捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強へ 作:月城 友麻
「お主、そんなにルコアが大切か?」
レヴィアは腕を組んで淡々と聞いた。
ヴィクトルは放心状態で静かに首を振る。
そして、静かに口を開いた。
「失って初めて……知りました。僕は彼女無しでは……もう生きていく自信がないです……」
そう言ってヴィクトルはまたポトリと涙をこぼした。
「彼女のために人生をなげうつ覚悟はあるか?」
「えっ? それはどういう……?」
ヴィクトルはレヴィアの言葉の意図をはかりかね、キョトンとした顔で聞く。
「一人だけ……、ルコアを復活できるお方がおる……」
「えっ!? ……。あっ! ヴィーナ……様?」
「そうじゃ。女神様なら……可能じゃろう。じゃが……本来そんな願いなど許されん。何を言われるか……」
「えっ! えっ! なんでもします! 彼女を! ルコアを復活させてください!」
ヴィクトルは飛び上がってレヴィアにすがりついた。
「なんでも?」
「たとえこの命を失っても、彼女を復活させたいです!」
レヴィアは、大きく息をつくと、
「お主がそこまで入れあげるとはのう……」
そう言ってヴィクトルをじっと見つめた。
ヴィクトルは眉間にしわを寄せ、真っ赤な目でレヴィアを見つめる。
レヴィアにとって女神は高位の存在。業務外の願い事を直談判するなどあってはならないことだった。
レヴィアはしばらく目をつぶり……、意を決すると言った。
「では……、聞いてみよう」
「ありがとうございます!」
ヴィクトルはレヴィアに抱き着いた。まだ若く甘酸っぱい香りに包まれる。
「おいこら! やめろ! 離れろ! ルコアに言うぞ!」
ヴィクトルは慌てて離れ、赤くなって照れた。
レヴィアはジト目でヴィクトルをにらむと、iPhoneを取り出し、じーっと見つめる。そして大きく息をつくと、電話をかけた。
「レヴィアです――――、ご無沙汰しておりますー。はい、はい。その節は大変にお世話になりまして……。いや、とんでもないです。それでですね、一つお願いがございまして……」
そう話しながら向こうの方へと行ってしまう。
ヴィクトルはジリジリとしながらレヴィアの様子を見ていた。
話し終わると神妙な顔をしてレヴィアが戻ってくる。
「な、なんですって!?」
待ちきれないヴィクトル。
「まずは話を聞きたいそうなので、田町へ行くぞ」
「田町?」
「この宇宙を
「iPhoneの星ですね?」
「その星はスティーブ・ジョブズという天才を出した星なんじゃ。行くぞ!」
レヴィアはそう言うとヴィクトルの手を取って空間を跳んだ。
◇
気づくと、石畳の街並みが見える……。
「あれ? 王都ですか?」
「まずは手土産を買わんと……。戦艦大和もぶっ壊しちゃったしのう……、ふぅ……」
レヴィアは暗い顔をして言う。
「え? 大和のオーナーなんですか?」
「オーナーはシアン様。ヴィーナ様と同じオフィスにおられるようじゃ。さっき笑い声が聞こえとった」
そう言いながらレヴィアはケーキ屋のドアを開けた。
店内には、綺麗に彩られたショートケーキや焼き菓子が棚に丁寧に並べられている。
レヴィアはそれらを真剣に見ながらうなる。
「手土産がそんなに重要なんですか?」
ヴィクトルが聞くと、
「お主、手土産をなめとるな? この手土産が当たるかどうかですべてが決まるんじゃ」
「えっ!?」
「間違えたらルコアは生き返らんぞ!」
「そ、そこまで!?」
「あっちの星になくて、それでも奇抜な味じゃなくて、高級で、口に合うもの……。どれか分かるか?」
ヴィクトルは固まってしまった。
「大賢者も勉強せねばならんことがたくさん残っとるな」
レヴィアはそう言って笑った。
結局、いちじくのレアチーズケーキと、桃のタルトを選び、田町へと跳んだ。
◇
ヴィクトルが目を開けると、そこはコンクリートジャングルだった。立ち並ぶ高層ビル、大通りをビュンビュンと走り過ぎていくトラックにタクシーにバス。そしてビルの間には真っ赤な東京タワーがそびえていた。
「えぇぇ!?」
初めて見る大都会東京にヴィクトルは思わず大声を上げた。
はっはっは!
レヴィアはその様子をおかしそうに笑うと、
「いいか、大賢者。この星には魔法が無いのじゃ。本来魔法が無くてもここまでの事はできるんじゃ」
そう言ってドヤ顔でヴィクトルを見た。
「これは……、とんでもない事ですね……」
ヴィクトルはゆっくりと首を振りながら感嘆した。
「うちの星もこのくらい栄えて欲しいものじゃが……」
レヴィアはため息をついた。
「この国にも王様はいるんですか?」
「おるよ、この先に皇居という宮殿があってな、そこにお住まいじゃ」
「ではその方がこの国を統治されている?」
「いや、この星ではどこでもそうじゃが、王様は君臨すれども統治せず。政治は国民が選んだ人がやるんじゃ」
「えっ!? そんなことができるんですか?」
「大賢者ですらそういう発想にいたらないことが、うちの星の問題なんじゃな」
そう言ってレヴィアは肩をすくめ、ヴィクトルはうつむいた。
「とはいえ、この星の発展ももう終わりじゃ」
レヴィアは目を閉じて大きく息をつく。