346プロの雑用バイト君   作:焼肉定食

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最終話 想い

 

「ぼけー………」

 

「ここをこうして……こう!」

「わー! すごいすごーい! 莉嘉ちゃん上手ー!」

「えっへへ〜♪ みりあちゃんが手伝ってくれたからだよ〜!」

 

 

 バイト終わり、俺は事務所の休憩所にあるソファーに座ってボーっとしている。生気の無い顔を浮かべて、何をするでもなくただただ抜け殻のようになって座っている。

 

 後ろで莉嘉ちゃんとみりあちゃんが何やら俺の髪の毛を弄って遊んでいるらしいけど、今は何も言う気にはならない。

 

 

 えっ……なんでそんな抜け殻みたいになってるかって? そりゃあ……相葉さんへの告白に失敗したのが原因さ。

 

 自分でも驚いてるよ。お断りされただけでこんな風に自分がなっちゃうなんてね……俺は自分で考えてるより相葉さんのことが好きだったらしい。

 

 

「ねぇねぇ幸輝くん、次はツインテしてみていい?」

「あ……いいよ。いいよ。なんでもいいよ……」

「よーしっ! じゃあ次はみりあがやるー!」

 

 

 はぁ……やっぱり告白なんてしない方がよかったのかな。 勢いと流れに任せて言っちゃったけど、あんなこと急に言われたら相葉さんも困惑するよな。

 

 うわ……ちょっと遊びに誘っただけで勘違いして告ってきたんだけど……むりぃ〜。 とか思われてたらどうしよう……

 

 

 あっ……ダメだ。ネガティブモードが発動しちゃってるぞ。 本当は相葉さんは絶対そんなこと思わないってわかってるのに……

 

 

 はぁ……なんか泣きそう。

 

 

 

 

「ん? 莉嘉〜、何して……えっ、本当に何してんの?」

 

「あっ! お姉ちゃんおは〜☆」

「美嘉ちゃんおはよ〜!」

 

「うん、2人ともおはよう……で、何してんの?」

 

 

 

 休憩所にやってきた城ヶ崎さんが怪訝そうな表情を浮かべて俺の方を見ている。 でも今は何も言う気にはならない。

 

 

 

「今ね? 幸輝くんの髪の毛を可愛くしてあげてるの!」

「え〜、てか白石くんさっきから全然喋らないけど……どうかしたの?」

「わかんない!」

「わかんないってアンタ……」

 

 

 するとソファーに座る俺の前で城ヶ崎さんが屈んで心配そうな顔で見つめてくる。

 この距離感で城ヶ崎さんに見つめられるとかいつもの俺なら絶対にキョドっているところだが、今はそんな気分には全くならない。

 

 

「ちょっと莉嘉、白石くんで遊んでないで白石くんを元に戻すの手伝ってよ」

「えー! せっかくいいカンジのツインテが出来上がったのに……」

「あっ! じゃあみりあがやるー! そーれ、こちょこちょこちょ〜!」

 

 

「ぼけー……」

 

 

「ぜ、全然効いてないし……」

「えーっ!? 幸輝さんこちょこちょ効かないの!? すごーいっ!」

「いや、凄いというよりもう怖いんだけど……」

 

 

 

 ダメだ……3人が何かしてるのは分かってるけど、何を言う気にもする気にもならない。

 

 

 

 ブ-! ブ-! ブ-!

 

 

 

「あ、白石くんスマホ鳴ってるよ」

 

 

 城ヶ崎さんの指摘を受けて、俺はゆっくりと手を動かしてスマホの画面を覗く。 そしてそこに書いてあった文字を見て飛び跳ねた。

 

 

「……えっ!?」バッ

 

 

「ちょっ! き、急にどうしたの?」

 

 

 

 俺が急に立ち上がったことに3人はビックリしているようだけど、今はそれどころじゃない。

 

 俺のスマホに届いたメッセージは相葉さんからの呼び出しだった。 生気の抜けた瞳に光が戻っていくのを感じる。

 

 

「ご、ごめん! 俺ちょっと行かないと!」

「えっ!? あっ! ちょっと白石くん!」

 

 

 後ろで城ヶ崎さんが何かを言っているけど振り返らず走っていく。 とにかく相葉さんが待つ場所へと向かって全速力で走る。

 

 

 

 

 

 

「行っちゃったね幸輝さん」

「なんだったんだろうね」

「いや……それよりさ」

 

 

 

 

「白石くん……髪の毛、ツインテのまんまだけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜〜〜〜

 

 

 走る。 走る。 走る。

 

 俺は休憩をすることもなく走り続ける。 なんだか周りの人がすごい見てる気がするけど、まぁそりゃ街中を全速力で走る男がいたら注目を集めても仕方ないか。ていうかそんなの気にしてる場合じゃない。

 

 

 向かってる先は、前に相葉さんに水をぶっかけられたあの綺麗な花畑のある公園だ。

 

 

 何で呼ばれたのかとか、何を言われるのかとか気になる事は沢山あるけど、今はとにかく走り続ける。

 

 そして全力疾走の甲斐もあり、俺は連絡を貰ってから数十分で目的地である公園へと辿り着いた。

 

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……っ」

 

 

 どこだ……あ、相葉さんはどこだ…?

 

 はぁはぁと荒い呼吸をしながら、俺はキョロキョロと辺りを見渡す。

 

 

 

「し、白石……くん?」

「あっ、相葉さん!」

 

 

 声のした方へと顔を向けるとそこには相葉さんが立っていた。

 

 けどなんだか目を見開いて固まっている……どうかしたんだろうか?

 

 

「え、えーっと……ぷふっ、ふっ、ふふっ!」

「……?」

「あはははっ! ちょ、ちょっと白石くん…! わ、私今真剣な話しようと思ってたのに〜!

くふっ、ふふふっ!」

 

 

 な、なんだなんだ!? 何で相葉さんこんなに笑ってるんだ!?

 

 ……お、俺の頭を見てるような気がするけど、なんかついてるのか……?

 

 

 

「はぁ……白石くん、自分で気づいてないんだ?」

「な、何が?」

「コレ貸してあげるから……くふっ」

 

 

 相葉さんはクスクスと笑いながら手鏡を渡してくれた。 俺はソレを掲げて自分の頭部を確認する。

 

 

「なっ! なんじゃこりゃぁぁぁ!!!」

「あははっ! し、白石くんっ、走ってきたと思ったらツインテなんだもん! そりゃ笑っちゃうよ〜」

 

 

 鏡に映っている俺の頭部は、短い髪の毛を無理やりかき集めてヘアゴムで2つに纏められていた。

 

 ……あっ! だからさっきから人の視線を感じてたのか! めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど……

 

 

 

「い、いつの間にこんな……」

「あれ? もう解いちゃうんだ。 似合ってたのに……くすっ」

「か、勘弁してよ相葉さん。 はぁ……」

 

 

 黒歴史確定だなこりゃ……

 

 

 

「ふぅ……ふふっ、私ちょっと緊張してたんだけど、白石くんのおかげで解れたかも」

「えっ? あっ、そういえば真剣な話って……」

 

 

 はっ…! ま、まさかこの前の告白の話とか……?

 

 うぅっ……正式にお断りの話をされるんだろうか? なんか泣きそうだ。

 

 

 

 

「え、えーっと……お話っていうのはね? この前の遊園地のさ……」

「う、うん」

「白石くん……こ、告白してくれた……ってことでいいんだよね?」

 

 

 や、やっぱりその話かぁ……

 

 

 

「う、うん……そうだよ。 俺、相葉さんのこと好きだから」

「っ……! そ、そっか! ご、ごめんね? この前は逃げちゃったりして……」

「だ、大丈夫だよ。普通びっくりするよね……あはは」

 

 

 相葉さんは途切れ途切れに言葉を紡いでいく。さっきからモジモジと下を向いているので目が全く合わない。

 

 ……や、やっぱり気まずい。

 

 

 

「それでね……今日は返事をしなきゃってことで白石くんを呼んだんだ」

「……そ、そっか」

「うん。白石くん、聞いてくれる?」

 

 

 

 今日初めて相葉さんと目が合った。

 

 

 あーダメだぁ……今からお断りされるんだぁ…… 泣かないように覚悟を決めないと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私も、白石くんのこと好きだよ」

「うん、そっか……………ん?」

「だから……この前は告白してくれて、嬉しかったんだ」

「…………ん? ちょ、ちょっと待って?」

 

 

 

 あれ? 今……なんて?

 

 

 

 

「えっ? あ、相葉さん……? い、今なんて言ったの……?」

「は、恥ずかしいから……あんまり、言わせないでよぅ……」

「お、お願い! お願いします!」

「う、うん」

 

 

 相葉さんは顔を赤くして俺のことを見つめる。俺も同じく真っ赤な顔で相葉さんを見つめる。

 

 

 

 

 

「……私も、白石くんのこと好き」

「ま、マジ……?」

「うん、マジ……だよ?」

 

 

 

 

「ま、マジかぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 えっ!? マジなの!? これマジなの!?

 

 う、嬉しすぎるんだけど!! えっ、相葉さんが……あの相葉さんが俺のこと好き!? ま、マジかよ!!!

 

 

 あっ、やばい……予想外すぎてなんか涙出てきた。

 

 

 

「うっ……うぅ」

「し、白石くんどうしたの!?」

「あっ、ごめん……なんか嬉しすぎて涙出てきちゃって。 いや、もう絶対にフられると思ってたからさ」

「そ、それなんだけどね」

 

 

 ポリポリと頬を掻きながら、相葉さんは照れくさそうに語り出した。

 

 

 

「私も白石くんのこと好きだったから、いざ告白されてすごく恥ずかしくなっちゃって……ご、ごめんね? 本当はすっごく嬉しかったんだけど」

「そ、そうなんだ! いや、別に大丈夫だよ! 今嬉しすぎてそんなの全然気にならないから!」

 

 

 

 あーヤバい。 なんか頭と体がフワフワするぞ。 好きな子に好きだって言ってもらえるってなんて素晴らしいんだ…!

 

 

 

「ねぇ、白石くん」

「な、なにかな?」

「私たちって……これで恋人同士になるんだよね?」

「……う、うん!」

 

 

 

 こ、恋人……恋人かぁ…! 俺に恋人……しかも相手はあの相葉さんだ。 大丈夫かな、俺幸せすぎて明日死んだりしないよな?

 

 

 

「だ、だからさ……」

「ん?」

 

 

 

 

 

「恋人らしいこと……しない?」

「えっ!?」

 

 

 

 

 こ、恋人らしいことって………え、マジ?

マジなのか? いや、こんな急に……い、いいのか!?

 

 

 

「どう……かな?」

「す、するっ! するする!」

 

 

 

 チラリとこっちを見る相葉さんに向き合って力強く返事をする。

 

 か、覚悟を決めたぞ……俺、大人への第一歩を登るんだ…!

 

 

 

「白石くん……」

「相葉さん……」

 

 

 

 俺のことを上目遣いで見つめる相葉さん。可愛らしく桜色に染まった頬と潤んだ瞳に吸い込まれるようにして俺の顔はゆっくり近づく。

 

 互いの顔が段々と近づいていき……そして。

 

 

 

「んっ」

「……ん?」

「んっ!」

「……ん?」

 

 

 

 俺の体の前には相葉さんの手が差し出されていた。俺が不思議そうな目でそれを見つめると、相葉さんは力強く手を揺らした。

 

 

 

「手! つ、繋ごうよ…!」

「……手?」

「だ、だから……恋人らしく手を繋いで……」

「あっ、あぁ!! て、手ね! そういうことね! あははは…!」

 

 

 

 手繋ぎだったか……は、早とちりした……

 

 

 俺は自分の勘違いを誤魔化すように、後頭部を手でわしゃわしゃとしながら笑う。

 そんな俺を見た相葉さんは、ジト〜っとした視線をぶつけてきた。

 

 

 

「白石く〜ん? え、えっちなコト考えてたんでしょ……」ジト-

「えっ!? ち、違う違う! そんなことないです!」

「本当かなぁ……? そういうのはもっと仲良くなってからじゃないと……だ、ダメだからね!」

「は、はいっ!」

 

 

 相葉さんはビシッと指を立てて、俺の顔の前に持ってくる。

 

 

 うぅ……き、キスできると思ったけど……流石にまだ早かったかぁ。

 

 

 

「……白石くん」

「ん?」

 

 

 

 

 チュッ…

 

 

 

 

「えっ……?」

「い、今はこれだけ! じゃあね…!」

 

 

 

 俺の横に来た相葉さんは背伸びをする。そして柔らかい彼女の唇が俺の頬に……

 

 何が起きたのか理解できてない俺は、ぽかーんとした間抜けな顔を浮かべながら自分の頬を撫でる。

 

 

 

「あ、相葉さん! 今の! 今のって…!」

「……わ、わかるでしょ?」

「もう一回! もう一回お願い!」

「ふふっ、だ〜めっ♪」

「そ、そんなぁ……!」

 

 

 相葉さんは一瞬だけ小悪魔的な笑みを浮かべると、楽しそうにスキップをしながら俺の前を進み出す。

 

 

 

「白石くんっ!」

「な、なに?」

 

 

 

 相葉さんがくるりと振り返る。

 

 

 

 

 

 

「私のこと、ちゃんと大切にしてねっ!」

「……うん、もちろんだよ!」

 

 

 

 俺の言葉を聞いて満足そうに満面の笑みを浮かべた相葉さんは、勢いよく走ってきて俺の胸に飛び込んできた。

 

 なんとか相葉さんの体を受け止めて、ギュッと力強く抱きしめる。

 

 

 

 

「改めて、これからよろしくねっ! 白石くん!」

「こっちこそよろしく、相葉さん!」

 

 

 

 互いの顔を見てクスクスと笑う。

 

 

 あぁ……やっぱり俺は相葉さんが好きだ。

 

 

 これから先、きっと俺たちの間にはたくさんの困難や苦難が降りかかるだろう。

 でも相葉さんと一緒なら乗り越えられると俺は確信してる。

 

 

 

 俺は相葉さんの体を強く抱きしめる。それに応えるように相葉さんも腕に力を込める。

 

 

 まるで俺たちを祝福するように揺れる綺麗な花に囲まれながら、俺たちは時間も忘れて互いの体を抱きしめ続けた……

 

 

 

 

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