すっかり空も暗くなってきた。 俺は橘ちゃんが向かったというコンビニへとひたすらに走る。そのコンビニは今日の昼に俺がジュースを買いに行ったのと同じ場所なので、道に迷うことなく走り続ける。
「見えた…! あのコンビニだ!」
中でトイレに篭ってるとかだったら安心できるんだけど……頼むからここにいてくれよ橘ちゃん。
「はぁ……はぁ……」
首を高速で左右に揺らして辺りを見渡すが橘ちゃんの姿は無い。とりあえずコンビニの周りにはいないようだ。
そして次はコンビニの中を確認するため店内に駆け込んでいく。
「いらっしゃいませー」
「すみません、トイレ借ります!」
ガチャ...
「い、いない……」
くそ、どうやら最悪のパターンみたいだ。今このコンビニの中にも周りにも橘ちゃんの姿は無い。ただ望みは薄いが、もしかしたらすれ違いになってる可能性もあるかもしれないので、俺は現状確認のためにもプロデューサーさんにメールを送った。
そしてプロデューサーさんからの返信はすぐに返ってきたが、内容は良いものではない。
「くそ、戻ってないか……!」
とりあえず今からコンビニ周辺を探してみるとメールを送りスマホをポケットにしまう。
しかし探すと言ったって何かしらの手がかりが無いとどこを探していいのかも分からない。俺は僅かな望みに懸けてレジに立つ店員さんに話しかけた。
「あの、すみません!」
「いらっしゃいませー」
「ここ30分以内にこのくらいの背丈で青い洋服を着た、凄く可愛い小さな女の子がコンビニの中に来ませんでしたか!?」
「女の子ですか……いやぁ、来ていませんね」
「そうですか……ありがとうございます。失礼します!」
つまり橘ちゃんはコンビニの中に入っていないという事か。一体どうして……コンビニに入る前に何かあったのか…? いや、今は考えるよりとにかく探しに行かなければ…!
「またのお越しをお待ちしていまーす」
店員さんの無気力な挨拶を背中に受けながら俺はコンビニの外に出る。そして外に出るなり全速力で走り出した。
どこを探せばいい…? いや待てよ、海に戻ってきてないってことは今の道を戻っても意味ないよな。 よし、ここよりもっと先に進んでみるか。
「あの、すみません!」
「いやぁ見てないなぁ」
くそっ……!
「この辺で青い服着た小さな女の子を!」
「ごめんなさいねぇ」
俺は手当たり次第に人へと話しかけて、何か少しでも橘ちゃんの情報がないのかを確かめるが全く情報は出てこない。段々と心の中の焦りと不安が強くなっていくのを感じつつ、また次の人へと話しかける。
「あの、すみません!」
「どうかしましたか?」
「この辺で青い服を着た小さな女の子見ませんでしたか!?」
「……女の子…?」
「はい! 大きなリボンをつけてるんですけど!」
ガチャッ
「ちょっとアンタ、家の前で何騒いでるんだい?」
「あぁ、すまない。 今この少年から質問されててね」
「あ……う、うるさくして申し訳ありません」
「いいよいいよ。 それで? 何を聞いてたんだい?」
「はい、この辺で青い服を着た小さな女の子見ませんでしたか!? 凄く可愛い…!」
家の中から出てきた女性に質問をすると、その女性は大きく目を見開いてハッとした表情を浮かべた。
「それって……大きなリボンしてる…?」
「……! そ、そうです! 見たんですか!?」
「見たっていうか、さっきここにいたんだよ」
「え…?」
「ウチの娘が中々帰ってこなくて心配してたらね、怪我した娘をその子がここまで運んでくれたんだよ。 そこにいる旦那も今ずっと娘を探し回ってたんだけど見つかったから帰ってきたところさ」
「それどのくらい前ですか!」
「10分くらい前かねぇ」
奇跡的に橘ちゃんの目撃情報を聞くことができた。10分くらい前にここにいたのならば、まだそう離れていない場所にいるはずだ。
「ありがとうございます! 俺もう行きます!」
「あ、ちょっと待って! その子に会えたらお礼を伝えておいて欲しいんだ……娘の分も」
「はい、わかりました!」
「君、これを持っていきなさい」
「これは……懐中電灯ですか?」
「あぁ……さっきまで僕が娘を探している時に使っていたものだ。 娘が世話になったみたいだから返す必要はないよ」
「ありがとうございます! それじゃあ!」
俺は受け取った懐中電灯で暗い道を照らしながら走り続ける。そして自分の喉が擦り切れるのでないかと思うほどの大声を張り上げた。
「たちばなちゃーーーん!!!」
人も建物も少ないから声がよく響く。これなら近くにいれば声は届くかもしれない。
俺が再び大きく息を吸い込んで大声を張り上げようとしたその瞬間、何かに足を奪われてバランスを崩し、勢い良く道に倒れ込んだ。
「たちば……おわっ!」
膝や肘をコンクリートの道に擦り付けてしまい、じんわりと血が滲み出て衣服を血で染める。正直泣いて叫びたい程に痛いが、今はそんなことは気にしていられない。
すぐに立ち上がって再び大声を張り上げながら走り出す。
「たちばなちゃーん!!! たちばなちゃーん!!!!」
……こ…す…
「……! 今のって…! おーい!!! たちばなちゃーん!!! たちばなちゃーん!!!」
……ここ、ます……!
僅かだったが、聞き間違いを疑うほど小さな声が聞こえた気がした。俺は最後の気力を振り絞って走りながら、声のする方向へと近づいていく。
そして声が聞こえてきた場所を懐中電灯で照らすと、安心からか全身の力がガクッと抜けていくのを感じた。
〜〜〜〜
「……私…どうすれば…ぐすっ」
空も完全に黒くなってしまって真っ暗な空間が私の不安を誘う。歩みを進める度に目的地とは違う方向へと進んでいるんじゃないかと思えてきて、歩くのも段々と怖くなってくる……
「うっ……うぅ……」
自然と目尻には涙が貯まる。泣こうと思っている訳でもないのに、ソレが目から溢れるのを我慢できない。
……ば…ちゃ……
「え……」
……た…ばな……ちゃ…
その時、微かだが私を呼ぶ声がした気がした。
「…こ、ここです! 私はここにいます!!」
人生で1番かもしれないほどの大声を出す。喉が傷ついてしまいそうだがそんなことはお構いなしだ。
…い……たち…ばな…ちゃ…ん!
「ここです! ここにいます!!」
微かに声がする方向に必死に叫ぶ。するとその方向から強い光が差し込んで私の全身を照らすと共に、血と泥にまみれて息を切らした男が現れた。
「橘ちゃん!!」
「あ……あぁ…あぁ…!」
声の主は私の姿を確認すると、心底安堵したような表情を浮かべた。
しかし心の底から安堵したのは私も同じで、その人物を見た途端に全身からガクっと力が抜けるのを感じた。
〜〜〜〜
「橘ちゃん…!」
「あ……あぁ…あぁ…!」
声のした場所を懐中電灯で照らすと、そこには目尻に涙を浮かべて体を縮こませる橘ちゃんの姿があった。
あぁ……良かった、本当に、良かった……
「ふぅ……橘ちゃん、見つかって良かった」
「し、しら……いしさ…んっ…ひぐっ」グスグス
「……もう安心していいよ」ナデナデ
「うぅ〜……うぅっ…」グスッ
「怖かったね。でも、よく頑張ったね」
俺の体にしがみ付いて、声を必死に抑えながら涙を流している橘ちゃん。俺はそんな彼女を安心させるために、優しく語りかけながら頭を撫で続けた。
よほど不安で怖かったんだろうな……そりゃあこんな小さい子が知らない街で夜に迷子とかなったら不安にもなるわ。
「じゃあ戻ろっか」
「は、……はいっ……!」
俺が立ち上がって橘ちゃんに手を伸ばすと、彼女は涙の付いた目をゴシゴシと擦って元気な返事をした。
〜〜〜〜
「あの……重くないですか?」
「全然重くないよ。 もう1人乗っててもいけるぐらい」
体力的にも精神的にも疲れ果てていた橘ちゃんをおんぶして歩く。背中に乗る橘ちゃんは遠慮がちに重くないか聞いてくるが、強がりでもなんでも無く本当に余裕だ。むしろ軽すぎて心配になるくらい。
「そうだ、プロデューサーさんに連絡しないと。 ちょっと止まるね?」
「あ、はい」
「えーっと…………ほい、送信っと」
「何て送ったんですか?」
「橘ちゃん捕獲って」
「わ、私は獣じゃありません!」
「あはは! 冗談だって……あ、返信きた」
メールの文面からはプロデューサーさんの安堵が伝わってくる。ビーチで鷺沢さんと待っているとのことなので早く戻らないとな。
何はともあれ、これにて一件落着だな。
「あっ……」
「な、何ですか?」
「充電切れた」
「え……」
「まぁプロデューサーさんには連絡できたしギリギリセーフだよ」
「道はわかるんですか…?」
「うん。俺は全部来た道覚えてるから」
「……私への当てつけですか?」ジト-
「そ、そういう訳じゃないよ!」
「まぁ、今日は何を言われても私に文句を言う筋合いはありませんけど……」
橘ちゃんは一瞬だけじっとりした視線を後ろから浴びせてきた。しかしすぐにその視線も無くなったので、本気で怒っている訳ではなさそうだ。
「あの……先ほどはみっともない姿を見せてしまいました……申し訳ないです」
「みっともない姿って?」
「……人目も憚らず大声で泣いてしまったことです」
そう言う橘ちゃんの声は震えていて、その声色からは後悔や反省といった感情がヒシヒシと伝わってくる。
「みっともなくなんかないと思うけどなぁ。不安で怖くなって泣いちゃうことなんておかしくもない……というか普通だと思うし」
「そうでしょうか……」
「普通普通。俺だって大学の課題間に合うか不安になって泣くし、高校の頃やった肝試しで怖くて泣いたし」
「……泣きまくりですね」
「ははっ! まぁとにかく俺は泣くことをみっともないとは思わないし、泣きたいときは泣けばいいんだよ。誰も責めたりなんかしないし」
俺は自分の体験談を交えて橘ちゃんを慰める。こんな話で慰めになるかどうか分からないが、まぁ気休め程度にでもなれば上等だろう。
「そういえば橘ちゃん、怪我した子どもを家まで送り届けてあげたらしいね」
「な、何で知ってるんですか?」
「橘ちゃん探してる時にその子どものお母さんとお父さんに会ってね、橘ちゃんに本当にありがとうって言ってたよ」
「……そうですか。ふふっ」
あの夫婦の感謝の言葉を伝えると、背中からは嬉しそうな笑い声が聞こえてきた。ようやく橘ちゃんが笑ってくれたのが嬉しくて、俺も自然と口角が上がってしまう。
「橘ちゃん良いことしたね。偉い偉い」
「こ、子ども扱い…! いえ、今回は素直に受け取っておきます」
「そうそう。素直が1番! まぁ橘ちゃんは充分素直だと思うけどね、世の中にはそれはそれは大層捻くれたやつがたくさん……」
「ありすでいいです」
「ん?」
俺の話を遮るように橘ちゃんはそう言った。俺は何が何だかよく分からなくてついつい聞き返してしまうが、橘ちゃんは少しだけ恥ずかしそうに体をモジモジさせながら話を続ける。
「その……た、橘ちゃんでは長くなってしまいます。 なのでありすでいいです。 もうアイドルの皆さんも結構そう呼んでますし……」
「いいの?」
「は、はい……」
「そっか、じゃあ改めてよろしくね。ありすちゃん」
「こちらこそよろしくお願いします。白石さん」
俺の言葉に対して少しだけ微笑んで返事をするありすちゃん。今日の朝会った時はかなり警戒されていたのに、ようやく心を開いてくれたような気がしてめちゃくちゃ嬉しい。
「……あの、白石さん」
「どうかした?」
「こ、コンビニに寄ってもらえないでしょうか……」
「どうして?」
「い、いや……その……」プルプル
「……?」
すると突然、ありすちゃんが震えた声でそう言った。いや、震えているのは声だけじゃなくて体も揺れている。俺はコンビニに行きたい理由を聞いたが、ありすちゃんは何やらとても言いづらそうにしていた。
「と……」
「と?」
「トイレに行きたいんですっ! 言わせないでくださいよ!」
「と、トイレ…?あっ…」
そ、そういえばそもそもありすちゃんがコンビニ行った理由ってトイレに行くためだったな……すっかり忘れていた。色々とあってそれどころじゃなかったんだろうけど、あれから小1時間程度は経過してるしそりゃ限界も近いよな。
「デリカシーのない人ですね! そういうのは察するもんですよ!」
「わ、わかったから…! じゃあ少し急ごうか。 大丈夫? まだ限界来てない?」
「だから……! そういうのは聞くもんじゃないんですよっ!」
背中の上でぷりぷりと怒っているありすちゃんを乗せたまま、俺は猛スピードでコンビニへと向かった。
〜〜〜〜
「お待たせしました」
「いやいや」
「さぁ行きましょう。 ここからは自分で歩きます」
「そっか……あ、これありすちゃんに」
「これは……いちごミルクですか…?」
「喉乾いたでしょ? せっかくコンビニ来たしさ、遠慮しないで」
「あ、ありがとうございます…!」パアッ..!
ありすちゃんは露骨に嬉しそうな表情を浮かべると、喉も渇いていたのかごくごくと勢いよくいちごミルクを飲んでいく。大人びてはいるけど、こういう所は年相応な感じがして可愛らしいと思った。
「ふぅ……あの、どうして私がいちご好きだと知っているんですか?」
「今日送迎するのがありすちゃんと鷺沢さんだって知った時に少しだけ調べてね」
「そうなんですか」
「いやまぁ調べたって言っても本当大したことは調べてないよ? 鷺沢さんは大学生で本が好きな人。ありすちゃんは小学生でいちごが好きみたいなことくらいかな」
「予習は大事ですからね」
「しっかりしてるなぁありすちゃん。 俺小学生の頃に予習復習とか行った覚えないや」
そんなしょうもない雑談を交わしながら歩いていると、あっという間にプロデューサーさんと鷺沢さんの待つビーチへと到着した。俺たちの姿を見るなり2人は走って駆け寄って来る。
「ありす!」
「ありすちゃん…!」
「プロデューサーさん、文香さん!」
「…心配しました」
「あぁ、本当に無事でよかったよ。白石くんも本当にありがとう」
「いやいや、そんなことよりありすちゃんが無事でよかったです」
本当に大事にならないで良かった。さっきありすちゃんを見つけた時も安心したけど、ここに戻ってきたことでより一層強い安堵を覚えた。
「それより白石くん……その怪我は大丈夫かい?」
「あぁ、ちょっと痛いですけど多分ただの擦り傷ですから」
「そうか……改めて今日は本当にありがとう、白石くん」
その後はプロデューサーさんに明日病院へ行くことをオススメされた。勤務中の怪我なら労災やら保険やらがどうとかこうとか……正直よくわからなかったけどまぁ大丈夫だろう。
「じゃあそろそろ帰ろうか。 白石くん、最後まで申し訳ないけど2人の送迎を頼むよ。直接家に届けてもらって構わないから」
「わかりました。鷺沢さんもありすちゃんも寮ではないんですよね」
「そうだね……ふふっ、ありすちゃんか」
「……?」
「いや、ありすとも仲良くやってくれてるみたいで嬉しくてね……これからもよろしく頼むよ、白石くん」
「は、はい!」
「じゃあ俺は寄る場所があるからこれで」
「お疲れ様でした!」
そう言うとプロデューサーさんは、鷺沢さんとありすちゃんに挨拶をして自分の車に乗って走り去っていった。
「じゃあ俺たちも帰りましょうか」
「…はい」
「よろしくお願いします」
俺たち3人は駐車場に停めていた車に乗って東京へと戻っていく。車内ではさっきあった出来事についての会話が盛り上がっている。
「…なるほど、そんなことがあったんですね」
「ありすちゃんのお陰で1人の子どもが救われたんだよね」
「……そこまで褒められるとむず痒いです」
「…立派です、ありすちゃん」ニコッ
「ふ、文香さんっ…!」
やっぱ鷺沢さん大好きなんだな……本人に言ったら怒るだろうけど、鷺沢さんに褒められた瞬間に尻尾を振る子犬みたいになってるし。
「そういえば、白石さんはなぜウチの事務所でアルバイトを?」
「んー……お金欲しかったから。ここって時給良いし」アハハ
「…とてもシンプルな理由ですね。…女性に慣れるために女性の多い場所を選んだのかと…」
「……なんかそれ俺めちゃくちゃチャラ男みたいですね」
「ふふ……」
「白石さん、女性が苦手なんですか?」
「苦手って訳じゃないよ。慣れてないんだ、女の子と話すの……主に初対面の子と話す時」
「そうなんですか……」
「2人とは今日いっぱい話したから結構普通に話せるんだけどね。 鷺沢さんと最初喋った時とかもうガチガチで」
「…私もです」
いやぁ、ここの事務所に来て多少は女の子と喋るの慣れたけどやっぱり初対面の子とはどうしても緊張するんだよね……これは治る気がしない。
「ネットで調べました。 女性に慣れている男性は自然に下の名前で呼ぶらしいです」
「えー……ハードル高いなぁ」
「なぜですか、私は名前で呼んでいるじゃないですか」
「だってありすちゃんは子どもだし」
「こ、子ども扱いしないでください! 白石さんはおいくつですか!」
「18だけど」
「私は12です! 6つしか違いませんよ!」
「……そう言われるとそんな離れてないような気もしてきたな」
「…小学生と大学生と言うと…印象がガラリと変わりますね」
「あー……それは確かにめちゃくちゃ離れてる気がしますね」
「ふ、文香さん……」
「…すみません、ありすちゃん」
同じ6歳差でも30歳と36歳の夫婦と、12歳と18歳のカップルじゃ全然印象が違うからなぁ。てか後者は普通に犯罪だし。
「では試しに文香さんのことを名前で呼んでみましょう」
「えー……恥ずかしいんだけど」
「…私は構いません」
「さぁ!」
「………いややっぱ無理だわ! 今から名前で呼びます!って言って呼ぶとかめちゃくちゃ恥ずかしいわ!」
「チキンですね」
「…まぁまぁ、ありすちゃん」
「あ、ナビ設定したいんでちょっと止まりますね!」
「話を逸らしましたね」
なんか段々と遠慮が無くなってきたなありすちゃん。いやまぁ心を開いてくれてるって事だと思うしいいんだけどね!
「あの……白石さん、連絡先を交換しましょう」
「え?」
「今後、今日みたいな事があった時に必要だと思いました。 交換して損はないはずです……」
「……それもそっか。いいよ、交換しとこっか」
「……で、では私も」
「え? さ、鷺沢さんもですか…? いいんですか…?」
「…こういった時にこうするのが"ノリ"だと学んだことがあります」
「の、ノリですか……」
そして俺は2人と連絡先を交換した。
別にこれで頻繁にやり取りをするようになるとかいう訳ではないけど、連絡帳に人の名前が増えるとちょっと嬉しい……
「じゃあ2人の家に向かいますか」
「…お願いします」
「よろしくお願いします!」グゥ-
「…ありすちゃん、お腹が空いたのですか?」
「ち、違いますよ! い、今のは……!」グ-
「ありすちゃんが空腹で倒れる前にとっとと帰るかー」
「…そうですね。ふふふっ」
「ち、違うんですー!!」グ-
車の中にはありすちゃんの大きな声と鷺沢さんの静かに笑う声が響く。
帰りの車内は、ここへ向かう時の静かな車内とは正反対にとても賑やかだった。
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