・ヴェンデッタ⇄ヴァー・ヴィー(?)
──…………ん、いい香り。いつもごめんなさいね、態々紅茶とお茶菓子まで用意してもらっちゃって。
──客人の
──そう? じゃあお言葉に甘えちゃおうかしら。
──そうしてくれ、それだと俺の気が楽で良い。……ところでツェリスカ、今日はなぜここに?
──あら、理由が無いと来ちゃダメ?
──駄目とは言わん。ただ気になっただけだ、仕事が休みの日に態々GGOに来てここに来た目的がな。まぁ単に来たかっただけでも構わんがな。
──聞きたいんじゃないの?
──言おうと思ったら言えば良い、待つのは慣れている。
──……ふふっ、なるほど。なら先にお礼から言わなきゃいけないわね。
──礼?
──GGOという世界を守ってくれた事よ、それにザスカーに口利きしてもらったこともね。
──ザスカーへの口利きはあの件で必須だった。だからすべきことをしたまでだ……GGOを守ったのは俺の疑問を、あの事件を解決したことによる副産物のようなものだ。礼を受け取れるような事をした訳では無い。
──謙虚は美徳、なんて言われるけど謙虚すぎるのも考えものよ? 素直にお礼は受け取っておきなさい。
──謙虚ではないんだが……了解した。
──よろしい。……ついでに聞いてもいいかしら?
──あん?
──第3回の大会を見ていた時に思ったのよ、いつもどこで着替えてるのかとか。どこから現れてるのかとか。
──……悪いが、それに関しては黙秘させてもらう。俺の活動のタネがバレるのは個人的に嫌うのでな。
──それは残念。何時になったら話してくれるのかしらね?
──さてな、精々秘密を知るに値するメンバーが集ってスコードロンでも設立した時ぐらいではないか? 今のところそんな予定は無いが。
──秘密だらけね。でも、もしその時が来たら……良いわよね?
──そんなことが起こればの話だがな。
・過去
──ここか、ちょっとした馴染みの店というのは。
──はい。俺と同じ
──……会わせたい人、ね。
──あまり気張るな、詩乃。俺も居ることを忘れるなよ。
──……なら、手繋いで。忘れないように。
──堰が外れたみたいに積極的になったなぁ……ほれ。
──ん。
──えーっと、それじゃあ中に。
──おっそい!遅いわよキリ……?
──キリト君、その人は?
──アスナ、この人はムグッ?!
──桐ヶ谷、こんな状態で悪いが俺がヴェンデッタとバラさないでくれるか。
──ムッ?
──何時どこで他のGGOプレイヤーにバレかねない危険性がないとは限らんのだ。とりわけ金が関わってる以上下手に名前を出しては面倒事になる、もしバラしたらその時は……徹底的に、だ。分かるな?
──プハッ、分かりました!
──頼んだぞ。
──はい!
──……うっそ、あのキリトが人の言うこと聞いてる。
──中々珍しいモンが見れたな。それでキリト、誰なんだ?
──あ、えーっと……
──お初にお目にかかる。第3回BoB同時優勝プレイヤー『ヴェンデッタ』の関係者で、彼奴の仲介屋だ。あの事件にも携わっていた1人でもある、以後お見知り置きを。
──あの化け物じみた20vs1をやってのけた奴の関係者?! いやでも待って、なら本人がここに来るべきだと思うんだけど?
──彼奴は秘密主義の塊だ、GGOでもリアルでも俺としか顔を合わせん。警戒心が擬人化したような奴なのだ。
──あー…………成程?
──ところで、お名前の方は何と?
──睦希 亮司という。……って、お前さんがたの目的はこっちだろう。
──あっ、キリト君。彼女が?
──そう、彼女がシノンだ。
──どうも……。
──シノン、睦希さん。あっちがALOでぼったくり鍛冶師をやってるリズベットこと篠崎里香。
──あんたねぇ……!
──こっちがALOのバーサク
──ちょ、ちょっとキリト君!
──そしてあれが、ALOでも店を経営しているエギル。
──エギルじゃなくて、アンドリュー・ギルバート・ミルズだ。あと俺の説明だけショボイんだが?
──……桐ヶ谷、俺が言うのもなんだが語彙力を増やしておいた方が後々良いぞ。
──それは同感。
──……ダメでした?
──あれを見てOKと思うなら別に構わん。
──……肝に銘じておきます。
──クカッ、期待しておるぞ。んん゙、改めてだがGGOにて技術屋兼仲介屋をやっているヴァー・ヴィーもとい睦希 亮司だ。
──……朝田 詩乃、です。
──あ、じゃあこっちの席に。ささ座って座って。エギル、俺はジンジャーエールを。2人は何に?
──レモンスカッシュでも頼もうか。詩乃はどうする?
──亮司と同じもので……。
──なら店主殿、レモンスカッシュを2つ頼む。
──はいよ、少し待ってな。
──それじゃあ、リズとアスナに事件のことを掻い摘んで説明するよ。
──……という訳になりました。
──あんたって、なんか事件に巻き込まれやすい体質かなんかなの?
──いや、そうとも言えないさ。俺の因縁も関わってたからな。
──……そう。にしても最初に気付いたのが、そこにいるシノンさんの彼氏さんとはねぇ。
──そうよ、亮司は凄いの。
──何で詩乃が言うんだ。まぁお前さんがたのようにSAO帰還者で無いこともあって、一歩引いた見方が出来たというのはあっただろうな。
── 一歩引いた見方、か。確かにそういった視点で物事を見るのはどんな時でも重要ですよね。
──まぁな。所でだが桐ヶ谷、詩乃に会わせたいという者はこの者らの事か?
──それもそうなんですけど、他にも会わせたい人が……その前にシノンに謝ることがあって。
──謝る……?
──実は、あの時洞窟で話してくれた事件のことをアスナとリズにも話したんだ。どうしても協力が必要だった。
──っ……!?
──詩乃。
──!……ん。
──それで良い……必要なこと、というのは詩乃の過去に関わる人物に会わせるためか?
──はい。彼女に会わせるべき人と、聞くべき言葉を知ってほしくて。
──聞くべき……言葉?
──今、ここに居るのか。
──はい、今ここに。
──そうか……詩乃。
──何……?
──……どんな事があろうと、俺は詩乃の味方であることに変わりない。落ち着いて話を聞いてみようか。
──……ありがとう。
──……そうか、詩乃にそんな過去があったとはな。
──ええ。彼女から話は聞いてなかったんですか?
──いや、言える日が来るまで待つつもりだった。……知らなかったとはいえ、前に詩乃の古傷を抉ってしまったからな。聞く権利もなかろうて。
──そうなんですか?
──ああ、恥ずかしながらな。
──……あの、睦希さん。
──ん?
──俺たちの、SAO帰還者のことはどう見えてますか。
──……被害者、という見方が強いな。人の勝手に巻き込まれ、人生を失いかけた者たち。
──……でも、あの世界で得られたこともありました。
──そうか。なら俺の発言は忘れてくれ、無粋だったな。
──睦希さんは、過去に何かありましたか?
──というと?
──何かを得られたこと、です。
──……さぁ、な。俺にあっただろうかは、今思い出せん。寧ろ……いや、何でもない。こういうのは知らなくて良いに限る。
──そっすか。
──そういうものだ。
・思い出
──お久しぶりですね、睦希さん。
──はい。多分、1年ほど来てなかったかと。
──うん、確かにそのぐらい。今日は……あの記憶のこと?
──ええ……少し、思い出す頻度が増えてきて。感情のフラッシュバックも一緒に。
──何か最近ありました?
──色々と……すいません、あまり詳しくは。
──大丈夫ですよ。あぁでも、これだけは聞かせてくれませんか? その記憶を思い出すようになった切っ掛けを。大雑把で構いません。
──……新しい人との関わり、でしょうか。
──人との関わりね。ふむ……
──……悪い人たち、ではないんです。寧ろ良い人ばかりで。
──そっか……。でも、君の事情を知っている身として発言するなら、その人たちと少し距離を置いた方が良いと僕は思う。
──まぁ、そうっすよね。
──多少距離を置いても問題ない関係なら、信頼出来る人を傍に置いて療養した方がいい。というのはあくまで僕の意見だ、どうするのかは君が決めなきゃいけないからね。
──……はい。
──何ならだけど、メディキュボイドの申請をしておこうか?薬はあんまり……だったよね。
──……お気持ちはありがたいですが、少し暇を見つけて旅行する方をやってみます。薬はいつも通り無しでお願いします。
──分かりました。……でも、あまり無理はしないでほしい。壊れる前に少しでも良い方を選んで欲しいとは思う。
──……お時間を割いてくださり、ありがとうごさいました。
──何やってんだか、な。本当はその方が良いのに。…………にしても、メディキュボイドか。2年ぐらい前に試して以来か。
──……そういえば、アイツらは元気だろうか。もうかなり会ってないしな。
──今、どうしてるんだろうか。