戦術マニアのGGO日和   作:Haganed

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狩人と剣士

 BoB予選、シード枠としてヴェンデッタが参加することとなり不特定多数のプレイヤーは強者が待ち構えているというプレッシャーにより、普段から血の気の多い者もなりを潜めて無理だと呟く。無論それはあくまで多数の者であって極小数のプレイヤーは確実にヴェンデッタとやり合える機会ができた、という事実に対して様々な思惑を想起させていった。だがその前に本戦まで勝ち進めなければならない事に変わりはない。

 

 Cブロックに出場する銃士XはM14EBRの2丁持ちというロマン極まる装備に対応するため軽装ではあるものの、弾道予測線が現れない射撃が短いスパンで2回行われるという最大にして唯一の利点を巧みに利用し、的確に相手の頭蓋を狙撃して見事に本戦への出場権を獲得した。ほぼほぼ実用的ではない戦闘スタイルなのだが上手く利用している点から、伊達に上位陣として名を連ねている理由が理解出来る。

 

 Fブロックに出場しているシノンとキリトはそれぞれ違った活躍を見せた。シノンは装備しているへカートによる遠距離射撃によるワンショットワンキルを見せ、次の戦闘で戦車に乗った相手を倒したりと順調に勝利を重ねて決勝に進んだ。彼女に二つ名が付けられる程の強さを持った理由が分かるほどに。だがそれ以上に印象づけられたのは、このGGOで異色の活躍を見せたキリトである。

 

 彼は光剣と小口径ハンドガンというGGOらしくない装備で、且つ一番記憶に残る勝ち方をした。1回戦で最初は苦戦していたが、突如アサルトライフルの銃撃を光剣で掻き消すといった離れ業を成し遂げ予選1回目を突破。単なる偶然でジェダイじみた剣技が出来るわけがないのだが彼はそれを成し遂げたのだ。それから4回戦まで、同じように光剣による防御という偉業を成しつつBoBにて初めて光剣使いが予選決勝まで進んだ異例の事態を巻き起こさせた。

 

 それらの様子を見ていたヴァー・ヴィーと既に本戦への出場権を獲得している銃士Xは感嘆の声を漏らす。似たようなことをヴァー・ヴィー(ヴェンデッタ)はやっているとはいえ、純粋にあの技量は賞賛を送るべきものであるから。

 

 

「ふーむ、化け物じみた強さだな」

 

「それVが言えることかしら?」

 

「はて何の事やら」

 

「初速、弾速ともにアサルトより速い対物の12.7斬ったの誰だったっけ?」

 

「そんな事もあったな」

 

 

 持ってきていた工具箱から銃器のメンテナンスセットを取り出し、大会参加者から預かった銃器の調整をしながらそう答えるヴァー・ヴィー。彼は今、他のプレイヤーから太っ腹だといわんばかりの事をしつつもキリトやシノンの他に大会参加者の1人を見ていた。それはキリトが予選1回目が終わって間もなくの事、とあるプレイヤーが彼と接触してきたためであった。

 

 コンバートしてきたとはいえ無名であるキリトに接触してきたという点で怪しむ要素はあり、彼には悪いが暫く傍観という立場に徹させてもらう事に決めて様子を伺っていた。やがて話が終わったらしくキリトから離れていく際に彼は骸骨面(スカルフェイス)をした幽霊のようなプレイヤーを認識し、その記憶を頼りに出場者の戦闘映像を確認していく。やがてそのプレイヤーの名がSterben、まだ読み方は定かになってないが兎も角そいつにアタリを付けていた。

 

 キリトに接触したとなればおそらく彼と同じSAOサバイバーという推測も立てられ、この予選が終わり次第そのプレイヤーの特定を彼女にやってもらうと計画して、先ずはどこか焦燥気味のキリトの手助けに入った。彼にとっては笑う棺桶と呼ばれた犯罪集団との出来事は忌まわしい過去で、ヴァー・ヴィーにとっての()()()()のような思い出したくもない出来事なのだろう。

 

 変な感傷に浸っていた状態を切り替えてヴァー・ヴィーはメンテナンスを行っていく。出張という形とはいえ無償でメンテナンスをしてくれるとだけあってかなり盛況になっていて、優先順位としてBoB参加者が先ではあったが予選が終わるまでの間こうした機会が設けられているので人の流れが絶えない。ついでに腕前の良さを知らしめて新たな顧客を迎え入れるといった商業的な意味合いも兼ねている。内心で彼はほくそ笑んだ。

 

 

「V、そろそろシノンとあの彼が戦うわよ」

 

 

 銃士Xからそう告げられ、彼は一旦その手を止めてFブロック決勝の様子を見始める。決勝に進めば本戦に出られはするが、シノンが成長した様子を彼はキリトという対戦相手をもってして見定めたいとヴァー・ヴィーはそう思っていた。

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

 

 

 

 

 

 Fブロック予選決勝、大陸間高速道ステージに降り立ったシノンは自身の現在地を確認。周囲とマップを照らし合わせ今の自分がその東端に居ることを確認すると、傍にあった観光バスの残骸に一時その身を隠した。タイヤと車体に身を隠しこの直線ステージでスナイプするのは危険性が伴うと考え、へカートを置いて30発ロングマガジンが装着されたベレッタM93Rとナイフを装備。グリップとナイフの持ち手を両手で包み込むように握り締めコンバット・ハイポジションの位置に持って車体から身を隠しつつ覗き込む。

 

 しかし驚いたことに、警戒心に溢れた彼女の目に映ったのは太陽を背に悠々とこちらに近付いてくるキリトだった。光剣の刃も出現させずFive-seveNも構えていない非装備状態、何かがおかしいと思ったがそれ以上に何を巫山戯ているのかと頭にきたシノンは、優位性が確立されたその場から飛び出しエクステンディッド・ポジションで銃を構える。

 

 

「どういうつもり、アンタ」

 

「……決勝まで進めば、本戦への出場権が手に入るんだろ。だからもう、こちらとしては今戦う理由なんて無いんだ」

 

 

 突如、シノンの何かが切れた。瞳孔は狭まり声に怒りを含ませ彼女はグリップとナイフを握る力を強めた。

 

 

「ふざけんな」

 

「…………」

 

「ふざけんじゃないわよ女男。もう戦う理由がない? だからお互いに“本戦出場おめでとう”って祝いたいわけ?」

 

「……決して、そんなんじゃない」

 

「じゃあ今のこの状況はなに!? アンタからすれば私は弱いから負けを認めてくれとでも言いたげじゃないのよ!」

 

「! そんな事は決して」

 

「じゃあ戦え!」

 

 

 その場の空気がピリつく。その覇気に気圧されたキリトが彼女の瞳から発せられる強い意思が、2年以上もの間仮想世界に囚われていたキリトが鍛え上げた直感が訴える。この怒りには相応しい治め方があるだろうと。

 

 

「私はこの大会で強さを示す、示し続ける! そのためにここに来た! 私の想いを、この大会に参加した全プレイヤーの想いを敵に回すアンタみたいな半端な奴が、勝手に戦いの勝敗を決めていい場所なんかじゃない!」

 

「っ……!」

 

「私はここに立って戦っている! ここでアンタを倒して実力を証明する! 降参も自害もしないしさせない、アンタは敵として私と戦わなきゃならない義務がある! さぁ抜きなさい! 武器を構えて、照準を定めて、剣を構えて、私とアンタのどちらが勝つか、白黒ハッキリ付けさせろ!」

 

 

 ここでようやくキリトの記憶は先程ヴァー・ヴィーに言われていた言葉を思い出し、その言葉を改めて頭ではなく心で理解した。この大会に出場しているプレイヤーは死銃のことなんて気にも止めていない、そんな事を気にしている余裕もないし暇もないのだ。己の実力が証明され頂点をその手に掴むためにシノンも今ここに居ることに、改めて気付かされた。

 

 静かにカラビナに取り付けられた光剣を外して装備し刃を出現させて構える。キリトの目に迷いはなかった、もう目の前にいる彼女のことも、この大会に参加した全プレイヤーに対する侮辱もしないと。眼前にそびえる相手に敬意を持って、彼は相対することを決めたのだ。

 

 

「……ありがとう。おかげで目が覚めた」

 

「そう、それはどうも」

 

「改めて気付かされたよ。この仮想世界で、みんな全身全霊をかけて勝負に挑んでいることに。俺が勝手に不安に思ったところで“知った事じゃない”と言い切るぐらいに強い意志があることを」

 

「……?」

 

 

 シノンは一瞬、キリトの発言の意味が分からなかったがそのあとすぐに思考を臨戦態勢に整えさせる。

 

 

「だから俺も、全力でシノンの相手をしよう。シノンの方も全力で向かってきてほしい」

 

「ハッ。どの口が言ってるんだか、私は今この瞬間も全力で居るわよ」

 

「……ライフルは良いのか、君の武器なんだろ」

 

「お生憎様、舐めないことね。へカートが無くたって、そんじょそこらの相手を軽く捻るぐらいの腕はあるわよ」

 

「それは末恐ろしいな……それじゃあ」

 

 

 瞬間、キリトのアバターがブレた。真っ直ぐ光剣を突き出した素早いという形容がし難いほどの速度で突進したのだ。普通ならかわせずに体にエネルギーの刃が突き刺さる筈だった。

 

 

「しぃッ!」

 

「おあっ?!」

 

 

 構えを解いたシノンは何とキリトの攻撃を避け、その突進の勢いを利用して彼の腕に手を添えて投げ飛ばした。ヴァー・ヴィー直伝の戦闘術が繰り出され、キリトの体は地面に勢いよく叩き付けられたかと思えば器用に受身をとってシノンから距離を取った。

 

 驚いているキリトを他所に彼女は再度構え、銃口を向ける。自らに檄を飛ばすかのようにシノンの口は宣戦布告を唱えていた。

 

 

さあ───来い!

 

 

 








シノン VS キリト






活動報告にて質問募集中 期限は11/14 23:59まで
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【M14EBR】
アメリカのスプリングフィールド造兵廠が開発と製作を手がけたM14バトルライフルの派生系。Navy SEALsやDelta ForceなどのUSSOCOM向けに製作されたもの、選抜マークスマン向けの銃身と近距離戦闘向けの18インチ程の銃身が存在する。
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