346プロの雑用バイト君   作:大盛焼肉定食

13 / 77
デレステが6周年おめでとうということでそれっぽい話をと……


13話 お酒の飲み方には気をつけよう

 

 今日は346事務所が創立されて◯周年ということでパーティーが開かれている。

 

 大きな事務所の敷地を存分に使って大掛かりな立食パーティーが行われており、所属しているアイドルやそれ以外の部署の人間に社員も参加して羽を伸ばしている。

 

 

「このドリンク運んどいてくれる?」

「わかりました」

 

 

 俺はパーティー中の食事やドリンクの類を配膳する仕事を今日は任されている。 人数が多いから食事やドリンクの消費も早く意外と忙しい……

 

 

「あら……美味しそうなドリンク! 一つ頂くわね?」

「どうぞどうぞ」

 

 

 綺麗なお姉さんが俺のトレイに乗っているドリンクを1つ持っていく。

 

 ……さっきから思っていたけど、綺麗な人とか容姿の整っている人が多いんだよね。流石は芸能事務所に所属している人たちって感じ。

 しかもそんな綺麗な人たちがドレスやタキシードなどの正装をしておめかししてるもんだからすごいキラキラしてる。

 一応俺もスタッフ用に支給されたスーツを着て髪も整えたりなんかしちゃってるけど……ぶっちゃけ場違い感が半端ない。

 

 

「俺も配膳じゃなくて裏で調理する方がよかったかなぁ……」

 

 

 まぁ大した料理スキルなんてないから無理なんだけどね。

 

 

「はぁ……」

「こーらっ!せっかくのパーティーでため息なんてついてたらダメだよ?」

「え? あ、相葉さん」

「ふふっ…こんちには白石くん!……あれ?時間的にはこんばんはかな…?まぁ別にいっか!それよりやっと大学以外の場所で会えたね♪」

「そういえばそうか。事務所で会うのは初めてだね」

「うんうんっ!………」チラッ

「……ん?」

「………」チラチラッ

 

 

 相葉さんが何かを期待するような目線を送ってくる…… え?どういうこと? 全然わからないんだけど。

 

 

「……なんか食べたいやつがあるなら持ってこようか…?」

「はぁ〜 白石くん女心が全然わかってないんだから〜」

「お、女心……? あ、もしかして食事制限してたり…?」

「もぅ〜! コレだよコレ!」グイッ グイッ

 

 

 コレ……? これってなに…? ていうかそんなに引っ張ったらせっかくの綺麗なドレスが伸びて…… あ…!

 

 

「ドレス……似合ってるね。すごく良いと思うよ」

「……や〜っとわかったか〜 女の子がお洒落してたら褒めてあげないとダメだよ!」

「うっ……」

「それで? どういうところが良いと思う?」

「えぇ……うーん……か、顔が可愛いと思う」

「……ど、ドレス関係ないでしょそれは…もぅ」

「ご、ごめん……女の子を褒めるのとかあんまりしたことないから」

「ま、まぁ……可愛いって言ってくれたし別にそれでいいよ!」

 

 

 相葉さんから合格を頂いた。 ていうか顔が可愛いと思うて……どんな褒め方だよって感じだよね…。

 

 

「じゃあ私そろそろ行くね?」

「あ、うん。 じゃあね」

「ばいば〜い♪」

 

 

 相葉さんはそう言って人ごみの中へと入っていった。

 俺は机の掃除でも……ん?

 

 

「すみません……」

「は、はい! ど、どうかしましたか!」

 

 

 肩を叩かれたから振り向いたら美女が……ていうか近い近い近い! か、顔が近い!

 なんなの!? こんな至近距離でめっちゃ見つめてくるんだけど……あれ? なんかお酒の匂いが……

 

 

「お手洗いってろこにあるかわはりまふか?」

「お、お手洗いですか…? あっちの会場から少し離れたところにありますけど」

「ありがとうございまふ……」ユラユラ

 

 

 ……今の人めちゃくちゃ酔ってるな。 1人でトイレ向かったけど大丈夫かな?

 

 

 

…………………

 

 

 やっぱりどうしても心配だ…。少し様子を見に行ってみよう。

 

 

 

「思わず来たものの、普通に女子トイレに入ってたら俺にはどうしようもできないよなぁ…」

 

 

 来てからそんなことに気づいてしまうが、とりあえず少し周りを……あ、あそこのベンチに倒れてるのって…!

 

 

「だ、大丈夫ですか!?」

「う〜ん……お、お水をくらはい…」

「ちょっとまっててください!」

 

 

 急いで水を持って女性の元へと戻る。

 

 

「どうぞ」

「ありがとうごらいまふ〜」

 

 

 女性は受け取った水を勢いよく飲み干すとボケ〜っとした表情で遠くを見つめている。

 

 

「あの……大丈夫ですか?」

「あ、はい……大丈夫れふ…すいませんご迷惑を、 私三船美優と言いまふ……」

「三船さん……俺は白石幸輝です」

「よろひくお願いします〜」ニコッ

 

 

 ……この人全然酔い抜けてないな。 てか顔めっちゃ赤いし、誰か呼んできた方がよさそうだな。

 

 

「あ、どうぞお隣に……」

「え? あ、あぁ……ありがとうございます?」

 

 

 三船さんがベンチをトントンするからつい隣に座ってしまった。 なんか変な状況になってきたなぁ。

 

「白石くんはおいくつれふか〜?」

「俺は18ですよ」

「18……お若いれふね……とても素晴らしいことれふ……うぅ……うぅ〜」シクシク

「えっ!? ど、どうかしたんですか…?」

「いえ、私なんてもう26なのに……周りに流されてばかりで情けないれふ〜」シクシク

 

 

 えぇ……三船さん急に泣き出したんだけど…。 ど、どうすれば……

 

 

「私だって…私だって好きでセクシーで可愛い動物のコスプレをしている訳れはないんれふよ〜!」

「セクシーで可愛い動物コスプレ……」

 

 

 泣いている三船さんには申し訳ないがスマホで少し調べてみると、過激な虎のコスプレをした三船さんの写真が出てくる。

 

 こ、これは……俺には刺激が強すぎて……

 

 

「プロデューサーしゃんは……もぅ……いっつもいっつも私に変なコスプレをさせて……もぉぉ……」シクシク

 

 

 あ〜……この人泣き上戸なタイプだな。 お酒が入ると泣く癖が出ちゃう人。

 

 

「うぅ……き、気持ち悪い……」

「えっ! だ、大丈夫ですか? 吐くならトイレとかで……」

「す、すいません……少し失礼します……」

「えっ……?え? ちょっと!」

 

 

 三船さんは急に俺の膝に頭を預けて寝転んだ。 いわゆる膝枕の体勢だ。

 

 

「……すぅ……すぅ…」

「え? もしかして寝た?」

 

 

 三船さんは目をつむって規則正しく寝息を立てている。

 

 

「……すぅ……すぅ…」

「……どうしようこれ」

 

 

 まさか俺の人生初の膝枕がされる側じゃなくてする側になるなんて……いやまぁ別にする側になるのが嫌って訳じゃないけどね?

 

 

「んん……かたぁい…」

「…………」

 

 

 ひ、膝の話だよね? いや膝以外に何が硬いんだって話になるからね……いや別に硬くなんてなってないからね。

 

 

「……あつぅい……はぁ…」

「………」

 

 

 な、なんかこの人いちいち艶かしいな……ぶっちゃけエロい。

 

 ってそんなことよりこれからどうしよう。最悪の場合三船さん抱えて……

 

 

「美優ちゃん? オイオイ、パーティ抜け出して男と密会かよ☆ ってあれ…寝てる?」

「あ、あなたは……誰だ?」

「ん? ってあれ?君は……菜々パイセンと一緒にカフェでバイトしてた青少年!」

 

 

 急に現れた綺麗なドレスを纏ったなお姉さんは俺のことを知ってるみたいだ……ていうかこの喋り方にこの声……まさか

 

 

「しゅ、しゅがーはぁとさんですか…?」

「おっ! よく覚えてたな☆ ちゃんとアイドルのしゅがーはぁとって書き込みして覚えたんだな。あとはぁとでいいぞ☆」

「いや、それはやってないですけど……」

 

 

 ていうか、えぇ……マジであの時あったしゅがーはぁとさんかよ。

 この前はなんか羽の生えた変な服着てたのに、髪も下ろして綺麗なドレス着てるから印象が全然違う。 いや前会った時も普通に綺麗な人ではあったけど……

 

 

「で、なんで青少年が美優ちゃんと密会して膝枕なんてしてんだ?」

「白石です。 これは……三船さんがすごいお酒に酔っていて」

「あ〜 美優ちゃんさっき早苗さんや志乃さんに飲まされてたからな〜 じゃあ介抱してくれたのか。 グッジョブだぞ☆」

 

 

 成り行きでこんなことになっただけなのに褒められてしまった。

 

 そんなことを考えている内にはぁとさんは俺の膝の上で眠る美優さんに肩を貸して立ち上がる。

 

 

「じゃあ、はぁとたちは行くからな。 また今度お礼すっから☆」

「お礼ですか…? 別にそんなこと」

「あ、お礼つってもエロいのとかは期待すんなよ青少年☆」

「そ、そんなの期待してないですよ!」

「いや〜ん☆ はぁとどんなことされちゃうんだろ〜」

「だからそんなことしませんって!」

「まぁまぁ…冗談だからそんなに怒るなって☆ んじゃ、じゃあな〜」

 

 

 相変わらずあの人と話してるとペースを握られる……。 前に話した時もそうだったし。

 

 

「はぁ……なんか疲れた」

 

 

 とりあえず俺も戻るか……。

 

 その後は特に何事もなく事務所の創立パーティーは終了した。

 

 

 

 

 

 

 そして後日、いつも通りにバイトを終えて事務所の敷地内を歩いていると……

 

 

「あの……すみません」

「あ、はい?」

 

 

 あ、三船さんだ。

 

 

「えーっと……白石くんでよろしいでしょうか…?」

「そうです、白石であってます」

「先日は酔っ払った私がご迷惑をおかけしてしまったようで……本当に申し訳ありませんでした」

「いやそんな! 全然迷惑なんて……」

 

 

 俺の前で綺麗にお辞儀をする三船さんは、パーティーの時の酔っ払った時とは違いハッキリとした口調で丁寧に謝罪をしている。

 

 

「お恥ずかしいです……酔っていたとはいえあんな姿を」

「本当に大丈夫ですよ。気にしないでください」

「いえ……それでは申し訳が立ちません。それでその、お詫びなんですが……」

「い、いやお詫びなん……て…?」

 

 

 三船さんはそこにあるベンチに座ると自分の膝を叩く。

 

 

「どうぞ……/// 男の子はこういうものが嬉しいと……心さんに教えてもらいましたので……」

「え?」

 

 

 えーっと……これはつまり、膝枕をするからこっちに来いってことなのかな……?

 

 

「だ、大丈夫ですよ!そんなことしなくても…! それに恥ずかしいですし!」

「でも……私もしてもらったので……それに何かお詫びをしないと気がすみません…」

「うっ……」

「さあ! どうぞ……!」

 

 

 ふ、雰囲気と違って意外と押しが強い……どうしよう、やらなきゃ三船さん引かなそうだし。 というかぶっちゃけしてくれるならしてもらいたい……膝枕。

 

 

「じゃあ、失礼します……」

「はい……どうぞ」

 

 

 

 ぼすっ

 

 

「……どうでしょうか?」

「あ、いえ……その……さ、最高です」

「よかったです」ニコッ

 

 

 いやこれ最高とかいうレベルじゃないぞ。めっちゃ柔らかいしいい匂いするし、上を見たら優しく微笑む三船さんの顔……そして大きな…いや、これは言うまい。

 

 とにかく天国だ。 彼女がいる野郎はこんな幸せなことをしていたのか……あ〜 ダメだなんも考えらんない。ここでこのまま1日を終えたい。

 

 

「やばいです」

「どうかしましたか…?」

「眠くなってきちゃいました……あはは」

「あら……でしたら眠っても大丈夫ですよ? 10分程時間が経った時に起こしますので」

「いや……でもさすがに……それ……は……」

 

 

「眠ってしまいました……ふふ、可愛らしい寝顔ですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「くん……くん。 白石くん……」

「んぁ……」

 

 

 やべ……マジで寝ちゃったぞ。

 

 

「起きないと初めてのチュ〜奪っちまうぞ〜☆ ん〜」

「え……? う、うわぁ!?」

 

 

 三船さんの声で目覚めたと思ったら目の前には、はぁとさんの端正なお顔が……思わず三船さんの膝から跳ね起きる。

 

 

「お、元気だなぁ☆」

「心さん。寝起きの人をあまり驚かすのは良くないですよ?」

「はぁ〜い。 ごめんね〜ゆるちて☆」

「ま、マジでびっくりしましたよ……」

「ん〜? 何か顔が赤くないか〜?青少年」

「あ、赤くないですよ!」

「んも〜! お姉さんにチュ〜されると思ってたドキドキしちまったのか? てかしろよ☆」

「はぁ……勘弁してくださいよはぁとさん」

 

 

 目の前で俺を揶揄うように、ニヤニヤとしているはぁとさん。 本当にビックリしたのと女性の顔が近くにあったのと、心臓がドキドキしているのは半々といったところだ。

 

 

「じゃ、はぁとたち行くな? 次は…はぁとが膝枕してやろうか☆」

「け、結構です…!」

「今一瞬 はぁとの太ももみただろ」

「み、見てないっすよ…?」

 

 

 苦し紛れの嘘をつくがはぁとさんにはお見通しなのだろう。 またもニヤニヤと笑みを浮かべている。

 

 

「んじゃ、本当に行くね〜 この前は美優ちゃんの面倒見てくれてありがとな、白石☆」

「あ、はい」

「よし! じゃあ行くぞ〜 美優ちゃん」

「あ……心さん、待ってください」

 

 

 俺に背を向けて去る心さんを追いかけるように三船さんも歩き出す……が、俺の方に振り返り綺麗なお辞儀をする。

 

 

「本当にありがとうございました白石くん」

「い、いえ!こちらこそ貴重な体験をありがとうございました! めちゃくちゃ良かったです!」

「ふふっ……またいつでもおしゃってくださいね? 膝枕程度でしたら……いつでも大丈夫ですよ?」

「………はい」

 

 そうして美優さんは最後にもう一回お辞儀をすると、はぁとさんを追いかけてその場を去る。

 

 

 やばいな……膝枕中毒になるかも。

 

 




よろしければ感想・評価等よろしくお願いいたします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。