戦術マニアのGGO日和   作:Haganed

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報復を与えんがため

 時は少し遡り、ヴェンデッタのハウスルームに居る家主本人と依頼者の2人が対面していた。あるスコードロンのメンバーのPK、その名はヴェンデッタがよく向かう賞金首狩りスコードロンの手配書にメンバーリーダーの名前があった事を思い出したのも束の間、あろうことか依頼者はそのスコードロンの全滅を希望した。

 

 

「全滅、とは穏やかじゃないな。何のために?」

 

「あのスコードロンの噂は聞いてるだろ、火事場泥棒のハイエナ集団って。俺たちのチーム全員も、そいつらにやられて挙句1人はレアドロをロストしてGGOに来ないって言い出した。他にも被害に遭った奴らも居る、このゲームを楽しみにしてやって来たプレイヤーが楽しめないのを聞くのは悔しいんだよ!だからアンタに仇討ちしてもらいたいんだ!」

 

「……楽しさ、とは言うがな。この世界でそんな行為は殆ど日常のそれだ。特に奴らを咎める理由にはならんし、楽しみ方は人それぞれ在る。態々他人のプレイスタイルにケチを付けてまで報復というのもな」

 

「アンタがそれを言える立場かよ!?これ(PK)で金稼いでる癖に!」

 

「生憎アイテムの方も売れてるのでね。だが俺がこの依頼を一番渋る理由は()()()()()()()()()の方だ、気乗りする方が難しいまである。それを理解してるか?」

 

 

 ここで依頼者が押し黙る。ほんの少し考えれば分かる事だが、標的の多い依頼はそれだけでロストする危険性が高い。あくまで仮想上の死とはいえロストすればデスペナルティとしてアイテムがランダムにドロップしてしまう。これだけで資産の減少に繋がるため誰であろうとこのような依頼は避けるのが普通だ。そしてこれはごくごく当たり前の事であるが、このような依頼を受諾させるには多額の報奨金が必要になる。

 

 ただでさえ1人が行う内容ではないのだ。それを押し通そうとする事がどれほどの無謀さを孕んでいるのかを想像できない筈はない。もし彼ならば出来るのではないのか、という考えがあるのならそれは過信でしかないと言える。納得させたいのならば、それ相応の金を動かさなければならない。

 

 

「もしそれでも尚望むというのなら、それ相応の報酬を用意しなければ動きはせん。自分で判断しろ」

 

「────いや、分かった。払う、だからやってくれ」

 

 

 一つ息を吐き、ヴェンデッタが目を瞑る。少しして目を開きソファから立つと紙とペンを持ってきて金額を書く。その値段は通常のプレイヤー1人や2人では簡単に払える金額ではない。しかしそれを見越してヴェンデッタが口を開く。

 

 

「そこから情報の質と量によって減額されていく。何も無ければその紙に書いた報酬金を支払ってもらうが、出すなら今のうちだぞ」

 

「わ、分かった。でもどんな情報なら?」

 

「敵の装備編成、狩場、活動時間とかだ。装備に関しては相手の防具の詳細が分かれば多少まけられる」

 

 

 そこから男は覚えている限り、調べた限りの情報を開示していき、最終的な判断により支払い金額は85Kクレジット*1にまで減額された。この値段は当初の半分程にまで抑えられたため依頼者が驚く羽目になる。

 

 

「い、良いのかよこんな……安く」

 

「今回の相手の中に賞金首として指定されたプレイヤーが居たんでな、そいつのタグを持って見せれば70Kは確実に貰える。それを踏まえてだ」

 

「……逆に情報なしじゃ、踏まえた上で150Kなんて大金なのか」

 

「賞金首とは関係ない面倒な奴まで倒さなきゃならん、これぐらいは妥当だとも。3日後にまた来い」

 

 

 取引が終了し1人残されたヴェンデッタは仮想の肉体をゴキゴキと鳴らしフレンド欄から銃士Xを呼び出す。ここまでが夕方の出来事であった。

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

 

 

 

 

 

 そして現在、戦火の真っ只中に居るヴェンデッタはBoBで披露した装備に加えCQB対応の装備で今回の作戦に挑んでいる。顔面全体を覆う分割可能なガスマスクに全身ほの暗い灰色のコンバットスーツ一式を着込み、いつものカランビットナイフに加えカスタムされたCQB対応のFN SCAR-LとH&K MP7。その他スモークグレネードや通常のグレネードを装備した形となっている。

 

 

Target down(対象を撃破). Remaining 10(残り10).」

 

10 observed(10人確認). Targets seem to stay together in one place(相手は一塊になって立てこもるみたい).』

 

Check attack(牽制攻撃).」

 

Leave it to me(任せて). 』

 

 

 そして渦中から離れた高所で1人背景に紛れて狙う銃士X。ただ今回の一件では普段の装備はなりを潜め、周囲の赤茶色の岩肌に溶け込むような服装で全身を覆っていて特徴的な銀髪もフードで隠し胸も抑えている。装備には使用しているFR F2にサプレッサーとFWS-Sを取り付けており、サブとしてグリップを改造したベレッタ90-Two TypeFを所持している。

 

 到着した別の狙撃ポイントからスコープ越しに観察する。対象であるグループは二人の出方を窺っているようで、外に出るのを躊躇っている様子なのが見れる。相手からすればほぼ抑止力に近いヴェンデッタや不明のスナイパーから狙われているため迂闊に出る方が危ういと思いがちである。この二人に籠城は通じないという点を除けばの話だが。

 

 口をすぼめて小さく息を吐き続ける。徐々に小さく絞られていく円の中に入れるのは建物1階に居るプレイヤーの1人、僅かに当たらない位置に照準を定め、弾道予測線が一瞬で消えるほど素早く引鉄を弾いた。1秒にも満たない時間で目標に到達したことを確認するといそいそとライフルを片付け始めた。

 

 

Do the rest, please(あとはよろしく).』

 

 

 それを聞き終えたヴェンデッタはすぐに行動を開始した。窓から誰の視界にも入らぬように開けておいた窓を使って建物から離脱、先程銃士Xが狙ったプレイヤーのグループがスナイパーに警戒しつつ移動しもう1組のグループが待つ建物に入っていくと遠回りしながら件の建物へと接近する。出入口と反対方向の窓側に位置すると、その場でか細い呼吸を繰り返す。ガスマスクに隠れた瞳が幽鬼のように虚ろへと変わっていくと、ヴェンデッタはゆったりとした動きで窓に対し斜めに立つとそのまま発砲した。

 

 ガラスの割れる音と銃声が響き2階に集合していた計10名のプレイヤーがただ1人のことに思考を移す。聴覚を研ぎ澄ませ建物内から聞こえる足音を判別、推測を立てるヴェンデッタ。まだ中には入らない。

 

 

(──大柄な奴が矢面、その後ろに付随するように移動中。窓へと近付くのは大柄含めた4、回り込み3ずつ)

 

 

 スモークグレネードを手に取ったヴェンデッタはピンを引き抜き窓辺りまで転がす。その間、右側から来る4名に対処するためグレネードを引き抜いて転がした。

 

 

「グレネード!」

 

 

 男が叫ぶ、だが判断が遅かった。矢面に立っていた1人がグレネードの爆破により一発圏内にまで減らされ、他もそれ相応のダメージを受ける。タイミングよくスモークが展開されると先述の一行を淡々と処理し始めていく。矢面に居た2名の頭蓋に一発ずつ、フルオートに切り替えて残りを倒すと一瞬で3名がポリゴンに変えられた。

 

 次に使用していたFN SCAR-Lを非装備状態にさせ用意したカランビットナイフを装備。ゆっくりとした足取りでスモークの中へと入っていき、弾道予測線を避けるため下から潜り込むように移動すると近場にいた1人の態勢を膝への攻撃によって崩し、カランビットナイフと身体操作によって銃を叩き落とし背後を向けさせ肉盾にさせながら攻め込む。

 

 

「くそっ、野郎ォ!」

 

 

 スモークにより視界が遮られている中、2名がその音のした場所へ向けて乱射し始める。肉盾に使用しているプレイヤーのHP残量を考慮しそのプレイヤーを銃を乱射してる1名に向けて()()()とその場から離脱、対象にしたそのプレイヤーを制圧すると背後にまわりカランビットナイフで首を斬りつけ、敵が所持していたAS-VALを奪いそのプレイヤー越しにフルオートで撃つ。

 

 当然、本来の所有者はポリゴンに変えられ同じく乱射していたプレイヤーも倒された。かろうじてHP残量があった肉盾として使用していたプレイヤーにも撃ってポリゴンに変えさせ建物の中へと入り室内階段の影に隠れる。スモークが晴れ部屋内にはプレイヤーは確認されないが、先程収めたFN SCAR-Lを装備すると、出入口に向けて発砲しつつ階段を上って2階へと移動した。発砲した先に見えたプレイヤー4名を封じ込ませながら。

 

 

「くそっ! 俺たち以外全員やられた! くそっ、くそっ!」

 

「ピーチクパーチク喚いてんじゃないよクソ野郎。それより手足動かしなチ○カス、折角あのヴェンデッタが殺しに来てるんだしさぁ」

 

「テメェだけで楽しんでろピトフーイ! 俺たちはあんなイカれた野郎に敵うわけねぇんだよ!」

 

「だったら尻尾巻いて泣きわめきながら逃げなよ。「うぇーん、ヴェンデッタさま許してー!」」

 

「言われなくてもこっちから逃げてやるよクソが!」

 

 

 そうして2名、ピトフーイとエムを残して残されたプレイヤーはその場から逃げようとしていた。が、それらを許さぬように逃走していた2名の前にグレネードが落とされ、爆破により倒された。残されたピトフーイが不敵に笑みを浮かべエムを連れながら屋上へと向かって行った。

*1
1K=1000円




【FN SCAR-L】
FNハースタル社製のアサルトライフル。
グリーンベレー、ネイビーシールズ、デルタフォースの総括であるSOCOMの開発依頼によって製作された特殊作戦軍向けのアサルトライフル。
今回使用したのはCQB対応の5.56×45mmNATO弾仕様のもの。重量は3.04kgと軽く全長も短い。

【H&K MP7】
H&K社製のPDWサブマシンガン。
4.6×30mm専用弾を使用。ケブラー製ヘルメットやボディアーマーを貫通するなどアーマーピアシングの特性を持つ。FN P90の対抗として製作された。

【FR F2】
フランスのGIAT社製ボルトアクションライフル。
MAS 36小銃の機関部を主軸にFR F1のフリーフロートの肉厚銃身と二脚を改良し追加。ピストルグリップタイプの銃床、望遠照準器に脱着式10発箱型弾倉を装備させた狙撃銃。使用弾薬は7.62×51mmNATO弾。

【ベレッタ90-Two TypeF】
イタリアのベレッタ社製のオートマチックハンドガン。
ベレッタ92の相違点として人間工学に基づき使用者の手の大きさによって交換可能なポリマーグリップ。92と同様デコッカー兼用マニュアルセーフティーが搭載されている。
銃士Xの使用弾薬は9×19mmパラベラム弾。

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