346プロの雑用バイト君   作:焼肉定食

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占いは……たまに当たることもある

 

 変な占いの影響か、とてつもなく運の悪い日に偶然出会った白菊ほたるちゃん。

 俺は今、そんなほたるちゃんと2人で屋根のあるベンチに座り、ザーザーと未だ強く降り続ける雨が早く止まないかと思いながら雑談を交わしていた。

 

 

「へー、ほたるちゃん13歳なんだ」

「は、はい……13歳です」

 

 

 ほたるちゃん13歳なのか……正直15歳くらいかと思ってたけど、かなり年下の子だったんだな。

 というか13歳って事は去年までランドセル背負ってたんだよね? その割にしっかりしすぎじゃないかな…? 俺が13の頃なんてもっとギャーギャーと騒ぎまくってた気がするぞ。

 

 

「白石さんは、おいくつなんですか?」

「俺もほたるちゃんと同じ13歳だよ」

「えっ、えぇっ!? お、同い年なんですか!?」

「ごめん、ちょっとした冗談のつもりだったんだけど」

「えっ……? あ、あぅ」

 

 

 冗談を本気で捉えてしまったのが恥ずかしいのか、ほたるちゃんは顔を赤くして下を向いてしまった。

 

 

「本当は18だよ」

「18……大人の方ですね…」

「いやいや、全然そんなことないよ」

 

 

 なんなら俺よりもほたるちゃんの方が大人っぽいまであるんじゃないか……? 俺なんて体だけデカくなってるけど中身はまだ中学生か高校生みたいなもんだし。

 

 

「そういえばほたるちゃんは……えーっと、あんまり運が良くないんだっけ?」

「あ、はい……そうなんです」

「確かに、こんな急に大雨に降られちゃうのはちょっと運が悪かったね」

 

 

「でも、今日は私にしてはちょっとだけ運が良いんです…!」

「えっ?」

 

 

 少しだけ笑顔を浮かべてほたるちゃんはそう言った。あんなびしょびしょになるくらい濡れてるのに……何かそれ以前に良いことがあったのかな?

 

 

「今日は濡れて困るような物を持っていないので、運が良かったんですよ…! ラッキーです…!」

「……えっ?」

「手帳とかは濡れたら困りますけど、今日はそういうのを持っていないんです…!」

「それ……そっか! それは良かったね!」

「はい!」

 

 

 それだけ…? と一瞬聞きそうになってしまったのを寸前のところで呑み込む。

 人によって幸福の感じ方はそれぞれで、ほたるちゃんにとってはさっきのソレがとても幸福なことなのだろう。 普段からそれだけ不運な目に遭っているということでもあるが、小さな事で幸福を感じられるのは良いことだと思う。

 

 それにしても、やっぱりほたるちゃんはなんかこう……護ってあげたくなる子だな…!

 この子の笑顔は護らなければならないという使命感すら感じてしまうぞ。

 

 

「あれ? 雨……ちょっとだけ弱くなってきた?」

「あっ、そうですね」

 

 

 ついつい話し込んでしまって気が付かなかったが、いつの間にか雨が弱まってきている。完全に止んでいる訳ではないが、確実にさっきよりは弱くなっていた。

 

 

「もう少しで帰れそうですね」

「そうだね。いや〜、もう何も起こらないうちに早いとこ帰りたいよ〜」

「ふふっ、そうですね」

「まぁでも……今日は既にかなり不運な目にあったから、流石にもう何も無いんじゃないかとは思うけどね」アハハ

「あ、あの……それはフラグのような……」

 

 

 いやいや。流石にそんな漫画やアニメみたいな展開になんてなる訳がな……

 

 

 

 グルルッ…!

 

 

「ん? なんの音だ?」

「し、白石さんっ! あ、アレ…っ!」

「……うおっ!?」

 

 

 生物としての本能が危険だと告げているような感覚を覚える。ほたるちゃんが指を差した方へと顔を向けると、そこには大きくてこちらを睨みながら唸る野犬が3匹も立っていた。

 

 というか野犬!? こんな街中の公園にいるのおかしくねぇ!? どんだけ運悪いのさ今日の俺とほたるちゃん!

 

 

「……な、なんかめっちゃこっち見てない?」

「そ、そうですね……」

「これって、結構ヤバい感じ……だよね?」

「は、はい」

 

 

「逃げよう!」

「は、はいぃっ…!」

 

 

 ほたるちゃんと2人で、まだ雨も完全に止んでいないが屋根の外に飛び出して走り出す。

 野犬たちは俺たちの背中にギャンギャンと大きな叫び声を浴びせてくる。威嚇しているだけで追いかけてくる様子は無いのが幸いだ。

 

 とにかく俺たちは夢中で走り続け、住宅街を抜けて大きな道路沿いの道へとやってきた。

 

 

「はぁ……っ! はぁ……っ! あー!ビックリした!」

「はぁ……はぁ……そ、そうですね」

 

 

 後ろから野犬は追ってきていないことを確認して、安全を確保した俺たちは2人して膝に手をついて呼吸を整える。

 

 野犬に睨まれている事に気づいた瞬間は本当に身の危険を感じた……あー怖かった。

 

 

「ほたるちゃん、大丈夫? 結構全力ダッシュしちゃったけど」

「ふぅ……だ、大丈夫です。もう落ち着いてきました」

「へぇ〜結構体力あるんだね」

「はい……レッスンで鍛えられてるのかもしれません」

「ふーん……えっ、レッスン?」

「あっ、レッスンっていうのは……あれ?」

 

 

 ほたるちゃんが何かを言いかけたその時、止みかけていたはずの雨がまたしても強い勢いを取り戻した。傘もさしていない俺たちはまた体を濡らす。

 

 

「うわ……どんだけ運悪いんだ今日の俺」

「す、すみません……きっと私と一緒にいるから不幸に巻き込まれて」

「あっ! ち、違う違う! ほたるちゃんのせいじゃないって! 元々今日の俺はそういう日なんだよ多分!」

 

 

 い、いかんいかん。ほたるちゃんが申し訳なさそうな顔を浮かべているじゃないか。 我ながらデリカシー無いなぁ。

 

 

「と、というか…! 雨また強くなってきたしどっかに避難しないと!」

「あっ、そうですね。 雨宿り出来そうなところを探さないと……きゃっ」

「ほたるちゃん!」

 

 

 その場から動き出そうとほたるちゃんが振り向いた拍子、真後ろに立っていた人物にぶつかってしまう。

 

 

「す、すみません……」

「あぁ!? どこ見てんだこのガキィ!」

「ひっ……」

 

 

 ほたるちゃんにぶつかられた男は眉間に青筋を立てて彼女を睨みつける。

 

 男は小太り体型で口元には無精髭を蓄えている。さらにギラリと輝くグラサンを装着しておりとても高圧的な態度だ。

 

 

「てめぇ……今ので俺が怪我してたらどうすんだコラ?」

「す、すみません…! 私が不注意でした……」

「あぁん!? そんなので俺が許すと思ってんのかぁ!?」

「すみません……すみません……」

 

 

 怯えた表情で謝罪を続けるほたるちゃん。そんな彼女に対しても威圧的な態度を取り続ける男。俺は2人の間に立って物理的に距離を離す。

 

 正直俺もちょっとびびってるけど、流石にここで黙って見てるほど薄情ではない。

 

 

「すみません。確かにこっちが不注意でしたけど、この子も謝ってることですしその辺で」

「誰だテメェこのガキ! 俺は今そっちの女のガキに話があんだよ!」

「いやいや、もうちょっと行かなきゃいけないんで……本当にすみませんでした。行こっかほたるちゃん」

「あっ、はい……すみませんでした」

 

 

 俺は体で男からほたるちゃんを隠しつつ背を向ける。男はまだ何か怒鳴っているけど、こっちはもう謝ったんだから付き合ってやる義理はない。

 

 

「あ、あの白石さん……あの人まだ怒ってますけどいいんでしょうか?」

「ん? あぁ別にいいよ。 それよりとっとと逃げちゃおう」

「は、はい」

「まともに絡むだけ損だよ、ああいう類とは」

「それでも……ぶつかったのは私の方なので…」

「ほたるちゃんは気にする事ないよ」

 

 あんな奴にも本気で申し訳なさそうなほたるちゃんは天使の類なのかもしれない。あんな風に子どもにキレ散らかしてる奴気にする必要無いのに。

 

 と……キレ散らかしてた男は追いかけてくる様子こそ無いが、遠くからまだ俺とほたるちゃんをジッと見つめていて気味が悪いのでさっさと遠くへと避難してしまおう。雨も強いしね。

 

 

「あっ、白石さん。白石さんのお家はさっきの公園の近くですか?」

「うーん、すっごい近い訳でもないけど普通に歩いて帰れるくらいには」

「それならあそこに停まってるバスに乗っちゃいませんか? 私の家もそっちの方なので」

「あー、そうしよっか。バスなら濡れなくてすむしね」

 

 

 たまたま帰る方角が一緒だという俺たちはそのままバスに乗り込んだ。流石に都会のバスとでも言うべきか、車内には大勢の人が乗り込んでいて座れるか不安だったが、唯一後ろの方の2人がけの席が空いていた。

 

 ……今日初めて運が良いかもしれない。

 

 

「よいしょ……はぁ」

「ふぅ……」

 

 

 2人で席に座ると、ほぼ同時に疲労を感じさせるようなため息が出た。なんだなそれがおかしくて俺たちは顔を見合わせて小さく笑う。

 

 

「なんか疲れたね」

「そうですね」

「はぁ……早く家に帰ってシャワー浴びたい」

「頭濡れちゃってますし、このままだと風邪引いちゃいますもんね」

 

 

 ふぅ……とにかく、これでやっと家に帰れる。 今日は本当に運が悪い日だったけど、流石に家に帰ればもう安心だろう。

 

 でも思い返せば返すほど酷い1日だった。

 

 鳥のフンを頭に落とされ、車に轢かれそうになって、大雨に降られて、野犬に襲われて、変なおっさんに絡まれて……いやこれ酷いな本当。

 ほたるちゃんと知り合えた事だけが唯一の救いだ。

 

 

「白石さん、どこで降りますか…?」

「ん?あー俺は……あと5.6個先のバス停かな。そっからなら家に割と近い」

「そうなんですか……私たちが住んでいる所、本当に結構近いんですね」

「そうみたいだね」

 

 

 そういえば……俺の家と近いってことは、ほたるちゃんの家も346やその女子寮に近いってことだよな。

 もしかして346に所属するアイドルで女子寮住みだったりして。 って、流石にそんな事ないか〜あははっ!

 

 

「……あれ、ちょっと待てよ?」

「白石さん?」

 

 

 ん? んんっ? そういえばさっきほたるちゃん、レッスンとか言ってたよな。あと芸能事務所に所属してるとかも言ってたし、それに何より可愛いし……

 

 

 あれ、もしかしてこれってマジで……

 

 

「ね、ねぇほたるちゃん」

「はい?」

「ほたるちゃんってもしかしてアイド……」

 

 

 

 

「全員動くなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

 

「は?」

「えっ?」

 

 

 ほたるちゃんに声をかけようとしたその瞬間、バスの中にさっき絡んできたおっさんよりも大きくて威圧的な声が響き渡る。

 声のした方へと顔を向けると、バスの先頭には手に銃のような物を持った男が仁王立ちしていた。

 

 ……こ、これってまさか、バスをジャックした的なアレですか…?

 

 

 

「今この瞬間からこのバスは俺が支配した!殺されたくなきゃ大人しくしてるんだなぁ!?」

 

 

 ま、マジでバスジャックだーっ!! えっ、嘘でしょ!? こんなの映画の中の話じゃないの!?

 というか今日の俺、本当にどんだけツいてないんだよっ!!

 

 

「ま、マジかよこれ……」

「バスジャック……私3回目です」

「えっ、マジで…?」

「は、はい」

 

 

 バスジャック経験者って何事…? ほたるちゃん運が悪いとは言ってたけど、これまでどんな修羅場を潜ってきたんだよ……

 

 

「いいか? 殺されたくなきゃ俺の言うことを聞くんだなぁ!」

 

 

 犯人の男は運転手に銃を突きつけている。俺たちはそんな光景をただジッと大人しく見ているしかない。 流石にここで飛び出したりするほど命知らずの人間はいないようだ。

 

 こ、怖ぇぇ……というかバスジャックって映画とかだとどうやって解決してたっけ…? ダメだ全然思い出せない。

 

 とりあえず警察が助けてくれるのを待つしか……!

 

 

「おーいっ! そこのイチャこいてる男女! 妙な動きするんじゃねぇぞ!?」

「えっ……お、俺たちのこと…?」

 

 

 め、目ェ付けられた〜っ!! 最悪だ〜っ!

 

 犯人の男は銃をこっちに向けながらゆっくりと近づいてきて、ジロジロと俺たちのことを品定めするように見ている。俺たちはただただ手を上げて恐怖に耐え忍ぶ。

 

 

「……おいこらガキィ! 俺はこの世で1番嫌いなモンがある。何か分かるか? 答えろォ!!」

「っ…! わ、わかんない……です」

「オメェらみてぇなイチャこいてる男と女が1番嫌いなんだよォ!? 特に女連れてるお前の方だクソガキが!! いい女連れやがってよぉ!」

 

 

 え、えぇ……なんちゅう逆恨みだよ。 というか別にイチャこいてなんか無いしカップルでも無いのに目つけられたんだが! 本当に今日の俺はツイてなさすぎる…!

 

 

「よーし決めた、何かあったらお前から殺してやる! ぜっっったいにお前から撃ち殺すからな!」

 

 

 ひ、ひぇぇ〜っ(涙) めちゃくちゃ嫌われてる〜!

 

 

「クソっ……彼シャツってやつか…? 見てるだけでムカつくぜ……」ボソボソ

 

 

 犯人の男はぶつくさと何かを呟きながら先頭の方へと戻っていく。それを確認したほたるちゃんは俺の耳元に顔を寄せてきた。

 

 

「白石さん」コソッ

「……なに?」コソッ

 

 

 全身を強張らせている俺の耳元でほたるちゃんが囁く。こんな時だっていうのに耳がくすぐったくて体がビクッと震えた。

 

 

「多分、大丈夫です」

「……どういうこと?」

「私、さっきにも言った通り過去にもこういう経験あるんですけど……そのどちらも同じ結末になったので恐らく今回も……」

「……?」

 

 

 どういうことだ? ほたるちゃんの言っている意味がまるで分からないぞ。

 

 

「おいぃ! テメェらぁ!! 警告したばっかなのに何イチャこいてんだコラぁ!?」

「や、やばっ…!」

 

 

 犯人の男は再び俺たちの方へと銃をつきつけながら向かってくる。

 

 

「今キスしようとしてたよなぁ!?」

「えっ、ちがっ…!」

「嘘つけぇ! あんなに顔近づけやがってぇ! クソ羨ましい……じゃなかった、ぶっ殺してやるよぉ!?」

 

 

 や、ヤバい…! こ、殺される…っ!

 

 こんなことなら占いの通り家で大人しくしてるんだった……!

 

 

「リア充死ねぇ…っ!!」

 

 

 男は銃を振り上げる。俺は反射的にほたるちゃんの体を抱き寄せて庇う。

 

 

 

 が、次の瞬間……

 

 

 キキーッ!!

 

 

「うぉっ!?」

「っ……!」

 

 俺の耳に聞こえてきたのは銃声ではなく、甲高い異音だった。

 

 突然、バスの中が大きく跳ねたかと思えば、バスは制御を失ったようにグラグラと激しく左右に揺れ出した。

 

 

「んなっ!? ちょっ! うぉぉぉぉぉっ!!」

「きゃっ……!」

 

 

 あまりにも突然の出来事に俺を含めた乗客は驚きを隠せずにギャーギャーと大きな声で喚くことしかできない。そしてバランスを崩したバスは勢いよく電柱に突撃して動きを止めた。

 

 

 

「ってて……な、何が起きたんだよ一体」

「あ、あの……白石さん」

「え?」

「も、もう……平気なので、その……」

「あっ、ごめんっ!」

 

 

 俺の腕の中で顔を赤くして恥ずかしそうにするほたるちゃん。どうやら自分が思うよりも強く抱きしめてしまっていたらしい。

 それに気がついた俺は即座にほたるちゃんを解放するが、未だにほたるちゃんの顔は赤く、そんな姿を見ている俺までなんだか恥ずかしくなってきて気まずい空気が流れる……

 

 

「あっ! そうだアイツは…!」

「それなら……あそこに」

 

 

 気まずい空気を払拭するように俺は大きい声を出す。さっきの犯人がどうなったのか確かめなければならないが、俺の問いに対してほたるちゃんはゆっくりと指を差す。

 

 

「お、おぉ……」

「"やっぱり"…こうなっちゃいましたか……」

 

 

 倒れた体を起こして、さっきまで目の前で威勢よく吠えていた犯人を見る。するとそこにはさっきの揺れでどこかに頭でもぶつけたのか、クルクルと目を回してぶっ倒れている犯人の姿があった。

 

 

「……気絶してる」

「……すみません」

 

 

 大天使ほたるちゃんは、バスジャック犯に対しても申し訳なさそうに謝るのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 〜〜〜〜〜

 

 

 その後、現場に駆けつけてきた警察に犯人の男はあっけなく逮捕された。俺たち乗客にも対した怪我は無く、軽い事情聴取を受けた後にすぐ解放された。

 

 そして今、俺とほたるちゃんはそれぞれの自宅がある方角へと徒歩で向かっていた。

 

 

 

「ほたるちゃん、さっきのやっぱりってどういうこと?」

「あっ、はい……多分、私の不幸体質の影響かと……」

「どういうこと?」

「多分ですけど……あの犯人の人が私の不幸に巻き込まれたんだと思います……以前体験したバスジャックの時、1回目も2回目も同じ事が起こりました」

「えぇ……」

 

 

 何だそれは。もしかしてほたるちゃんは最強キャラなのか…?

 というかじゃあ、ほたるちゃんと同じバスに乗って、しかもソレをバスジャックをしようとした時点でアイツはツキが無かったんだな。

 

 

 

「あっ、白石さん。私はここで」

「ほー、やっぱり女子寮か」

「えっ? どうして私の寮ことを……」

 

 

 ほたるちゃんが指差す道の先には、ここからじゃ見えないが俺の予想通り346の女子寮がある。

 すると俺の呟きに対して警戒する様な……というよりは純粋に不思議そうな表情で俺のことを見つめるほたるちゃん。

 

 まぁそうだよな。なんで今日会ったばかりの俺が女子寮の事なんて放ってるんだって話だよな。

 

 

「ほたるちゃんって346のアイドルだよね?」

「えっ? は、はい……それはそうですけど」

「実は俺も346で働いてるんだ」

「えっ!? あ、アイドルだったんですか白石さん!?」

「ち、違う違う! タレントとかじゃなくてただのアルバイトだよ。主に雑用のね」

 

 

 俺の発言に驚いたように目を見開くほたるちゃん。でも俺もビックリだ。偶然出会っただけの俺たちにそんな接点があろうなんてね。

 

 

「そうだったんですか……そう言われてみれば事務所で白石さんらしき人を見たことがあるような気もしてきました」

「まぁその可能性は充分あるよね。という訳で今後も会う事はあるだろうからその時はよろしくね」

「は、はい…! こちらこそよろしくお願いします…!」

 

 

 ペコリと綺麗にお辞儀をするほたるちゃんに釣られて、俺も体を綺麗に折りたたんで頭を下げる。

 

 

「じゃあ俺もう行くよ。早く家に帰んないと次はどんな目にあうか分かんないし……」

「そ、そうですね……その方がいいと思います」

「じゃあそういうことで。またね、ほたるちゃん」

「は、はい…!」

 

 

 そして俺はほたるゃんに手を振り終えると背を向けて歩き出す。

 

 そのまま一直線に我が家へと歩き続けて、その後は特に不運な目に遭うこともなく無事家に到着することができた……

 あっ今の嘘、そういえば一回排水溝に足突っ込んだわ。まぁ今日起きたハプニングに比べたら可愛いもんだけど。

 

 ほたるちゃんと別れた後にも不運な目に遭ったんだから、これで今日の俺の不幸はほたるちゃんのせいなんかじゃないことが証明されたな。今度ほたるちゃんに会ったら教えてあげよう。

 

 

「はぁ〜帰ってきた〜!」

 

 

 玄関のドアの前で体を大きく伸ばす。ようやく愛しの我が家に帰ってくることができた。もう今日は絶対に家の中から出ないからな!

 

 そして俺は鍵を開けて中に入って……鍵を開けて中に……鍵を出して……あれ。

 

 

 家の鍵……どこだ?

 

 

 お、おおおお落ち着け俺。 今日は戸締まり確認をして……その後鍵はどこにしまった…?

 

 

 、、、、、

 

 

「あ゛っ!!!」

 

 

 う、上着のポケットだ! そうだ思い出した!

 

 はぁ〜! 思い出せてよかった〜! 一瞬ヒヤリとしたじゃないか。よしよし、確か上着のここのポケットに…………あれ?

 

 

「あっ」

 

 

 

 上着、ほたるちゃんに貸したままじゃん。

 

 

「し、しまったぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 最後の最後まで、今日は不幸続きの1日だ……

 

 

 

 

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「た、ただいま帰りました」

 

「にゃっ! おかえり〜ほたるチャン! ねぇねぇ知ってる? さっきこの辺でバスジャックがあったんだって〜」

「あぁ……そうみたいですね」

「怖いにゃ〜、そんな映画みたいな話本当にあるんだねー」

「あはは……」

 

 

「あれ、ほたるチャン? その服どうしたの?」

「えっ……? 服がどうかしましたか…………あっ!」

「その服、メンズ用だよね? それにサイズが全然ほたるチャンに合ってないにゃ……って!どこ行くにゃほたるチャン!? 今帰ってきたばっかりなのにゃ〜!」

 

 

 

 

「し、白石さんっ! すみませんでした〜〜〜っ!!!」

 

 

 





 皆さま、今年1年お疲れ様でした。 先ほど投稿する際に気がついたのですが、この小説の総合評価が1000ptに到達していてなんだかすごく嬉しい気分になりました。

 これもこの小説を読んでくださる皆さまのおかげです。来年も是非、本小説をよろしくお願い致します。よりお年を。
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