346プロの雑用バイト君   作:焼肉定食

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27話 苦手な物はどう足掻いても苦手

 

 

「ふぅ……疲れたぁ〜」

 

 

 今日もバイトを終えた俺は事務所の敷地内でため息を吐きながらゆっくり歩く。

 

 最近は大学の課題として出題されたレポートを、夜更かしして進めているので体に結構疲れが溜まっている。

 今日も家に帰ったらレポートを進めないといけないんだと思うと、どんよりとした気持ちになってしまうのは仕方のないことだろう。

 

 

 

「むむむむ……」

「ん?」

 

 

 声のする方へと顔を向けると、奇妙な声を出しながらスプーンに念を送るような仕草をしている女の子がいる。

 

 あの子は確か……エスパーユッコか。ああやって普段からサイキックの練習をしているのだろうか。

 

 

「むむむむっ…!」

「………」

 

 

 集中しているようだしこのまま立ち去るとしよう。俺も今日は帰ったらレポートやらなきゃいけないし。

 

 心の中でユッコに対してエールを送り、俺はその場から早々に立ち去る。

 

 

 

「むむっ! こっちの方から困っている人の気配を感じます!」

「えっ?」

「おや? アナタは白石さんじゃないですか! お久しぶりです!」

「ひ、久しぶり……」

 

 

 何かを感じ取ったのか、ものすごい勢いでこっちに向かって走ってきた彼女に挨拶をされる。 あまりの唐突さと勢いに少し戸惑う。

 

 

 

「白石さん!何か困っていることがあるんじゃないでしょうか!?」

「えっ……何で?」

「私のサイキックでそれを感知しましたから!」

「さっき1人で唸ってたのはそれを感じ取ってたってこと?」

「ええっ!?見ていたのなら声をかけてくださればよかったのに!」

「いや……邪魔しちゃ悪いと思ってさ」

 

 

 本当は早く帰ろうと思ってたのがほとんどなんだけどね。

 

 

「誰か困ってる人を探してるの?」

「いえ! 困っている人なんていないに越したことはないんですけど、私実はさいきっく同好会に所属しておりまして、その活動の一環でさいきっく・人助けをしているんですよ!」

「さ、さいきっく同好会……?」

 

 

 なんて怪しげな会に所属しているんだ……

 

 でも同好会の名前はともかく、人助けを活動の一環にしているっていうことは悪い会とかではないんだろう。

 

 

 

「困っている人を笑顔にするのは、サイキッカーとしてもアイドルとしても私の目標ですからね!」

「……」

 

 

 ……め、めちゃくちゃいい子じゃん…

 

 

「すごいね」

「はい?」

「いや……素直に感心したよ。優しいんだなユッコは」

「えっへん!」フンス

 

 

 ドヤ顔で胸を張るユッコ。なんだか無性に頭を撫でてあげたくなるな。

 

 

「むむっ! あっちの方から私の助けを呼ぶ声が聞こえてきます……行きますよ白石さん!」

「えっ…ちょ、何で俺まで…!」

「サイキックテレポート!」

「ふ、普通に走ってるだけじゃないか!」

 

 

 俺の目の前で急に走り出すユッコ。あまりの勢いに釣られて俺もその後を追いかけていく。

 

 

 

 〜〜〜〜

 

 

 

「着きました! この中からです! 助けを呼ぶ声が聞こえてきます!」

「ここって……女子寮じゃん…」

「では行きますよ!」

「ちょ、ちょい待って! 俺はここで待ってるからさ」

「何故です…?」ポカ-ン

「いやダメだろ普通に……部外者のましてや男の俺が女子寮になんて入ったら」

「お客さんとして歓迎しますよ!」

「と、とにかく……俺はここで待ってるからちゃっちゃと行ってきてくれ」

「むむむ……仕方ないですね…」

 

 

 またしても、もごもごと唸りながらユッコは女子寮の中へと入っていった。

 

 

「……ていうか俺、律儀に待つ必要あるのかな…?」

 

 

 まぁ待つと言ってしまった以上帰るわけにもいくまい。 スマホで少しでもレポートの役に立ちそうな文献でも探して……

 

 

 

「た、大変!大変ですよ白石さん!!」

「ど、どうした…!?」ビクッ

 

 

 思いの外早く帰ってきたユッコが大声を出しながら俺の腕を引っ張る。

 

 

「じょ、女子寮に侵入者が…! 今中の皆んなが襲われてて…!」

「な、なんだって…!?」

「と、とにかく白石さんの力が必要です!今すぐきてください!」

「……わかった!」

 

 

 鬼気迫るユッコの態度を見るに、どうやら女子寮の中はただならぬ状態になっているらしい。

 俺はユッコと2人で急いで女子寮の中へと走っていく。

 

 

「こっちです! こっち!」

「うん!」

 

 

 キャ-! キャ-! キャ-!

 

 

「こ、この声は…!?」

「皆んなが襲われているんです…!早く助けてあげなければ…!」

 

 

 寮の奥からは甲高い女の子たちの悲鳴が轟く。

 全速力で走りリビングのような共有スペースへと俺とユッコは飛び込んだ。

 

 

「皆さん!今助っ人を連れてきましたよ!」

「はぁ……はぁ……ふ、不審者は…!」

 

 

 部屋の中では数人の女の子が、部屋の隅に固まり体を小さく縮めてきゃーきゃーと騒いでいる。

 

 あれ……?見たところ女の子たち以外は誰もいないんだけど……

 

 

「ユッコ、侵入者って……?」

「あれです…!」ビシッ

 

 

 ユッコの指が差す方向へと目を向けると……白く清潔感溢れる女子寮の壁に、触覚を揺らしながらテカテカと黒光りする大きな体を動かすアイツがいた。

 

 ゴキブr……いや、Gがそこには存在していた。 それも超特大のGだ……

 

 

 あっ……侵入者ってアレかぁ……

 

 

 

「あ、危ないですよ皆さん!」

 

 

 ユッコがそう叫ぶと同時に、Gが壁から羽ばたいて女の子たちの方へと近づいていく。

 そして女の子たちは悲鳴を上げながら、部屋の中を走り回って逃げ回る。

 

 

 

「わ〜っ!! こ、こっち来ないで〜!」

「み、美穂はん…!押さんといて〜! うちアレだけはほんまに無理や…! 響子はん、なんとかしてや〜!」

「うぇっ!? さ、紗枝ちゃんちょっと押さないで……! わ、私もアレは無理ですって…!」

 

 

「美穂ちゃん!紗枝ちゃん!響子ちゃん!こっちに来てください!」

「ゆ、裕子ちゃん…!」

「安心してください!助っ人を連れてきましたので!」

 

 

 女の子3人は泣きそうな顔でこっちに向かって走ってきて俺の後ろに隠れる。 ちなみに意気揚々と大きな声を出しているユッコも俺を盾にしている。

 

 

「ゆ、裕子はん、この方は……」

「私のお知り合いなので安心してください!

さぁ白石さん! あの壁にひっついてるのを何とかしてください!」

 

 

 振り向くとユッコと名も知らない女の子3人が俺に期待の眼差しを向けている。

 

 ふっ……そんな目で見られちゃ男としてやる気を出さない訳にはいかないな。俺もアルバイトとは言え一応346に所属する者、それならば346のアイドルたちを守るのも俺の仕事の一つ…!

 

 

「さぁ白石さん! お願いします!」

 

 

 ユッコがビシッとGの方へと指を差す。それに応えるように俺も口から声を出した。

 

 

 

「ごめん、無理」

 

 

 

 

 ・・・・・・

 

 

 

 

「はぇ?」

「いやだから、無理…」

「無理……とは?」

「ゴキブリ……俺も無理なんだ」

 

 

 

 俺たちのいるこの空間に静寂が訪れる。

 

 ユッコはぽかんとした顔を浮かべて何が何だかよくわかっていないようだ。他の3人もさっきまできゃーきゃー騒いでいたのに、急にクールダウンしたような様子で俺を見つめている。

 

 

 

「ま、マジですか…?」

「うん……マジで」

「マジのマジですか…?」

「マジのマジだよ……視界にも入れたくない」

 

 

 

 ・・・・・・

 

 

 

「ど、どどどどうするんですか!? 白石さん何とかしてくださいよ!」

「む、むむむ無理だってば! だって気持ち悪いじゃん!」

「こ、こういうのは男子の出番ですよ!!」

「Gが嫌いなのに男子と女子も関係ないだろぉ!?」

 

 

 グイグイと俺の背中を押すユッコに対抗して俺も力を込める。

 

 くっそ…!こいつめちゃくちゃ力強いな…!

 

 

 そんな俺とユッコの不毛な争いを見つめていたアホ毛の女の子が大きな声で叫ぶ。

 

 

 

「あっ! どっか飛んでいくよ!」

「ま、まさか……こっちに来るんとちゃうやろなぁ……」

「し、白石さんどうしますか!?」

「くっ……と、とりあえず他の部屋に飛んで行かないように廊下へと繋がる扉を全部閉めて、外へと繋がる窓だけを開けよう!もしかしたら勝手に出て行ってくれるかもしれないし!」

「わっ! こ、こっち来ましたよ!!」

 

 

 全員で情けない悲鳴をあげながら部屋の中を走り回る。

 しばらく走り続けた後にGが壁にとまったのを確認して、俺たちは全員その場に膝をつく。

 

 

 

「はぁ……はぁ……ど、どうしよう…」

「なんだか……全然自分から出て行く気配がないですね……」

 

 アホ毛の子とサイドテールの子が息を切らしながら言う。

 

 

「やっぱり捕まえるしかないんじゃないですか…?」

「そうは言ってもな……どうやって飛び回るアイツを…?」

「一応あそこに虫とり網はあるんやけど……」

 

 

 着物の子はそう言って指を差す。確かにそこには大きな虫とり網がある。

 

 

「さっき捕まえようおもて倉庫から持ってきたんやけど……」

「誰が捕まえに行くかで揉めてたんですよ…」

 

 

 なるほど……確かに、いくら虫とり網があってもGに近づくのは嫌だよな。

 

 

「……」ジ-

「……ん?」

 

 

 女子4人が俺のことをジッと見つめてくる。

 

 あぁなるほど……何となく言いたいことはわかったよ。

 

 

 

「嫌だからね」

「そこを何とか! 白石さんが1番適任です!」

「ど、どういう意味…?」

「白石さんはこの中で1番背も高くリーチがあるので、1番遠くから網で捕まえることができるじゃないですか!」

「そ、それはまぁ……そうだけど……」

「ですよね皆さん! 白石さんが適任ですよね!?」

 

 

 ユッコが語りかけると女の子3人はウンウンと強く首を縦に振る。

 

 

 

「頑張ってください!」

「わ、私たちはここで見守っていますよ!」

「ここで捕まえたらかっこええで〜」

「うっ……」

 

 

 じょ、女子からの声援……なんて胸が高まるんだろう。これがあれば大抵のことは喜んでやるけど、やっぱりGはなぁ……!

 

 

 

「何かやけに騒がしいけどどうかしたの〜?」

 

 

「えっ?」

「周子はん!?」

「どしたん? みんなでそんなとこ座って……

うわゴキブリやん、でっか〜」

 

 

 突然部屋の中に入ってきた塩見さんが、いつも通りの飄々とした態度でGの方を指差す。

 

 

「し、塩見さん……」

「あれ?何で女子寮の中に白石くんおるん?」

「そ、それより周子さん! 周子さんはゴキブリは平気なんですか!?」

「やっほ〜ユッコちゃん。ゴキブリは気持ち悪いし普通に無理だよ〜ん」

「そ、そうですか……」

 

 

 項垂れるユッコ。俺も内心で落ち込む。もしかしたら塩見さんがGを退治してくれるんじゃないかなんて、俺の淡い期待はいとも簡単に崩れ去った。

 

 

「ふむふむ……大体読めたかな〜。よしっ!

白石くん頑張れ〜♪ あたしもここで応援してるから〜」

「いや……俺もGは無理なんだって…!」

「え〜……そこは男子が頑張んないと〜」

「Gが嫌いなのに男子も女子と関係ない……

って、さっきもこの流れになったぞ……」

 

 

 結局誰もG相手に向かっていくことはなく、部屋の隅で黒光りするアイツを眺めている。

 

 

 

「どうしましょうか……」

「う〜ん、こうなったら白石くんにやる気を出させるしかないかな〜」

「そないなことができるんどすか…?」

「まぁね〜ん♪ おーい白石く〜ん」ニコニコ

「……お、俺はやらないからね」

「まぁまぁ〜、そう言わんとさ〜」

「な、何を言われようと俺は……!」

 

 

「もしやってくれたら……紗枝はんがほっぺにちゅーしてくれるって〜♪」ニコニコ

「……えっ?」

「しゅ、周子はん…!?」

 

 

 え……今なんて……? ほっぺにちゅー?

 いや待てそんなに美味い話、というかそもそも紗枝はんって誰だ…? あの着物の女の子か……?

 

 

「そ、そんな見られても……うちやらへんからな!」

「え〜、じゃあ美穂ちゃんが」

「わ、私…!? えーっと……ご、ごめんなさい!」

「じゃあ響子ちゃんが……」

「わ、私も……ご、ごめんなさい!」

「じゃあユッコちゃんが……」

「さ、サイキックバリアー……」

「ありゃりゃ」

 

 

 も、もうやめてくれ…!

  俺は何にも言ってないのに、とてつもないスピードで心に大きな傷を負ってるんですけど…!

 

 

「……」チ-ン

 

 

「周子はんが変なこと言いはるから、えらいダメージ受けてはるわ」

「うーん……しょうがないなぁ。じゃあ、あたしがちゅーくらいならしてあげてもええよ」

「えっ……?」

「ちょ、ちょっと周子はん……!」

「まぁまぁ〜 白石くんがゴキブリ捕まえてくれたらの話だけどね〜」

「ま、マジ……?」

「まじまじ〜♪」

 

 

 ま、マジか……こんなことあっていいのか?いやこれはきっと俺にGを退治させるための嘘に違いない。 そうだ、こんな美味しい展開があるわけないんだ……

 

 いやでも塩見さんがマジで言ってたら…?

こんな展開をみすみす逃していいのか!?

 

 

 

「な、なんかすっごく葛藤してるね…響子ちゃん」

「あはは……」

「白石さんはムッツリスケベという奴ですね」

 

 

 

 

「よし、じゃあ……G捕まえてくる」キリッ

 

 

 おぉ〜っ! という声が女子たちから上がる。

 

 

 

「さっきまであんなに嫌がってたのに……」

「はい……見事な変わりようですね…」

「ほんま……男子って助平やわぁ……」

「さ、サイキックスケベ……」

「白石くんおもろいな〜」クスクス

 

 

「ちょっとそこ…! 俺は決してキスなんぞに釣られたわけじゃないからね…!」

「違うん?」

「こ、このままじゃ埒があかないからね…!

そろそろ奴を葬り去る必要があるから!」

 

 

 俺は虫とり網を強く握ってGにジリジリと近づいていく。 体中に緊張感が走り、じわじわと額に汗が浮かぶ。

 

 それは後ろの女子勢も同じようで、俺の行動を何も言わずにジッと見つめている。

 

 

 

「…………そこだっ…!」

 

 

 ガバッ…!

 

 

「「「「おぉっ!」」」」

 

 

 獲った…! この勝負俺の勝ちだ…!

 

 

「うぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 俺はそのまま開いている窓へ向かって駆け出し、外に出ると虫とり網を勢いよく振り回した。

 

 すると網の中からGが飛び出して、気色の悪い羽音を響かせながら遥か遠くへと飛び立っていった。

 

 

 はぁ……めっちゃ神経使った……

 

 

 

「終わったよ〜」

「ど、どうなりましたか!?」

「うん、どっか飛んでいったよ」

「そうですか!そうですか!」

 

 

 嬉しそうにはしゃぐユッコの後ろで、塩見さん以外の女子3人は全身から力が抜けたように膝をつく。

 

 さっきから俺と同じで……いや、俺よりずっと神経を使っていたんだろう。

 

 

 

「お疲れ〜」

「あ、うん……どうも」

「いや〜、これで女子寮に平和が訪れたね〜」

「そ、そうだね……あはは」

「ん〜? どうかしたん? しゅーこちゃんに何か言いたいことでもあるのかな〜?」

「い、いや〜……さ、さっきの話って本当なのかなぁ〜って」

「あ、ほっぺにちゅーの話? ごめんね〜 やっぱりそれは無しで〜」

「えぇっ…!?」

 

 

 ま、まぁ……正直を言うと冗談なんだろうなっていう気持ちはあったけど……

 

 少しだけ、もしかしたら本当なんじゃないかとか思ってただけにショックは隠しきれない…

 

 

 

 

「……あれ? そういえばみんなはどこ行ったんだろう」

「今、白石くんが落ち込んでる間に台所に行ったよ」

「台所…?」

「元々みんなでお菓子作りしてるところにゴキブリが出たんだってさ〜 道具出しっぱなしだから片付けしてくるって、ユッコちゃんも一緒に」

「そ、そうなんだ」

 

 

 お菓子作ってたらアイツが出てきたのか……

うっ……想像しただけでも気持ち悪いな。

 

 

 

「さてと……じゃあ頑張った白石くんにはご褒美をあげないとね〜」

「えっ……」

 

 

 急に塩見さんがこっちに近づいてきたから無意識に後退りをする。しかしすぐ後ろの壁に背中がぶつかり音を鳴らす。

 

 

 

「ご、ご褒美って……さ、さっきの話…?」

「そうそう。ほっぺにちゅーしてあげるって」

「えぇっ…!? じょ、冗談だったんじゃないの……!?」

「冗談なんかじゃないよ〜。一度約束しちゃったんだしそこはしっかりしないと……あたしが嘘ついた悪い女みたいになっちゃうやん?」

「だ、だってさっき……やっぱり無しって言ってなかった…?」

「それは皆んな部屋にいたからさ……流石に人前でやるようなもんじゃないし。今ならここにいるのはあたしらだけだから」

 

 

 塩見さんはガシッと肩を掴んで顔を近づけてくる。

 

 

 

「ちょ、ちょっとタンマ…! 俺まだ心の準備が…!」

「まぁまぁ〜、ちょっとした罰ゲームくらいの感じでいいじゃん」

「ま、待った…!やっぱりこういうのは……」

「あたしもちょっとだけ恥ずかしいんやからさ、ちゃっちゃと済ますよ……」

「ま、マジ……?」

 

 

 

 ま、マジなのか……マジで今からほっぺにキスされるのか…?

 

 や、やばい……心臓がバクバク言っててもう何がなんだかわからない……!

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……ユッコちゃんが手伝ってくれたからすぐ終わりました〜」

「私にかかればあの程度お茶の子さいさいですよ!」

「って……ど、どうしたんですか…?」

「むむっ! 白石さん、どうして床に倒れ込んでいるんですか?」

 

 

「は、ははは……ちょっと転んじゃってさ」

 

 

 

 あ、あっぶな〜! もうちょっとで皆んなに見られるところだったぞ……!

 

 塩見さんの唇が頬に触れる寸前に足音が聞こえてきたから、咄嗟に床に伏せてよかった〜

 

 

 

「ふぅ……」

「いや〜、もうちょっとで皆んなに見られちゃうとこだったね〜 危ない危ない……」

「そ、そうだね……」

「で、続きはどうする…?」

「……も、もう充分ご褒美にはなったから…大丈夫だよ」

「そう?」

 

 

「2人で何をコソコソ話しているんですか?」

 

 

「な、なんでもないよ!」

「そうそう、何にもないよ〜」

 

 

 はぁ……何か色んな意味でドキドキしたな。

 

 

 

 〜〜〜〜

 

 

 

 

 その後は今更ながら3人の女の子と自己紹介を交わした。

 

 アホ毛の女の子は小日向美穂さん、サイドテールの女の子は五十嵐響子さん、そして着物の女の子は小早川紗枝さんと言うらしい。

 

 共に窮地をくぐり抜けたからだろうか俺たちの間には友情のような物が芽生えており、今は3人が作っていたというお菓子を食べながらお茶していたんだけど……

 

 

 

「よく考えたらさ……俺って早く出て行った方がいいよね?」

「どうしてですか?」

「だってここ女子寮だし……緊急事態だって言われたから入ってきたけどやっぱり良くないと思うし」

「私たちは気にしませんよ?」

「白石はんはごきぶりを退治してくれた英雄やからな〜 ゆっくりしていっておくれやす」

「え、英雄だなんてよしてよ……むず痒い」

「ふふっ」

「……でもやっぱりもう行くよ。あんまり長居してもね」

 

 

 というより……やっぱり女子寮の中で女の子たちに囲まれているというこの状況は落ち着かない。

 

 

 そして女子寮の入り口まで来てくれた皆んなに向かって手を振る。

 

 

「白石さん! またさいきっく同好会の活動を一緒にしましょうね!」

「きょ、今日はありがとうございました…!」

「今度は寮でご飯でも食べて行ってくださいね〜」

「白石はん、今日はおおきに〜」

「またね〜ん」

 

 

 皆んなそれぞれ挨拶をしてくれる。 なんか……あったかいなぁ。 大嫌いなGを退治した甲斐があったよ。

 

 

 

 女子寮から出て1人自宅への道を歩き続ける。

 

 仲のいい友達たちと一緒に寮生活かぁ……何かそういうの憧れるなぁ。

 

 

 って……何か俺は忘れてるような……

 

 

「あっ……今日は帰ってレポートやるつもりだったんだ」

 

 

 すっかり忘れていた……

 

 楽しかった気持ちは一瞬にして吹き飛び、どんよりとした気持ちを抱えながら、俺は1人でトボトボと帰路に着いたのだった……

 

 




 閲覧してくださった皆様、いつもありがとうございます。

 この小説を投稿してから早くも半年が過ぎ話数も30に近づいてきました。
 ここまで続けてこられたのはいつも閲覧してくださる皆様のおかげです。本当に感謝しています。

 話は変わりますが、そろそろこの小説を今後どうしていくかを考え始めています。 このままのんびりと普通に続けていくのもいいですし、数人のキャラとの個別的な話を発展させていくのを書くのも面白そうだなと思っています。それかそろそろ終わりにするかなど、本当に色々な選択肢を考えています。

 とりあえずは30話くらいまでは今後の選択を抜きに、このまま普通に投稿をする予定なので今後もよろしくお願い致します。

 最後に、今回も閲覧ありがとうございました。
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