346プロの雑用バイト君 作:焼肉定食
前回投稿から少し間が空いてしまい申し訳ありませんでした。
私事で恐縮なのですが、私生活の方が忙しくて中々小説を書く時間を取ることができませんでした。 今もまだ忙しい期間は終わっておらずまた次の話を投稿するまでも間が空いてしまうかもしれません。
またもう少ししたら前のような投稿間隔に戻れると思いますので、どうかそれまでご容赦のほど何卒よろしくお願いいたします。
……お、落ち着かない。
季節は11月、俺が骨折をして退院をしてから早くも2ヶ月が経過していた。
リハビリも特に問題なく進んでいて順調そのもの。俺の中にいつも通りの日常が戻るのも時間の問題なのだが……
……なんか、めちゃくちゃ緊張してきた。
今……俺は心臓をバクバクと鳴らしながら、駅前の広場にて人を待っている。
その待ち人とは相葉さんのことなのだが、なぜ俺が相葉さんを待っているのか……それはつい先日のことだった。
〜〜〜〜
「ふぅ……腹減ったな。晩飯にするか」
ピロンッ
「ん? 相葉さんから……?」
突如届いた相葉さんからのメッセージを開くと、そこには予想外の文章が記されていた。
『白石くん、今日は突然帰っちゃってごめんね……それでこれまた突然なんだけど、今度の日曜日2人でどこかに遊びにいかない……?』
「へっ?」
こ、これって……
あ、相葉さんが俺のことを遊びに誘ってきてくれてる!?
ま、マジかこれ! マジかよこれ! この俺が女子から遊びに行かないかと誘われてるのか!?
「はっ……!」
い、いやいや……少し落ち着け。 別に告白でもされた訳じゃない、ただ遊びに行かないかと誘われただけじゃないか。
そんなことで一喜一憂していたら、まるで俺が女子と遊んだことすらない全身童貞男みたいじゃないか。……まぁ事実だけど。
と、とにかく! ここはスマートに返信をするんだ。 あまりこっちがキョドっていることを悟らせないように……
『いいよ』
「……うーん、これは流石に」
送信をする前にトーク画面に打った文字を眺めて吟味する。
別に『いいよ』だけでも意味自体は通じるんだけど、あまりにも素っ気なさすぎる気がするぞ。 相葉さん約50文字の誘いに対して、俺は3文字で返信とか……
「……これは違うな」
打った文字を消して別の文字を打ち出す。
『行く行く! 絶対に行くよ〜!』
「うーん……」
これも何か違うなぁ……。誘いに対してがっついてるみたいだし、何よりこんなギャルみたいな文章は俺のキャラじゃない。
「……くそっ、何て返信すればいいんだ…!」
明らかな経験値不足だ。こんな時女子とメッセージのやり取りをしまくってるモテ男なら速攻で何か返信をするのだろう。きっと俺みたいにどんな文を送るか迷うこともしないはずだ。
「……あれ?」
その時、俺は一つの事に気がついた。
相葉さんからこのメッセージが送られてきてから10分が経つ。そして俺はこのメッセージをすぐ読んで、それからまだ返事をしていない。
この状況は……まずい! 完全に既読無視だ!
「あ、あわわわ!!」
ヤバいヤバいヤバい! 既読無視なんて印象最悪だぞ!
と、とにかくこれ以上既読無視状態はマズい! 早急に返信をしなくては…!
「えーっと……えーっと……くそっ! もうこれでいいか!」
俺は未だかつて無いほどに素早い指の動きで文字を打ち、完成した短い文を送信した。
そして送った文章が相葉さんとのトーク画面に貼り付けられたのを確認して、俺は一息をつく。 そしてその後、改めて自分の送った文章をジーッと見つめる。
『行きます!』
………なんか敬語になっちゃったぞ。
ブ-! ブ-! ブ-!
「うおっ! で、電話だ」
返信をした直後、相葉さんとのトーク画面を見つめていると急に電話がかかってきた。
俺は一度だけ大きく深呼吸をして通話のボタンを押す。
「もしもし? 相葉さん?」
『あっ! 白石くん! 今時間大丈夫かな?』
「うん、大丈夫だよ」
通話ボタンを押すと、スマホの画面から相葉さんの元気そうな声が響き渡る。
『えへへっ、嬉しいなぁ♪ もし断られたらどうしようかなって思ってたんだ』
「い、いやいや! 嬉しいのは俺の方もだよ。まさか相葉さんが遊びに誘ってくれるなんてさ」
『そ、そうなんだ……白石くんも嬉しいんだ。えへへ……そっかそっか♪』
な、なんか相葉さんやけに嬉しそうだな……
いや、まぁ喜んでくれてるならよかったけど。
『あ、それでね?遊びに行く場所なんだけど』
「うん?」
『ゆ、遊園地……なんてどうかな…?』
「えっ?」
こ、この俺が! 女子と遊園地……だと!?
女子と海水浴、女子とバーベキュー、そして女子と遊園地。この3つはリア充にしか経験できないイベントのはずだ。(偏見)
それなのに、彼女いない歴=年齢で思春期にまるで女子と会話をしてこなかった俺みたいなのがそのうちの一つを経験できるなんて……!
「夢か……?」
『あれ、何か言った? 白石くん』
「あ、いやなんでもないよ」
い、いかんいかん。しっかりしろ白石幸輝!これは現実だ。現実なんだぞ。
「これは現実……これは現実……」ブツブツ
『もぅ〜、白石くん? さっきからちょっと変だよ?』
「えっ……あ、あぁ、ごめんごめん」
『そ、それでさ……どう、かな…?』
そんなの、答えは一つに決まってる。
「もちろん行くよ!」
〜〜〜〜
と、まぁ……そんなこんなで相葉さんと遊園地に行く約束をしたので、俺は今駅前で相葉さんの到着を待っているという状況だ。
緊張のしすぎで準備をめちゃくちゃ早く終えてしまった俺は、待ち合わせ時間の40分前にはここに到着してしまっていた。
……今の時点で待ち合わせ時間まで20分。流石に早く来すぎたかもしれない。 いや、かもしれないじゃなくて確実に早すぎたな。
「とりあえず今日行く遊園地のことをちょっと調べてみようかな」
そうして俺がポケットからスマホを取り出して画面を覗き込んだ瞬間、優しく背中がツンツンと突かれた。
「ん?」
「やっほ〜白石くん」
「あ、相葉さん…!」
振り返るといつの間にかやってきていた相葉さんが俺のことを上目遣いで見上げていた。
「えへへ、私も結構早く着いちゃったのに白石くんはもっと早かったんだね」
「いやいや、俺もついさっき来たところだからほとんど変わらないよ」
嘘です。本当は20分ぐらいここで待ってました。
「そうなの? よかった〜」
「あはは、それじゃあ早速行こう………か」
「……? どうかしたの?」
「え、えーっと、その……服、すごい似合ってるね。めっちゃ可愛いよ」
「……!?」
俺は精一杯の勇気を振り絞って相葉さんに服の感想を伝える。
こういう時は相手の服装を褒めてあげるのが鉄板ってよく聞くけど、これは思ったより照れくさいな……
「ほ、本当…!?」
「う、うん。すごい似合ってるよ」
「そっか……えへへ、嬉しいな」ニコッ
相葉さんは小さな声で呟くとニッコリと微笑んだ。そんな相葉さんの表情を見て俺の胸はドクンと大きく音を鳴らした。
……なんか相葉さん、いつもより可愛い…?
いや、もちろんいつも相葉さんはとびきりの美少女なんだけど、何が今日は雰囲気が違うような。俺の気のせいかな……?
「ち、ちなみに……どこが可愛いかな…?」チラッ
「えっ!?」
あ、相葉さんが何かを期待するような視線でこっちを見ている…!
これは……何て答えるのが正解なんだ?
服もめちゃくちゃ可愛いし、変装用なのかいつもは着けていない伊達メガネを着けてるのも可愛いし、というかなんなら相葉さん自体が可愛いし。
「……そ、そのスカートとか……可愛いよね」
「あっ! 白石くんもそう思う!?」
「う、うん」
「えへへっ♪ 実は何を着てくるかすっごく迷ったんだけどね? 今日は結構動くと思うからあんまりゴタゴタしててもちょっとな〜って思ったから、このフレアスカートにしたの! ミモレ丈でスッキリとしてね! あ、それで色は秋っぽくカーキ色にして……」
???????
ま、まずい……! 相葉さんのファッショントークの意味が全くわからない。
ミモレ丈ってなんだ…? カーキ色ってどんな色だ…? あとフレアスカートって……? 燃えるスカート……?
「って感じなんだけど〜♪」
「……」
「白石くん?」
「……お、おっけーおっけー。そういうことね。うんうん、やっぱり時代はフレアなスカートだよね。わかるわかる」
俺は相葉さんに向けて親指をグッと立てて笑顔を向ける。
「あ、あはは……白石くんにはちょっと難しかったかな?」
「うっ……た、確かに相葉さんの言う通りだよ。俺はファッションとか何にも分からないダメなやつなんだ」ズ-ン
「べ、別にそこまで言ってないよ! ほ、ほらほら! いつまでもここで話しててもアレだし早く出発しよ?」
そう言うと相葉さんは俺の手を引いてズンズンと歩いていく。
「ちょっ! 相葉さん!」
「えへへっ、ほらほら! 早く行こうよ」
そうして俺たちは遊園地に向かうバスへと乗り込んだ。
〜〜〜〜
俺と相葉さんがバスに乗り込んで小1時間程度経った。バスに乗っている間は相葉さんと他愛のない話をしていると、あっという間にバスは目的である遊園地の前へと到着した。
「よしっ! じゃあ行こっか」
「そうだね」
ゾロゾロと降りていく他の乗客に続いて俺たち2人もバスを降りた。
バスを降りればもうすぐ目の前には人気の遊園地。入口からでも見えるほど大きな観覧車やジェットコースターを見た相葉さんはキラキラと目を輝かせている。
「うわぁ〜! すごいすごい! すっごく楽しそうだよ白石くん!」
「おぉ……確かにすごいね」
両手を合わせてピョンピョンと飛び跳ねる相葉さんを見て思わず笑みが溢れる。
「さぁさぁ! 時間が勿体ないよ! 早く中に入ろう!」
「そうだね。じゃあチケット買いにいこっか」
俺たち2人は早足で入口の方へと歩いていきチケットを購入する。
そして遊園地の中へと入場すると、周りには楽しそうにはしゃいでいる家族連れやカップルっぽい男女など様々な人たちがいた。
「すごいな……結構人多いね」
「結構人気な場所だからね〜。さてさて、じゃあ最初はどこに行こっか!」
「そうだなぁ」
俺が入場した時に貰った遊園地内のマップを広げて見ていると、横にいる相葉さんが覗き込んできてふわりと甘い匂いが鼻をくすぐった。
「っ……」
「うーん、最初はゆっくりとした乗り物がいいかなぁ……それともやっぱりジェットコースターかなぁ?」
うっ……ち、近いなぁ。 すごくいい匂いするし、めちゃくちゃドキドキする。
「白石くん? どうかしたの?」
「えっ! な、なんでもないよ!」
「そう? でもちょっとだけ顔が赤いような……」
「だ、大丈夫だよ! それよりほら、早くどっかに行こうよ! そうだ、最初はジェットコースターでいいんじゃないかな!?」
「……?」
俺は変なことを考えていたことを悟られないよう必死に誤魔化す。そしてキョトンとした顔を浮かべている相葉さんを連れて大きなジェットコースターに向かって歩き出した。
「あ、ジェットコースターといえば白石くんは絶叫系は大丈夫なの?」
「俺? まぁ……人並みだと思うよ。絶対に無理!ってタイプじゃないし。相葉さんは?」
「私も……普通、かな?」
「疑問形だね」
「あはは……まぁ普通に乗る分にはいいんたけどね? 何回も連続とかになるとちょっと……」
そう言うと相葉さんは何か嫌な記憶を思い出したようで、視線を下に向けながら乾いた笑みを浮かべていた。
「そういう経験があるの?」
「う、うん……ちょっとね? 昔、響子ちゃんと志希ちゃんと一緒に何回も絶叫コースターに乗ったことがあって……あの時は流石に辛かったかなぁ」
「へぇ〜、一ノ瀬さんに振り回された感じ?」
「う、ううん……響子ちゃんがね? すっごい絶叫系が好きらしくて……あはは」
相葉さんはどこか遠くを見ながら笑う。
というか意外だな。あの五十嵐さんがそんなにパワフルガールだったとは……
絶対一ノ瀬さんが暴走したのかと思ったぞ。疑ってごめんよ一ノ瀬さん。
「っと、着いたけど……おぉ。デカいな」
「確かに……おっきいね」
俺と相葉さんは2人して首を上に向けて、ものすごいスピードで動くコースターを見る。
「け、結構エグい感じのやつだね……」
「そ、そうだね。うわぁ、あそこのとこで一回転するみたいだよ……」
ギャァァァァァ---!!! キャ-----!!!!
コースターに乗る他の客の叫び声がここまで届いてくるぞ……やべぇなこれ。
「……よしっ、行くよ白石くん!」
「えっ、マジですかい?」
「せっかく来たんだから乗らないと勿体ないもん! ほらほら!」
相葉さんに連れられてジェットコースターの列へと並ぶ。
や、やべぇ〜、乗りたくないなぁ……
〜〜〜〜
ガタガタガタ……ガタガタガタ……
小さく不気味な音を出しながら俺を乗せたコースターは上へ上へと登っていく。この山を登りきった時が俺の死ぬ時なのかもしれない。
「うわー! すっごい高いよ〜!」
「ソ、ソウダネ-……タカイネ-」
「いい景色だなぁ〜♪」
隣に座る相葉さんはキラキラとした笑顔を浮かべていて何故か楽しそうだ。
さっきまで俺と同じくらい怯んでいたというのに……やっぱり相葉さんはパッションガールだよ。
「あっ、ほらほら! そろそろ1番高いとこにつくよ!」
「えっ!? ちょ、ちょっと待って! まだ心の準備が……!」
1番高いところに到達したコースターは一瞬だけ動きを止めると、次の瞬間にはゆっくりと降下を始めてあっという間にトップスピードに入る。
「わぁ〜!」
「あばばばばばばばばば!!! やばいやばい! これやばいって!!」
怖い怖い怖い!! 早すぎるし高すぎる!!
てか相葉さんめちゃ余裕そうなんだけど!?
「はやいはや〜い!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ〜〜!!!」
は、早く終わってくれ〜!!
〜〜〜〜
「はぁ〜♪ 楽しかったね!」
「……ソ、ソダネ-」
ジェットコースターから降りた相葉さんは楽しそうに笑いながら体をぐいぐいと伸ばしている。そしてそんな相葉さんと対照的に俺は背中を丸めてぐったりと項垂れる。
「ふふっ、白石くん大丈夫?」
「ま、まぁね……正直に言うとめちゃくちゃ怖かったよ」
俺が今まで乗ってきたジェットコースターなんてコレに比べればオモチャみたいなもんだったんだなって…… 正直もう乗りたくはない。
「じゃ、じゃあ次はどこに行こっか」
「うーん、実は向こうの方にもう一個ジェットコースターがあるらしいんだけど……」ニヤリ
「えっ!」
「ふふっ、冗談だよ♪ 次はちょっと落ち着けるやつにしよっか」
い、今……一瞬だけ悪い相葉夕美が出たぞ。
「相葉さんって意外とそういうとこあるよね。小悪魔的な……」
「そうかな? ふふっ、そんなつもりはないんだけどなぁ〜♪」
ぜ、絶対に確信犯だ…! 確実にイジられてるぞ!
「ほらほら! そんなことより、早く次の場所に行こ!」
「……うん、そうだね」
そう言って相葉さんは両手を腰の後ろで組んで笑った。
……まぁ、相葉さんが楽しそうだしいいか。
その後は色々なアトラクションに片っ端から乗りまくった。
メリーゴーランドにゴーカートに空中ブランコに……もうとにかく色々だ。
あ、さっき相葉さんが言っていたもう一つのジェットコースターにも乗ったけど、最初に乗ったやつに負けず劣らずの絶叫系だった……
そして今俺たちは何をしているかと言うと、回るコーヒーカップのアトラクションから降りたところなのだが……
「うっ……め、目が回る……」
「ご、ごめんね白石くん。ちょっと回しすぎたかな?」
「へ、へいきへいき……あはは」
とは言いつつも俺の足取りはフラフラとしていておぼつかない。
ひ、久しぶり……というか初めてかもしれないな。こんなに目が回ったのは。
「……あっ! し、白石くん! あっちにあるベンチでちょっと休もうよ! ちょうど日陰でいい感じだよ」
「えっ? あぁ、いや……別にそこまでしなくても」
「え、遠慮しないで! ほらほら!」
「ちょっ! あ、相葉さん! あんまり引っ張らないで……うぷっ」
相葉さんは有無を言わさぬ勢いで俺の手を引いてベンチまで引っ張る。
い、今そんなに強く揺さぶられると……
や、やばいんだけど……!
「はい! じゃあちょっと横になろっか」
「い、いや……別に横にはならなくても」
「ちゃんと体を休めるには横にならなきゃダメだよ! ほらほら!」
な、なんか今日の相葉さんは押しが強いな。
あれよあれよという間に俺はベンチの上に寝転ばされて空を見上げる体勢を取る。そしてその横に相葉さんも腰をかけた。
「どうかな? ちょっとはマシになった?」
「そうだね……だいぶ良くなってきたよ」
「ふふっ、よかった。 ねぇ白石くん、ちょっと目を瞑っててくれるかな?」
「え? まぁ……別にいいけど」
俺は相葉さんに言われるままに目を閉じる。こんな風に寝転びながら目を瞑っていると眠ってしまいそうだ。
「ちょっとごめんね。頭上げるよ?」
「え?」
そんな声が聞こえた次の瞬間、相葉さんが俺の首を下から支えるようにして頭が持ち上げられた。そしてすぐに頭は下ろされたが、後頭部に伝わるその感触はさっきまでの硬いベンチの物とはまるで違う。
「えぇっ!? あ、相葉さん! これって…!」
「ど、どう……かな?」
俺はびっくりして勢いよく目をかっ開くと、視線の先には上から俺のことを見下ろす相葉さんがいた。
こ、これって……ひ、ひざまく……ら…?
「ちょっ! あ、相葉さ……!」
「しーっ……もうちょっとゆっくりしてなきゃダメだよ?」
反射的に飛び起きようとした俺の額を相葉さんは軽く押し返す。そして少しだけ赤みがかった顔のまま、人差し指を自分の口元に当てて優しく微笑んだ。
「っ……! あ、相葉さん……」
「い、嫌……かな?」
「ぜっ、全然嫌じゃないよ! 嫌な訳がないよ!」
「ふふっ、じゃあさ……もうちょっとだけ、このままでいよ? ここは人通りも少ないし……」
「……あ、相葉さんがいいなら」
俺の言葉に対して相葉さんは返事こそしなかったが優しい笑みを浮かべた。
「……」
「……」
しばらくそのまま無言の時間が続く。
俺はその間ずっと体中の全神経を張り詰めるような緊張感に襲われていた。
だ、だって頭とか変に動かして変なとこに当たったりしたら困るし。 視線もどこに向ければいいのやら……
結構前に三船さんにも膝枕してもらったこともあるけど、あれはその後すぐ寝ちゃったからなぁ……今は意識がハッキリしてる分かなり照れくさい。
「ねぇ、白石くん……」
「は、はいっ!?」
「どう……かな?」
「うっ……い、いい感じ……です」
「そっか……ふふっ、よかった」ニコッ
そう言うと相葉さんはゆっくりと俺の頭を撫で始めた。優しい手つきがこそばゆい……
というか改めてすごい状況だなこれって。
まさか相葉さんに膝枕してもらえるなんて……
あーやばい。顔あっつい……絶対に今顔真っ赤だよ。
「白石くん……顔、赤いね」
「……あ、赤くもなるよ。こんなの」
「ふふっ、照れてるの?」
「あ、あー……うん、まぁ」
うっ……め、めっちゃ顔見られてる。 やばいぞ、顔がどんどん熱くなってきた。
というか完全に相葉さん俺のこと揶揄ってるな! また悪い相葉夕美が出てきてるよ! 小悪魔夕美が隠しきれてないよ!
「私も、って言ったら……どうする?」
「えっ?」
チラリと視線を相葉さんの顔に移すと、相葉さんは真っ赤な顔で潤んだ瞳を少しだけ細めて俺のことを見つめていた。
は、初めて見る相葉さんの表情だ……
なんだ……これ。 いつもと違う……
互いの目と目をジッと見つめ合う俺たちの間には、明らかに異様な空気感が流れる。
「え、えーっと……私もって、何が?」
「私も……照れてるんだよ……?」
「えっ?」
「それに、すっごくドキドキしてるの。 今日、ずっと……」
「あ、相葉……さん…?」
「白石くんのせいだよ……私が、こんなにドキドキしてるのは」
相葉さんは小さな声で言葉を紡ぎながらも、その視線はジッと俺のことを見つめて離さない。
な、なんだこれ。 顔が熱い。 心臓がうるさい。 相葉さんの顔から目が離せない、離したくない。
こ、これって……いったい。
「わ、私ね……この前から暇さえあればキミのことずっと考えてるの……」
「あ、相葉……さ」
「白石くん……私……っ!」
「ママー、あの人たちイチャイチャしてるよ〜?」
「「えっ?」」
相葉さんが何か言葉を絞り出そうとしたその時、それまでの異様な空気感をぶち壊すような声が聞こえてきた。
俺たち2人がゆっくりと声のした方に顔を向けると、そこには風船を握りしめてこっちに向けて指を差す小さな女の子がいた。
「ママ〜、あの人たちすっごく仲良し……」
「ちょっ! ま、待って待って! これは違くて……!」
「こ、こらっ! 何してるの! すみませんウチの子が…! ほら行くよ!」
俺が勢いよく相葉さんの膝から頭を上げて女の子に話しかけようとするとその子ども母親らしき人がやってきて、一言謝りすぐにその子を連れて立ち去っていった。
そしてその場に残された俺は隣に座る相葉さんのことをチラリと見ると、向こうも俺の方を見ていたようでバッチリと視線が交わった。
「……お、俺ちょっと飲み物買ってくるよ!」
「あっ! し、白石くん……!」
「相葉さんの分も買ってくるからさ! ここで待ってて!」
「あ……う、うん」
その場の空気に耐えられなかった俺は、情けなくも逃げ出すように走り去っていくのだった……
〜〜〜〜
「……お、俺ちょっと飲み物買ってくるよ!」
「あっ! し、白石くん……!」
「相葉さんの分も買ってくるからさ! ここで待ってて!」
「あ……う、うん」
そう言って顔を真っ赤にした白石くんは、私から逃げるようにしてその場から走り去っていってしまった。
「……行っちゃった」
ポツリとそんな言葉を吐いた私は、1人残されたベンチの上で顔を下に向けて自分の頬に両手を当てる。
………すごく、熱い……。
「……う、う〜〜っ!!!」
周りからの視線なんか気にもせずに私は呻き声を上げながら足をバタバタと動かす。
や、やっちゃったよぉ〜〜〜っ!!!!
き、今日は告白とかそういうのは全然考えてなかったのに!! ちょっと仲を進展させるくらいしか考えてなかったのに〜!!!
ちょっといい雰囲気だからって焦った……?
自分の気持ちが抑えきれなかった……?
な、何はともあれあんなの半分告白しちゃったみたいなもんだよ〜!!!
しかもこんな中途半端な……! う〜っ!!
私のバカバカ〜!!
、、、、
「……はぁ」
ひとしきり悶えた後に大きく息を吐く。
白石くん、今どんなこと考えてるかな。
今日はちょっと……いや、かなり頑張ってアプローチかけたんだけどドキドキしてくれたかな?
体を近づけてみたり、手を握ってみたり、膝枕もしてみたり。
……私のこと、意識してくれたかな…?
「はぁ……」
もう一回大きく息を吐く。
……白石くんが戻ってきたらどうしよう?
さっきのは無かったことして普通に遊園地を楽しむ? それとも今の話の続きをする……?
どうしよう……考えがまとまらないよ。 何が正解なのか分からない。
「はぁ……」
誰か私に恋愛のアドバイスをしてください〜!!