346プロの雑用バイト君 作:焼肉定食
「じゃあさ、その間はなるべく俺と一緒にいようよ。ほら、夜ご飯は一緒に食べたりさ」
「えっ……えぇっ!?」
俺からの提案に、ありすちゃんは目を見開いて大きな声を出した。
「い、一緒にいようって…!な、何を言ってるんですか!?」
「えっ?」
「き、急にそんなことを言われても困ります!そういうのはもっと段階を踏んでですね……」
「あ、ありすちゃん?」
頰を赤く染めたありすちゃんはそっぽを向いてしまい、何かをブツブツと呟いているがはっきりとは聞こえない。
俺はただ、1人でいる時間が多くて寂しいというありすちゃんと一緒に飯を食ったりすることで、少しでも寂しさを紛らわせてあげられたらいいなって思っただけなんだけど……何か怒らせてしまったんだろうか。
「だ、大体白石さんは……! い、いいんですか?」
「えっ、何が?」
「そ、その……私と白石さんは年齢の差もありますし……い、色々と世間的には大変なこともあるのではないかと思うんですけど……」モジモジ
「……? いや俺は別にいいっていうか、むしろ俺から提案したことだし、ありすちゃんの気持ち次第なんだけど」
「そ、そうなんですか。白石さんは……ほ、本気ということですね……」
……何か話が噛み合ってない気がするぞ。
ただありすちゃんのご両親の仕事が落ち着くまで一緒に飯を食おうっていう話なのに、さっきからありすちゃんはずっとモジモジとしている。
「あ、ありすちゃん?」
「ちょっ! ちょっと待ってください…! 白石さんが本気なら私も真剣に検討をして返事をしなければいけませんので…!」
「いや別にそこまで真剣に考えなくても……嫌なら別に嫌って言っていいんだよ?」
「そ、そんな簡単に引いていいんですか!?そんな軽い気持ちであんなことを言ったんですか!?」
だ、ダメだ…! もうありすちゃんは完全に暴走してて話がまともに通じない。一回落ち着いてもらわないと…!
俺は一度ありすちゃんに落ち着いてもらうために、肩を掴んで目をしっかりと見つめながら語りかける。
「ありすちゃん!」
「ひゃっ…! だ、ダメです白石さんっ! お、落ち着いてください…! こ、ここじゃ人に見られてしまいます……っ!」
「一回落ち着こう! ありすちゃん!」
「ま、待ってください…! こ、心の準備が……」
「あの……」
「「えっ?」」
突然、俺とありすちゃんに声がかけられる。2人して同時にそっちの方へと顔を向けると、気まずそうに視線をウロウロとさせる鷺沢さんが立っていた。
「ふ、文香さん!? お仕事はどうしたんですか!?」
「いえ……忘れ物をしたので……取りに来たのですが……その……」
「さ、鷺沢さん?」
「事案……というものでしょうか……?」
「ぶーっ! ち、違う違う! そういうんじゃないです!」
鷺沢さんは少しだけ警戒したような視線を俺に向けてくる。それに対して俺は必死に手を左右に動かして抗議をした。
ぐっ…! た、確かに客観的に見ればさっきの状況は俺が女子小学生に迫っている変態ロリコン野郎に見えていたかもしれない…! ま、まずいぞ……通報だけは回避しなくては…!
「さ、鷺沢さん! これには事情があるんです! 決してやましいことなんてしていないんですよ!」
「……そ、そう……ですか……」ジ-
「信じてないですよねその顔は!?」
「す、すみません……次の仕事がありますので……失礼します」
そう言って鷺沢さんはいそいそとソファーの上に落ちているハンカチを拾い上げると、ありすちゃんの方を見て一言呟いた。
「ありすちゃん……何かあったら……大きな声を出して……」
「鷺沢さん!? ま、マジで何もないんですってば!」
「……それでは、失礼します……」
「ちょっ! まだ話は終わってないぞーっ! マジで誤解ですからねーっ!」
俺の必死の訴えも虚しく、鷺沢さんはパタパタと可愛らしく走り去って行ってしまった。
「はぁ……」
「し、白石さん……一度落ち着いて話をしましょう」
「あ、うん……あれ? ありすちゃんは落ち着いたの?」
「はい、なんだか白石さんを見てたら落ち着きました。 自分より慌てている人を見たから冷静になったというか」
「あぁ……なるほど」
ありすちゃんはキリッとした表情を浮かべて淡々と言葉を並べていく。そこにさっきまでの慌てっぷりは無く、本人の言う通り落ち着きを取り戻したらしい。
まぁ……うん、あるよね。自分が泣いてる時に自分より泣きまくってる人を見ると冷静になったりするやつ。
てことはさっきまでの俺はありすちゃんから見れば相当必死に見えたんだろうなぁ……情けないぞ、俺。
「こほん……そ、それで? 先ほどの発言はどういう意図のものなのかを説明してください」
「あ、うん……というか言葉通りの意味で、ありすちゃんの両親が忙しくて1人の時間が多くなる間だけは、俺と一緒に夕飯食べたりしない? ってことなんだけど」
「……な、なるほど」
「俺の言い方がちょっと分かりづらかったかな?ごめんね」
「い、いえ! 白石さんは悪くないです…! む、むしろ私が少し動揺しすぎていたというか……」
とりあえず俺も一旦冷静にならなければ……深呼吸、深呼吸……ふぅ。 よしっ、頭が冷えてきたぞ。
「で、改めてなんだけど……どうかな、ありすちゃん?」
「……その、私としては特に断る理由も無いですし、むしろ白石さんがそこまで気にかけてくれてるのは本当にありがたいんですけど……」
「けど?」
「白石さんはいいんですか…? きっと私の両親はまだ2週間ほど忙しいですし、その間毎日私と食事をするなんて……時間とか費用とか」
お、おぉ……気を遣ってるつもりが逆に気を遣われてしまったぞ。しかも小学生の女の子に……
「ありすちゃんは偉いね、それに頭も良い」
「こ、今度は急に何を言ってるんですかっ!?」
「いや、俺が小学生の頃なんてさ、相手の事情とか考えて気を遣ったりとかさ、そんなの全然できてなかったから……それができるありすちゃんは偉いなって思ったんだよね」
「そ、そういう事でしたか……」
「うん、偉い偉い」ナデナデ
「きゃっ…! ちょ、ちょっと白石さん! 子ども扱いは……もぅ」プク-
なんだか無性にありすちゃんをよしよししてあげたくなったから頭を撫でる。 それに対して、ありすちゃんは最初こそ抵抗しようとしていたが、なんだかんだでなでなでを受け入れてくれたようだ。
「で、ありすちゃん。改めてどうかな?」
「……わかりました。よろしくお願いします、白石さん」
「よしっ! じゃあそういうことで。 あっ、一応お母さんには事情を伝えておいてね?」
「わかりました」
そう言うとありすちゃんはタブレットを取り出して画面をぽちぽちと叩き始めた。きっとお母さんにメッセージでも送っているんだろう。
「よしっ!じゃあ早速今日の晩飯の材料を買いに行こうか!」
「えっ!? ざ、材料って、もしかして夕飯は自炊ですか!?」
「そうだよ? じゃあ早速スーパーに行こう!」
「ちょっ! ま、待ってください白石さん!」
そんなこんなで、俺はありすちゃんと夕飯を共にするためにスーパーへと材料を買いに行った。
〜〜〜〜〜
「白石さん、料理できるんですか?」
「できないよ? 目玉焼きとかならなんとか」
「そ、それなのに自炊をしようとしてるんですか!?」
「うん。まさかありすちゃんにコンビニ弁当ばっか食べさせる訳にもいかないしね」
事務所から近くにあるスーパーの中、俺とありすちゃんは横に並んで買い物カートを押しながら売り物をチラチラと横目で確認する。
「それなら外食などは……」
「い、いやぁ〜……毎日外食はちょっと費用がね?」
「な、なるほど」
「まぁ今時料理なんて簡単でシンプルな物なら、レシピアプリを見ながら作れば余裕余裕!」
「イマイチ信用できないような……」
俺の横を歩くありすちゃんは、ジトーっとした目をして俺のことを見上げている。
め、めちゃくちゃ信用されてないな……確かに俺は普段から自炊とかしてる訳じゃないけどさ、流石にレシピを見ながら作れば人並みにはできる気がするんだよな。(根拠の無い自信)
「そういうありすちゃんはどうなの? 料理」
「いちごパスタなら」
「……まぁ俺も小学生の時とか料理した記憶無いしね」
「いちごパスタなら作れます」
「……まぁでも今時料理が出来なくても食べることには困らないからね」
「いちごパスタなら作れます!!」
いやだからいちごパスタって一体なんなのよ!? 名前を聞いただけでもうすごいゲテモノ感が拭い切れないんだけど…!
前に鷺沢さんにいちごパスタはやめとけみたいな警告を受けた事があるけど、ここまで来ると逆に気になってきたような……いややっぱりナシだな。
そんなこんなでありすちゃんと他愛のない会話をしながら、スーパーの端から端まで歩き回って夕飯の材料をカゴの中にぶち込んでいった。
え、何を作るのかって? それは作り始めてからのお楽しみ……って、別に大して凝ったモン作ったりはしないけどね。作らない、というよりは作れない、作る自信が無いって方が正しいかもしれないな。
「よーし、じゃあ早速事務所に戻ろうか」
「はい!……って、事務所で調理をするんですか?」
「まぁまぁ、そこは俺に任せといてよ」
「し、白石さんがそう言うなら……わかりました」
そしてレジに向かおうとしたその時……
「いちごおいしいよ〜! 甘くて大きないちご〜! お買い得だよ〜!」
レジの横で店員のおばちゃんが手に持ったベルをチリンチリンと鳴らしながら、パックの中に入った美味しそうないちごの宣伝を始めた。
そしてありすちゃんはというと、目をキラキラと輝かせながらジーッといちごの販売所を見つめている。
「………」ジ-
「……食べたい?」ニヤリ
「はっ! い、いえ…! そんなことは……」
「あははっ! いいのいいの、遠慮しなさんなって」
そう言って俺がいちごの販売所へと向かってカートを押していくと、その後ろからありすちゃんも恥ずかしそうに顔を赤くしながらついてくる。
「すみません、いちご1パックください」
「はいどうもー!」
「ほら、ありすちゃん」
「ど、どうも……えへへ」
俺がおばちゃんからいちごの入ったパックを受け取りそれをありすちゃんに渡すと、ありすちゃんは嬉しそうに微笑みながらソレを見つめて大事そうにカゴの中へと置いた。
「あら、偉いわね〜妹さん。お兄ちゃんとおつかいかしら?」
「い、妹!?」
「兄妹でおつかいなんて仲が良くていいわね〜! 私の子どもたちなんてあんまり仲が良くなくて〜」
「ははは……そうなんですか。それじゃあ僕たちはこれで」
何やら一人で盛り上がり始めた店員のおばちゃんに背を向けてレジへと向かう。ああいうのは長くなる可能性が高いから早めに切り上げるに限る。
「ふぅ……危なかった。危うくおばちゃんのエンドレス世間話に捕まるところだったよ」
「……兄妹、に……見えるんでしょうか? 私たち」
「ん?」
「あっ、いえその……先ほどの店員さんが私たちのことを兄妹だと勘違いしていたので」
んー、どうなんだろうか。まぁ俺とありすちゃんの年齢差的に普通のお友達には見えないだろうし……それなら消去法で兄妹ってことになるのかな。
「まぁ、人によっては兄妹に見えるのかも? 全然顔とか似てないけどね」
「……私がもう少し、大人だったら……別の関係に見えたりするんでしょうか…?」
「えっ?」
「た、例えば……こっ、ここここ……こいびと……とか」
「ごめん、ちょっとよく聞こえなかったかな」
「や、やっぱりなんでもありませんっ!」
ありすちゃんは大きな声を出して一方的に会話を終了させる。最後の方は声が小さくて全然何を言っているのか聞こえなかったなぁ。
〜〜〜〜
会計を済ませてスーパーから出た俺たちは、再び事務所へと戻るためにレジ袋を持ってゆっくりと歩いていた。
俺がいつも通りのペースで歩くと、歩幅的にありすちゃんを置き去りにすることになってしまうのでかなり気をつけて歩みを進める。
「例えばの話ですけど、白石さんが文香さんや美波さんと歩いていたとしても、兄妹に間違われたりするんでしょうか?」
「んー? どうだろうね。でも流石にそんな勘違いはされないんじゃないかな? それにほら、あの2人の兄妹だったとしたら俺はもうちょっとイケメンだろうし、釣り合ってないよ」
実際、俺と鷺沢さんや新田先輩が二人並んで歩いてたらどんな関係に見えるんだろう。恋人……には見えないよな。流石に釣り合ってなさすぎる。
「以前から思っていましたけど、白石さんは自分を過小評価しすぎだと思います。そこまでダメダメな人じゃないと思いますよ」
「えっ、もしかして俺は自分で気づいてないだけでイケメンだったり……?」
「………」シラ-
「コラコラ、冗談だからそんな可哀想なモノを見る目で俺を見るんじゃない。泣きそうになっちゃうでしょうが」
めっちゃ白い目で見られた……ちょっとしたジョークのつもりだったのに泣きそう。
と、そんなこんなで俺たちは事務所へと戻ってきた。事務所の中ですれ違う知り合いのアイドルさんたちからは、俺の手に持ってるレジ袋のことに関して質問されたりしたが、まぁその辺は適当に誤魔化しておいた。
「よし、じゃあ行こっか。ありすちゃん」
「どこに行くんですか?」
「もうすぐ近くだよ……ほら、着いた」
「ここって……給湯室ですか…?」
俺たちがやってきたのは事務所の端にある給湯室と名付けられた、実質的にはただの休憩室のような部屋だ。以前姫川さんとコンペで出す料理の試作品練習に使った部屋でもある。
「ここで調理をして食事を取るということですか? でも、いいんでしょうか…?」
「それに関しては大丈夫。千川さんにちゃんと許可は取ってあるよ」
「そうなんですか?」
俺も最初は流石に無理かなぁ……とか思ってたけど、千川さんにそれとなく事情を話したらウキウキで許可してくれたんだよなぁ。
『あそこの部屋は人が全然来ないから好きに使っていいですよ♪』とか『ありすちゃんのこと、ちゃんと面倒見てあげてくださいね♪』とか言われたっけなぁ。
あんなに快く了承してくれるとか、やっぱり千川さんは天使のような人だ。前に知り合いのプロデューサーさんが悪魔のような一面もあるんだぞ、とか言ってたけどそんな事無いよな!
「よし、じゃあ早速始めようか」
「私は何をすれば…?」
「まぁまぁ、ありすちゃんはそこでくつろいでてよ。ここは俺に任せて任せて」
「えぇ……大丈夫なんですか?」
「わーお、すっごい不安そうな顔……」
ここは歳上の威厳を見せるためにも頑張らないといけないな。ありすちゃんに不甲斐ないところは見せられないぜ…!
「よし、じゃあまずはスマホでレシピを検索して……玉ねぎをみじん切り? みじん切りってとりあえず細かくすればいいんだっけ……」ボソボソ
(ふ、不安です……)
不安そうな顔を浮かべるありすちゃんをよそに、俺は今日の夕飯であるハンバーグの調理に取り掛かったのだが……
「塩コショウ少々……少々ってどんくらいだよ」
「適量って……さっきから適量とか少々とか多すぎない?」
「ひき肉を粘り気が出るまで捏ねる……どんくらい粘り気が出ればいいんだ…?」
「し、白石さん! 私も手伝いますから!」
「えっ? いいよいいよ。ありすちゃんはくつろいでて……」
「い、いえ! 正直言って見てられないといいますかなんというか……とにかく私も参戦します!」
「うっ……す、すまん。ありすちゃん」
そう言ってありすちゃんは俺の横に立ち、洗面台で念入りに手を洗い出した。
「それじゃあ始めましょうか」
「よろしくお願い致します。橘先生」
「せ、先生……ふふっ、いい響きですね」フンス
こうして俺とありすちゃんのほぼ料理素人コンビによる夕飯作りが開始された。
二人であれやこれやと言いながら、レシピを確認しつつ順調?に調理は進んでいった。今は2人して手に取ったひき肉の塊を、ペシペシと投げて楕円形に形を整えている。
「白石さん、それは少し大きすぎませんか?」
「俺は体がデカいからこれくらいでいいの」
「ズルいですよ。それなら私ももう少しだけ大きくしてしまいますからね」
「いいけど……ありすちゃん食べきれる?」
「よ、余裕ですよ!」
ありすちゃんは夢中になって手の中の肉をペシペシとしている。
……こんなことで少しでもありすちゃんの寂しい気持ちが紛れてるといいんだけどな。
「白石さん」
「ん?」
「……ありがとうございます」
「えっ?」
こっちの顔を見ることはなく、肉をペシペシと叩きながらありすちゃんは静かに語り始める。
「私のために、わざわざ付き合って頂いてありがとうございます」
「……いや、別にいいよ。俺も1人で飯食うよりは2人の方がいいかなって思っただけだし」
「ふふっ、そうですか」
「そーなの」
「……楽しいものですね、誰かと一緒に料理を作るというのは」フフッ
その言葉を最後に俺たちは会話を止めて、ただひたすら夢中に肉を捏ね続けた。
そしてそれから数十分後、お世辞にも綺麗な形とは言えない歪な形をしたハンバーグが完成した。
「おぉ……意外とできるもんだな〜!」
「は、はい! ちゃんと美味しそうです!」
出来上がったハンバーグを皿に乗せて眺めている俺たちは、パチパチと拍手をして自画自賛をする。ハンバーグの他にはレンジでチンしたご飯とインスタントの味噌汁がテーブルに並んでいる。
「それじゃあ早速食べようか」
「はい!」
「「いただきます!」」
割り箸がパキッと割れる音が響く。そして俺たちはそれぞれがハンバーグを掴んで口に運び咀嚼する。
「お、美味しいです!」
「だね、ちゃんとハンバーグだ」
「ふふっ、なんですかその感想は」
他愛もない会話をしながらも俺たちは箸を止めない。自分たちで作った物を食べるという感動を噛み締めながらハンバーグを堪能する。
「自分で作ったからなのか、なんだかとても美味しく感じます……いたって普通のハンバーグなのに」
「そうだねぇ」モグモグ
「白石さん、口元にご飯粒がついてますよ。まったく……子どもじゃないんですからしっかりしてください」クスッ
女子小学生に注意されてしまった……
と、まぁそんなこんなで俺とありすちゃん2人での夕飯は進んでいき、食べ始めてから数十分もする頃には皿の上に乗っていたハンバーグは綺麗に平らげられた。
それから少しの間食後の休憩時間をとって、夜の8時になった頃を見計らって片付けを開始する。
「ふぅ……じゃあ片付けたらそろそろ帰ろうか。車使っていいって千川さんに言われてるから家まで送るよ」
「あっ……そうですか」
「まだお母さんたちは家に帰ってない?」
「……はい。最近はもう11時を過ぎることも多くて、時には日付を跨ぐこともあります」
まじかぁ……ありすちゃんの両親はよほど忙しいんだろうな。何の仕事してるんだろう。
「ありすちゃん」
「……はい?」
「明日もこの部屋に集合ね。また一緒にご飯食べよう」
「…! は、はい!」
ありすちゃんは元気に返事をする。少しでもありすちゃんの寂しさを紛らわせることができたのなら、今日行動を起こした甲斐があったというものだ。
「さーて、じゃあとっとと片付けちゃおうか!」
「はい!」
こうして、俺とありすちゃんの一緒に夕飯生活の1日目が終了した。