやらだ。大活躍だったそうじゃないか!」
「ギルドの迷惑にならないように頑張りました」
ヴィクトルは苦笑しながら返す。
「いやいや、さすが、頼もしいなぁ!」
マスターはヴィクトルの背中をパンパンと叩いた。
「主さまは素晴らしいのです!」
ルコアも得意げである。
「あー……。それで……だな……」
急にマスターが深刻そうな顔をしてヴィクトルを見た。
「何かありました?」
ただ事ではない雰囲気に、ヴィクトルは聞いた。
「実は暗黒の森が今、大変なことになっててだな……」
「スタンピードですか?」
ヴィクトルは淡々と言う。
「へっ!? なんで知ってるの!?」
目を丸くするマスター。
「奴らが襲ってきたら殲滅してやろうと思ってるんです」
ヴィクトルはこぶしをギュッとにぎって見せた。
「いやいや、いくらヴィッキーでも殲滅は……。十万匹もいるんだよ?」
眉をひそめるマスター。
「十万匹くらい行けるよね?」
ヴィクトルは横で話を聞いていたジャックに振る。
「ヴィ、ヴィッキーさんなら十万匹でも百万匹でも瞬殺かと思います……」
ジャックは緊張した声で返す。
「へっ!? そこまでなの?」
絶句するマスター。
「主さまに任せておけば万事解決なのです!」
ルコアは鼻高々に言った。
「百万匹でも瞬殺できる……、それって、王都も殲滅できるって……こと?」
圧倒されながらマスターはジャックに聞いた。
「ヴィッキーさんなら余裕ですよ」
ジャックは肩をすくめ首を振る。あの恐ろしい大爆発をあっさりと出し、まだまだ余裕を見せていたヴィクトルの底知れない強さに、ジャックは半ば投げやりになって言った。
マスターは、可愛い金髪の男の子、ヴィクトルをまじまじと見ながら困惑して聞いた。
「君は……、もしかして、魔王?」
ヴィクトルはあわてて両手を振りながら答える。
「な、何言ってるんですか? 僕は人間! ちょっと魔法が得意なだけのただの子供ですよ! ねっ、ルコア?」
「主さまは世界一強いのです! でも、残念ながら人間なのです」
ルコアはそう言って肩をすくめた。
「残念ながらって何だよ!」
ヴィクトルは抗議する。
マスターは真剣な目でヴィクトルに聞いた。
「世界征服しようとか……?」
「しません! しません! 僕はスローライフを送りたいだけのただの子供ですって!」
ヴィクトルは急いで首を振り、苦笑いを浮かべながら言った。
マスターは腕組みをして眉をひそめ……、しばらく考えたのちに、
「人類の脅威となる軍事力がスローライフをご希望とは……世界は安泰だな」
と言って、肩をすくめた。
ヴィクトルは話題を変えようと、冷や汗をかきながら聞く。
「スタンピードはいつぐらいになりそうって言ってました?」
マスターは宙を見つめながら答える。
「えーと……、早ければ明後日。王都からは遠征隊が計画されていて、もうすぐギルドにも正式な依頼が来るみたいだけど……」
「来なくても大丈夫ですよ。片づけておきますから」
ヴィクトルはニコッと笑った。
マスターはヴィクトルをじっと見て……、相好を崩すと、
「活躍を……、期待してるよ」
そう言って右手を出し、ヴィクトルはガシッと握手をした。
◇
二日後、ユーベに十万匹の魔物が津波のように押し寄せてきた。土ぼこりを巻き上げながら麦畑をふみ荒らし、魔物たちは一直線にユーベの街を目指してくる。
「うわぁぁぁ、もうダメだぁ!」
この街を治める辺境伯、ヴィクトルの父でもあるエナンド・ヴュストは、押し寄せてくる魔物の群れを城壁の上から見て絶望した。無数の魔物たちの行進が巻き起こす、ものすごい地響きが腹の底に響いてくる。
やがて先頭を切ってやってきたオークの一団が城門に体当たりを始めた。城門はギシギシときしみ、いつ破られてもおかしくない状態である。兵士たちが城門の上から石を落とし、魔導士がファイヤーボールを撃ったりしているが、圧倒的な数の暴力の前に陥落は時間の問題だった。