公式データが少ないので勝手に補完してます。
「ここがUTX高校……、やっぱりでっかいなー」
綺羅ツバサ(きらつばさ)、本年度からUTX高校に入学する1年生。
ショートヘアで、出したおでこがチャームポイントな背の低めの少女だ。
進路を選ぶ時、アイドルになりたいと両親を説得。
恵まれた容姿もあって、両親は渋るふりをしながらも受験させてくれた。
やるからには諦めるな。
そう父が言ってくれたことをツバサは思い出しながら踏み出す。
UTX高校とは、ツバサが入学する3年前に創立されたアイドル育成に特化された芸能科を有するお嬢様高校だ。
入学金100万円・受験料5万円・入試倍率15倍と敷居も高い。
倍率15倍とは、前回のラブライブにUTX高校のグループ、A-RISEが優勝した為である。
そんな高校に入学するツバサもまた、相当な努力をしたということだ。
自分の意思で行動することが多かったツバサは、中学時代に友達と進路を相談しなかった。
つまり、UTX高校に一緒に入学する友達はいない。
でも、1人では入学式の時不安だし、話し相手がほしかった。
ツバサは自分と同じ立場と思われる生徒に駆け寄って話しかけた。
「おはよう、キミも新入生?」
「何? 気安く話しかけないでくれる?」
「えっ、ご……ごめんなさい」
思いもしなかった返答に口ごもりながらも謝るツバサ。
気安く話しかけたわけではない。
思い切って話しかけただけに衝撃は大きかった。
「仕方ないよ、入学したらすぐ審査だからね。みんなライバルだと思ってる」
親切に説明してくれた彼女もまたUTX高校の入学生。
ゆるいパーマががったセミロングヘアのお嬢様風な女の子だ。
しかし、先の生徒と異なる余裕のある態度だった。
「初めまして! 私は綺羅ツバサ、あなたは?」
「優木あんじゅ(ゆうきあんじゅ)よ、よろしくね」
「よかったー、私地方から来たから、友達いなくって……」
「しッ! ちょっと」
話の途中に割り込むあんじゅ。小声で話を続ける。
「『地方から来た』? 綺羅さん、仮にもUTX高校に入学するならそれは言ってはいけないわ」
「え?!」
「見た感じあなたも芸能科でしょ? アイドルは秘密があるからアイドルなの、地方なんてもってのほかよ」
「なるほど……」
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入学式が終わってクラスに移動。
「優木さん、同じクラスだね!」
「よかったね~、綺羅さん!」
「ねぇねぇ、優木さんって髪型可愛いね~」
「ありがとう、綺羅さんも似合ってるよ」
「嬉しい! 優木さんとは友達になれそう」
満面の笑みを浮かべるツバサ。優木はその笑顔にドキっとしてしまった。
(綺羅ツバサ……可愛すぎる。いや可愛いのは私よ。私より可愛いなんて認めないわ)
「はいー、みなさん起立! 礼! 着席!」
担任が一連の動作を指示してクラスをまとめる。
先生の自己紹介から始まり、生徒の自己紹介になる。
名前と、学校でやりたいことなど一言をいうという簡単な自己紹介だ。
順番がくると指名されてツバサは起立した。
「次は綺羅ツバサさん」
「はい、私は綺羅ツバサです。学校ではラブライブに参加して活躍したいです。よろしくお願いします」
その瞬間クラスがどよめいた。
そう、聞いたクラスメイト全てを敵に回すような、そんな一言。
音ノ木坂学院や一般的な学校だったら、普通に皆から「頑張れー!」程度の応援で済んだだろう。
しかし、ここはUTX高校の芸能科クラス。
ほぼ全てのクラスメイトがラブライブ参加を目指していると言っても過言ではない。
そしてラブライブに参加できるメンバーは全校でたった3名のみ。
「最後、優木あんじゅさん」
「はい、私は優木あんじゅです。学校ではラブライブに参加して活躍したいです。よろしくお願いします」
クラスの所々から笑いが噴き出る。
あんじゅが完全にツバサを真似しておちょくっているのが誰もがわかった。
一方ツバサは、それに気づかず、同じ目的を持った友達だと内心喜んでいた。
自己紹介が終わり、ロッカーの位置、移動教室の場所、教科書の配布などが終わると、ようやく帰りの会での連絡事項になった。
「では、最後に、オーディションの課題を配りますね」
先生からDVDとテキストが配られる。
テキストはオーディションの内容についてだ。
1年総合オーディション
概要
学年対抗A-RISE決定ライブに向け、一年生で三名を選出します。
課題曲
Private Wars
1次審査
1週間期限が与えられ、DVDに入っている現A-RISEの歌・ダンスを覚えて12人ずつ発表※
その後、簡単な面接。
二次審査
グループによる歌・ダンスの発表。
※1次審査の発表順は別紙参照
この課題を配られるまで、誰も課題曲とダンスの内容について知らされていない。
つまり、皆同じスタートラインに立っているということになる。
どれだけ差がでるかで素質を見極めることが可能となっているだけに、創立以来からずっと行われてきた課題となっている。
「オーディションは一週間後です。大事な期間なので頑張ってください、以上。起立、礼、さようなら」
「「さようなら」」
「それではまた明日!」
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放課後。ツバサはクラスメイト3人に囲まれていた。
「もしかして、UTX高校でラブライブに参加できるのが3人だけだって知らなかったのかな?」
「知らなかったなら、仕方ないわね」
「綺羅さん、そういう発言は控えたほうがいいわ」
「そうなんだ。知らなかった。けど、知ってても私は同じこと言うわよ」
はっきりと、芯の通った声でツバサは言った。
冗談ではなく、お前たちを蹴落とす、と同等の言葉を。
クラスメイト3人とも怒りがこみ上げてきた。
なぜなら彼女らもまた、競争に勝ち抜いて入学してきた強者だからだ。
「一週間後が楽しみね、まわりに気を使う事もできないあなたに負ける気しないわ」
「これだから地方民は困るわ、恐れ知らずっていうか、井の中の蛙」
「その発言がどれだけ恥ずかしい言葉か、オーディションで思い知らせてあげる」
捨て台詞を吐くと、クラスメイトはさっさとどこかへ行ってしまった。
その様子を見ていたあんじゅはツバサに話しかけた。
「本気、みたいね」
「当然よ。1週間後……、私の覚悟を見せてあげるわ、優木さん」
「私も負けないよ、綺羅さん」
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そして1週間後、常設のイベントコンサートホールにて公開オーディションが開始された。
12人ずつステージで同時に課題をし、審査員と現A-RISEメンバーが採点し、
さらに一般のお客さんもスマホから投票できるようになっている。
しかし、1週間という短い期間で全てを完璧にマスターするなど、土台無理な話だった。
歌詞を忘れてしまう子もいれば、ダンスを忘れてしまう子もいた。
ライブ中にも関わらず、出来ずに悔しくて泣き出す子もいた。
そんな中――
「すごい……、誰あれ?」
現A-RISEのメンバーの1人が感嘆の声を上げる。
「えっと……、統堂 英玲奈(とうどう えれな)ね。完璧だわ」
「統堂、そういえば聞いたことあるわ。中学生で記憶力が非情に高いアイドル部の子がいるって!」
「まさか最後まで全部やるっていうの……? いや、私もこの課題、通ったわけだけど……」
「私達の代では、最後までやれた子はいませんでしたね。1番の歌詞が終わるところまで完璧にこなす、
それがオーディションを通る為に最も有利だった。それに気づいた私達はA-RISEになれた」
「そう、半端になるぐらいなら1番で終わらせるほうがいい。
特に2番からこの曲は3人用だから他のメンバーとのシンクロパートがあったり複雑だから」
「1番を2回繰り返すほうが無難なのよね」
「でも、何か足りないような」
「そう? 完璧じゃない?」
ステージの12人誰もが1番で歌をやめてしまう中、ライブを続ける少女。
統堂 英玲奈、長い黒髪と切れ長の目を持ちクールで大人っぽい雰囲気を漂わせる女の子。
彼女は完璧だった。審査員の誰もが認めるに値する歌とダンスだった。
彼女は1年総合オーディション第一候補となった。
観客席でツバサとあんじゅは英玲奈のライブを見ていた。
あんじゅは思わず口にした。
「へぇ……、私以外にも居たのね」
「どういうこと?」
「今回、私だけがこの課題を最後までできるかと思ってたってだけよ」
「……それは思い上がりじゃない?」
「何? ……いいわ、説明してあげる。普通、できるわけないのよ、この課題は」
「できるよ」
「1週間よ? 精々1番を覚えるので精一杯、そこからダンスのキレを磨くなんてもっと無理」
「つまり、優木さんは『誰も出来ないことをできる』って言ってるの?」
「そう、あなたには出来なくて私にはできる」
続く他の生徒のライブは酷いものだった。ダンスはでたらめ、歌詞を覚えていなくて小声に、
サビの歌詞をループして音程に合わせて歌う生徒もいた。
曲が終わり、あんじゅは席を立つ。
「さ、次は私達の出番よ」
「お手柔らかにね、優木さん」
ツバサもあんじゅに続いて席を立った。
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ツバサ、あんじゅ、他10名がステージの裾から登場して配置につく。
「あのおでこちゃん可愛いわね」
「私はフワパーマの子がいいわ」
「私もでこちゃんが可愛いと思う、背も低いし!」
A-RISEメンバーがダンスが始まる前から女の子の容姿で選び始める。
A-RISE3人とも既にダンスと歌には期待していなかった。
曲が流れ出してパフォーマンスが始まった。
「え……?」
「ちょっと待って、あの子達」
「何……?! 名前は?!」
審査員・A-RISE席が異変に気づく。あんじゅではなくツバサ「達」のライブに。
誰もが12人それぞれがセンターを練習して歌って踊るだろうと思われたオーディション。
それを綺羅ツバサ、加藤ヒサミ、愛川クリスの三人は、まさにDVDの通りにそれぞれのパートを演技していた。
「愛川クリス、加藤ヒサミ、……綺羅ツバサ」
「あの3人、よく気づいたな」
「たった3人しか合格できないという条件ならば、普通は……」
「協力関係を結ぶなんてありえない、わね」
「1週間前に3人の誰かが2人を説得し、協力関係を得たってこと?」
「やるね……、あの子達」
(ふふっ、どう?私の演技、完璧でしょ?だって入学前から私は課題を練習していたんだから!)
優木あんじゅの絶対の自信。
それは狡猾な手段によって課題をクラスメイトよりずっと早くから受け取って練習していたところに起因する。
要するにあんじゅはズルをしているのだ。
(……何で審査員の方々は私を見ていないのかしら……?)
ふと、あんじゅは審査員の目線の先にある人物を見る。
ツバサだった。
(……?! 何で綺羅さんを? あっ!!!)
あんじゅは3人で組んでライブしているツバサに気づく。時既に遅しといったところか。
やられた、という気持ちが溢れる。
「それにしても、3人の中でも、綺羅ツバサ……何てキレのいいダンスなの……?」
「歌もすごいよ、ここまでしっかり声がでて強弱もついてる」
「いや、それより注目すべきは……、完璧にこなす以上の演技力……」
「みんなやっぱり気づいてるみたいね……」
「ウィンク……!!」
「優木あんじゅさんも中々やりますね」
「1人にしては、だけどね」
「2番、どうなるか……」
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1番を終えた時点で、ツバサと組んでいた、愛川クリス、加藤ヒサミは脱落してしまった。
「やはり、1番までしか続かなかったか」
「仕方ないわ。準備期間が1週間だし」
「いや、待て」
他の参加者が脱落していく中、歌い続けるツバサとあんじゅ。
2番に入るとツバサのダンスはさらにキレを増していく。
あんじゅは指先の伸びがイマイチな所もあるが、それでも懸命に食い下がる。
「何……?」
「ツバサちゃん、2番も完璧じゃない?!」
「あの動き……センターを完全に意識しているわ」
「ツバサちゃんはステージの左から2番めなのに、センターがツバサちゃんになってるように見える?!」
「違う……、ツバサちゃん、ほんとにセンターに移動してきてるよ……」
「え"」
(な、なななな何でこっち来るのー?! 綺羅さんの指定場所はあっちでしょ?!)
そんなあんじゅのことを気にもせず続けるツバサ。ツバサから汗が弾けるが表情は違った。
観客を意識した視線、全く疲れを感じさせないとびっきりの笑顔。
そして――
「まさかあの子」
「そのまさかだ……」
「ツバサちゃん、あんじゅちゃんとシンクロをこなしているわ」
「ありえん、ツバサちゃんは愛川、加藤と組んでいたはず。あんじゅちゃんと連携をとれるわけがない」
「ちょっと待って、あんじゅちゃんがセンターパートをやっているわよ?」
「え……てことは……、ツバサちゃん、2番はセンターの練習以外もやっていたってこと?」
「いや、あんじゅちゃんが2番でセンターを演技するとは限らない」
「つまり……全パートをマスターしている……?」
「バカな……すごすぎる……ツバサちゃん……」
「ツバサちゃん可愛い……」
さらに続くツバサの技。審査員、A-RISEメンバーは目を疑った。
「ねぇ、3人組のライブ課題をしているのよね?」
「3人であるものを2人でやるならば、違和感が仕事をするはずだ」
「何で2人でやってるのに……」
「ありえないことだが、ツバサちゃんが2人分をアレンジして1人で演じているとしか……」
「……末恐ろしい子ね……」
また、観客の1年生達も皆、2人に目を奪われた。
綺羅ツバサ、可愛すぎる、そして格好いい、と。
A-RISE、審査員の誰もがわかってしまった。
オーディションで組むことを考えたのはツバサだ。
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そして全てのオーディションライブが終了した。
発表者は皆観客席に座って結果発表を待つ。
結果発表では9名の名前が呼ばれる。はずだった。
「2次審査はありません」
審査員長がステージに立つと、マイクで生徒に伝えた。
ホール内は騒然とした。
「どういうこと??」
「合格者なしってこと??」
「意味わかんない!!」
「みなさんご静粛に!」
場内は静かになる。誰もが気になった解答を待つ。
「RISE候補が3人、1年生から決定しました。呼ばれたらステージへ来てください」
2次審査なしの1次審査のみで即決。異例中の異例だった。
「1人目、統堂 英玲奈」
「はい!」
完璧な歌・完璧なダンス。英玲奈は審査員・A-RISE・観客全ての評価が高かった。
英玲奈は、当然ね、と言った風な態度でステージに向かっていく。
「2人目、優木あんじゅ」
「はいっ!」
あんじゅも英玲奈ほどではなかったが、歌・ダンス共に最後までこなした。
誰かと違い、センターへ移動してアピールすることもなかったが、余計なことをしなかったからそれが功を奏したのだろう。と、あんじゅは思った。
「そして3人目、綺羅ツバサ」
「はい!!」
あんじゅは驚愕を隠しきれなかった。
(あんなふざけたやつが私と並ぶ……?ありえない)
クラスメイト達はあんじゅとツバサが呼ばれて悟った。
自己紹介の時のあれは、本気で言っていたのだと。そしてあの3人には敵わないと。
ステージに3人並ぶと、審査委員長は言った。
「おめでとう、君たちにRISEの称号を与える。そして1ヶ月後の、学年対抗A-RISE決定ライブへの出場権を与える。
そして、センターは……、綺羅ツバサ」
「!!……ありがとうございます!」
「ちょ」
「どういうことですか?」
その結果にあんじゅが不平を言おうと口を開き、英玲奈が先に質問で返した。
「綺羅ツバサは2人にはないものを持っている」
「なんですかそれは?」
「今日のライブをビデオで撮ってあります。自分の目で確認したほうが早いでしょう」
「……」
2人とも、不満を飲み込み、この場は現状を受け入れるしかなかった。
英玲奈は、自分のライブにしか関心がなく、ツバサのライブを見ていなかった為、なぜセンターを奪われたのかわからなかった。
「ふ、二人とも、これからよろしくね」
「「……」」
ツバサの挨拶に、どちらも返事をしなかった。
こうして最悪の関係から3人のRISEがスタートした。
続く。
くぅ~疲れました。まだ完結はしません。
ツバサ・あんじゅ・英玲奈・watton「せーの!最後まで読んでいただきありがとうございます!」
「って何でwattonが?!」
もうちっとだけ続くんじゃ。
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