ラブライブ! スピンオフ A-RISE   作:watton

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前回のA-RISE!!

入学した私達は課題を出され、1週間後にその課題でオーディションを受けた!
大変な課題だったけど、この私ことツバサ、あんじゅ、英玲奈の3人が合格! 1年生の代表に選ばれた!
私がセンターに選ばれたけど、納得できないあんじゅと英玲奈の二人! どうする私!!


2話 RISE結成!

 オーディションが終わった翌日の朝。

 ツバサが改札から出ると、UTX高校の制服を着たツバサと同じぐらいの背丈の女の子が駆け寄ってくる。

 テンション高めにその子がツバサに挨拶をしてくる。

 

「おはよー!」

「おはよう」

「綺羅さん、センターおめでとう! すごかったねぇ」

「ありがとう、新藤紅音(しんどうあかね)さん」

 

 普通の女の子なら、浮かれて返事をしてしまうような褒め言葉。

 それを自然と返してしまうツバサは、A-RISEにならずとも既に王者としての貫禄を見せていた。

 入学して一週間しか経ってないのに、自分の名前を覚えられていたことに驚く紅音。

 

「えっ?! 何で私の名前……」

「あなたも私の名前知ってるし、おかしいことではないわ」

「綺羅さんは昨日の件で話題の中心になってるから、それに私は……」

「あなただってオーディションでいい表情してたわ」

「えぇ?! 見てたの? でも名前覚えられるほどのことは……」

「私はクラスの名前全員覚えているわ。良きライバルとして、ね」

「あ、なるほど……。って全員?! 流石センターは違うね……」

 

 紅音は自分の名前やライブでの自分を覚えてくれていた理由に納得した。

 さらに高みを目指す為、柔軟なスポンジのように人のいいところを吸収していく。

 ツバサにとって、クラスメイトを記憶することはごく自然なことだった。

 

「あ、優木さんだ」

 

 紅音が前を歩いている、ゆるいパーマがかったセミロングのお嬢様に気づく。

 その歩き様はさながらモデルが歩いているようだった。あんじゅに二人で声をかける。

 

「優木さん、おはよー!」

「おはよう!」

「! ……おはよう」

 

 昨日の件もあって、挨拶の主に返事するのを一瞬ためらった。

 しないのも負けることになると思い、返事をするあんじゅ。

 紅音は同時に2人もの1年代表に会えてテンションがあがってしまう。

 

「優木さんおめでとう!」

「大したことはしてないわ。運がよかったの」

「そんなことないよ! 最後まで踊れてたし、歌もよかったよ」

「他に踊れる人がいたら、私が通るかどうかわからないじゃない?」

 

 それは暗にツバサに対しての言葉だった。

 実際、ツバサにセンターを奪われた事実もあり、あんじゅの言うことはあながち間違いではない。

 それをツバサは一言で否定する。

 

「そんなことないわ、優木さんならどんな場合でも通ると思う」

「センターの綺羅さんに言ってもらえるってことは、私も何か持っているものがあるってことかしら」

 

 あんじゅは皮肉を込めて聞いた。

 どんな返答か期待したが、ツバサの答えは予想の斜め上を行くものだった。

 

「ええ、だって可愛いし」

「……あなたと話すると調子狂っちゃうわ」

「ふふっ、よく言われるわよ」

 

 皮肉と受け取らないツバサは鈍感なのか、煽り耐性があるのか、未だ掴みきれないあんじゅ。

 あんじゅはツバサに心を奪われそうになる。

 このままではダメだ。言うべきことは言っておいたほうがいい。

 そうでなければ私を保つことはできない。

 意を決してあんじゅは主張する。

 

「でもね、私はセンターを諦めたわけじゃない。いずれ譲ってもらうつもりよ」

「次の学年対抗ライブでは私がセンターって決まっちゃったけど……、

 A-RISEになったらオンライン用のライブ、優木さんがセンターやる?」

「えっ?!」

「私はいいわよ。あ、統堂さんにも相談しないとね」

「……」

「どうしたの?」

 

 拍子抜けだった。

 あんじゅはセンターを意識しすぎている自分が何だか幼いように思えてきていた。

 学校に着くとそれぞれ授業を受けることに専念した。

 

 

 

---

 放課後、担当の方に連れられてダンス特別練習教室へ移動するツバサ、あんじゅ、英玲奈。

 部屋にはいるとツバサの声が漏れた。

 

「うわぁ……」

 

 感動するツバサ。そこには、一面ガラス張りの壁、そして立派な音響設備が整っていた。

 案内してくれたサングラスの女性がツバサ達に話しかける。

 

「これからは、ここがあなた達の練習部屋よ」

「悪くない」

「ふーん、まぁ、こんなものね」

「いい練習部屋ですね!」

 

 英玲奈、あんじゅ共に自宅に同様の部屋を持っていた。

 アイドルを目指す者として当然の環境である。

 

 その点、ツバサは引っ越して来た身であり、アパート暮らし故に、このような環境はなかった。

 練習で自分の確認をとる方法といえば、スマホによる録画とパソコンでのチェックだった。

 その手法は、より自分を客観視できる為、修正箇所を発見しやすい。

 それが今回センターに選ばれたパフォーマンスにつながっているのである。

 ただ、やはりリアルタイムでダンスのチェックができるのは、ツバサにとって非情に魅力的だった。

 ツバサは、従来のやり方とこのガラス張りの部屋を併用することで、更に進化を遂げたダンスを演じることが出来るようになると確信した。

 

「綺羅さん、わかってるじゃない。これでも私がここで練習した時期もあったのよ」

 

 あなたはそんなに有名な人物なのか? 思ったことをよく口にする英玲奈はそれを喉で留めた。

 誰なんだろう? ツバサとあんじゅの目が合う。

 

「私が、あなた達のアイドルレッスン担当になったハターキです。よろしくね!」

 

 サングラスを取りながら挨拶をした彼女はカリスマ性を持ったオーラを放っていた。

 それに続きツバサと英玲奈も挨拶をする。

 

「「よろしくお願いします」」

「え?! ハターキ先生って……爆発的人気を博したアイドルのハターキ様?!」

「もうアイドルは卒業したけどね」

「あっ、よろしくお願いします~~~!!」

 

 ハターキに過剰反応を示したのはあんじゅだった。

 あんじゅは普段、自分がアイドルだという意識も高く、他のアイドルに対して関心を示さないよう努めていたが、今回ばかりは違った。

 ハターキはあんじゅが最も憧れているアイドルで、あんじゅのアイドルを目指すきっかけとなった人物だった。

 当然ツバサ、英玲奈の二人もハターキのことは知っている。

 アイドルとして有名だが、作詞家としても非情に評価の高い人物だ。

 

「それじゃ、オーディションは私も見ていたけれど、今後の抱負と自己紹介してもらいましょうか」

 

 まさかまた自己紹介することになると思っていなかった3人だったが、流石アイドル志望といったところか、

 今後の抱負など用意していなかった項目だが、皆迷わず順番に自己紹介を始めた。

 英玲奈、あんじゅ、ツバサの立ち順だ。

 

「私の名は統堂英玲奈。UTX高校の名に恥じない、完璧なパフォーマンスを演じて行きたい」

「優木あんじゅです。私は、誰からも好かれるようなアイドルになりたいです」

「綺羅ツバサです。3人で一緒にA-RISEになって、ラブライブに優勝するわ」

 

「いいねぇ~、みんな個性があっていい。完璧なパフォーマンス。大事だね」

「優木さんもオシャレを磨いててちゃんと目指すものに向かってるね」

「最後に、綺羅さん」

 

 ハターキは呼吸を挟む。

 二人に対してのコメントがポジティブだっただけにツバサへのコメントの期待が高まる。

 

「その発言は舐めてるの?」

「本気です」

 

 一瞬部屋が凍りついた。ハターキまさかの怒り。

 突然の発言に、ツバサは少し目を見開いたが、即座に本気と答えた。

 

「センターを獲得できたからって調子にのってるみたいだけど、言わせてもらうわ」

 

 調子に乗っているのではない。ツバサはただ、自分の考えを述べただけだった。

 そして、その考えを曲げる必要はない。相手に何を言われようと自分に正直であること。

 真っ直ぐであることが大事だという信念をツバサは持っていた。

 

「A-RISEになるってのはね。簡単なことじゃないの。この学校を背負うってことよ?

 みんなラブライブに出たいと思っている。それをちゃんと理解しているの?」

「わかった上で言っているわ。私達にはそれだけの実力があると信じている」

「大した口ね。実力があるかどうか認めるのは私のほうだけど?」

「なら認めさせるだけよ」

 

 あんじゅも英玲奈も二人の会話をただ見つめていた。

 ツバサの言うことを二人は理解していた。

 『A-RISEになる』確かに舐めたような発言とも受け取れるが、あんじゅ、英玲奈にとって

 ラブライブは目指すものであり、少なからずツバサと同じ意見だからだ。

 

「よろしい」

 

 態度を急変させ、顔を緩ませるハターキ。

 先ほどの怒りは何だったのかと思わせる変わり様だった。

 一瞬にして張り詰めた空気が解ける。

 

「試すようで悪かったけど、なるほどツバサちゃん。覚悟をきちっと備えているわね」

 

 このハターキさん、心臓に悪すぎる。と思う3人だった。

 

「先生も人が悪いですね」

「一度やってみたかったのよ」

 

 一度やってみたいという安易な考えで振り回されるツバサ達。

 最初はハターキが担当になって喜んでいたものの、皆先が思いやられていた。

 

「よし、自己紹介も済んだところで、次のお披露目ライブについて説明するわ」

「次って学年対抗A-RISE決定ライブじゃないんですか?」

 

 ツバサが質問する。

 RISEに選ばれたら当然次のライブは1ヶ月後の学年対抗ライブだろうと、3人とも思っていた。

 

「何言ってるの? お披露目ライブしてないじゃない。一週間後にやるのよ」

「一週間後……?!」

 

 驚きを見せたのはあんじゅだった。あんじゅはセンターしか練習していない。

 あんじゅが前回のオーディションでダンスができたのは、他のクラスメイトより先に課題を入手して練習していたからだ。

 あんじゅの頭の中が真っ白になる。

 一週間でできるのか。

 できない。

 放課後という限られた時間しかない。

 到底無理だ。

 

 お披露目ライブになった経緯はこうだ。

 1年生総合オーディションの2次審査がお流れになり予定していたステージがあいてしまった。

 急遽予定を変更して、ツバサ達だけでお披露目ライブをする。ということにUTX上層部が決定を下したのだ。

 

 

---

「それでは、お披露目ライブは一週間後。それまでに課題曲を3人でやれるようにしなさい」

「「「はい」」」

「良い返事ね。といっても、1週間もあなた達には必要ないかもしれないわね。じゃ、頑張ってね」

「え? ハターキ先生、担当って」

 

 ハターキが部屋を出ていこうとするのを呼び止めるツバサ。

 呼び止めたのはツバサだが、他の二人も担当ならば終始練習についてくれるものとばかり思っていた。

 

「本当に行き詰まった時、私に相談しなさい、ということ。まったね~」

 

 ハターキは部屋を出て行ってしまった。何とも無責任な担当である。

 いや、相談に乗ってくれるというだけマシと言えばマシかもしれない。

 

 

---

「早速練習しましょうか。優木さん。統堂さん」

 

 ただ立ってても始まらないのだからやるしかないと、二人に声をかける。

 だが、英玲奈はその提案を受け入れない。

 

「私は帰る。お二人の実力なら前日に合わせるだけで十分だろう。無駄な慣れ合いに興じるつもりはない」

「……どういうつもり?」

 

 ツバサは納得できるわけがなかった。

 これからラブライブを目指すであろう3人で練習をしようと言っているのに、なぜ協力しようとしないのか。

 

「言った通りだ。私はスクールアイドルなど踏み台にすぎないと思っている。

 ましてや、センターでなければ意味がない。私のやり方でやる」

「それは――」

「ふざけないで!!! 無駄な慣れ合い? 踏み台? センターでなければ意味がない?

 それは私もセンターじゃなければ嫌よ。でも、それは決まったことだから受け入れるしかないわ。

 どういうつもりで言ってるの? ……真剣にやってる私に対して侮辱以外の何物でもないわ!」

 

 あんじゅは抗議しようとするツバサの発言を打ち消し、畳み掛けるように激怒した。

 英玲奈も少し息を荒らげて答える。

 

「ふざけてなどいない。私は無駄なことが嫌いなだけ。オーディションのようにそれぞれ練習すればいい。真剣なのは私も同じ」

「そんなのでラブライブを目指せると思ってるの?!」

「何の熱血ドラマに感化されて言っているのかは知らない。ただこれだけは言える。完璧にやれれば済むこと。それ以上でもそれ以下でもない」

「あなたとはうまくやれそうもないわ」

「同感だ」

 

 二人のやり取りが落ち着いてくると、会話を見守っていたツバサは口を開いた。

 

「私から一ついいかしら」

「……何だ?」

「これは、統堂さん一人のライブではないの。一緒にやらなければわからないことだってある」

「私には必要ない」

「私は1年オーディションを3人でやった経験があるからわかるの」

 

 その経験とは何か。

 気になる英玲奈とあんじゅは黙って聞き続ける。

 話を続けるツバサ。

 

「統堂さん。今のままだとあなたが私達の足を引っ張ることになるわ」

「私が? 何を根拠に言っている」

「やればわかるわ。本番だと思って1度一緒にやりましょうか」

 

 全く練習もせずぶっつけ3人で「Private Wars」をやることになった。

 

 

---

 うろ覚えでしかないあんじゅの振り付けに通常運転の英玲奈がぶつかって全体が止まってしまう。

 

「真剣にやっている人が全然できていないんだが? 足を引っ張っているのはどっちだか」

「今日初めてなんだから……出来ないに決まってるじゃない……」

「話にならない。やはり無駄だった」

 

 あんじゅの未熟さに苛立ちを覚える英玲奈の発言には刺があった。

 ツバサは思った通りの展開に用意していた言葉があった。

 

「今のは統堂さんも悪いわ」

「は?」

 

 英玲奈は不満を隠せなかった。なぜ私が悪いのか?

 ツバサは答えた。

 

「ライブってのはね。魔物が潜んでるの。いつ誰が失敗するかわからない。2番で1番を歌ってしまうかもしれない。

 ダンスの入り方を間違えてしまうかもしれない。私だって失敗することもある」

「私はそんな失敗しない」

「そうね。だけど、優木さんのサポートもできずに曲を止めてしまったのはあなたよ」

「……?」

 

 サポート。それが何を意味するのか。英玲奈は理解できなかった。

 いや、わかっていても理解しようとしなかったという方が正しい。

 

「失敗したと客に悟られたらそこで終わりなの。どんなことがあっても、最後まで止めずにやる。

 それがライブに一番大事なこと。例え他のメンバーが失敗したとしても、できるあなたがサポートしなければ同じことなのよ」

 

 ライブにとって大事なこと、と言われて英玲奈はハッとした。

 自分はどうだったろうか。こんなことを考えたことがあっただろうか。

 

「統堂さんは、その一番大事なことが欠けているわ。

 踏み台も、しっかり踏まないと足元をすくわれるわよ? あ、今、私うまいこと言っちゃったかも?!」

 

 英玲奈は黙って聞いていた。今まで、ここまで自分に対して説教する友達はいなかった。

 厳しい両親には何度も説教されたことはあったが、友達では初めてだった。

 いや、会ってからそれほど時間が経っていない相手を友達と呼ぶには値しないかもしれない。

 ただ、今までの友達より、友達らしい助言をくれるツバサは、英玲奈にとって存在が大きくなっていた。

 

「……考えさせてくれ。今日は帰る」

「いい返事を待ってるわ」

 

 ツバサはにこりと笑顔になった。

 英玲奈はそれを見ると部屋を後にした。

 ツバサは出来る限りのことは言った。後は待つだけだ。

 

 

---

「優木さん。今日は二人で練習しましょう」

 

 先の英玲奈とツバサのやりとりで、あんじゅはセンターのことなど取るに足らないことになっていた。

 ツバサはA-RISEになれる資質を持っている。ツバサなら一緒にやれる。

 あんじゅはあれほど敵視していた、ツバサのことを認めてしまっていたのだ。

 

「綺羅さん……。実は……」

 

 あんじゅは抱えていた問題をツバサに打ち明けることにした。

 

 

 

続く。




うおぉおお、窓の外でことりがチュンチュンないてるぞ!!
新聞屋のバイクの音まで聞こえる……。


次回、あんじゅちゃんが覚えられなくてライブ失敗の巻!(嘘
お楽しみにね!
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