346プロの雑用バイト君   作:焼肉定食

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8話 非科学的なことは信じ難い

 

 

「ねぇねぇ、ユッコちゃんって女子高生、JKなんでしょ?」

「その通りですよ!莉嘉ちゃん! 私は女子高生サイキック美少女アイドルですからね!」

「わぁ〜 ユッコちゃんすご〜い!」

 

 

 事務所にある休憩スペースには、城ヶ崎莉嘉と赤城みりあからの質問に、堀裕子が意気揚々と答えるという微笑ましい光景が広がっていた。

 

 

「いっつもサイキックしてるけどさ〜 カレシとかいないの?」

「か、彼氏さんですか!?」

「わー! みりあも聞きたいー!」

「うぐぐ……」

 

 

 ユッコは目を瞑って額に指を当てて唸る。

 

 

(か、彼氏なんていませんよ〜 でもこの小さな子どもたちの期待の眼差し……う、裏切る訳にはっ!)

 

 

 ユッコは意を決した様に目を見開くと、お決まりのスプーンを取り出して大きな声を出す。

 

 

「サイキックパワー発動!!」

「わぁ〜!」

「むむむ〜ん! 感じる……感じますっ!あの方角に私の運命の人が!」

「えっ!どこどこ!誰もいないじゃ〜ん!」

 

 

 ユッコは曲がり角の方角に指を刺すがその先には誰もいない。

 

 

(と、とりあえずこれで今からその運命の人を探しに行ってきます〜! と言ってえすけーぷさせていただきましょう! 少しばかり心苦しいですが仕方ありません!)

 

 

「あー!感じます感じます!どんどん強くなってきてます! 莉嘉ちゃん!みりあちゃん!それでは私は今から運命の人を探してきます!」

 

 

 うぉぉぉぉぉ!と大きな声を出しながら走り出すユッコ。曲がり角を曲がってそのまま逃げようとしたその時

 

 

「ここやっぱり広すぎるって……まだ全然慣れない……」

「えっ!」

「ん?」

 

 

 どんっ! と幸輝とユッコの2人はぶつかり、体の小さなユッコは倒れて尻もちをついてしまう。

 

 

「いってて〜」

「ご、ごめん!大丈夫?」

「い、いえいえ……走っていたのはこちらなので〜 私こそすいませんでした」

 

 

 幸輝は手を差し伸べユッコはその手を取り起き上がる。

 

 

(や、やっば……女の子のこと突き飛ばしちゃったよ)

「大丈夫ですか? 怪我とかは……」

「あ、いえいえ!全然平気です!私体はとっても強いので!」ムンッ

 

 

「「ほ、本当にいたぁぁぁぁぁぁぁ!」」

 

 

「え……?」

「はっ! ち、違いますよ莉嘉ちゃんみりあちゃん!これはその……ぐ、偶然で……」

 

 

 必死に弁解をしようとするユッコと何一つ状況が理解できていない幸輝。そして大きな声を出しながら駆け寄ってくる莉嘉とみりあというカオスな空間ができあがった。

 

 

 

 

 

 

 俺の名前は白石幸輝。346事務所で雑用のアルバイトをしている。 今日もゴミ捨てや資料運びなんかの雑用を元気にこなしていたんだけど… 訳のわからない状況に巻き込まれてしまったみたいで……

 

 

「本当に男の子が出てきた〜! 」

「すご〜い!ユッコちゃんの運命の相手だー!」

「あ、あの……2人とも〜 これはですね……」

 

 

 曲がり角で突然女の子とぶつかり、その女の子を起こしたところまではよかったんだけど…

 大きな声を出して興奮した様子の女の子2人に、俺とぶつかった女の子が何か言いづらそうにしながら弁解をしようとしている。

 

 な、何がどうなっているんだ?状況がさっぱりわからない… 俺完全に置いてけぼりだ。

 

 

 

「ねぇねぇ!お兄さんがユッコちゃんの運命の人なの!?」

「え、えぇ? 話が読めない……というかユッコちゃんって誰?」

「アタシこんな少女漫画みたいな展開、現実で初めて見ちゃった〜! ヤバ〜☆2人はこれからカップルになるの!?」

「ちょ、ちょっと待って!ま、まず説明を……」

「す、すいません!少しこっちに来てください!!」グイッ

「キャ〜☆ ユッコちゃんってばだいたーん!」

「2人きりになってなにするんだろ〜 」

 

 

 キャーキャーとはしゃぐ子どもたちを置いて、顔を真っ赤にしたユッコちゃん?と呼ばれている女の子に手を引かれていく。

 

 

「と、とりあえずこの辺で……」

「お、おぉ……」

 

 

 ユッコちゃんと呼ばれる女の子はどう説明したらいいのかを考えているのか、ブツブツと何かを話しながらモジモジとしている。

 

 

「と、とりあえず、ゆっくりでいいから状況を説明してくれませんか?」

「あ、はい。 実は……」

 

 

 ユッコちゃんは申し訳なさそうに状況を説明を始める。

 あの子たちの期待を裏切りたくなくてつい運命の人がいるなんて言い出してしまったこと。

そしたらたまたまその場に来た俺が巻き込まれたこと……

 

 なんだ、ただのいい子じゃないか……ちょっとアホっぽいけど。

 

 

「えーと、つまり……超能力ごっこしてたら俺が巻き込まれたと……それなら俺は運命の人じゃないって正直に説明すれば……」

「サイキックはごっこではなくて本当です!」

「え?」

「サイキックは本当にありますよ! なんてたって私はサイキック美少女アイドル、エスパーユッコなんですから!」ドヤッ

 

 

 もしかしたらアホっぽいんじゃなくてアホなのかもしれない。 てか自分で美少女言ったよ……まぁ確かに可愛いけど。

 

 

「それで今からどうするんですか?」

「とりあえず私があの2人には上手いこと説明するので付いてきてください!」

「えぇ……」

 

 

 正直言うと面倒くさいけど一応ついて行くことにするか……

 

 

「あ、戻ってきた! ねぇねぇ2人きりで何話してたの! 」

「みりあも知りたいー!」

「2人とも落ち着いてください! 先ほどは運命の相手なんて言ってしまいましたが、実はこのお方は運命の相手になるかもしれない人です!」

 

 

 なるかもって……随分無理やり誤魔化したな。

 

 

「……?じゃあこのお兄さんはユッコちゃんの運命の相手じゃないってこと?」

「現時点ではそういうことですね!」

「え〜! 何ソレつまんな〜い!」

 

 

 黒髪の女の子は渋々納得してる様子だが、金髪の方の子はブーブーと文句を言っている。

 

 

「でもでも!なるかもってことなら、もしかしたら2人がいつかお付き合いする可能性もあるってことでしょ!」

「え、え〜と……まぁそういうことですね」

「じゃあ、みりあ2人のこと応援する〜!」

「えぇっ!?」

 

 

 この子は天使なのかな?

 

 

「ね!莉嘉ちゃん! 応援してあげようよ〜」

「うーん……みりあちゃんがそう言うなら……ていうかお兄さん誰なの?」

「あ、みりあも知りたい! 」

「私も知りたいです!」

「なんか今更感すごいな……」

 

 

 なんか自然と巻き込まれてたけど俺はこの子たちのこと誰も知らないし、この子たちは俺のこと誰も知らないんだよなぁ。 普通自己紹介って最初にするよね?

 

 

「俺は白石幸輝っていうんだ。 ここの事務所でアルバイトをしてるよ」

「アルバイト!? なんかかっこいい〜! あ、私は赤城みりあ!よろしくね幸輝さん!」

「私は城ヶ崎莉嘉だよ☆ よろしくね!」

「そしてトリを飾るこの私は……エスパーユッコ!」

「んもぅ!ユッコちゃん!自己紹介はちゃんとしなくちゃダメだよ!」

「あ、はい。すいません……」

 

 

 こんな子どもに注意されてるぞこの子。というかエスパーユッコよ、それでいいのか…… まぁ懐かれてるってことにしとこう。

 

 

「私は堀裕子と言います! ユッコとお呼びください!白石さん!」

「よろしく。みりあちゃん、莉嘉ちゃん、 それと……ゆ、ユッコ?」

「なんならユッコの前にエスパーを付けてもいいんですよ?」フンッ

「いや〜 それは……」

「……私のサイキックを信じていませんね?」

「ぶっちゃけて言うとね……」

「いいでしょう!ならばこのスプーンをサイキックで曲げて見せましょう!」

 

 

 そう言うとユッコはぐぬぬぬ……と唸る。

 

 うーん……どう見ても曲がってないよなぁ。

 

 

「ふぬぬぬぬぬっ……! ぬぬぬぬ……!ぬんっ!」グイッ

「え!?」

「み、見てください……ハァ...ハァ...み、見事に曲がりましたよ……」ハァ..ハァ..

「いやいやいや!今明らかに手で曲げてたよね!?」

 

 

 まさかこんな強硬手段に出るとは、完全にサイキックじゃなくて馬鹿力じゃないか……

 

 

「まだ信じてくれませんか! なら次はテレパシーで白石さんの頭の中にメッセージを……!むむむむ……!」

 

 

 次から次へと……とんでもない子だなぁ。 でも一緒にいると楽しそうかも。

 

 

「ねぇねぇ幸輝さん!みりあたちともお話しよーよー!」

「そうそう☆ アタシたちをほったらかしなんてダメなんだからね!」

「あはは……別にほったらかしてた訳ではないんだけどね」

 

 

 ユッコに少し圧倒されていたというか……びっくりしていたというか……

 

 

「そういえば莉嘉ちゃんはお姉さんっていたりするかな?」

「うん!いるよ! ちょーかっこいいお姉ちゃんがね!」

「それってもしかして美嘉さんかな?」

「え! 幸輝くんお姉ちゃんのこと知ってるの!? なんでなんで!?」

「前に車で送迎をしたことがあってね」

「へー そうなんだぁ! 美嘉ちゃんかっこいいよね〜 」

「えへへ〜 なんてたってお姉ちゃんはカリスマギャルだからね!」

 

 

 莉嘉ちゃんは随分とお姉さんのことを慕っているんだなぁ…… でも城ヶ崎さんみたいなお姉さんがいたらそりゃそうなるか。

 

 

「アタシもいつかお姉ちゃんみたいなセクシーでかっこいいギャルになるんだから! ね!幸輝くん! アタシなれるよね!」

「え? 莉嘉ちゃんが? うーん……もう少し時間はかかりそうかな〜」

「何それ〜 チョー失礼なんですけど〜! アタシが成長してゆーわくしたら絶対幸輝くんもイチコロだよ☆」

「おー そうだな〜」ナデナデ

「もぅ〜!」プンプン

 

 

 背伸びをする莉嘉ちゃんが可愛くてつい頭を撫でてしまった…… でもこんな可愛い妹とか欲しかったな〜

 

 

「みりあも撫でてー!」

「よし来い!」

 

 

 なでなでをご所望のみりあちゃんも一緒に頭を撫でる。

 

 

「こんなとこ誰かに見られたら通報されるかもなぁ……なんちゃって」アハハ-

「確かに、随分怪しい絵面だね」

「え? あ……し、渋谷さん……」

「あ、凛ちゃん!こんにちわ!」

「凛ちゃんおっつ〜☆」

「うん、こんにちわ。みりあ、莉嘉」

 

 

 なんてこった……小さい女の子2人の頭を、笑顔でなでなでしてるところを偶々通りかかった渋谷さんに見られてしまった……

 

 

「随分子どもたちに懐かれてるんだね」

「べ、別に変なことはしてないけどね!ただ頭を撫でてただけであって……!」

「別に私咎めたりしないけど……」

 

 

 あれ? そうなの……? よかったぁ……

 

 

「ムムム……ムンムムンッ!! むんっ!!」

 

 

 後ろにいるユッコが何かを念じながら大きな声を出すと…… 突然渋谷さんのスカートが大きく捲れ上がってその中身が……

 

 

「あ、 また黒…………はっ!」

「………っ!」カァ-

 

 

 しまったつい口に…… 渋谷さん顔真っ赤にして睨んでくるよ……。 うわ、こっち来た。

 

 

「……………」スタスタスタ

「い、いや……今のも別にわざとじゃなくて……本当偶然スカートが……」

「……………」スル-

「あれ?」

 

 

 こっちに向かって歩いてきた渋谷さんは俺の横を静かに通り過ぎると、俺の後ろにいたユッコを睨みつける。

 

 

「裕子……さっきのはアンタの仕業……?」ゴゴゴゴ

「あ、あれれ……?り、凛ちゃん……いつの間にいたんですか……?」

「今のがエスパーユッコのサイキックパワーらしいぞ〜」

「あ! 白石さん私を売りましたね!」

 

 

 すまんな……エスパーユッコよ。

 

 

「ごちゃごちゃ言ってないでこっちに来なよ。 話したいことが色々とあるからさ……」ゴゴゴ

「だ、誰か助けてくださ〜い!」

 

 

 

(すまないエスパーユッコ……君の犠牲は忘れないよ)

 

 

「白石、裕子の次はアンタだからね。 そこで待っときなよ」ゴゴゴゴ

「あ、はい」

 

 

 そう呟く渋谷さんはとても迫力があった。 年下なのにすごい迫力……。

 

 そして俺はユッコが半ベソかきながら戻ってきた姿に恐怖を覚えながらも、渋谷さんに説教されるのであった……

 

 




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