346プロの雑用バイト君   作:焼肉定食

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姉が美波で美波が姉で2

 

 

 【速報】今日知り合って裸のお付き合いをした男の子の姉が新田美波だった。

 

 いや、意味不明だぜ!

 

 

 

「………」

「………」

 

 

「姉ちゃん、白石さん? どうしたのさ?」

 

 

 俺と新田先輩は衝撃のあまりお互いの顔を見て硬直する中、涼介くんは事態が把握できていないようで俺たちを交互に見た後に首を傾げた。

 

 

「と、とりあえず中にどうぞ……事情を、説明するので」

「う、うん……そう、だね」

 

 

 新田先輩を家の中に通して、リビングにあるテーブルの前に座ってもらう。俺もその正面に座り、その間に涼介くんも座った。

 

 うわ〜い、家の中に新田先輩がいるなんて夢のようだな〜なんて思える展開でもなく、ただただ頭の中が驚きのせいでパニックだ。

 

 

「えーっと……とりあえず状況を説明しますね?」

「あっ、ううん。涼介から事情はメールで聞いてるから……ただ、その助けてもらった人が白石くんだとは思ってなかったけど」

「そ、それを言うなら俺もですよ! まさか涼介くんのお姉さんが新田先輩なんて……」

 

 

 いや〜本当にな。 まさかこんな展開になるなんて思ってもなかったわ。

 まぁでも、涼介くんの超美人お姉さんが新田美波だって言うんなら納得はできる。そりゃあこんな美人のお姉さん人気者にもなるよ……

 

 

「ふぅ……ようやく落ち着いてきました。ちょっとプチパニック状態だったので」

「ふふっ、私も落ち着いてきたかな。改めてお礼しないとね、ありがとう白石くん」

「い、いえいえ! 俺が自分でやったことですし! それに俺も涼介くんとゲームとかやって楽しかったですし……」

 

 

「ねぇ! いい加減説明してくんない!?」

 

「「あっ」」

 

 

 置いてけぼりを食らっていた涼介くんの我慢の限界が訪れた。不満げな顔で俺と先輩の顔を交互に見比べて説明を催促する。

 

 

「えーっと、どこから説明したものか……実はね、涼介くん……」

 

 

 

 

 〜〜〜〜

 

 

 

「と、いう訳なんだけど」

「そうね、今の白石くんの説明通りよ」

 

 

「つまり、白石さんは姉ちゃんのアイドル事務所でアルバイトをしているから既に知り合いで、しかも同じ大学の先輩後輩だっていうことであってる?」

 

「合ってるよ。あっ、ちなみに初めて会ったのは大学だったかな。そうですよね?」

「うん。夕美ちゃんの紹介でね」

 

 

 話を聞いた涼介くんはこめかみに人差し指を当てて、うんうんと唸っている。そりゃあこんな話を急にされたら誰だって驚く。

 まさか自分がその日初めて知り合った男と、自分の姉が実は知り合いだったとかそんな話は信じられないだろう。

 

 

「でも私本当に驚いちゃった。そういえば2人とも随分と仲良くなってるみたいだけど、ずっと一緒にゲームしてたの?」

「あ、はい……」

「ちょっ! し、白石さん…!」

 

 

 俺が新田先輩の問いに答えようとすると、涼介くんは何か慌てた様子で俺の肩を掴んで先輩に聞かれないように小さな声で耳打ちする。

 

 

「どうしたの?」ヒソヒソ

「ね、姉ちゃん結構うるさいんですよ。普段からゲームやりすぎるなよ〜とか……それなのに1日中ゲームやってたとか言ったら絶対に説教されちゃいます…!」ヒソヒソ

「なるほど」

 

 

 つまりアレか。涼介くんは俺とゲーム三昧だった事実を隠しておいてほしいってことか。

 まぁ確かに新田先輩そういうのちゃんと注意してきそうなイメージあるな。でも先輩にめっ!って注意されるならそれはそれで……

 

 

「白石くん? どうかしたの?」

「あっ、すみません。何でもないです」

「そう? あ、それで今日は2人で長い時間何をしてたのかな?」

 

 

 再び俺から情報を聞き出そうとする先輩。よほど弟が何をしていたか気になるんだな。

 俺のことを不安そうに見つめる涼介くんを安心させるために微笑みかける。

 

 何も心配をするな少年、俺が適当に誤魔化してやるからな!

 

 

「えーっと……確かにゲームも一緒にしてましたけど、それだけじゃないですよ? ねぇ、涼介くん」

「そ、そうだよ姉ちゃん! 俺たち別にゲームずっとやってた訳じゃないし!」

「そうなの? じゃあ一体何を……」ジ-

 

 

「裸のお付き合いもしました」

「えっ!?」

「ちょっ! し、白石さん言い方ァ!」

「はっ! しまったつい」

 

 

 疑うような新田先輩の視線に焦ってつい変な言い方をしてしまった。

 別に普通に一緒に風呂入ったとでも言えばいいのに……いや、でもやっぱり出会った日に2人で風呂入ってるってのも変な話だな。

 

 

「は、裸のお付き合いって……」

「違うぞ姉ちゃん! 変な意味じゃなくて、普通に一緒に風呂入っただけだから!」

「そ、そうよね……別に変な意味じゃないわよね」

「そうそう! ですよね白石さん!」

 

 

 

「涼介くんは……俺が初めてだったらしいです」

「ど、どういうことなの涼介!?」

「白石ィ!」

 

 

 あっはっは。いやー新田姉弟面白いなぁ……いいリアクションしてくれるぜ。

 

 因みに今のは、『プライベートで家族じゃない人と風呂入るの初めてです』って涼介くんがさっき実際に言ってたことだし、嘘は言っていないぞ。

 

 

「まぁまぁ冗談ですよ先輩。確かに涼介くん可愛い顔してるけど、俺は普通に女の子が好きなんで」

「……」ジト-

「……」ジト-

 

「おぅふ……」

 

 

 2人してジト目を俺に向けてくる新田姉弟。めちゃくちゃ顔が似てるから、受ける精神的なダメージも倍増してる様な気分だ。

 

 あっ……涼介くんのジト目に見覚えがあったのってこういう事だったのか。謎が解けたぞ。

 

 

「で、 本当は何をしてたの? 涼介」

「うっ、まぁ……風呂入ったのは本当で、その後はずっとゲームしてたけどさ」

「はぁ……どうして最初嘘付いたの? お姉ちゃん嘘は嫌いよ?」

「だ、だって姉ちゃん絶対グチグチ言ってくるし」

「涼介のことを思ってのことです!」

 

 

 弟の目を真っ直ぐに見ながら叱る先輩。そしてばつが悪そうに正座をしてお叱りを受ける涼介くん。

 

 なんだか姉弟というよりは親子みたいだな。

 

 

 

「う、うるさいな! 姉ちゃんはいつもグチグチ! 母さんでもあるまいし!」

「んなっ!」

「大体姉ちゃんはいつも俺に色々と注意してくるけど、俺だって姉ちゃんに言いたいことあるんだからな!」

「涼介! お姉ちゃんに向かってそんなこと言っちゃいけません!」

 

 

 軽い口論がヒートアップして姉弟喧嘩を始める2人。俺はとりあえず2人を落ち着かせようと間に入った。

 

 

「ま、まぁまぁ2人とも落ち着いて。喧嘩はよくないですよ〜」アハハ

 

「白石くん! 白石くんはどっちの味方なの!?」

「えっ?」

「もちろん俺の味方ですよね! 白石さん!」

「ちょっ……お、落ち着いて…!」

 

 

 ま、巻き込まれた…! マズいぞ……姉弟喧嘩の火の粉が俺にまで降り注いできた。

 

 

「お、俺はどちらか一方の味方とかじゃなくて2人の味方ですよ?」

「はぐらかさないで!」

「そうですよ!」

「え、えぇ……」

 

 

 な、なんでこんな浮気がバレた二股男みたいになってんだ…? 俺はただ事態をなるべく平穏に収めようとしただけなのに。

 

 

「私の方が付き合いは長いし私よね!」

「人間関係は付き合いの長さじゃなくて深さだよ!」

「ふ、深さもあるわよ! 合宿の夜に1晩中一緒に(トランプ)シた仲だもん!」

「先輩言い方ァ!」

 

 

「お、俺だってもう互いの全裸見たくらいの仲だし!」

「涼介くんも言い方ァ!」

 

 

 くっ…! 何も悪いことなんてしていないのに、これじゃあまるで本当に俺が2人に手を出してる屑男みたいじゃないか!

 

 

「とりあえず落ち着こう2人とも!!」

 

 

 どんどんヒートアップしていく喧嘩を止めるために大きな声で牽制をすると、2人はかなり驚いたようで体をビクッと跳ねさせた。

 

 

「まずは先輩!」

「は、はい!」

「弟さんのことを心配するのはごもっともだと思いますけど、涼介くんももういい年なのであまり細かいことを注意しすぎるのもよくないかと…! もう少し涼介くんを信用してあげてください!」

「……そ、そうね」

 

 

「そして涼介くん!」

「は、はい!」

「確かに色々と言われたらイライラするかもしれないけど、先輩は本気で涼介くんを気にかけているからこそ注意が多くなってるんだ。別に意地悪してる訳でもないし、あんまり強く当たっちゃいけないよ!」

「……わ、わかりました」

 

 

「落ち着いたなら2人とも謝る!」

「……ご、ごめん姉ちゃん」

「私の方こそ……ごめんね涼介」

 

 

 

 冷静になった2人は、互いにペコリと頭を下げて謝罪と仲直りをした。

 

 ふぅ……とりあえず力技で喧嘩を仲裁したぞ。自分が熱くなってる時に自分よりも熱くなってる人を見たら落ち着くという人間の習性を利用したゴリ押し技が決まった。

 

 

「白石くんもごめんね。こんなみっともないトコ見せちゃって」

「それは全然構わないんですけど、先輩もあんな風に喧嘩とかするんだなってちょっと意外でした。普段事務所で見てる姿からは想像できないといいますか……」

「何言ってんですか白石さん、姉ちゃん家では割とこんな感じですよ?」

「り、涼介!」

 

 

 涼介くんの言葉に対して、顔を真っ赤にして声を上げる先輩。

 

 なんとなく思ってはいたけど、新田先輩って意外にイジられキャラだよなぁ…… 弟の涼介くんにもこうやってイジられてるし。

 

 

「さっきも言いましたけど、姉ちゃん意外に家では抜けてるというかズボラというか……」

「あー、ラッキースケベとかの話?」

「そうそう……あっ」

「ん?……ひぇっ」

 

 

「涼介…? 白石くんに一体何を話したのか教えてくれるかな…?」ゴゴゴゴ

 

 

 背中にゾクリとした寒気を感じてゆっくりと顔を先輩の方に向ける。するとそこには顔は笑っているのに目は笑っていない、明らかな怒りのオーラを見に纏わせた先輩がいた。

 

 これはマズい……前に海合宿の時にも見たマジ怒りモードの新田美波だ。

 

 

「ね、姉ちゃん……い、今のは……その!」

「言い訳はいいから、白石くんに何を言ったのか……話しなさい。ね?」ガシッ

「は、はぃぃっ!」

 

 

 背後に修羅を携えながら涼介くんに笑顔の脅迫をする先輩。そのあまりの迫力に気圧された涼介くんは全てを話した。

 

 

「ね、姉ちゃんが……俺が帰ってきた時にリビングで下着姿だった話と、賞味期限切れの牛乳飲んで腹を壊した話と、夜中にアイス食ってた話です……はい」

「……それで全部?」ゴゴゴ

「ぜ、全部全部! 本当にこれしか話してない!」

「そう……ふんっ!」

「あだっ!」

 

 

 先輩は涼介くんの頭頂部にチョップをかますと、次は俺の方へと顔を向けて近づいてくる。俺の体は蛇に睨まれた蛙の様にピクリとも動かない。

 

 こ、怖ぇぇ……!

 

 

「忘れて?」

「えっ」

「涼介から聞いたこと、全部忘れて?」

「わ、忘れてって先輩そんな無茶な……」

 

 

「わ・す・れ・て?」ニコッ

「……も、もう忘れました」

 

 

 俺の肩をがっしりと掴んで顔を近づけてくる先輩。

 綺麗な顔が間近にあって胸がドキドキ〜!というよりはもう別の意味で胸がドッキドキだ。

 

 

 こ、怖すぎる……女神系アイドルの見てはいけない部分だ。

 

 

「分かってくれれば……よし!」

「ほっ……」

「でも白石くん? もしもさっきの話を誰かにバラしたりしたら……ふふっ」

「い、言いません!絶対に言いません! というかもう忘れたので何も分かりませんっ!」

 

 

 ひ、ひぇぇ……怖すぎる。 なんなんだあの含みを持たせた笑みは。もし誰かにさっきのを話したら俺は一体どうなってしまうんだ…?

 

 恐ろしいから考えるのはやめとこう……

 

 

「あ、そうだ姉ちゃん。俺も一つ聞きたいことあるんだけど」

「ん? どうしたの?」

「さっき喧嘩してる時姉ちゃん、白石さんと合宿の夜に一晩中一緒とかなんとか言ってたよな? 何してたのかなーって……」

「えっ、それは……」

 

 

 新田先輩と目が合う。

 

 合宿の夜に一晩中って言ったらトランプのことだよな。

 アレは酷かった。 俺は眠くて寝たいのに先輩全然寝かせてくれないし、自分が勝つまで止めるつもりないのにめちゃくちゃ弱いし……

 

 

「アレは辛かった……」

「ちょっ! そ、そんな言い方しなくてもいいじゃない」

「いやでも、本当にこっちは大変だったんですよ体力的に。というかむしろ先輩は何であんなに元気だったのか知りたいですよ。朝までピンピンしてましたし」

「そ、そんな事ないわよ…?」

「いーや、先輩だけがずっと元気でしたよ。塩見さんなんて途中で寝てましたし」

 

 

 ダメだ、なんか思い出しただけで眠たくなってきたかも。

 俺はあの日以降もう新田先輩とは対決事の類は絶対にしたくないと思ったんだよな……

 

 

「だ、だって……あの日の夜は、白石くんが私をずっと(トランプで)イジめるから……私どうしても負けたくなくって、気がついたら朝になってて……」

「(トランプで)イジめられてたのは俺の方ですよ。何回もう寝かせてくれと頼んだことか」

「だ、だって……白石くんずーっと元気だから、(トランプし続けても)いいのかなって」

「元気じゃないです! めっちゃ眠かったですよ!」

 

 

(ね、姉ちゃんと白石さんって……どんな関係なんだ…?)

 

 

 俺と先輩が合宿の思い出話に花を咲かせていると、涼介くんは困惑したような顔で俺と先輩の顔を交互に見ていた。

 

 あれ? そういえば何で合宿でトランプやった話になったんだっけ……うーん、思い出せない。

 

 

「さて、じゃあそろそろ帰ろっか。涼介」

「えーっ、もうちょっと白石さんとゲームしたかったなぁ」

「ゲームならお姉ちゃんが付き合ってあげるから……ね?」

「姉ちゃんは弱いから嫌だ」

「うっ……」

 

 

 ツンとした態度を取る涼介くんの言葉に本気のショックを受ける先輩。なんだかその光景が微笑ましくてつい自然と顔が綻ぶ。

 

 

「またいつでも遊びにおいで、涼介くん」

「い、いいんですか?」

「もちろん。もう俺たち友達じゃないか」

「白石さん……ありがとうございます!」

「あっ! じゃあ次は私も入れて3人でゲーム大会しよっか!」

 

 

「い、いや〜 先輩はちょっと……」

「どうしてっ!?」ガ-ン

 

 

 先輩は俺の肩を掴んで思い切りぐわんぐわんと揺らしてくる。

 

 だって新田先輩とゲーム対決とかしたら、あのトランプ事件と同じようなことが起きても全然おかしくないし……というか絶対そうなる。

 

 

「だ、だって先輩とゲーム対決したら、絶対にまた先輩が勝つまで終わらないやつになるじゃないですか! 俺もう徹夜は嫌ですからね!」

「な、何で私が負け続ける前提なの!? 一発目で私が勝つかもしれないでしょ!」

「だって先輩ゲーム弱いってさっき涼介くん言ってましたし!」

「ソレは涼介が強すぎるからで!」

「俺は涼介くんと互角の腕でした!」

「もうっ、ああ言えばこう言う…! 勝負はやってみなくちゃ分からないものよ!」

 

 

 ギャ-! ギャ-! ギャ-!

 

 

(姉ちゃんと白石さん、仲が良いのか悪いのかよく分かんないなぁ……)

 

 

 結局、また後日に新田姉弟と俺を含めた3人でゲーム対決をすることを約束付けさせられてしまった。

 またしても先輩の「もう一回やりましょう」地獄が待っているかと思うと既に憂鬱だ。

 

 

 うーん、今のうちに上手く負ける接待プレイの練習しとくべきか……

 

 

 





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