346プロの雑用バイト君   作:大盛焼肉定食

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 最近私生活の方が少し忙しくて投稿が遅くなりました。 申し訳ありませんでした。


16話 不審者は見かけ次第110番

 

 「白昼堂々女の子に乱暴するなんていい度胸じゃない! 逮捕よ逮捕!」

「ちょっと待って……は、話を聞いてください!」

「アタシが来たからにはもう心配ないぞ!周子さん!ナターリア!」

 

 

 あぁ……なんでこんなことになってしまったんだろう……

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 時刻は現在から数時間前に戻る。 その日俺は午前中のバイトを終えて家に帰ろうとしていた。

 今日は休日なので午後は大学もなく完全にフリーだから帰ってゆっくりゲームでもしようかと考えていた。

 

 

「そろそろお給料が振り込まれる日が近いな〜 お金入ったら何しようか」

 

 

 美味しいものでも食べるか……娯楽のために使うか……いっそ貯金するのもアリ……?

 

 

「かっこいい服とか買ってみる…? いや、俺そもそもファッションとかよくわからないから無理だな……」

 

 

 ぶつくさと呟きながら歩き続け、建物の中から出ると太陽の光が体に当たってぽかぽかとして気持ちがいい。

 

 いい天気だなんて考えていると前方のベンチに座る2人の女の子が見えてきた。 2人は紙きれを持って何か悩んだ様子で会話している。

 

 

「なぁシュウコ〜、どうすればいいと思う?ナターリアこういうのよくわからないゾ……」

「うーん……どうすればいいのかって言われるとね〜 アタシも上手く説明はできないっていうか」

「え〜! タスけてくれ〜シュウコ〜!」

 

 

 褐色で外国の子なのかな……? その子ともう1人銀髪のような白い髪のような飄々とした雰囲気の女の子が話している。

 

 

「そうだな〜……ん?」

「あ……」

 

 

 やば……銀髪の子と目が合ってしまった。

 

 

「お〜い、そこの人〜」

「お、俺……?」

「そうそう」

 

 

 銀髪の女の子は俺に声をかけると、手でこちらに来いと招いてくる。

 

 

「ごめんね〜お兄さん。ちょっとだけ協力してくれないかな?」

「協力…? まぁ別にいいですけど」

「ほんと? ありがとさん。アタシは塩見周子だよ〜 そんでこっちの子が」

「ナターリアだゾ!」

「俺は白石幸輝です。ここでバイトとして雇ってもらっています」

 

 

 ここに来て何度目になるのかもわからない自己紹介をする。 銀髪の子が塩見周子、外国の人っぽい子がナターリアというらしい。

 

 

「それで協力って何するんですか? 俺特に何もできませんけど……」

「 ほら、ナターリアちゃん説明して?」

「うん! 実はナ〜?」

 

 

 ナターリアちゃんは身振り手振りを交えながら俺に説明を始める。

 

 ナターリアちゃんの話を要約するとこうだ。

 

 日曜日の朝にやっているようなヒーロー物の番組にて、ガラの悪い男に街で声をかけられる女の子役として出演できることになったらしいが、そんな経験はしたことがないから心配でたまたま近くにいた塩見さんに助けを求めていたらしい。

 

 

「つまりちゃんと演技できるか心配ってことだね?」

「そう!」

「うーん、でも俺演技の指導とかできないけど」

「あ〜 そういうのはアタシが見てアドバイスするからさ、白石くんはちょっとナターリアちゃんをナンパする役やってみてほしいんやけど」

「大した演技できないんで練習になるかわかりませんけど……それでもいいなら大丈夫です」

「いや〜助かるわ〜 こういうのは実際に男の人に相手してもらった方が練習になると思うしね〜ん」

「練習相手になってくれるのカ!? ありがと〜コウキ! ナターリア嬉しいゾ〜!」

 

 

 ぎゅっ…!

 

 

「!?」

 

 

 き、急にナターリアちゃんが真正面から飛びついてきた…!?

 

 

「ちょ、ちょっちょちょちょっ!」

「コウキはイイヤツだナ〜!」

 

 

 あばばばばばばば…! ちょ、ちょっとヤバいってこれ…! なんか柔らかい感触が…こ、ここここここれっておっp……!

 

 

「ほ〜ら、練習するんでしょ〜? 離れた離れた」

「あ、そうだナ! よしっ!ナターリア頑張るゾ!」

 

 

 パッとナターリアちゃんは体を離す。

 

 か、海外の距離感ってこんなモンなの…?女性への耐性0の俺には刺激が強すぎるぞ。あ〜ヤバい、絶対キモい反応してたわ。 DT丸出しだったわさっきの俺……

 

 

「さて……いい思いしたんだから頑張ってね〜ん白石くん」ニヤッ

「い、いや〜 なんのことやら……」アハハ

「ふーん」ニヤニヤ

 

 

 やべ〜 絶対勘付かれてるわ。 俺がおっp……お、お山の感触楽しんでたことバレてるわ…

 

 

「よ、よしっ! れ、練習しよう! 練習!俺がナターリアちゃんに絡む悪い男をやればいいんだよね!」

「うん! よろしくナ〜!」

「本当に襲ったりしないでね〜」

「あ、あはは……」

 

 

 なんだか塩見さんには弱みを握られてしまったような気がする……

 

 

 

 

 

 

 何はともあれ練習を始めよう。 友達との待ち合わせをしているナターリアちゃんに俺がちょっかいをかける。 しばらくしてるとヒーローが助けに来るというストーリーらしい。

 

 あれ……?よく考えたらナターリアちゃんにそういう経験がないように俺もナンパした経験なんてないぞ…… どうしよ。

 

 

「よーい……始めっ!」

 

 

 と、とにかくチャラい感じで声かければいいんだろう! よしっ、やるぞ……!

 

 

 

 

 

「ね、ねぇねぇそこの君〜」

「ん? ナターリアのことカ?」

「そ、そうそうそこの可愛い君だよ〜」

「何か用カ?」

「ちょっと俺とお茶でもしようよ」

「ナターリア今人を待ってるからダメだゾ」

「え…? あ、あぁ……そう」

「………」

「………」

「こ、断られたちゃったけど……」

「いやいや! 白石くんナンパ下手すぎひん!?」

 

 

 ベンチに座り演技を見つめていた塩見さんが大きな声を出してツッコむ。

 

 

「断られたちゃったやないやろ! そこから無理やりナターリアちゃんを襲おうとするとこまでやってもらわんと!」

「お、おぉ……塩見さん関西の人だったんだ」

「そうだけど今それはどうでもいいから……」

「シュウコはキョウトの人だよナ〜」

「アタシの出身はどうでもいいから……とにかく白石くんもうちょっと頑張ってもらわんとナターリアちゃんの練習なんやから」

「わ、わかったよ」

 

 

 確かに塩見さんの言う通りだ……嫌がる女の子を無理やりなんてしたくないけど……これは練習なんだからしっかりやらないと。

 

 

 

「じゃあ……よーい、どんっ!」

 

 

 

「へいへい〜 そこの君こんなところで何してんのさ。 1人?よかったら俺と遊ぼうぜ〜」

「だ、誰ダ…!? ナターリアは人を待ってるから……」

「んなことはどうでもいいんだよ! 俺に着いてくれば君の好きなもんなんでも食わせてやるぜ?」

「それってスシでもいいのカ!?」

「え?」

「わ〜い! 丁度スシ食いたいと思ってたんダ〜!」

「ちょ、ちょっと……ナターリアちゃん…」

「よしっ! 早速スシを……」

「ちょ! アカンアカン……ストップ」

 

 

 またしても塩見さんのストップがかかる。 今のが駄目だってのは俺でもわかる。

 

 

「ナターリアちゃんアカンて……それで着いて行ったら台本と違うやん」

「あっ! それもそうだナ……」

「それと白石くんもイマイチ悪役感が足りてないんよ……もっと強引に腕掴んで連れ去ろうとするぐらいさ」

「でもそんなことしたら可哀想じゃ……」

「いやいやこれ演技だから……でもそっか〜 いくら演技でも童貞の白石くんには難しかったかな〜」

「ど、どどどど童貞じゃないですけど!?」

「キョどりすぎやろ……」

「ドウテイってなんダ?」

「あー……魔法使いみたいな?」

「おぉ〜! コウキすごいナ!」

「や、やめろぉ!」

 

 

 くっ……こんな辱めを受けるなんて……

 

 

「わ、わかったよ! やってやるよ……とんでもないワル演じてみせるよ!」

「おぉ! ナターリアも頑張るゾ!」

「はいは〜い。 じゃあもう一回やるよ〜」

「あ、ちょっと待っててください!」

 

 

 えーっとこの前大学の友達に貰った……あぁこれこれ。

 

 

「よし、やりましょう」

「そのグラサンどうしたん?」

「この前大学の友達に貰いました。これでより悪い感じが出せます」

「カッコいいサングラスだナ!」

「あ〜 はいはい。 じゃあ始めるよ〜」

 

 

 ふっ……サングラスかけただけで気持ちまで変わってきたぜ。 今ならとんでもなく悪いやつになれる気がする!

 

 

「よ〜い……どんっ」

 

 

「そこの君〜 ちょっと俺と遊ばない?」

「えっ…な、ナターリア今人を待ってるから……」

「ちょっとぐらいいいだろ〜? 絶対退屈させないからさ〜」

「し、しつこいゾ…! ナターリアは絶対について行かないからナ! あっち行ケ!」

 

 

(ほ〜ん……結構いい感じやん。ナターリアちゃんもちゃんと演技できてるし)

 

 

「こ、この……! 下手に出てれば図に乗りやがって……いいからこっちに来いよ!」ガシッ

「は、離セ!このっ!」

「へへへっ! 力で敵うわけないだろ! 舐めた真似してくれた分きっちり楽しませてもらうぜ?」

「だ、誰か助けてくれ〜!」

 

 

(めちゃくちゃええやん……白石くんも悪役が様になってるわ。ここで本来ならヒーローが助けに来て終わりだからそろそろ止めますか〜)

 

 

「じゃあそろそろ……」

 

 

「こら〜っ!」

「そこまでだ!悪党め!」

 

 

「え? うおっ!」

「白昼堂々女の子に乱暴するなんていい度胸じゃない! 逮捕よ逮捕!」

「ちょっと待って……は、話を聞いてください!」

「アタシが来たからにはもう心配ないぞ!周子さん!ナターリア!」

 

 

 どこからともなくボディコンを着たお姉さんとヒーローのようなポーズをキメる女の子が颯爽と駆けつけると、お姉さんは俺に関節をキメて女の子はナターリアちゃんを庇うように立ち塞がる。

 

 

「いででででで!!」

「それ以上暴れるともっと痛くなるわよ! 大人しくしなさい!」

「うぉぉぉぉ! いだだだだ!」

 

 

 な、なんだこの人っ…! 小さいのにめちゃくちゃ強いんだが!? ちょ、マジで痛い痛い!

 

 

「こ、コウキ〜!」

「さ、早苗さん…ちょっとタンマタンマ」

「駄目よ周子ちゃん! 解放したら次は貴方が襲われる可能性も…!」

「いや〜 その人悪い人じゃないから……」

「……どういうこと?」

 

 

 塩見さんは一から事情を説明する。 俺がナターリアちゃんの練習に付き合って演技していたことなどを……

 

 

 

「つまりあたしの勘違いってことね」

「そうそう」

「ま、マジ……?」

「マジマジ」

「……ご、ごめんなさい!」

 

 

 お姉さんはやっと解放してくれる。 痛かった……

 

 

「ごめんなさいね……あたしはてっきり不審者がナターリアちゃんを襲ってるのかと……」

「す、すまない……アタシも正義の味方失格だ……」

「い、いやいや……あんな場面側から見たらどう見ても俺不審者ですし、気にしないでくださいよ」

 

 

 アイドルの女の子の手を掴んで引っ張るグラサンかけた男……うん、どう見ても勘違いするわな。

 

 

「本当に気にしないでください。 俺怒ってないんで……」

「わかったわ、でも今度何かお詫びさせてちょうだい。そうしないとあたしの気が済まないもの」

「あ、はい」

「よしっ! じゃあ行くわよ光ちゃん」

「あ、あぁ……白石さん、本当にすみませんでした!」

「も、もう大丈夫だから謝んないでよ」

「何か困ったことがあったら何でも言ってくれ! アタシが絶対助けになるから!」

「……うん、その時はよろしく」

「じゃあまた会おう! さらばだ!」

 

 

 元気を取り戻した光ちゃんと早苗さんはその場を去っていく。

 

 

 

「いやぁ……ビビった〜」

「早苗さん元警察だからね〜」

「通りで強い訳だよ……」

「コウキ、ケイサツの番組でタイホされる人みたいだったナ!」

「か、勘弁しておくれよ……」

 

 

 その後演技での良かった点やもうちょっとこうした方がいいんじゃないかと言った意見を塩見さんはナターリアちゃんに伝える。

 

 

 

「でも、細かいとこ抜きにしたらすごく良かったと思うよ」

「うん、俺から見ててもマジで嫌がってる風に見えたしいい演技だったよ」

「マジで嫌だったのかもよ〜?」

「えっ……」

 

 

 冗談だと塩見さんはケラケラと笑う。 でもマジで嫌がられてたとしたらめちゃくちゃ悲しいなこれ。 ナンパなんてやっぱ俺には向いてない……

 

 

「2人ともありがとうナ! ナターリア本番も今みたいに頑張るゾ〜!」

「頑張れ〜」

「応援してるよ」

「よ〜し! じゃあテレビで放送されるやつも見てくれよナ! ばいば〜い!」

 

 

 ナターリアちゃんはブンブン手を振りながら大きな声をだして走り去っていく。

 元気だなぁ……

 

 

「じゃあアタシも行くわ。2人きりでいたら白石くんに何されるかわからんし」

「いや、さっきのは演技だからね…?」

「え〜? ナターリアちゃんに抱きつかれた時鼻の下伸ばしてた様な人が言っても説得力がないよ〜ん」

「は、鼻の下伸ばしてなんかないですけど!」

「ふふっ……じゃあね〜」

 

 

 ナターリアちゃんとは対照的にひらひらと手を振りながら去っていく塩見さん。

 なんでだろうかあの人には敵う気がしない。

 

 

 

「俺も帰るか」

 

 

 今日も濃ゆい1日だった……

 

 あ、ナターリアちゃんの出る回いつなのか聞き忘れた……まぁ調べればわかるか。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

『こ、この……! 下手に出てれば図に乗りやがって……いいからこっちに来いよ!』ガシッ

『は、離セ!このっ!』

『へへへっ! 力で敵うわけないだろ! 舐めた真似してくれた分きっちり楽しませてもらうぜ?』

『だ、誰か助けてくれ〜!』

 

 

 

 

「お、俺と全く同じこと言ってるじゃん……奇跡か?」

 

 

 後日放送されたナターリアちゃんの演技はとても上手でした。

 

 

 




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