346プロの雑用バイト君   作:焼肉定食

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2話 いざ面接

 

「ふわぁ〜」

 

 

 やばっ……すごい大きなあくび出ちゃった。面接の時は絶対にしないようにしないと。

 

 

 俺は現在アルバイトの面接に向かうためすでに家から出発して346プロを目指して歩いている。昨日は緊張してあまりよく眠れなかったが、もうそれは考えないようにするしかない。

 

 

「ふぅ……既に心臓がバクバクだ」

 

 

 なんとか気持ちを落ち着かせようと胸を摩りながら大きく深呼吸をする。そして面接での受け答えを頭の中でシミュレーションしていると、あっという間に事務所の前に到着してしまった。

 

 

「ついた… ついちゃった」

 

 

 はぁ〜…めっっちゃ緊張する!なんだよこの建物! 昨日も思ってたけどデカすぎない!?

 俺今からこの中に入って行くの? 場違いじゃないよな……?

 

 

「ねぇ、そんなとこで立ち止まってどうかしたの?」

「えっ?」

 

 そんなことを考えながら突っ立っていると後ろから女の子に呼びかけられる。俺は何だかデジャヴを感じながらもゆっくりと声のした方へと振り返った。

 

 

「す、すみません!すぐに退きますから…!」

「……?」キョトン

「ぎゃ、ギャルだ……」

「え?」

 

 

 あっ……!し、しまったぁぁ!つい口に出てしまった!

 

 振り返った先にいたのは、ド派手なピンク色の髪をした制服姿のギャルだった。その派手なピンク髪の制服女子はポカーンとして俺のことをジーっと見つめている。

 

 そりゃそうだよね!いきなりギャルだ!なんて言われたらビックリするよね!

 

 

「ご、ごめん!つい口に出て!」

「あ、うん。別にいいんだけど……流石に真正面からギャルだなんて言われたことなかったから……」

「ま、マジですみませんっ!! 今すぐここから立ち去るので!」

「ちょっ! あたし別に怒ってないから!」

 

 

 ピンクのギャルさんは暴走する俺を落ち着けようと優しく声をかけてくれる。見た目の割にすごく優しい人なのかもしれない。

 

 

「す、すみません……少し取り乱しました」

「ううん、別にそれはいいんだけど……あたしってそんなに怖いかな?」

「あ、いや! そ、そんなことはありません! ただ俺は田舎の方から東京に来て、地元のギャルって怖いヤンキーの彼女みたいなやつが多かったから……その印象が強くてついビビってしまいまして……」

「あはは〜 なにそれウケる★」

 

 

 目の前のピンクギャルさんは俺の失礼な態度を気にも止めずに笑っている。器の大きい人だなぁ……なんて事を考えていると、向こうの方からまた声をかけてきた。

 

 

「それで、アンタはこんなとこで何してんの?社員さん…って感じじゃないよね?見た感じそんなにアタシと年変わらなさそうだけど」

「あ、はい……お、俺はここにバイトの面接を受けにきたところなんですよ」

「へー、ウチってアルバイト募集してたんだ〜あ、アタシは城ヶ崎美嘉って言うんだ。よろしくね★」

「よろしくお願いします。俺は白石幸輝です。城ヶ崎さんはもしかして……アイドルですか?」

「タメ口でいいって〜 そうだよ!アタシここでアイドルしてるんだ!一応カリスマギャルって言われてたりもするんだよね〜★」

 

 

 城ヶ崎さんはそう言うと、ニコっと笑って横ピースを決める。

 

 こ、コミュ力が高い! 流石はカリスマギャル……っ!

俺のコミュ力が5だとしたら城ヶ崎さんのコミュ力はきっと53万だ。

 

 

「じゃあアタシはそろそろ行くね?バイト受かってもし会うことがあったらよろしくね!」

「あ、はいっ…! こ、こちらこそよろしくお願いします…!」

「だからタメ語でいいって★ それじゃあね〜」

 

 

 そう言うと城ヶ崎さんは俺に背を向けて事務所の方へ歩き出したかと思えば、くるっと振り向きまた声をかけてくる。

 

 

「今度興味持ったらアタシのライブとか見に来てみてね★」

 

 バチっとウインクを決めて颯爽とその場を去っていく。

 

 「………」

 

 やばい、心完全に奪われてた……。

 

 

 

 ギャル……いいな。

 

 

 

 〜〜〜〜

 

 

 危うく俺の性癖をギャル好きに変えてしまいそうな出来事の後、ついに346事務所の入り口に辿り着いてしまった。

 

 

 よし、頭の中を切り替えよう。

 

 

 女子と会話して浮かれ立った気持ちを落ち着かせて、自動ドアから建物の中へ入る。外見でも驚かされるが中へ入るとまたさらに驚かされる。まさに本物のお城のような空間でめちゃくちゃ広い。

 

 

「えーと、まずは受け付けのとこに行けって言われたっけ」

 

 

 あまりキョロキョロするとみっともないからな。とりあえず早く面接へと向かおう。

 

 

「あのーすいません」

「はい。本日はどのようなご予定でございますか?」

「あ、あの〜バイトの面接に来たんですが」

「少々お待ちください。……白石幸輝様で間違いございませんか?」

「はい。間違いありません」

「それでは少々ここでお待ちいただいてもよろしいでしょうか?本日の面接担当の千川を呼んでまいりますので」

「あ、はい。よろしくお願いします」

 

 

 受付さんにそう言われた俺はピシッと姿勢を正した状態で千川さんなる人物の到着を待つ。

 

 ……いよいよ面接か。担当の千川さんって言ってたよな?

どんな人だろう。でもなんかすごい強そうな名前だよな。だってサウザンドリバーだからなぁ。怖い人だったら嫌だなぁ……

 

 

 緊張のせいかそんなしょうもない事ばかり頭の中で考えてしまう。そしてそのまま心臓をバクバクと鳴らし千川さんを待っていると、優しそうな印象を与える声が俺の名前を呼んだ。

 

 

「あの〜白石くんですか?」

「は、はい!白石幸輝です!本日はよろしくお願いしむす!」

 

 

 はい噛んだ。最悪。もう終わりかもしれない。

 

 

 早くも心が折れそうになりながら千川さんの方を振り向くと、想像よりも遥かに小柄で可愛らしい女性がにこやかな笑顔を向けてこちらを見ていた。

 え!?お、女の人だったの…?

 

 

 

「はい。大変元気があってよろしいですね♪ こちらこそ今日からよろしくお願いしむす♪」

 

 

 い、イジられたぁぁぁ! やめてくれぇぇ!これ以上俺の心を抉らないでくれ!!

 

 千川さんはニコニコと笑いながら俺の傷を抉る。

 

 もうダメだ……きっとこの後「今日面接に来たやつがさぁ〜? めちゃくちゃアガってて面白かったわ〜」とか笑い者にされるんだ……

 

 

 

 

「ふふっ、少しは緊張がほぐれたんじゃないですか?」

「……えっ?」

「遠くから見ただけでも表情が強張って見えたので、緊張しているのかと……どうですか?少しは落ち着きました?」

「あ、はい」

 

 

 え?この人俺の緊張をほぐすために…俺に気遣ってくれたの…?めちゃくちゃいい人じゃん……やばい、千川さんまじ天使……

 

 

「それでは空いている部屋で面接を行いましょうか。ついてきてください」

「よろしくお願いしましゅ!」

 

 

 あ、また噛んだ。

 

 

「…クスクス」フフッ

 

 

 千川さんめっちゃわらってるし…恥ずかしい…お家帰りたい…

 

 

 〜〜〜〜

 

 

 そんな恥ずかしい思いを抱えながら俺は千川さんの後をついて行く。あんなに醜態を晒したからだろうか、いつの間にか胸の鼓動はいつも通りに落ち着いていた。いい意味で吹っ切れている。

 

 千川さん、めちゃくちゃ可愛いし優しい人だけど……ただ一つ気になるのはなんであんな蛍光色のスーツを着ているんだろう。いやまぁ似合っているんだけど。

 

 

 

 

「それではこちらにどうぞ」

「失礼します!」

 

 

 い、いよいよ始まる…

 

 

「今からいくつかお話を伺いますが、あまり固くならずにリラックスしてくださいね♪ 私と雑談するぐらいの感覚で大丈夫です!」

「わ、わかりました!」

「それでは履歴書を見せていただいてもよろしいですか?」

「はい。お願いします!」

 

 

 千川さんは受け取った履歴書をじーっと見つめている。先ほどまでの柔らかい雰囲気とは違い真剣な顔つきだ。

 

  何というかギャップを感じる…これがデキる女という奴だろうか。

 

 

 

「年齢は18歳、今年から大学生なんですね… シフトのことなんですけど、バイトに来れない日ってあったりしますか?」

「いえ、基本的には特定の曜日がダメってことはないです。土日でも時間があれば入れます」

「なるほど……あ、免許は持っているんですね。 もしかしたら送迎を任せることもあるのでこれは助かります」

 

 

 め、免許取っておいてよかった……合宿頑張った甲斐があったよ。

 

 

「あら、中高と男子校だったんですね〜 」

「あ、はい。なので女性と会話し慣れてないので少し緊張します…」

「もしかして先ほどから緊張していたのって」

「あ、いえそれは違います! 単純に会社の規模にビビっていたというかなんというか……あ、でも千川さんとお話しするのも少し緊張してます……」

「ふふっ、素直で可愛らしい人なんですね」

 

 

 その後も千川さんの質問に応えていく時間が続く。

 

 ついテンパってよくわからんこと言ってないか俺。大丈夫かな?

 

 

「はい、大体のことはわかりました。白石くん」

「はい」

「採用です♪」

「え!? ほ、本当ですか!」

「本当ですよ♪」

「う、嬉しいですけど……後日に連絡がきたりするものかと思ってました……」

 

 

 面接の結果はまさかの合格。流石にこの結果には驚きを隠せない。俺のイメージだと今日はこのまま帰って数日後に合否の連絡が来たりするものだと思っていたからだ。

 

 

「今回のアルバイト採用の是非は、部長さんに私が全て任されていますからね。私が白石くんの人柄は問題ないと判断しました」

「あ、ありがとうございます!」

「いえいえ、それではお仕事の具体的な内容についてお話をしていきますね」

 

 

 ど、どうしよう。めちゃくちゃ嬉しい……とは言え大事なのは受かった後だよな。しっかりと仕事をするために今は気持ちを切り替えて真面目に話を聞こう。

 

 

「ホームページにも載っていたように、白石くんには主に、簡単な雑務をしてもらおうと思っています」

「はい!」

「シフトが入った当日、白石くんの携帯にその日やってほしい仕事や追加でお願いしたい仕事を送信するので、その日のバイト終了時間までひたすらそこに載っている仕事をこなしてもらうことになると思います」

「わかりました」

「今伝える事としては大体はそんな感じなんですけど……あ、あと白石くんには主にアイドル部門のお手伝いをしてもらうことが多くなると思います」

「あ、アイドル部門ですか?」

 

 

 えっ……それって昨日調べた本田未央さんやそれ以外の可愛い女の子たちがいる部門だよな。

 

 

「はい、アイドル部門は我が社の中では比較的若い部門ではありますけど、最近はメキメキと実績を伸ばしている期待の大きい部門なんです。ただやはり他所の部門に比べると新設なので人手不足になることがありまして……白石くんには是非そのお手伝いをと」

「な、なるほど」

「白石くんは女性と話すのがあまり得意ではないんですよね?ウチに所属しているアイドルの皆さんは年齢層がすごく広く個性的な子が多いですが、みんなとてもいい子たちなので安心してください♪」

「は、はい……!」

 

 

 確かに、昨日会った本田未央さんも、さっき会話した城ヶ崎さんもすごくいい人たちだったな。千川さんの言っていることは本当のことなんだろう。

 

 

「どうですか?白石くん。何か質問などは」

「……今のところは特にないですね」

「ではこれで面接は終了です! これから一緒に頑張りましょうね♪」

「はい!よろしくお願いします!」

 

 

 こうして俺のアルバイトは芸能事務所の雑用に決まった。色々と不安はあるが千川さんはいい人だったし、家からも近いし、時給もいいし、 とりあえずいいバイトを見つけられたってことにしておこう。

 

 しっかりとバイトをして、しっかりと金を稼いで、充実した大学生生活を過ごすぞ……!

 

 

 

 





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