346プロの雑用バイト君   作:焼肉定食

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海合宿に行こう! 2

 

 

 

「はい、はい……今俺の横にいますよ。はい、大丈夫です。俺が乗っけていくんで。 1人なら何とかなりますよ。はい、失礼します」

 

 

 とりあえず連絡先を知っているプロデューサーさんの1人に連絡を入れておいた。

 ひとまずは俺がこのまま車に乗せていき、次の休憩所で再びバスに合流することが決まったということを横でしょぼくれているユッコに伝える。

 

 

「と、いう訳で俺の車に乗ることになったんだけど……そろそろ機嫌直そうか」

「だ、だって〜! 私を置いていくなんて酷いですよ! 私がいるかいないかなんて簡単に気づきそうなもんじゃないですか〜!」

「まぁ……確かに。声デカいもんね」

「うわ〜ん!」

 

 

 よほど忘れられていたことがショックだったのか、ユッコは大きな声でワンワンと騒いでいる。

 

 まぁ確かに少し不憫ではあるな。何とか機嫌を直してもらうことはできないか……

 

 

 

「あー、まぁそう落ち込まないでよ…… それじゃあ俺が何か買ってあげるからさ、 何か食べたい物とかない?」

「本当ですか!? ごちそうになります!」

「……一瞬で立ち直ったな」

「えっ? あ、あはは……いや落ち込んでたのは本当ですよ!? でも食べ物を買ってくれるのがそれ以上に嬉しいだけです!」

 

 

 立ち上がって胸の前で握り拳を作るユッコ。

 

 ……確かに機嫌が直ればいいなとは思って提案したことだけど、何というか……すごい単純だな。

 

 

「それより乗っけてくれるのはありがたいんですけど、白石さんの車に私が乗るスペースってあるんですか? 見たところ荷物が……」

「……それなんだけどさ、ユッコの言う通り荷物が多くて乗るスペースがないんだよ。 だから俺の膝の上に乗っけていくことになるんだけど……」

「えっ!? ひ、膝の上ですかぁ!? い、いや……さ、流石に私でもそれは少し恥ずかしいと言いますか……」モジモジ

 

 

 うん。普通こういうリアクションになるよな……グッジョブユッコ。俺の期待通りのリアクションだぜ。やっぱり水本さんは特別天然記念生物だ。

 

 

「いや、今のは冗談だから気にしないで。1人くらいなら全然乗れるから」

「えっ!? へ、変なジョーク言わないでくださいよぉ〜!」

「あははっ、ごめんごめん」

「まったく……!」

 

 

 その後はプリプリと可愛らしく怒るユッコに何が食べたいのか聞いて、それを購入して車に乗り込んだのだった……

 

 ちなみに食べ物を購入してやったら、ユッコはまたすぐにご機嫌になっていた。

 

 

 

 

 〜〜〜〜

 

 

 

 

「ん〜! 美味しいです〜!」

「それはよかった」

「あ〜むっ!」

 

 

 再び高速道路に入り俺がハンドルを握っている横でユッコは、先ほど購入したジャンボフランクフルトに幸せそうな表情を浮かべてかぶりついていた。

 

 さっきまで静かだった車内がいきなり賑やかになったなぁ。

 

 

「いや〜! それにしても白石さんがまだ残っていてくれて助かりましたよ〜」

「ははっ、俺も驚いたよ。バスがもう出ていったのにユッコが走ってきたんだからさ」

「いや!絶対私の方が白石さんより驚きましたよ!」

「何のマウントだよ……」

 

 

 まぁでも、今時はスマホがあるから最悪何とかなるような気もするけどね。本当にスマホって便利。

 

 

「んっ……おいしいです〜!」

「そうかそうか。ゆっくりとお食べ」

 

「ふぅ……それにしてもコレ、おっきいですねぇ。こんなに大きいのは初めてですよ」

「……そうか」

 

「ふぅ……アゴが疲れちゃいますね、コレをずっと食べてると。んっ……あむっ」

「……そ、そうだね」

 

「あっ…! マスタードが落ちちゃいそうです! んっ……ぺろっ」

「……」

 

 

 

 な、何か……食べ方がエロ……

 

 

 い、いやいや! 何を考えてるんだ俺は!

そんな事ない!ただ普通にフランクフルト食ってるだけだからね!?

 

 というか俺は何を意識してるんだよ。相手はユッコじゃないか。実質小学生みたいなもんだぞ!

 いやなんなら中身はありすちゃんとかの方がしっかりしてる可能性もあるな。

 

 

 

「白石さん、先ほどから何やら難しい顔をしていますけど大丈夫ですか?」モグモグ

「あ、あぁ……大丈夫だよ」

「そうですか? ふぅ……ごちそうさまでした! 白石さん、ありがとうございます!」

「ど、どういたしまして……あはは」

 

 

 余程美味しかったのか、食べ終わったユッコは満面の笑みを浮かべながらお腹をパンパンと叩いている。

 

 まぁ……こんなに喜んでくれるなら買ってあげた甲斐があるってものだ。

 

 

 

「あっ! 茜ちゃんからメールが!」

 

 

 ユッコはそう言うとスマホの画面を触って、メッセージのやり取りを開始した。

 

 

 

 …なんか仕方ないとはいえ少し可哀想だな。本来ならユッコも今頃バスの中でアイドルのみんなと楽しくやっていたんだろうな……とか考えると。

 

 

「ユッコ」

「どうしました?」

「あーその……残念だったな」

「え?何がですか?」

「いや何がって……その、本当はみんなと一緒にバスで行きたかっただろうな〜って、なるべく早く次の休憩所で合流できるといいんだけどな」

 

 

 例えば友だちとみんなで旅行に行くのに、自分だけ別行動で現地集合とかになったら……俺だったらやっぱり寂しいと思う。

 

 

「そんなの全然気にしてませんよ? それに白石さんも私のお友達ですから!」

「……ゆ、ユッコ……!」ジ-ン

 

 

 や、やばい……! 何かめちゃくちゃ感動したし嬉しいぞ。

 

 前から分かってはいたけど、めちゃくちゃいい奴なんだよな……ユッコは。今改めて実感したよ。

 

 

「それに私にはサイキックテレパシーがありますからね! 離れていても皆さんとは脳内同士でメッセージのやり取りができますから!

む、むむむむ〜!」

「バスの皆、何て言ってる?」

「………」

「おい、無視すな」

「きょ、今日は少しテレパシーの調子が……」

 

 

 

 ユッコはそんな事を言いながら額に指を当てて唸っている。

 

 俺は一人でいるのも全然嫌いじゃないけど、こうやって誰かと話すのはやっぱり楽しいもんだな。

 

 

 

 〜〜〜〜

 

 

 

 それから1時間くらい経った後に次の休憩所へと到着した俺は、スヤスヤと隣で眠りこけるユッコを起こして皆の元へと送り出した。

 

 

 そして休憩開始から数分後、バスが出発するのを見て俺も車に乗り込もうとしたその時……

 

 

 

「ま、待ってくださ〜い! 白石さん! 置いていかないでくださいよ〜!」

「えっ……ゆ、ユッコ!? 何してんの!?」

「はぁ……はぁ……ふぅ」

 

 

 先ほどの時と同じように、向こうから焦った顔をしたユッコが走ってきた。

 俺の前まで来たユッコは膝に手をついて呼吸を整えている。

 

 

「な、何してんだよ! まさかまたバスに置いていかれたのか…!?」

「お、置いていかれたとか言わないでください! 今回はちゃんとプロデューサーには許可を取っています!」

「はぁ…?」

「さぁ白石さん! 一緒に行きましょう!」

 

 

 するとユッコはさも当然かのように、俺の乗る車の助手席へと乗り込んだ。

 俺は何が何だかよくわからないまま、車に乗り込んでユッコへと話しかける。

 

 

「ちょ、ちょっとちょっと……せっかくバスの皆と合流できたんだから、わざわざ俺の車で行くこともないだろ?」

「何を水臭いことを言ってるんですか! ここまで一緒に来たんですから最後まで一緒に行きましょうよ!」

「……ま、マジ?」

「それにフランクフルトの恩もありますからね! 私が助手席でしっかりとナビをしてあげますよ〜!」

 

 

 ユッコは楽しそうにニコニコと笑っている。そんな姿を見ていると、俺も自然と笑顔が湧いてきた。

 

 

「ナビをしてくれるのはありがたいけど、それなら次は寝ないでくれよ?」

「……善処しま〜す」

「ははっ、じゃあ出発しますか!」

「はい! 合宿所までひとっ飛びです!」

 

 

 そうして俺とユッコを乗せた車は再び高速道路を走り出した。合宿所までは後少しだ。

 

 

 

 

 〜〜〜〜〜

 

 

 

「着きました〜!」

「ふぅ……お疲れ〜」

「いえいえ! 私は乗っていただけですから!お疲れなのは白石さんの方でしょう!」

「そんなことないよ。俺は平気だから」

 

 

 合宿所に到着して車から降りると、駐車場からも見えるくらい近くに海が広がっていた。

 

 うーん……やっぱ海を見るとテンションが上がってくるよね。特別好きな訳ではないけど。

 

 

 

「あ、ほらユッコ。プロデューサーさんが集合をかけてるから行ってきたら?」

「はい! それでは白石さん! また後ほどお会いしましょう!」

「はいよ〜」

 

 

 そう言うとユッコは笑顔でブンブンと手を振り回してアイドルたちが集合している方へと駆けていった。

 

 ……何か元気な犬みたいだな。

 

 

 

 

「やぁ白石くん。運転お疲れ様」

「あ、おはようございます。プロデューサーさんもお疲れ様です」

「裕子のことは申し訳なかったね。白石くんに迷惑をかけてしまったよ」

「いえいえ、俺もその……堀さんと一緒で結構楽しかったですから」

 

 

 俺が1人で体を伸ばしていると、向こうの方から歩いてきたプロデューサーさんの1人が話しかけてきた。

 ちなみにこの人は前にありすちゃんと鷺沢さんと海で仕事した時にいたプロデューサーさんなので顔見知りだ。

 

 

 

「白石くん、この後のことなんだけど」

「あ、はい。俺は何をすれば……」

「とりあえず皆と一緒に合宿所に向かってくれるかな? そこに宿舎の管理人さんがいるから後はその人の指示に従ってほしい」

「わかりました」

 

 

 さて……運転が終わったところで一息ついてる暇はないな。まぁでもバイト代のためにしっかりと働かないとな!

 

 とりあえず宿舎に向かうか。

 

 

 

「おはようございます、白石くん」

「あ、高垣さん。おはようございます」

 

 

 駐車場を出て宿舎までの道を歩き始めた時、突然高垣さんが話しかけてきてくれたのでそのまま並んで宿舎を目指す。

 

 ……相変わらず綺麗な人だなぁ。

 

 

 

「白石くんも合宿に来ていたんですね」

「まぁ……はい。ぶっちゃけて言うとバイト代のためですから、あまり褒められた理由じゃないですけどね」

「そんなことありませんよ? お金を稼ぐために頑張る。至って普通のことです」

「そう……ですね。確かに」

 

 

 やっぱり酔ってないと頼れる綺麗なお姉さんって感じだよなぁ。まぁそれもそうか。高垣さんは25歳で俺より7つも歳上なんだし。

 

 

 

「高垣さんも合宿参加してたんですね」

「はい。海はたのseaですから♪」

「……」

 

 

 シラフでもこのダジャレは健在だけど。

 

 

「冗談は抜きにしても、海って見ていると何だか心が落ち着きますからね」

「そうっすね……海は生命の生みの親だからじゃないですかね」

「まぁ…! お上手ですね♪」

 

 

 高垣さんは俺の放ったしょうもないダジャレに対して、パンと手を叩いてニッコリと笑って喜んでいる。

 

 最近知った高垣さんの生態の一つとして、ダジャレを言った後にダジャレで返したりするとめちゃくちゃ喜んでくれる。というものがある。

 どんなくだらないダジャレでも褒めてくれたり喜んでくれるので、何だか言ってるこっちが気持ちよくなるという効果付きだ。

 

 

 

 とまぁ、そんなくだらない会話をしながら高垣さんと宿舎までの道を歩いた。

 

 宿舎に着いた後、アイドルたちはそれぞれに割り当てられた部屋に向かい荷物を置いめ早速レッスンへと向かった。

 俺も自分に割り当てられた部屋へと向かい荷物を置く。そして宿舎の管理人さんがいるという部屋へと向かう。

 

 

 

「こんにちは白石くん! アタシはこの宿舎の管理人で山田だよ。まぁおばちゃんとでも呼んで頂戴! 皆そう呼んでるから!」

「よ、よろしくお願いします。や、山田さん」

 

 

 宿舎の管理人さん……通称おばちゃんはガハハと大きく口を開けて笑う姿が様になっている恰幅のいい女性だった。

 

 いい人そうで良かった。いやマジでね。

 

 

 

「白石くんのことは好きにコキ使っていいって聞いてるからね! 沢山やる事はあるけど手伝ってもらうよ!」

「わ、わかりました!」

「じゃあまずは……風呂掃除でもお願いしようかね! アタシは夕食の仕込みをしてるから、何か困ったことがあったらキッチンにおいで」

「はい!」

 

 

 そうして俺の仕事が始まったのだった……

 

 

 

 

 

 〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「ふぅ〜……疲れたぁ……」

 

 

 時刻は夜の9時。俺は部屋の真ん中に敷かれた布団の上に寝転がり大の字になる。

 

 足を広げると浴衣の隙間からパンツ見えそうになるけど、1人だから何も気にする必要はない。

 

 

 

 ……それにしても初日から中々大変だった。

 

 

 いや全然描写はされてないけど本当に色々とやってたんだよ!

 

 まずめちゃくちゃデカい大浴場の掃除をして、次に玄関と廊下の清掃に備品の補充。

 そしてその次にはおばちゃんの夕食の仕込みを手伝って配膳もした。これがまぁ大変で……理由は至ってシンプルにアイドルの人数が多いからだ。

 

 その後は夕食の片付けを済ませて、おばちゃんと2人で皿洗いをする。その後に作ってもらった賄いを裏でひっそりと食べて自分の部屋に帰り、部屋に付いているシャワーを浴びて今に至るって感じだ。 

 

 

 あ、ちなみに俺の部屋にいるのは俺1人だ。その分他の部屋よりは小さいけど、変にプロデューサーさんたちと同じ部屋とかだと気まずいだろうから助かる。

 プロデューサーさんたちもその辺の事を考えて部屋割りをしてくれたのかもな。

 

 

 そんな訳で俺は誰の目を気にすることもなく、1人でのびのびと布団の柔らかさを堪能していた。

 

 

 

「……喉乾いたな」

 

 

 

 唐突に飲み物が飲みたくなったから俺は、部屋を飛び出して玄関に置いてある自販機の元へと向かった。

 

 

 〜〜〜〜

 

 

 

「あ、白石さん! こんばんは!!!」

「こんばんは〜」

「やっほ〜」

 

「えーっと……あ、ポジティブパッションの3人!」

 

「お、やっと私たちのユニット名を覚えてくれたんだね。しらしー♪」

「ふふっ、嬉しいですね」

「ありがとうございます!」

 

 

 自販機のお茶のボタンを押した瞬間に後ろから声をかけられたので振り返ると、そこには全員漏れなく揃って浴衣姿の本田さん高森さん日野さんの姿があった。

 

 ……浴衣姿の破壊力たるや。やばいね。

 

 

 あ、ちなみに俺の言ったポジティブパッションっていうのはこの3人からなるアイドルユニットの名称だ。

 

 

 

「白石さん、今日は色々と頑張ってくださったんですよね? ありがとうございます」

「い、いやいや! そういう雑用をするために着いてきたんだしね。頑張らないと俺の存在価値が無くなるからさ」

 

 

 高森さんが綺麗にお辞儀をしたので頭を上げてくれるようにお願いする。俺はここに来たバイトとして当然の働きをしただけだしね。

 

 

「それより、3人はお揃いでどうしたの?」

「私たちは風呂上がりだよ〜」

「いいお湯でした!!!」

 

 

 ほぅ……そういえば3人とも少し髪が湿っていて、ほんのり頬がピンク色に染まってるな。

 

 

 ………ふむ。すごい……良いね!

 

 

 

「こらこらムッツリボーイ。いくら未央ちゃんたちの浴衣姿が色っぽいからってガン見は良くないぞ〜?」

「ちょ、ちょっと未央ちゃん……!」

「ムッツリって……何ですか!!!」

 

 

 ニヤニヤと笑いながら人差し指で俺のことを突く本田さん。そんな本田さんを嗜める高森さんに、いつも通りの日野さん。

 

 うーん……3人とも元気だなぁ。

 

 

 

「ちょっと待って欲しい本田さん。俺は別にムッツリなんかじゃないぞ」

「ダウト!」

「いやいや、ダウトじゃなくてだね……た、高森さん、俺って別にムッツリじゃないよね?」

「……」ニコニコ

「えっ……なんで何も言ってくれないの!?」

「走りたくなってきましたぁぁぁ!!!」

 

 

 高森さんは俺の問いかけに対して何も答えることなく満面の笑みでニコニコとするだけだ。

 

 え? まさか俺ってそんなイメージを持たれちゃってるの? もしかしてアイドルさんたちの中で白石=ムッツリ童貞とかいう認識が定着したりしてるの!?

 

 そして日野さんは変わらず元気だ。

 

 

「あ、そうだしらしー?私たちこれからピンチェ部屋でトランプするんだけど一緒にどう?」

「えっ……」

「トライアドの3人も来ますよ!!!」

「どうですか?白石さん」

 

 

 い、いやいやいや……ちょっと待てよ。それって浴衣の美少女軍団の中に童貞小僧を1人放り込むってことだよな…?

 

 む、無理無理無理!! 絶対に無理だ! そんな空間に入ったら俺はきっと死んでしまう!

 

 

「……い、いや……遠慮しとくよ。明日のやる事の準備もあるからさ」

「え〜? まぁそれなら仕方ないけどさ〜」

「残念ですね……」

「何だかお腹が空いてきましたね!!!」

 

 

 

 うっ……お、俺だって本当ならその夢の空間に足を踏み入れてみたいさ! でも無理だ!そんなこと俺にはできない! 流石にそこへ飛び込んでいく勇気は俺に無い……

 

 あと日野さんが元気すぎる。

 

 

 

「じゃあ残念だけど私たちは行くね?」

「うん、楽しんでね」

「じゃあね〜!おやすみ!」

 

 

 そう言うと3人は揃って部屋の方へと戻っていった……と思ったら本田さんが振り返って声をかけてきた。

 

 

「あ、そうだ! 浴衣似合ってるぞしらしー!じゃあね〜!」

「え…?あ、あぁ……うん。じゃあね……」

 

 

 それだけを言い残すと、今度こそ3人は部屋へと戻っていった。

 

 いや、浴衣が似合ってるのは君たちなんだよなぁ……正直かなりヤバかったぞ。

 

 

 そして俺は、良いもん見れたなぁ……とか考えながら購入したお茶を飲みながら部屋に戻っていった。

 

 やっぱり勇気を出して浴衣美少女だらけの花園に飛び込んでいくべきだったかなぁ。今後一生お目にかかれない光景かもだし……まぁ今更後悔しても遅いんだけどね。

 

 

 しかしこの後、俺はこの選択をさらに深く後悔をすることになるのだが……この時の俺は知る由も無かった。

 

 

 

 

 〜〜〜〜

 

 

 

 

 部屋に戻った俺は1人寂しく布団の上に寝転がる。何をするでもなく天井を見つめて何か面白い模様でもないかと探す意味のない時間を過ごす。

 

 

「……今頃本田さんたちはトランプで大盛り上がりか」

 

 

 うわぁ〜……やっぱり行くべきだったよなぁ。こういうところでビビってるから俺はいつまで経っても彼女の1人もできない悲しき童貞なんだよなぁ……

 

 いや、別に今日誘いに乗ったからといってその場で何か起きる訳ではないけど、ああいう時に勇気を出せないといざという時に何もできないで終わっちゃうんだろうなって。

 

 

「はぁ……」

 

 

 コンコンコンコン

 

 

「ん?」

 

 

 ビビりな自分に対しての嫌悪感を覚えながら深いため息を吐いたその瞬間、俺の部屋の扉が軽くノックされた。

 

 

「誰だぁ?こんな時間に」

 

 

 時刻は夜の10時。こんな時間に一体どこの誰が俺に何の用だと思いながら俺は扉を開けた。

 

 

「今開けますよ〜」

 

 

 ガラッ

 

 

「何か御用でしょうか……」

 

 

 

「こんばんは、白石くん」ニコッ

 

 

「に、新田先輩……!?」

 

 

 ドアを開けるとそこには浴衣姿の新田先輩がニッコリと笑って手を振っていた。何かドアを開けた瞬間にふわりと良い香りがしたような気がするんだけど、やっぱり女神はすごいな……

 

 

「や、やっほ……白石くん。あたしもいるよ……」ビクビク

「え、塩見さん……? 何をして……あっ…!」

 

 

 少し目線を下げると、そこには新田先輩にガッチリと首根っこを掴まれて引きずられてきた塩見さんが震えながら手を上げていた。

 

 

 俺はその瞬間思い出した。この場にいるのは俺と塩見さんと笑顔の新田先輩。

 

 この組み合わせ……今朝もあったぞ……。

 

 

 

 

「ふふっ、周子ちゃんったら私が部屋を訪ねたら布団に隠れてたのよ? 紗枝ちゃんがそこに隠れてるって教えてくれたんだけどね。何で隠れたりしたのかな? ふふっ……おかしいね♪」

「は、ははは……そ、そうですね……」

 

 

 や、やばい……新田先輩、めちゃくちゃ笑顔なのに何だこのオーラは。一歩も動くことができない。

 

 

 これは……恐怖…!?

 

 

「さて、ここじゃ目立つから白石くんの部屋で始めよっか。役者も揃ったことだしね」ニコニコ

「「ひっ……」」

 

 

 多分俺と塩見さんは今同じシーンを思い出している。今朝見たあの光景を……

 

 

『とりあえず2人は後でお説教をしないといけないね?』ニコッ

 

 

 ……ダメだ。終わった。もう逃げることはできない。

 

 

 

「さて、じゃあ2人とも……」

 

「「……」」ゴクリ

 

 

 浴衣美女である新田先輩と塩見さんが俺の部屋に来るとか普通はドキドキイベントのはずなんだけど……俺は今別の今で心臓がドッキドキだ。

 

 

 

「"お話"……しよっか?」ニッコリ

 

 

 

 あぁ……やっぱり本田さんたちのいる部屋に行っとけばよかったなぁ……。は、ははは……

 

 

 

 

 

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