346プロの雑用バイト君 作:焼肉定食
「俺、渋谷さんのこと好きだよ」
「……えっ」
あっ……言っちゃった。
、、、、、
う、うぉぉぉぉ〜〜っっ!! や、やっちまったぁぁぁぁ〜〜っっ!!
本当はもっとムード作ってから言おうとか考えてたのに!!
告白のセリフも1週間前から考えて10通りは考えてきたのに〜〜っっ!!
それなのに……こんなつい口からポロッと。みたいな感じで言ってしまったぁぁ〜〜っ!!
「あ……し、渋谷さん! い、今のは……!」
「……い、今のって」
「う、うん……?」
「今のって……本気…?」
渋谷さんは潤んだ瞳で……頬をほんのり赤く染めて俺に問いかける。
……少し予定とは違ったけど、
……俺の気持ちは嘘なんかじゃない。
「……ほ、本気だよ。冗談なんかじゃない」
「……そっか」
渋谷さんはそう小さく呟くと、俺から顔を隠すように下を向いてしまった。
綺麗な長い髪の毛に隠れて顔が全く見えない……こ、これってどういう反応なんだろう。
とにかく俺は渋谷さんの返事を待つしかない。そのまま渋谷さんのことを固唾を飲んで見守る。
「……いって」
「えっ?」
「もう一回……ちゃんと言って。そしたら、返事してあげる……」
「……わかった」
渋谷さんは俺の突然の告白にやり直しのチャンスをくれたのかもしれない。
……俺は一度大きく息を吸って吐く。
そして膝の上に置いてある渋谷さんの手を取り、その潤んだ瞳をしっかりと見つめて気持ちをぶつける。
「俺、本当に渋谷さんのことが好きだ。もちろん1人の女の子として。だから……俺の恋人になってほしい」
「っ……」
言った。
頭の中は真っ白で今にでも顔が真っ赤になってしまいそうだ。でも今はそんなことを言っていられない。
しっかりと渋谷さんの方へと顔を向けて返事を待つ。
「うん、私も……好き」
「……えっ!?」
「私もアンタのこと……白石のこと好き…」
「じゃ、じゃあ!」
「……」コクリ
俺の確認に渋谷さんは小さく頷いた。
「私を……アンタの恋人にしてくれる?」
「も、もちろん! もちろんだよ…!」
「ふふっ、そっか……嬉しい」
白石幸輝18歳、決死の覚悟で臨んだ告白の返事はまさかのオーケー。
なんてこった……嬉しすぎて死んでしまいそうだ! いや、こんな幸せの絶頂期に死ぬ訳にはいかないんだけど……!
と、とにかく!嬉しすぎて頭がおかしくなりそうだ…!
「じゃ、じゃあ……俺と渋谷さんは、今この瞬間から恋人ってことだよね…?」
「……う、うん」
「ッッ〜〜!! よ、よっしゃぁぁ!」
「ちょ、ちょっと……声が大きいって…!」
いやそうは言われても! 告白が成功したまさに今、声を抑えて喜ぶなんて事俺には出来る訳がないよ!
本当なら床を転げ回りたいくらい嬉しいけど、流石に渋谷さんの目の前でそれはしない。ていうか外だし……
「し、渋谷さん……」
「凛」
「えっ?」
「名前で呼んでよ。恋人なんだから……」
「……り、凛……さん」
「ん」
「じゃ、じゃあ俺のことも名前で」
「……そ、それは追々」
そう言うと渋谷さ……凛さんはプイッとそっぽを向いてしまった。
俺も名前で呼んでみてほしかったけど、今はそんな些細なことはどうでもいい。
なんてったって俺は凛さんと付き合うことができるのだから。そんな事は凛さんの言った通り追々でいいと思う。
「ね、ねぇ……渋谷さ……凛、さん」
「ん?」
「だ、抱きしめたりしても……いい…かな?」
「……そういうのは別にわざわざ聞かなくてもいいよ」
そう言って凛さんは両手を広げる。
俺もそれに応じるようにゆっくりと手を広げて、吸い込まれるように凛さんの背中へと手を回す。
ギュッ……
「っ……」
「ん……っ」
……幸せだ。
俺と渋谷さんの距離は0になり体を密着させる。少し冷えた凛さんの体温と甘い香りが俺の体に伝わってきた。
俺の背中に手を回している凛さんが力を込めてきたので、俺も少しだけ力を強めて返事をすると、それに反応してさらに凛さんは腕の力を強める。
ハグするとオキトキシンとかいうホルモンが分泌されて、癒しや安らぎ、それに幸福度なんかが得られるとか聞いたことあったけど……
……なるほどね、コレは確かに……すごい。
実際の時間としては1分間程ハグしていただろうか? それなのに永遠にも感じた幸せの時間に終わりを告げて体を離す。
そして再び顔を見つめ合っていると、凛さんが瞳を閉じて唇を突き出した。
……よく鈍いとか言われる流石の俺でも、この行動の意味が分からない訳がない。
俺は一度大きく深呼吸をして呼吸を整える。
そして俺は震える体と心をなんとか抑えながら、凛さんの顔へと自分の顔を近づけた……
〜〜〜〜〜
あれから数十分後、俺と渋谷さんは寒空の下を歩きながら凛さんの家を目指していた。
数時間前までは繋がれていなかった2つの手が、今では固く固く繋がれている。
「……もっと一緒にいたいんだけど」
「俺もだよ。でも今日は夜も遅いし……凛さんはまだ高校生だしね」
「アンタはいいの?」
「俺はもう18歳だからね。フッ」
「生意気」ギュッ
「いててっ」
その瞬間、手の甲に凛さんの爪が少しだけ食い込んだ。
何とか会話を繋げているが俺の頭の中は真っ白で、少し油断をすれば確実に放心状態になってじうだろう。
それに何か話していないと……さっきのアレを思い出してしまいそうになる。
「さっきの告白……すごい驚いた。でもそれ以上に嬉しかった」
「ほ、本当はもっと告白のパターンを考えていたんだ。1週間くらいかけてシチュエーションとかセリフとかをさ。まぁ結局アドリブみたいな感じになっちゃったんだけどね。あはは…」
「でもそれって暗記したセリフじゃなくて本当の気持ちってことでしょ……嬉しいよ」
「しぶ……凛さん」
気を抜くとすぐに渋谷さんって呼んでしまいそうだ。まぁ今までずっとそう呼んできたんだし仕方ない部分もあるけど……俺も追々慣れていかなきゃな。
「それにその考えたセリフはまた今度聞かせてもらえばいいし」ニヤリ
「えぇっ!?」
「アンタがどんなクサいセリフを考えてきたのか聞きたいしね」
「そ、それは勘弁して欲しいかな〜……なんて」
「だーめ。ふふっ」
そんな事を話していると、凛さんの家がすぐそこまで近づいてきた。
……今日はここでお別れか。寂しいな。
「んっ……」
「え?」
「んっ…!」
「あ、あぁ…! そういうことか」
寂しいと思っているのは凛さんも同じようで、再び俺を受け入れるように両手を広げてくれた。
ギュッ……
「……じゃあ、行くね」
「うん」
俺と凛さんの腕から力が抜ける。
凛さんは少し歩いて離れたところで振り返って俺を見る。
「……大好きだよ、幸輝」
「俺もだよ、凛さん」
そうして凛さんは家の中へと入っていった。
寂しい……さっきまではすごい幸せに包まれていたのに、途端に寂しさが俺を襲う。
「……ははっ」
贅沢な悩みだ……と思って笑みが溢れる。
確かに今は寂しい。けど明日になればまた凛さんに会える。
これから色々と問題はあるだろうけど、凛さんがいてくれるなら俺はどんなことでも頑張れる気がする。
「よしっ! 帰るか!」
俺は1人、家へと向かう。
これからの凛さんとの未来に、期待と希望を抱きながら歩き出した……。