ラブライブ! スピンオフ A-RISE   作:watton

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ツバサです。
前回、何だか色々企んでたり悩んでたりした人達が居たみたいだけど、そういうのって青春って言うのかな。ちょっと早乙女さんの読んでみよう。
えーと……?

>>RISEが失敗して、私は……きっと綺羅さんは優しく許してくれるだろう。
>>初心者だから仕方ないと思ってくれるだろう。
>>綺羅さんを本当に裏切れる?
>>私を信じてくれているのに、私はわざと失敗できるの?

何を言っているのかしら……早乙女さん……(ピキピキ
失敗したら許さないわ!
裏切ったら怒ります。
でも、できる人がサポートする、それが大事なことだからね。
タイタニック号に乗ったつもりで任せなさい!(沈没


8話 お披露目ライブ!

「Private Wars」はハードロックバンド「Kiss」の「I was made for loving you」をオマージュした作品だ。

 リズミカルな曲調で、洗練された歌詞はハターキ先生が作詞している。

「Private Wars」の曲構成はAサビから始まり、1番(Aメロ、Bメロ、Bサビ、Aサビ)、2番(1番と同様)、Cメロ、Bサビ、Aサビ、となっている。

 イントロ、間奏は短くアイドル向けの曲構成。

 Aメロ、Bメロともにパーカッション主体の控えめな伴奏。

 サビでは伴奏も音圧が一気に増して盛り上がる。

 

 ポイントは、控えめなAメロBメロに比べ、サビのパートは伴奏が大きく、通常ならばイヤモニ無しでは歌えない。という点である。

 

 

 

---

 お披露目ライブ当日

 

 午前7時頃、まだ人通りの少ない時間。

 朝の爽やかな風が吹いている。空は青く、春の香りがする。

 ツバサ達は、午後2時からライブにもかかわらず、最終チェックや準備の為に早めに来ていた。

 駅で待ち合わせをして一緒にUTX高校へ向かっている。

 

「今日はいい天気ね!」

「うむ」

「絶好のライブ日和! 会場はきっと完全にフルハウスよ」

「それなら私はロイヤルストレートフラッシュ!」

「あんじゅの負けだ」

「何それ、ズルいぃ~! って、ポーカーじゃなくて、満員っていう意味だから!」

「ふふっ、知ってるよ」

 

 英玲奈は遠く空を見ながらつぶやく。

 

「私は今日のライブが楽しみで仕方ない。それもこれも二人のおかげだ」

「急にどうしたの?」

「いや、何となく」

 

 英玲奈は、二人に出会うまで、孤独を感じていた。

 今まで誰も英玲奈の事を認めなかったし、英玲奈も人を認めなかった。

 プロとしてのアイドルは一握りの人間しかなれない。

 故に両親からも反対はあった。同級生達は話にならなかったし、見下していたところもあった。

 

 今は違う。

 私は、独りじゃない。

 共に練習を重ねて確信したんだ。

 ライブが成功すると思えたから楽しみだと感じた。

 それはこの二人がいたからこそだ。

 その英玲奈の素直な気持ちが息を吐くようにでた。

 ただそれだけだったが、英玲奈も言った後に少し恥ずかしくなる。

 

 

 ツバサ達は他愛のない冗談を言いながら、ライブへの緊張をほぐしていた。

 高校の入り口が見えてくると、そこに見知らぬ少女がキョロキョロしている。

 誰かを探している様子。彼女は花束を持ち、首にはピンクのメガホンを下げていた。

 ツバサ達と目が合うと大事に花束を抱えながら駆け寄ってくる。

 メガホン娘は目の前に来ると、花束を差し出しながら興奮気味に声をかけた。

 

「あのっ、応援してます!! 今日のライブがんばってください!」

「ありがとう! あなた、お名前は?」

「や、矢澤にこです!」

「可愛い名前ね。矢澤さん、一緒にライブを楽しみましょう!」

 

 少女は名前を呼んでもらえたことに興奮を隠せなかった。

 すごく嬉しそうな顔をして答える。

 

「はい!」

「またライブでね!」

 

 ツバサは笑顔で言うと、手を振りながらメガホン娘を後にした。

 ツインテールの少女、にこは嬉しさに悶える。

 

「名前呼んでもらっちゃったー!」

 

 

 校舎に入ると、ツバサは疑問を口にした。

 

「……ライブは午後2時からよね?」

「……席は入場者順だからな」

「開場まで6時間あるよ……」

 

 

 

---

 午後1時過ぎ、ふくよかな胸と二本のおさげが特徴の東條希が、金髪碧眼の美少女の手を引いて走っている。

 向かう先は、UTX高校だ。

 

「えりちー! 早く早くー!!」

「ちょっと希、そんなに焦らなくても、開場は1時半でしょ?」

「UTX高校やから! すぐに席うまってしまうんよ」

「そうなの? 仕方ないわね」

 

 えりちと呼ばれたブロンドポニーテールの美少女、絢瀬絵里は希の同級生である。

 今回、一人で行くのは寂しいからという理由で、連れて来られた。

 スクールアイドルというものに関心がなかった絵里。特に行くきっかけもなかったから、今回が初のライブ観賞だ。

 

「あそこやん!」

「はらしょお……、すごい列ね……」

「ほらーもー、えりちが悠長にランチ食べてるから~」

「彼女たちは初ライブなんでしょう? ここまで人が集まるなんて思わなかったのよ……」

「私の占いに狂いはなかったってことやん」

「そうね」

「ほな、並ぼっか」

 

 二人は既に大勢が並んでいる列の後ろについた。

 

 

 

---

 お披露目ライブ開始直前。

 会場は、ほぼ観客でうめつくされている。

 ツバサ達は、ステージの真下、上昇する円形の床の上で待機していた。

 

「あっという間の一週間だったけど、やれることは全部やったわね」

「そうだな」

「そうね!」

「残すはこのライブ、全力で燃え尽きましょう! 英玲奈、あんじゅ!」

「ここで燃え尽きてどうする! 私たちにはラブライブが待っている」

「そうよ! 全力は否定しないわ」

「ふふっ、ツッコミを返す余裕はあるみたいね。それじゃ行くわよ!」

 

 三人で考えた合図でテンポよくツバサ、英玲奈、あんじゅの順に声をあげる。

 

「Let's LIVE!」「Let's RISE!」「Let's Music!!」

「「「Start!!」」」

 

 床が上昇する。

 英玲奈もあんじゅも結成初日のツバサの言葉を思い出していた。

 

 

「ライブってのはね。魔物が潜んでるの。いつ誰が失敗するかわからない。2番で1番を歌ってしまうかもしれない。

 ダンスの入り方を間違えてしまうかもしれない。私だって失敗することもある」

 

 

「失敗したと客に悟られたらそこで終わりなの。どんなことがあっても、最後まで止めずにやる。

 それがライブに一番大事なこと。例え他のメンバーが失敗したとしても、できるあなたがサポートしなければ同じことなのよ」

 

 

「統堂さんは、その一番大事なことが欠けているわ。

 踏み台も、しっかり踏まないと足元をすくわれるわよ?」

 

 

 わかってる。絶対に最後までやり遂げるんだ。

 強い意志を持って三人は覚悟を決めた。

 ステージの照明で三人の視界が明るくなると、センターのツバサがMCを務める。

 

「今日はこんなに集まってくれてありがとうございます」

 うおぉおおお! ツバサちゃーん! どういたしましてー!! あんじゅぅうう! 英玲奈様カッコイィイ!!

 

「記念すべき1回目のライブで、皆さんと会えたことがとても嬉しいです」

 俺も嬉しいよー!!

 

「私たちRISEは、A-RISEとしてラブライブで優勝するために結成しました。今度の学年対抗ライブでは負けません!」

 がんばれー!! らいずぅううう!!

 

「けど、今日のために練習してきたのは勝ち負けの為ではありません」

 なんでー?! どういうことー!!

 

「皆さんと楽しむ為です!!」

 うぉおお!! ツバサちゃぁああん!! 俺たちも楽しみたいよぉお!!

 

「サビの部分は、繰り返しになるから、ライブに初めて参加する人も、常連さんも! ぜひ一緒に歌ってくださいね!」

 わかったよぉおお!!

 

「聴いて下さい!」

 

「「「PrivateWars!」」」

 

 

---

 音響ルーム。

 

 千尋の耳の奥を鼓動が鳴り響く。

 指先が小刻みに震えている。

 ここで、本当にイヤモニのボリュームを下げていいのだろうか。

 

 ブーーーン、ブーーーン、……

 

 突然の振動音に千尋の肩がこわばる。

 携帯の着信バイブレーションだ。相手は、生徒会副会長の智美だった。

 

「もしもし」

 

 千尋はしばらく立ちすくみ携帯に耳を傾ける。

 一言つぶやいた。

 

「わかりました……」

 

 迷っている場合ではない。

 曲を再生すると、千尋はイヤモニのボリュームをゆっくり下げた。

 

 

 

---

 曲が流れ、Aサビが始まった。

 練習通りに三人は歌って踊る。

 指先まで神経の行き届いたダンス、まるで一つの自然現象のような一体感、芯の通った声。

 その全てが一瞬にして観客を魅了した。

 幕開けは好調。サビが終わると、あんじゅのパートからBメロが始まる。

 

 

 

 ――突然あの時の違和感が再び起こる。

 三人は即座に気付いた。

 リハーサルで何度も体験した感覚。

 イヤモニのボリュームが下げられたことに。

 

 始まってしまったものは止められない。ここで止まるわけにはいかない。

 誰にも止めさせない。

 ツバサ達は、ライブを続けた。

 

 

 

---

 観客席の中腹、サイドに生徒会の二人は座っていた。

 生徒会長あずさが、はやる気持ちを抑えきれずに笑みを浮かべる。

 

「クスッ表情が一瞬変わったわ。私じゃなければ見逃しちゃうわね」

「早乙女さんは仕事をしたようですね。今のところ、ライブは進んでいますが……」

「でもサビに入ったらどうかしら?」

 

 AメロBメロは、伴奏が控えめだ。

 イヤモニがなくても音が外れることはない。

 それはあずさも智美も知っていた。

 焦ることはない。要するに、サビの音程を外すかどうか。

 最も盛り上がるシーンで、RISEに恥をかかせられるかどうかが二人にとって重要なことだ。

 Bメロがうまく行った所でそれは些細な事。

 あずさはサビに差し掛かると感極まって高笑いをした。

 

「あっはっはっはっ……は? ……え?」

「おかしいですね」

 

 ステージの上の三人は、絶えず歌い続けていた。

 音を外さず、正確に。

 観客も我を忘れて一緒に歌っている。

 開場は熱気を帯びたままだ。

 ありえない現実で呆気にとられるも、二人はすぐ原因に思考が至る。

 

「確認してきます」

「早乙女……裏切ったわね……」

 

 

 

---

 千尋のいる音響ルームのドアが音を立てて半ば強引に開けられた。

 その勢いから、普段落ち着いた言動をしている人物とは思えない感情が漏れている。

 副生徒会長の智美がツカツカと入ってきた。

 智美は千尋に向かって責め立てる。

 

「あなた、自分のしていることがわかっていますか?」

「どういうことでしょうか」

「言われたことをちゃんと……!!」

 

 智美はボリュームコントロールを確認すると、目を剥いた。

 携帯を耳に当てると、事実を生徒会長のあずさに伝える。

 

「間違いなく下がってます」

「本当にイヤモニ下げているの?」

「下げてます」

「じゃあなんで――ちょっと待って……まさか」

 

 

---

 あずさは三人を注視する。

 ……ダンスの振り付けが違う。

 三人それぞれが片耳に手を当てて歌っている。

 

 片耳を塞ぐ――

 まわりの音が大きいほど自分の歌声は聞こえず、音がはずれる。

 それを防ぐ為に作られた歌い方。

 片耳を塞ぐことで、外部からの音をシャットアウトし、骨伝導による自分の声を聞きながら歌う。

 カラオケやプロのライブなどでも時々見られる方法である。

 

「とっさに考えたってこと? ありえない……」

「どういうことでしょう」

「耳を塞げば音痴が治るってアレよ!」

「……いかが致しましょうか」

「……次の手を打ってちょうだい」

「わかりました」

 

 次の手。それは千尋が裏切った時を想定した洗礼だった。

 ツバサ達のライブは順調に進んでいく。

 

 曲の1番が終わり、間奏。2番に移ると、盛り上がりが最高潮に達する。

 観客も一緒になって歌い出す。

 後残すはAサビのみ――

 

 

 Aサビに入ると突然開場のスピーカー全機から伴奏が完全に抜け落ちる。

 静かさの中、三人のサビを歌う声だけが、開場に響く。

 

 

 突然のことにツバサ達を除いた客の歌声が止んでいる。

 客が驚くのも無理は無い。予定になかったことなのだから。

 

 

 しかし、歌は止まらない。止めない。

 確固たる三人の意思がそこにはあった。

 

「クスッ、竜頭蛇尾とはこの事ね」

 

 勝ちを確信したあずさ。最後のサビをツバサ達は歌い切――

 ――♪

 

「何?」

 

 ツバサだけが、RISEの三人のうち、ツバサだけが。

 満員の客が埋め尽くされている中、ツバサだけが、サビを繰り返して歌い始めていた。

 

 ツバサのアドリブでサビがエンドレスループに突入したのだ。

 それに続いて、あんじゅと英玲奈の二人も気付いたように歌い出す。

 

「まだあがく気……? 智美、マイクボリューム下げて」

 

 副生徒会長の智美はマイクのボリュームを下げる。

 会場のスピーカーから歌が消えた。

 もう、三人の声は会場後方だと耳を凝らしても聞こえないぐらいだ。

 ライブは失敗だ。

 度重なるアクシデントはあったが、洗礼が成功してあずさは安堵した。

 

「これで終わりね」

「ええ」

 

 その時――

 

「あらいずぅううう!! がんばってぇえええ!!!」

 

 最前列にいた少女がピンクのメガホンで叫んだ。

 その声がツバサに届く。

 ツバサは瞬間にたった一つの活路を見出した。

 サビを歌い続けるツバサ。

 そして、段になったステージから手をついて飛び降りると、エールを送ってくれた少女に近づいていく。

 

「それ貸してくれる?」

「え、あ、はい!!」

「一緒に歌ってね!」

 

 観客達はどうしたらいいのか迷っていた。

 少女と同じようにエールを叫ぶ人もいれば、静かに見守る人もいた。

 統堂英玲奈、優木あんじゅの二人は歌い続けている。

 ツバサがステージに戻ると会場は静まり返った。

 

「何をする気……?」

 

 あずさは想像を超えたツバサの行動に開いた口が塞がらない。

 RISEセンターの少女はメガホンを手に、叫んだ。

 

「"マイクなんて無くたって、私たちはひとつになれる!"」

 

 マイクを通さない、自分の声で。

 

「"スピーカーなんて無くたって、私たちはひとつになれる!"」

 

 スピーカーを通さない、自分の声で。

 

「"一緒に歌おう!!"」

 

 独りじゃない、皆の声で。

 

 ツバサは英玲奈とあんじゅに合わせてサビを歌い始める。

 合わせるように、最前列にいたツインテールの少女はサビを歌い始める。

 釣られて一人、十人、百人と会場に伝播する。

 

 

---

 

「何てこと……」

 副生徒会長の智美は動揺を隠せない。

 音響ルームのドアが開くと、黒髪ロングでサングラスをした女性が入ってきた。

 

「面白いことをやってるねぇ~、私にもやらせてもらおうかな」

「ちょっと、関係者以外は――」

 

 謎の乱入してきた女に、智美は部外者は入ってくるなと言いかけた。

 

 

 

---

 会場は、一体感に包まれていた。

 伴奏もないのに、歌っている。

 ツバサ達だけではない、一人を除いた会場の全員が歌っている。

 

「一緒に歌いましょう!」

「ちっ……」

 

 生徒会長の千本木あずさは、隣の中年のおじさんに声をかけられて、不満を隠せず舌打ちをする。

 会長は、居ても立ってもいられず、その場を去った。

 

 ツバサ達が歌っていると、イヤモニから声が届く。

 

「そのまま続けて、伴奏入れるから」

 

 ハターキの声だった。

 会場内に伴奏がフェードインして流れ始める。

 通常であれば、伴奏を途中から差し込めばタイミングがずれてしまうが、流石はハターキ。

 巧みな技術でタイミングを合わせた。

 三人のマイクも続けてフェードインさせる。

 ループ設定もしてあり、そのままサビは続く。

 

「あとサビ三回で終わらせるわね」

 

 ハターキがそう言うとツバサ達は理解した。

 

 

…………

……

 

 伴奏が終わる完璧なタイミングでポーズを決めた。

 一曲が終わると、三人は肩で呼吸して、顔が紅潮している。

 やり遂げたツバサ達は、活き活きとした表情をしていた。

 

「皆さん、ありがとう! 楽しい時間を共有できて、本当によかったです!」

 ツバサちゃあああん!! 感動したぁあああ!! あんじゅうううう!! 英玲奈様!!!

 

 

 

---

「すごいすごい!! ツバサちゃーん! こっちみてー! はぁ~、かっこええなぁ……、音ノ木坂学院に足りんもんはこれやん」

「ふん……」

 

 何なの希は。他校の生徒に興奮して、音ノ木坂学院に足りんもんって何よ。

 確かに楽しかったけど。

 全然、私がしてきたバレエに比べたらどうってことないんだから。

 あれぐらい私にだってできるわよ……。

 

「えりち?」

「大したこと、……ないわよ」

 

 この感動の渦が、音ノ木坂学院の脅威となるとは、まだ知る由もない二人だった。




投稿が遅れてほんとにごめんね!

既にセリフは去年の冬に出来てたんだ。
それにしてもこの1年で自分の中で色々変わりすぎて、過去の話も色々と今の自分と食い違った所もあったり、書く気がなくなりつつあった所だったんだけど、その過去の自分を認める事で前にすすめる事ができました。

嘘です!
忙しい事を理由に書いてなかっただけです!
時間なんて作ろうと思えばいくらでも作れたんですよ。
ただ怠けていただけと言っていいですね。
それでも読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとう!

次はライブの裏側とライブ終了後のにこちゃんとのやり取り何か書く予定です。
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