346プロの雑用バイト君   作:焼肉定食

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side yumi

 

 事務所から出て猛スピードで走っていく。アイドルのレッスンをして鍛えられたスタミナがあればこのくらい全然へっちゃら。

 行き先は最近お気に入りのお花がたくさんある公園で、この前白石くんと一緒に水やりをしたあの場所だ。

 

 

「ふぅ……ついた」

 

 

 公園についたら空いているベンチに向かい腰をかける。 大好きなお花さんたちに囲まれながら一つ深呼吸……

 

 

「すぅ〜、はぁ……」

 

 

 とりあえず落ち着いたかな。じゃあ……気持ちの整理をはじめなきゃ。

 

 

「私、なんであんなにイライラしちゃったんだろう……」

 

 

 イライラしたのは白石くんが楽しそうに奈緒ちゃんと話してたから。あとすごく近かった。

 

 何で白石くんが女の子と楽しそうに話してるとイライラするのか。それは他の女の子に取られなくないから。

 

 何で他の女の子に取られたくないのか、それは……

 

 

 

 

「……好き、だから」ボソッ

 

 

 自然にスッと口からその言葉が出てきた。

 

 胸がバクバクと鳴ってうるさい、顔が熱い、額に汗がたらりと流れる。

 

 

 

「〜〜〜ッッ!!!」バタバタ

 

 

 は、恥ずかしいよ〜〜!!!

 

 ダメ! 今の私絶対顔真っ赤だ…!

 

 

 顔がゆでだこのように真っ赤の私が公園のベンチの上に1人座り、足をバタバタと動かして悶えている様子は側から見ればどう見ても不審者だろう。

 

 

「……好き、か」

 

 

 でもその答えは驚くほど簡単に自分の胸にスッと落ちた。

 

 そっか……私、恋してるんだ。

 

 

 これまで何度かアイドルとして可愛い恋愛ソングなんかを歌ってきたけど、今ならその歌詞に出てくる女の子の気持ちがよく分かる。

 

 彼のことを考えただけで逸る鼓動、火照る顔と体、早く彼に会って話したい。

 

 

 ……でも会ってどうしようか? いつも通り普通に話す? それともすぐに好きだと伝える?

 

 

 

「……相談に乗ってもらおうかな」

 

 

 そう呟いた私は足早に公園を飛び出してとある場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 〜〜〜〜

 

 

 カラ-ン

 

 

「いらっしゃいませ……あ、夕美ちゃん」

「こ、こんにちは〜、店長さん」

 

 

 私が訪れたのはお気に入りのカフェだ。扉を開けると綺麗な鈴の音と美人店長である山崎さんが私を出迎えてくれる。

 

 

「好きな席に座ってね。注文はいつもの紅茶かしら?」

「あ、はい。……」

「どうかした?」

「そ、その……実は、店長さんに少しお話を聞いてもらいたくて……大丈夫ですか?」

「あら、珍しいね。でもオッケーだよ! 見ての通り今お客さんいないし」ニコッ

「あ、ありがとうございます!」

 

 

 そういえばこの前2人きりでお話した時も私以外にお客さんいなかったっけ……ここのカフェ、大丈夫なのかな…?

 

 

 

「あっ、夕美ちゃん今このカフェいっつも客

いねーなーって思ったでしょ」

「えっ!? そ、そんなことないですよ…!」

「ふふっ、別にいいのよ。それにお客さんならちゃんと来てるから。偶々夕美ちゃんが来た前回と今回の時にお客さんがいないだけ。本当に偶々よ?」

 

 

 そう言って店長さんはニコリと優しく微笑んだ。

 でもその話を聞いて少しだけ安心した。だって私はここのカフェがお気に入りだから、もしお客さんが少なくて潰れるなんてことになったら困っちゃうもんね。

 

 

「今、紅茶持っていくから。先に座ってて」

「あ、はい」

 

 

 さて、どうしよっかな。私以外にお客さんはいないから席は選びたい放題だ。

 

 とか思いつつ私の足は結局いつも通りの席に向かっていた。そして席に座り待つこと数分、いい匂いを漂わせるティーカップを持った店長さんがやってきた。

 

 

「はい、お待たせしました」

「ありがとうございます。はぁ……いい香り」

「ふふっ、さてと……それじゃあ恋バナ始めよっか」

「こ、恋バナって……私、まだ相談の内容は言ってないんですけど……」

「言わなくても分かるよ。夕美ちゃんの顔見れば」

 

 

 顔……? どういうことだろう…?

 

 

「どうしてですか?」

「だって夕美ちゃん、恋する乙女の顔してるもん」クスッ

「っ……! そ、そんな顔してないですっ!」

「え〜? でも顔真っ赤だよ〜?」クスクス

 

 

 店長さんはクスクスと楽しそうに笑いながら私の顔を指差してくる。店長さんの言っていることは本気なのか冗談なのかよく分からない。

 

 

「それで? 相談内容は?」

「……す、好きな、人がいるんですけど…… 」

「なんだ、やっぱり恋する乙女じゃん」

「〜〜ッ!!」

「あー、ごめんごめん。もう揶揄わないから。ていうか夕美ちゃんわっかりやすいなぁ〜 顔が真っ赤だよ」

 

 だ、ダメだダメだ! しっかりしないと…!

このままじゃ話が進まないよ…!

 

 

「そ、それで……その、好きな人ができた後って……どうすればいいのかなって」

「一応確認しとくけどさ、その好きな人って例の白石くんなんだよね? 夕美ちゃんを身を挺して守ってくれたっていう」

「は、はい……」

「へぇ〜、かっこいいねぇ〜。王子様みたいだ」

「えっ? うーん、白石くんはあんまり王子様っていうタイプじゃないかも」アハハ

「ふーん、でも好きなんだ?」

「……は、はい」

「ふふっ、夕美ちゃん可愛いねぇ」

 

 

 店長さんは恋バナにテンションが上がっているのか、いつもよりキャピキャピとしているように見えた。

 

 ……絶対にこの状況を楽しんでるよ。

 

 

 

「うーんそうだねぇ……普通まずはお知り合いにならないとだけど、夕美ちゃんたちの場合はもうそれなりに仲良いんだよね?」

「は、はい……多分、それなりには」

「じゃあその辺の工程はすっ飛ばして大丈夫だね。となれば次はより深い仲になっていかないとなんだけど……」

「ど、どうすればいいんですか!」

「デートでもしてみれば?」

「で、デートォ!?」

 

 

 で、ででででデートって! アレだよね!?

ふ、2人きりで遊園地とか水族館なんかに行っちゃって、手繋いだりなんかしちゃったりするやつだよね!?

 

 

「あ、あわわわ……っ」

「おーい夕美ちゃーん、戻ってこーい」

「で、デートはまだ早いと思いますっ!

そういうのって普通は付き合ってからで!」

「えー? そんなことないよ〜? お付き合いする前にデートに行く男女もたくさんいるよ?」

「えっ……そ、そうなんですか?」

 

 

 で、デートってカップルになってから行くものだと思ってた……うぅ〜、私ってば現役の女子大生なのに何にも知らないんだなぁ……。

 

 

「じゃあまずはデートに行くことを目標にしよっか」

「は、はい…!」

「当然だけど2人きりだよ? 後はただ楽しむんじゃなくて、仲を深めるのも忘れちゃダメ」

「ど、どうやってですか?」

「うーん、そこはちょっと難しいとこだよね〜」

 

 

 そう言うと店長さんは腕を組んで目を瞑り考え込む姿勢になった。一応私も自分で考えてみるけど、これといったいい案は出てこない。

 

 

「手っ取り早いのは夕美ちゃんの"女"を意識させることだよね。色仕掛けとかさ」

「い、色仕掛け……」

「まぁでも、私から見ても夕美ちゃんはそういうのあんまり向いてなさそうだよね」

「わ、私そんなに色気ないかな……」ズ-ン

「あぁ! そうじゃないの! 夕美ちゃんに色気が足りて無いとかじゃなくて! 駆け引きとか、男を誘惑したり誑かしたりとか、そういうのするタイプじゃないでしょってこと」

「そ、それは確かに……」

 

 

 そ、そういう大人の女性みたいな行動は確かにできる自信無いかなぁ。

 

 ウチの事務所でそういうの得意そうなのは、礼子さんとか沙理奈さんとか……あ、あと奏ちゃんとかも詳しそう!

 

 ……って、奏ちゃんは私より年下だった。

 

 

 

「男ってのは基本的に色仕掛けには弱い生き物だからねぇ。まぁ胸でも揉ませちゃえばコロッと落ちるよ」ニヤニヤ

「む、胸っ……!?」

「まっ、流石に冗談だけどね〜」

「……」

「夕美ちゃん?」

 

 

 店長さんの言葉を聞いた途端に私はあの出来事を思い出してしまった。

 事故とはいえガッチリと白石くんの大きな掌で胸を掴まれてしまったことを思い出す。

 

 

 うっ……お、思い出しただけで顔が熱く……

 

 

 

「おーい夕美ちゃーん?」

「はっ…!」

「大丈夫?」

「だ、大丈夫ですっ!」

「そう? ならいいけど」

 

 

 い、今はそんなこと思い出してる場合じゃなかった。せっかく店長さんが相談に乗ってくれてるんだからもっと色々と話を聞かないと…!

 

 

「で、色仕掛けは置いておいて真面目な話に戻るけど……デートの場所は結構大事だよね〜」

「そ、そうなんですか?」

「うん。普段自分が行かないような場所に背伸びして行っても、落ち着かないし安心できないし、意外と失敗しちゃったりすると思うの」

「なるほど……」

「だから相手を楽しませることも大事だけど、ちゃんと自分も楽しめるような場所を選ぶってのも案外大事なんじゃないかな?」

「おぉ〜、店長さんすごいです!」

 

 

 す、すごい……これが大人の女のアドバイスなんだね…! やっぱり私とは経験値が違う…!

 

 

「うーん、定番はやっぱり映画館とか水族館とか……ショッピングモールなんかは誘いやすいかもね。ほら、ちょっと買いたい物があるから着いてきてほしいな〜とか言ったりして」

「な、なるほど…!」メモメモ

「うーん……あとは〜、お家デートとか?

あ、いや待てよ……流石に付き合う前の、しかも一発目のデートで自宅はナシかぁ。身の危険もあるかもだし」

「あっ私、白石くんの家ならもう行きましたよ」

「……えっ?」

「……?」

 

 

 店長さんはキョトンとした顔で私のことを見つめている。一体どうしたんだろう。

 

 

「え、行ったの? 彼の家に……?」

「はい」

「あっ! 友達何人かで行ったとか!?」

「私だけですよ?」

「……あっ! なら白石くんは実家暮らしで家に彼の親御さんがいたり…!」

「白石くんは一人暮らしですから、私と白石くんの2人きりでしたよ?」

「え、えぇ……」

 

 

 て、店長さんどうしたんだろう…? や、やっぱり一人暮らしの男の子の部屋に行くなんて大胆すぎたのかな…? うぅ、白石くん引いてたらどうしよう……。

 

 

「男の部屋に……男女が2人きり……しかも相手は一人暮らし……」ボソボソ

「て、店長さん?」

「……ゆ、夕美ちゃん」ポンッ

「は、はい…?」

 

 

 

 

 

 

 

「……ヤった?」

「ヤってませんっ!!!」

 

 

 

 少し顔を赤らめた店長さんが私の肩に手を置いて、言いづらそうに声をかけてきたかと思えばとんでもないことを言い出した。

 

 私は反射的に店長さんの言葉を否定し、一瞬で体が沸騰したように熱くなった。

 

 

 

「な、何を言ってるんですかっ…!!」

「いやっ、だってさぁ……ねぇ?」

「ねぇ、じゃないですよ! もうっ!」

「え〜? だって一人暮らしの男の部屋にさぁ〜、夕美ちゃんみたいな可愛い子が1人で行くなんて無防備すぎるよ?」

「うっ……そ、それは……」

「若い男女、部屋に2人きり、何も起きないはずがなく……」

「わ、わぁ〜っ! や、やめてください〜!」

 

 

 少しだけ顔を赤らめながら変な妄想を始めた店長さんの顔の前で、それをやめさせようとブンブン勢いよく手を左右に振る。

 

 

「いや〜、夕美ちゃん……結構大胆だったんだねぇ」

「ち、違いますよ! 白石くん2.3日家に帰ってなかったから溜まってると思って……! お世話をしに行っただけなんです!」

「た、溜まってる…? お世話……?」

「も、もう〜〜〜っっ!!! 何ですぐそういう方面に持っていくんですか! ゴミとか埃の話に決まってるじゃないですかぁ!!」

「あれあれあれ〜? 私、今何も言ってないけど……夕美ちゃんは何が溜まってると思ったのかなぁ〜?」ニヤニヤ

「もう〜〜〜っっ!!店長さんっ! 私怒りますよ!!」

 

 

 あぁ……さっきまで結構いい感じに相談できてたのに、これじゃあもうめちゃくちゃだよ〜!!

 

 

 

 

 

 

 

 〜〜〜〜

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ」

「落ち着いた?」

「て、店長さんが変なこと言うからじゃないですか……」ジロッ

「あはは〜、ごめんごめん。年甲斐も無くはしゃいじゃったね」

「もぅ……」

 

 

 はぁ……なんだかどっと疲れちゃったなぁ。

 

 それもこれも全部、店長さんが変なこと言い出すから……

 

 

「……」ムス-

「ご、ごめんごめん夕美ちゃん。ちょっと揶揄いすぎたよ」

「べっつに〜、私怒ってませんけど……」

「あはは……本当にわかりやすいね、夕美ちゃんは」

 

 

 ……私、そんなにわかりやすいかな…?

 

 

 

「ふぅ……じゃあ最後にちゃんとしたアドバイスでもしとこうかな」

「本当にちゃんとしたやつですか…?」ジ-

「うっ、疑いの視線……これは夕美ちゃんからの信頼を取り戻さないとね」

「……別に本気で怒ってる訳じゃないですけど」

 

 

 私がそう言うと店長さんはこほんと咳払いをして話し始めた。

 

 

「これはさっきもちょっと言ったことだけどね? デートに行くことになって、どんな場所に行くかとかどんな展開になったとか色々とあるだろうけど……」

「は、はい」

「やっぱり1番大切なのは夕美ちゃんが笑顔で楽しめることだと思うよ。夕美ちゃんが楽しそうにしてなかったら、相手の白石くんも気を使っちゃうだろうしね」

「……それは、確かにそうですね…」

「うん、まぁ……後は多分大丈夫だよ。とりあえず早めに誘ってみるといいよ。その返答で脈ナシか脈アリか大体分かるからね」

「あ、ありがとうございますっ! 店長さん!」

 

 

 私は店長さんにしっかりと頭を下げる。そんな私を見て店長さんはニコニコと笑いながら顔を上げてくれって言ってる。

 

 色々と揶揄われたりはしたけど、ちゃんと相談に乗ってくれる辺り店長さんはやっぱりいい人だと思うし、今日は相談に来て良かったと自信を持って言える。

 

 

「じゃあ私はそろそろ帰りますね? 随分と長い時間店長さんに付き合わせちゃってすみませんでした」

「あぁ、いいよいいよ。夕美ちゃん来てからまだお客さん来てないしね〜、あはは!」

「店長さん……」

「ちょっ! ゆ、夕美ちゃん? そんな心配そうな目を向けるのはやめてよ! ほ、本当に今日は偶々お客さんいないだけだから! 全然平気だからさ!」

 

 

 いつものクールな店長さんとは違い、あまりにも必死な彼女を見てなんだか少しだけ口元が緩んでしまったのは内緒の話だ。

 

 

 

「じゃあ私はこれで、また来ますね!」

「あっ、夕美ちゃん! 最後の最後にもう一つだけ大人からのアドバイスを!」

「……? なんですか?」

 

 

 そう言うと店長さんは私の耳元に顔を近づけてきて、囁くように小さな声で呟いた。

 

 

「ね、念のためにゴムは買っておいたほ……」

「失礼しますっ!!」

 

 

 カラ-ン

 

 

 私はカフェから勢いよく飛び出して、またしても赤くなった顔を下に向けながら家路に着く。

 

 もうっ……! 店長さんったら……最後の最後まで変なこと言うんだから…!

 

 

 私は赤くなった顔を誰にも見られたくなかったので、なるべく早足で家へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜〜〜〜

 

 

『白石くん、今日は突然帰っちゃってごめんね……それでこれまた突然なんだけど、今度の日曜日2人でどこかに遊びにいかない……?』

 

 

 

 

「はぁ……」

 

 

 その日の夜、私は既に完成したメッセージの文面を何度も読み返していた。あとは送信ボタンを押すだけなのに中々それができずため息を吐くのを繰り返している。

 

 

 

「夕美ちゃ〜ん! そろそろご飯よ〜!」

「あっ、はーい!」

 

 

 キッチンにいるお母さんから私に向かって声がかけられる。

 

 うぅ〜、こんなメールを送るだけで怯んでたらダメだよね…! 押すよ…! 私、今度こそ押すよ!

 

 

「う〜……」ソ-ッ

「おーい夕美、そろそろご飯だからスマホ触ってないでこっちに来なさい」

「ひゃっ!」ポチッ

 

 

 送信のボタンに向かってゆっくりと指を伸ばしていると、後ろから突然お父さんが声をかけてきて驚き体が飛び跳ねる。

 

 

「お、お父さん! 急に後ろから声かけたらビックリするでしょ!」

「ご、ごめんよ。でも夕美が中々こっちに来ないから」

「そ、それは確かにごめんなさい……って!

あーっ!!」

「こ、今度はどうした!?」

「お、送っちゃったよ〜っ!!!」

 

 

 ソファーに寝転びながらチラリとスマホの画面を見ると、さっきまで何度も読み返していた文面が私と白石くんのトーク画面にしっかりと載っていた。

 

 もしかしたらさっき飛び跳ねた拍子にボタンを押しちゃったのかも……!

 

 

 

「うぅ〜っ! お、送っちゃったよ〜!!」

「な、何を送ったんだい? 夕美?」

「ど、どうしよう……今ならまだ送信取り消しできるけど、せっかく送ったのにそんなことしちゃうのは勿体ないよね……」

「む、無視……だと…? そんな……夕美が俺のこと無視するなんて今まで一度も……」

 

 

 うぅ〜っ! ど、どうしよう……心臓がうるさいくらいバクバクしてて口から飛び出してきちゃいそうだよ〜っ!

 

 

「か、母さ〜んっ! ゆ、夕美がっ! 夕美が遅めの反抗期を…!」

「も〜、何を言ってるのお父さん。ほら、夕美ちゃんもご飯できたからこっち来て〜?」

「……う、うん」

 

 

 ……と、とりあえずご飯食べないと。今は一旦スマホはここに置いておいて……あれ?

 

 

「……き、既読ついちゃった…!」

 

 

 私が送ったメッセージの横に既読という文字が浮かんでいる。これはつまり私からのお誘いを白石くんが今読んでいるということで……!

 

 

「うぅ〜〜っっ!!!」バタバタ

 

 

「ほ、ほら母さん! あんなに普段はいい子の夕美が言うことを聞かないでソファーで暴れてる…! こ、これは反抗期だっ…!」

「もぅ……お父さんったら」

 

 

 ど、どうしようどうしようどうしよう!

こ、これで誘いを断られちゃったら……はっ!

それ以前に返信返ってこなかったらどうしよう〜!

 

 

「こら、夕美ちゃん? いい加減こっち来ないとダメよ? ご飯冷めちゃうでしょ」

「あっ、お母さん……は、はーい」

 

 

 うぅ……正直今はご飯どころじゃないけど、私はもう返信を待つしかないよね……。

 

 

 私はスマホの画面をジーッと睨みつけた後、電源ボタンに指を置いた。そしてそのまま力を入れてボタンを押そうとしたその瞬間……

 

 

 

 ピコンッ!

 

 

「あっ……」

 

 

「夕美ちゃん? ほらいい加減スマホを置いて?」

「……うん」

 

 

 私は美味しそうな夕食が並べられたテーブルの前に置かれた椅子に座る。

 

 

「今日はシチューかぁ〜、美味そうだなぁ〜」

「ふふっ、お父さんも夕美ちゃんもいっぱい食べてちょうだいね?」

 

 

「「「いただきます」」」

 

 

 私たちは声を合わせて挨拶をすると、それぞれがスプーンをシチューへと沈めていき自分の口へと運ぶ。

 

 ……うん、今日もお母さんのシチューはいつも通り美味しい。

 

 

「……ねぇ、お母さん、お父さん」

「ん?どうかしたのか?」

「どうしたの夕美ちゃん?」

 

 

 シチューを一口呑み込んだところで私はお母さんとお父さんに声をかける。そして不思議そうに私を見つめる2人に対して言葉を放つ。

 

 

 

 

 

 

「私、今度の日曜日出かけてくるから!」ニコッ

 

「「えっ?」」

 

 

 

 ……可愛い服、準備しとかないと。ふふっ♪

 

 

 

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