346プロの雑用バイト君   作:焼肉定食

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side yumi

 

 白石くんのお見舞いを終えた後、私はロボットのようにぽけーっとした表情で街を歩く。そして気がつけばこの前白石くんと2人でお茶をした行きつけのカフェへと入っていた。

 

 

 カラ-ン

 

 

「いらっしゃいませ……あ、夕美ちゃん」

「………」

「あれ?」

 

 

 私は何も考えずにいつも座るお気に入りの席へと腰をかけた。そして注文をするよりも先にテーブルの上へと顔を突っ伏す。

 

 

「う゛〜〜っっ!!!」ジタバタ

 

 

 とても人には聞かせられないような汚い呻き声を出しながら、足をテーブルの下でジタバタと動かす。

 

 

「〜〜〜ッッ!!」ジタバタ

 

 

 あーもうっ! 何してんの!何してんの!何してんの私〜っ!

 

 

 私がこんな事になっているのは、さっきまでいた白石くんの病室での出来事が原因だ。

 

 ちょっとしたハプニングで男の子と体を密着させてしまった。しかもその後は至近距離で見つめ合って変な雰囲気に……

 

 

 あ、あんなの……まるで恋人の距離感だよ。

 

 

 

「も゛〜〜〜っっっ!!!」バタバタ

 

 

 顔が熱い。いや、顔だけじゃなくて体全体がポカポカと熱を持っている。

 

 

「こんにちは夕美ちゃん。何か……あったのかしら?」

「あっ、店長さん……ごめんなさい。うるさくしちゃって」

「いいのよ、今は夕美ちゃん以外にお客さんいないから」

 

 

 ニコりと素敵な笑顔を浮かべながら私に話しかけてきたこの美人さんは、このカフェの店長である山崎さんだ。

 今日もいつも通りカジュアルなこのカフェのユニフォームを身に纏っている。

 

 

「で、どうかしたの? 何やら悶えてたみたいだけど」

「うっ……そ、それは」

「私でよければ話してみない? 一応これでも夕美ちゃんより10年長く生きてるからさ、何かアドバイスできるかも」

「て、店長さ〜ん……!」

 

 

 店長さんの優しさに思わず感動する。こういう大人の余裕が溢れている格好いい人に私もいつかはなれるんだろうか。

 

 

「じ、実は……その……わ、笑わないで聞いてくれますか…?」チラッ

「ふふっ、大丈夫よ。安心して話してみて」

「じゃ、じゃあ……」

 

 

 私はできるだけ包み隠さずに、さっき悶えていたことについての内容を店長さんに話す。

 

 

「実は……ちょ、ちょっとだけ仲のいい男の子がいて、この前までは普通に友達だと思ってたのに最近なんというか……ちょっとだけ変な感じというか」モジモジ

「変な感じって?」

「な、なんというか、変な空気感になっちゃったというか……変に意識しちゃったり」

「ふーん」

 

 

 うぅ……や、やっぱりこんなの変だよね。

 

 

「それってさ、この前一緒に来てたあの男の子かな?」

「………う、うん」

「そっかぁ。私から見た感じ結構お似合いっぽかったけど?」

「お、お似合いっ!? そういうんじゃないですからっ!」

「あらあら、照れちゃって」

「も、もぅ〜っ!」

 

 

 店長さんはニヤニヤと笑みを浮かべて私を揶揄っている。私はそんな店長さんに頬を膨らませて反撃をするが、向こうは気に求めずに微笑み続けている。

 

 

「そもそもあの男の子と夕美ちゃんってどういう関係なの? いやほら、友達は友達でも色々とあるでしょう?」

「えーっと、同じ大学の同級生で、仕事先が一緒で……あ、あと師匠と弟子みたいな関係でもあるのかも」

「えっ、何の師匠?」

「白石くんが彼女欲しいって言うから、そのお手伝いで恋愛のアドバイスとかを教えてあげてるんです!」

「ふーん、師匠として恋愛のアドバイスをしてたら、いつの間にか自分がその子のこと気になり始めちゃったんだ? 何か漫画みたいだ」

 

 

 教えてあげてるって言ってもまだ大した事はしてあげられて無いんだけどね……。

 これから色々とアドバイスしようと思ってた所に今回のハプニングだもん。

 

 

「それで? 夕美ちゃんはその……白石くん?

のことどう思ってるの? 正直な気持ちで」

「うーん……優しくていい人だけど、―普段はちょっとだけ頼りない感じかも。……でも」

「でも?」

「この前私がピンチの時に助けてくれたんですけど……そ、その時はちょっと格好良かったかも……うぅ〜っ! は、恥ずかしい……!」

「へぇ〜」

 

 

 い、一回格好良いって思っちゃった後から、それ以降ずっと意識しちゃってる……

 

 

「うーん、ここまでの話を聞いた感じだとね」

「な、なんですか?」

「夕美ちゃんはその白石くんが気になり始めてるってことだよね。好き!とまではいかないけどさ」

「……そう、なのかな……?」

 

 

 ……私、白石くんのこと気になってるのかな? それも男の子として……うぅ〜っ!

 

 

「その気持ちをはっきりさせるためにもさ、今後もうちょっと距離を縮めてみたらどう?」

「えっ!?」

「それでさ……あ、やっぱ好きとかじゃないや。ってなったらそれでいいし、やっぱりこの人が好き!ってなったらそのまま告白すればいいし」

「こ、こここここここくっ…!告白ぅ!?」

 

 

 そ、そんな告白なんて……! か、考えただけでも頭が爆発しちゃいそうだよ〜っ!

 

 

「まぁでも私が思うに……」チラッ

「な、なんですか?」

「……いーや、何でもないよ。

こういうのは自分で気付くもんだしね」ボソッ

 

 

 店長さんはニコッと笑うと小さな音量で何かを呟いた。私は首を傾げて何を言ったのか聞いてみたが教えてくれるつもりはないらしい。

 

 

「まっ、とにかくさ! その白石くん? ともっと色んな事をしてみなよ。一緒に出かけたり、お互いのことを知るためにもっと会話をしたりさぁ」

「……わ、わかりましたっ!」

「うんうん、そうすれば自分が相手をどう思っているのかその内分かるってもんよ」

「店長さんっ! ありがとうございます!」

 

 

 私がお礼を言うと店長さんは構わないと手をフリフリと振る。

 

 

 店長さんに話聞いてもらってよかったな。今の自分の気持ちを確認できたような気がして、ちょっとだけモヤモヤがスッキリしたかも。

 

 

 ……私は白石くんのことが、1人の男の子として気になり始めている。

 

 そうなれば今後私が取るべき行動は、もっと白石くんのことを知って自分の気持ちを明確にさせることだよね。

 

 

 

「よしっ、とりあえずは明日もお見舞いに行って……」

「ふふっ、いつもの夕美ちゃんらしく元気になってきたね」

「あっ! 店長さん本当にありがとうございます!」

「いいっていいって。私人の話聞くの好きだからさ」

 

 

 店長さんはそう言って柔かな微笑みを浮かべてくれた。

 

 よ〜し! 今日はいつも飲む紅茶に足して、ケーキも注文しちゃおっ!気合い入れないと!

 

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