346プロの雑用バイト君   作:焼肉定食

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ファッションってよく分からない

 

 

 

「千川さん、頼まれてたコピー終わりましたよ」

「ありがとうございます、白石くん」

「いえいえ、お茶でも淹れましょうか?」

「んー、じゃあお願いしちゃっていいですか?」

「もちろんですよ」

 

 

 千川さんのお茶を用意するために急須へ茶葉と湯を入れて蒸らすと、体と心が落ち着くような心地良い香りが鼻をくすぐる。

 

 やっぱり日本人はお茶だね。

 

 

「千川さん、どうぞ」

「ありがとうございます白石くん。 ふぅ……やっぱり日本人はお茶ですねぇ」

「あっ、俺も同じこと考えてました」

「あら? 以心伝心ですね」

 

 

 冗談を言いながらもお茶を飲む千川さん。普通に淹れただけなのに美味しそうに飲んでくれるからこっちも嬉しくなる。

 

 

「はぁ……ありがとうございました白石くん。今日はもう上がってもらって平気ですよ?」

「わかりました。それじゃあ失礼します」

「はーい、お疲れ様でした♪」

 

 

 笑顔で手を振る千川さんに一礼をして部屋から出る。今日も特に問題なく業務終了だ。

 

 この後は何をしようか……なんて事を考えながら事務所の中を歩いていると、見たことがある人がソファーに座りながら腕を組み目を瞑って頭を悩ませている姿が視界に映る。

 

 

 あっ、北条さんだ。何してるんだろ……?

 

 

 制服姿の北条さんは目を瞑って何やら悩んでいる様子だ。 その北条さんの前の机には、何やらファッション雑誌の類が何冊も開かれた状態で雑に置かれている。

 互いのことを知らぬ間柄でも無いので何やら悩んでいるのならば声をかけようかと思ったが、俺の足はすんなりと北条さんの方へと動きはしない。

 

 

 ……俺、そういえば北条さんと2人で話したことなかったかも。

 

 

 ここに来て俺のビビリが発動。そういえば北条さんと話す時は必ず渋谷さんや神谷さんが一緒だった気がする。もしかしたら2人で話したことが少しはあるかもしれないが、記憶には無いので多分無いんだろう。

 

 それなのに、今こっちから声をかけて馴れ馴れしいなコイツとか思われないだろうか…?

 

 

 、、、、、

 

 

 よし、脳内会議の結果が出た。今回は声をかけずにそっとしておこう。

 何やらすごく悩んでいるみたいだし俺が声をかけても邪魔になるかもしれない。特にファッションの事なら相談にも乗れないし……決して俺がビビった訳ではない。

 

 

「……腹減ったな」

 

 

 すると突然、体に空腹感が襲いかかる。とりあえず軽く何か腹に入れておこう。

 そういえば駅の前に新しくファストフード店が出来てたな……あそこに行こう。ああいう店はアプリでクーポンとかあるから、まずはアプリを入れて……

 

 

「えーっと、あっこれだな。クーポンはっと……」

 

 

「……ポテト」ボソッ

「うぉっ!?」

 

 

 囁くような小さい声が耳元で聞こえたかと思い振り向けば、俺の肩をガッチリと掴んだ北条さんが虚な目をしてスマホの画面を覗き込んでいた。

 

 

「いいなぁ……白石さんポテト食べるんだ〜私もポテトしたいなぁ〜」

「ちょっ! 北条さん!?」

「ポテト食べたいなぁ〜 体にポテト分を補給したいなぁ〜」チラッチラッ

 

 

 な、何だこの遠回しでもなんでもないポテト食べたいアピールは!?

 

 

「……北条さんの分も買ってこようか…?」

「えっ! いいの〜!? さっすが白石さん優しい〜♡」

 

 

 キャピキャピと体を揺らしながら喜ぶ北条さん。若干納得のいかない部分もあるが、約束をしてしまったからにはポテトを買ってくるしかないだろう。

 ただ、北条さんみたいな可愛い女の子にお世辞でも褒められて嬉しいと思ってしまう自分がいることは否定できない。キャバクラにハマる人っていうのはこういう気持ちなのだろうか?

 

 

「じゃあ、あたしここに居るね〜」

「……了解です」

 

 

 満面の笑みを浮かべて元気よく手を振る北条さんに背を向けて、俺は事務所を飛び出してファストフード店へと向かった。

 

 

 

〜〜〜〜

 

 

 

「ほい、買ってきたよ」

「わー! 白石さんありがと〜!」

 

 

 ポテトを買って事務所まで戻る。そして北条さんに渡すと、嬉しそうに微笑みながらソレを取り出して口に運び始めた。

 俺もその正面に座って買ってきたハンバーガーに齧り付く。

 

 

「ん〜! 美味しい〜♡」

「本当に好きだね、ポテト」

「まぁね〜 アタシの動力源みたいなもんだから」

 

 

 そんな冗談を言いながらも北条さんはどんどんポテトを食べ進める。さっき食べ始めたばかりだというのに、既に半分ほどが胃の中へと放り込まれたようだ。

 

 これはもうポテト早食いというよりは、ポテト早吸いって感じだな。

 

 

 

「はぁ〜、やっぱり美味しい〜! 頭使ったからお腹空いてたんだよね」

「そういえばさっき見かけた時も何か悩んでる感じだったね」

「あれ? こっちから話しかける前にアタシがいることに気がついてたの? それなら声かけてくれればいいのに〜」

「えっ……い、いやぁ〜 それは……あはは」

 

 

 痛いところを突かれて苦笑いで誤魔化そうとしていると、正面に座る北条さんはニヤリと妖しげに微笑んだ。

 

 

「ま、どーせ白石さんのことだから……1人で女の子に話しかけるの緊張するな〜、どうしようかな〜、よしっ今日は見なかった事にしよう! とか考えてたんでしょ?」

「うっ……」

「ふふっ、図星? ホント白石さんって分かりやすいね〜」

 

 

 何も言い返すことができない俺は、返事をする代わりに大きなハンバーガーへと齧り付いた。

 

 心の中を見透かされるのってすげぇ恥ずかしいな……

 

 

「お、俺の事よりもさ! 北条さんは一体何を悩んでたの!?」

「んー? あぁ、ちょっとファッションの事でね」

「ファッション……?」

 

 

 そう言うと北条さんは一旦ポテトをテーブルの上に置いた。そして考える人のようなポーズを取って悩ましげな表情を浮かべる。

 

 

「うん、今度の仕事でね? ティーンズ向け雑誌のミニコーナーで、アタシがイチオシする春のオススメファッションコーデを載せてもらえる事になったんだけど……」

「それが決まらない……と?」

「そゆこと」

 

 

 北条さんはテーブルの上に散乱しているファッション雑誌の一つを手に取り、流し見をしながらパラパラとページをめくっていく。

 

 

「自分で着る服ならすぐに決められるし、アイデアもいっぱい沸いてくるんだけど……他の人に紹介するってなると、なーんか考え込んじゃってね」

「なるほど」

 

 

 真剣な表情で雑誌のページをめくり続ける北条さん。どうやら本当に考えが行き詰まってしまっているようだ。

 そして話の合間にハンバーガーを食べ終えた俺は、腕を組み目を瞑って上を向いた。

 

 うーん……どうしたものか。何か力になってあげたい気持ちは満々なんだけど、ファッションの悩みとなると俺は全く力になれそうにない。

 

 

「ねぇ、白石さん」

「ん?」

「ちょっと白石さんの意見も参考にさせてもらってもいい?」

「えっ! い、いや〜 俺全然ファッションとか詳しくないから力になれないと思うけど……」

「いいのいいの! そういう詳しくない人から見た意見も貴重だし」

 

 

 と、言われてもなぁ……本当に女の子のファッションとか全く知らないから、何をどうアドバイスすればいいのかも分からないぞ。

 

 

「あっ、じゃあこうしない? この雑誌に乗ってる服でアタシに似合いそうなのを白石さんが選んでよ!」

「北条さんに似合いそうなのをか……うーん」

「ふふっ、ちゃんと考えて選んでね?」

 

 

 微笑みながら北条さんは俺に雑誌のページを差し出してきた。そこには様々な衣服の写真や、ソレを見に纏ったモデルさんの写真なんかが沢山載っている。

 俺はジーッと目を凝らして雑誌を見つめる。いったいどれが北条さんに似合うのだろうか……?

 

 

「……難しいな」

「うーん、あっ! じゃあこうしようよ! アタシと白石さんがデートするとしてさ、アタシがどんな服で待ち合わせ場所に来たら嬉しい?」

「デッ!? デデデ、デートォ!?」

「例えばの話だよ? ふふっ、白石さんはどんな服を選ぶのかな〜」

 

 

 北条さんはテーブルに肘をつきながら、両手を顎の上に乗せて挑発するような視線で俺を見つめてくる。

 

 ……ほ、北条さんが、どんな服を着てくれたら嬉しいのか……正直北条さんなら割とどんな服でも似合いそうな気もするけど。

 

 ……というかさっきから見つめてくるのめっちゃ緊張するんだが。しかも上目遣いですげぇ可愛いのが尚のこと心臓に悪い。

 

 

「……こ、これと」

「ふんふん」

「……これとか、どう……かな?」

「なるほどね〜」

 

 

 俺が震える指で差したのは、アンティークな花柄模様がかわいいトップスと、ふわりとした印象を与えるひざ丈スカートの二つだ。

 

 え? なんで花柄かって…? そりゃあ春っぽいからだよ! 悪いか!? 俺にはその程度の発想力しかないんだよ!

 

 

「へぇ〜 ふ〜ん……白石さんはこういうのが好きなんだ〜」ニヤニヤ

「す、好きっていうか……北条さんに似合いそうかなって……お、俺なりに真剣に考えたんだよ!?」

「ふふっ、ありがと白石さん。でも〜、ひざ丈スカートっていうのはなぁ……春先だとまだ肌寒いかもしれないし、もうちょっと丈の長いやつでもいいかなって」

「そ、そっか……確かにそうだよね」

 

 

 

「でも、白石さんがどうしても足を出してほしいって言うんなら〜 着てあげてもいいけどな〜?」

「えっ!?」

「オシャレは我慢って言うし〜」

 

 

 そう言うと北条さんはわざとらしく、正面にいる俺に見せつけるように足を組み替えた。彼女の見に纏う制服のスカートがふわりと捲れて、そこから覗く健康的な印象を与えるむっちりとした太ももに自然と視線が吸い込まれた。

 

 

「あっ、今足見たでしょ?」

「み、見てないが!?」

「うっそだ〜 絶対に見たよ〜」

「そっ、そそそそんな事ないよ! 北条さんの勘違いじゃない!?」

「え〜、そうかなぁ〜?」

 

 

 お、落ち着け俺……! 年下の女の子に弄ばれるなんてみっともないぞ。

 ここは年上の男としての威厳と余裕を見せなくては……あっ、また足組み替えた。

 

 心を落ち着けようと深呼吸をしていた最中、またしても北条さんの綺麗な太ももが躍動する。思わず視線が吸い込まれ、嫌な予感がして顔を上げると……

 

 

「……えっち♡」ニヤリ

「〜〜ッッ!!!」

 

 

 小悪魔的な笑みを浮かべる北条さんとガッツリ目が合った……

 これはもう言い逃れができない。俺は彼女の作戦通り、まんまと太ももトラップに引っ掛かってしまったバカな男だということを自分自身で証明する羽目になった。

 

 

「やっぱり見てたんじゃ〜ん、白石さんのむっつり〜」

「くっ…! 殺せ…!」

「ふふっ、照れない照れない」

 

 

 うぅっ!! だ、誰か俺を殺してくれ〜!!もう恥ずかしくてまともに北条さんの顔見れないよ!!

 

 

「白石さんも男の子だもんね〜 そりゃあ女の子の体も見たくなっちゃうよねぇ〜」

「も、もう堪忍してつかぁさい…!」

「え〜、どうしよっかなぁ〜」

 

 

 と、そんな感じで俺が北条さんによっていいように遊ばれていたその時、背後から誰かが声をかけてきた。

 

 

「お〜っす。2人で何の話してるんだ〜?」

「あっ、奈緒〜。 いやね、白石さんがアタシのふとも……」

「ポテト奢るんで堪忍してください加蓮様!」

「……ふふっ、やっぱり何でもないよ〜」

「何だよそれ」

 

 

 今やってきたばかりの神谷さんは、訳が分からないといった様子で不思議そうな表情を浮かべた。

 

 はぁ……ポテト一つで俺の痴態を隠せるんなら安いものだ。神谷さんにまで知られる訳にはいかないからな。

 

 

「何だコレ、ファッション雑誌か?」

「そうそう、今ちょ〜っと悩んでてね〜」

「へぇ……うーん、あたしはあんまり着ないタイプのが多いな」

 

 

 神谷さんは北条さんの横に座り、テーブルの上の雑誌をパラパラとめくっていく。しかしあまりお気に召していないようだ。

 

 

「奈緒は制服以外で普段あんましスカート履かないもんね」

「まぁな〜」

「そうなの? 似合いそうなのに……」

「気をつけて奈緒! むっつり足フェチ怪人が奈緒のドスケベ太もも見てるよ!」

「んなっ…!?」

「ちょっ! ご、誤解だ神谷さん!」

 

 

 北条さんの言葉を受けた神谷さんは、俺から足を隠すように制服のスカートの裾をキュッと握り締める。そして顔を真っ赤にして俺のことをじっとりとした視線で睨む。

 

 こんな時に言うことじゃないけど、そのしぐさは正直グッとくるものがあるよ。神谷さん。

 

 

「ほら奈緒、隠すのは足だけでいいの? 奈緒は足以外もドスケベなんだからもっと隠す部分あるでしょ!」

「ま、待ってくれ神谷さん! 俺は神谷さんのドスケベな部分を盗み見したりなんかしていないんだ! 信じてくれ!」

「騙されちゃダメだよ奈緒! 奈緒みたいなドスケベボディーの持ち主、男子がチラ見しない訳がないんだから!」

「違うんだ神谷さん! 確かにドスケベボディー自体は非常に魅力的だけど、何も男子が年がら年中ドスケベボディーを盗み見している訳じゃ……!」

 

 

「だぁぁぁぁぁっ!!! お、お前らさっきからドスケベドスケベうるさいんだよぉぉ!!」

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜

 

 

 神谷さんが合流してから数分後、とりあえず落ち着きを取り戻した俺たちは再びファッションの話を再開する。

 

 女の子とファッションの話をするなんて、なんかリア充っぽいな……とか思ったり。

 え?その発想自体がモテない奴っぽいって? それは言わないでおくれよ……

 

 

「それで? 白石さんは加蓮にどんな服を見立てたんだよ」

「コレとコレだよ」

「へぇ〜 白石さんはこういう服が好きなんだなぁ」

「……イジるならイジるがよい。俺はもう何を言われても動じない」

「へっ!? あ、いや……あたしは純粋に興味として聞いただけなんだけど」

「さっきまでアタシが色々と言いまくったから警戒しちゃってるみたいだね」

「お、お前なぁ……」

 

 

 軽い感じで笑う北条さんを神谷さんが呆れた目で見る。どうやらいつもイジられる側の神谷さんは俺に同情的なようだ。

 

 神谷さんも、いつも苦労してるんだなぁ……

 

 

「あっ、そうだ! じゃあ今度は逆にアタシが白石さんの服選んであげるよ」

「お、俺の服?」

「そうそう! ふふっ、一回男の人のコーデもしてみたかったんだよね〜」

 

 

 そう言うと、北条さんは楽しそうに微笑みながら雑誌のメンズ向けページを読み始めた。

 

 ファッションなんてこれまでも全く拘ったことないけど、現役アイドルでオシャレな北条さんに服を選んでもらえるっていうのはちょっと楽しみだなぁ。

 

 

「白石さん、何ニヤついてるんだよ」

「いや〜、実はちょっと楽しみだったりして。 女の子に服を選んでもらうとか……なんかこう、ドキドキするっていうか」

「ふ〜ん、そういうモンなのか」

 

 

 見るからにウッキウキの俺に対して、神谷さんはそこまで興味無さげに見える。この淡い男心は理解してもらえなかったようだ。

 

 

「というか別に白石さんそこまで変な服装でもないじゃんか。普通に似合ってるぞ?」

「ははっ、ありがとう。でもきっと北条さんなら俺みたいな無難なチョイスじゃなくて、もっとすごいファッションを考えてくれると思うんだよね」チラッ

「……なるほどな」

 

 

 俺がニヤリと笑い神谷さんに目配せをすると、俺が今から何をしようとしているのか意図を汲んでくれたようで神谷さんも意地の悪い笑みを浮かべた。

 

 

「……確かになぁ〜 加蓮はオシャレだから、あたしたちじゃ考えつかないようなすんごいファッションを思い付くんだろうな〜?」チラッ

「えっ…? ちょ、ちょっと2人とも…?」

「うんうん。 北条さんみたいな流行の最先端を往くファッション番長ならさ、それはそれはもう誰もが感銘を受けるようなファッションを今もう頭の中で考えてるはずだよね!」ニヤリ

「……うぅっ、なにこのプレッシャー」

 

 

 神谷さんとの連携で北条さんにプレッシャーをかけていく。

 さっき散々イジられた仕返しをしてやろうという事だが、神谷さんも日頃のイジられに対するやり返しにノリノリだ。今もすごく楽しそうな表情を浮かべている。

 

 

「お〜い加蓮〜? まだ決まらないのか〜?」ニヤニヤ

「も、もうちょっと待ってよ…!」

「急かしちゃダメだよ神谷さん。今北条さんはその類まれなるファッションセンスを存分に活かしたコーディネートを考えてるんだから」

「そうだよな〜、ごめんごめん。いや〜加蓮がどんだけハイセンスなメンズコーデを見せてくれるのか楽しみだなぁ〜」

 

「うっ、うっ、うぁぁ〜っ!! もうっ!! 変なプレッシャーかけないでよ! ハードル上がりすぎて訳わかんなくなってきた〜!!」

 

 

 プレッシャーに耐えきれなくなった北条さんが大きな声で叫び、その場で頭を抱えてテーブルの上に突っ伏す。神谷さんはというと、いつもイジられている仕返しだとでも言わんばかりに笑顔を浮かべている。

 

 

「もうや〜めたっ! せっかく服選んであげようとしてたのに、白石さんがイジワルするから選んであーげない!」

「な、なにっ!? 女の子に服を選んでもらえるってウキウキしてた俺の気持ちはどうすれば!?」

「あっ、それならあたしが選んでやるよ」

「マジで!?」

 

 

 神谷さん……君はなんて心優しいんだ!

 

 

「どういうのがいいんだ?」

「そうだなぁ……あんまり派手目なのは遠慮したいかな」

「あたしも普段着ではあんまり派手なのは着ないなぁ……もしかしたらあたしと白石さんって服の好みの系統が似てるかも」

「……そういうこと女子に言われるとドキッとするな」

「アンタどんだけ女子に対する免疫ないんだよ」

 

 

 席を立って俺の隣に来た神谷さんと雑談をしながら一つの雑誌を2人で覗く。そのままアレやコレやと言いながらページをめくっていたのだが、急に正面の方から強い視線を感じた。

 

 

「……」ジ-

 

「ん? なんだよ加蓮」

「北条さん?」

 

 

 きゅーっと目を細めて、何かが気に食わないような表情を浮かべる北条さんが俺たちのことを見つめていた。

 

 

「べっつにぃ〜? 2人でなんか楽しそうだなぁ〜とか思ってないですけど? アタシのことほったらかしとか別に気にしてませんけど〜」

「お、おいおい。そんなに拗ねるなよ〜加蓮」

「拗ねてませ〜ん」

「どう見ても拗ねてるだろ、それは」

 

 

 唇を尖らせ、つーんとした表情でそっぽを向く北条さん。そしてやれやれといった様子で肩を竦める神谷さん。

 気まぐれな北条さんに振り回されるのにはもう慣れっこらしい。

 

 

「白石さんだってさ〜? さっきまでアタシが服選んであげるって言ったら喜んでたのに、今は奈緒に選んでもらって嬉しそうだしぃ〜」

「いや、それは北条さんがもう選ばないって言うから」

「……えーんえーん、白石さん結局女の子なら誰でもいいんだ〜。えーんえーん」

「ちょっ!」

 

 

 わざとらしい泣き真似を始める北条さん。それ自体は別に構わないのだが、発言の内容だけを見ると周りに誤解を与えかねない。

 

 

「ほ、北条さん! 変なこと言うのはよそうか!」

「えーんえーん、ちらっ……えーんえーん」

「ぜっっったい泣いてないよね!? 今チラッとこっち見たじゃん!」

「白石さん、もうちょっと付き合ってやってくれ」

 

 

 付き合ってやってくれって言われてもなぁ……というか北条さんもう口にやけてるし!どう見ても泣いてないんですけど!

 

 

「ポテト買ってくれたら泣き止むのにな〜 チラッ、チラッ」

「さっき食ったじゃん!」

「だって、さっき奢ってくれるって約束したもん」

「うっ、確かに……」

 

 

「太るぞ〜加蓮」

「ポテトは揚げてるからカロリー0!」

「どういう理屈だよ」

 

 

 この後、ポテトをねだり続ける北条さんに今度また会った時にポテトを奢る約束をして解散することになった。

 

 因みに後日神谷さんに見せてもらった雑誌にて、多少のアイテムや小物は足されていたが俺の選んだ服を着ている北条さんが載っていたのを見て目ん玉が飛び出そうになったのは別の話…。

 

 





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