・ベッド選び
──んーむぅ…………。
──リョージィ、なーに考えてるの?
──いや、ベッドをどうしようかとな。
──あー……最近、詩乃ちゃんが頻繁に泊まってくること多いもんね。で、1人だけ除け者にするなーって感じで香蓮ちゃんも泊まってくるし。
──比較的部屋の広さはあるが、あまり大きすぎてもなぁ。かと言って敷布団は敷布団で面倒なことになりかねんし……。
──まぁベッドを買うとしてだけど、候補としてはクイーンにする感じ?
──無難に考えればな。キングという選択肢もあったが部屋の圧迫感を鑑みればクイーンが妥当とは思うが……ふー、また家具を移動させねば。
──その時はよろしく頼んだ。で、何かめぼしいものあった?
──まだ決めかねておる。俺は正直な話デザインの善し悪しはあまり興味無い質だからなぁ、なので意見が欲しい。
──おーどれどれ……あ、収納付きにすれば今あるデスクの分無くして部屋の広さは確保出来るんじゃない? あと思ったけど、このさき詩乃ちゃんもここに着替えとか置きそうな感じがしないでもないし、チェストベッドの方が良さそう。
──機能性という点で考えれば確かにな……となるとデスクに置かれた本類も収納出来る本棚があれば尚のこと良いか? 漫画や資料などもそうだが、アミュスフィアの収納が……いや待て、パソコンを置くためのデスクが欲しいな。あと俺の方が色々と入れてるのもあって、その分は確保したい。
──じゃあデスクも見てみようか。あ、ついでに下取りも出来るならやって欲しいわね。
──聞いてみるか。無理とは思わんが、出来ないのならリサイクルショップにでも売ってみるとするか。
──あ、いっそのことホテルみたいな感じの配置にしても良いんじゃない? それはそれで面白そうと思うんだけど。
──ふむ……意外に盲点であった。そういった配置もありか、やってみるのもありやもしれんな。
──いーじゃないのこれ? ん、明日は……問題なし! 明日パパーっと行って見てみよっか!
──本当、インテリアのことになるとやる気が違うな。
──こういう女性は嫌い?
──いや、寧ろ大好きだが。
──んふふっ、ねぇ。
──ん?
──
──……
──
──はぁ……
──んふひひひっ。
──……えぇい、可愛い顔をしおって!
──きゃー!
・弾丸避けの原理
──そういえばV、前にコイン見せてくれた時あったわよね。
──あったな。
──あの時聞きそびれたんだけど、Vって現実でも弾丸って避けられるの?
──出来なくはないな。いや寧ろ何度かやった事がある。
──……それって、特殊部隊に入ってる人間なら誰でも出来るものなの?
──そんな訳ないだろう。特殊部隊がそんなんばかりでは誰も為す術なく任務を遂行されて終わりだ。
──そうよね、じゃあ何でVは避けられるのよ。一番不思議でたまらないんだけど。
──原理としては……そうだな、漫画とかでよく見かける殺気を感じて避けるとか、そういうものが分かりやすいか。
──かなり非科学的なことやってるって自分で思わない?
──いや、殺気を感じること自体は本来生物が持ち得る本能のようなものだ。かなり特別な事でもないぞ。ただ人間は勿論、ここまで高精度の察知能力は生物でも中々ないと師匠や武術師範の方々は言っていたな。
──それってさ、どうやって身につけたのよ?
──身に付けたというより、取り戻したものというのが正しいんだが……まぁその点は良しとしよう。言うは易く行うは難し、といったものになるが主にやっていたのはどこに目掛けてナイフが来るのか察知し、それを防ぐといったものをやっておったな。だんだん慣れてくるとフェイント混じりの攻撃も師匠はやってきたが、どこが本命なのかを理解すれば後は防ぐだけだったな。
──……弾丸避けはどうやったのよ?
──相手方の視線を感じ取って、相手が撃つという意思を感じれば避ける。といった訓練の積み重ねで出来るようになったな、顔の安全を確保しつつBB弾を避ける訓練内容であったからな。
──じゃあ、弾丸を斬れたのもそういう訓練のおかげ?
──まぁな。相手の視線で狙っている場所を把握し、弾丸の通り道に光剣を置いて防御すれば。
──……現役の特殊部隊員から認められるだけあるわ、そんなトンチキ能力持ってたら誰だって認めざるを得ないわよ。
──確かに弾丸避けは色々重宝したがな、特殊部隊の訓練は作戦行動の種類によって求められる能力が違う。弾丸が避けられるだけで現役の方々から認められた訳では無いからな?
──そもそも弾丸を避けるだけ、ってところが普通と矛盾してる事に気付きましょうか。あのキリトといいVといい、何でこうも人間離れしたものを持ってるのかしら。
──……んー。キリトのは仮想世界に限って出来るだけだと思うぞ。
──いや現実でも出来るって言ったのVだけ……って、何で分かるのよ。
──確かにキリトの剣技は見事なものであったが、あれに技術が含まれているかというとそうは見えなかったのでな。どちらかというと、独学によるものなのではと思った。SAOという死地によって刻まれた、己にあったやり方というものだろうな。
──……なるほど。でも人間離れしてるのはどっちも一緒よ。
・お詫びの品
──【20vs1! ただ1人が引き起こした蹂躙劇とは?】……ね。亮司はどう思う?
──それを俺に聞くかえ、詩乃や。……まぁあの時は事が事であったとはいえ、わざと俺という餌をチラつかせた事によって引き起こされた必然にも似た……いや待て、そういえば仕込みを済ませる前に銃声が聞こえたな。なぁイザベラ?
──いやぁ、でも都合は良かったでしょ。感謝される謂れはあっても非難するのは違うでしょ?
──分かっておる。ただまた今後面倒なことになりそうな予感がするとだけな、暴れまくったことでまた色々と知らぬ輩が店に来そうでダルい。
──ご愁傷さま。揉む?
──詩乃ちゃん抜けがけは良くない。
──あと何気にリョージの膝の上に居るのもちょっと許せない。
──早い者勝ちですよ、2人とも。
──えぇい、後で望みを言えばやるわい。俺に出来ること限定ならだが。
──じゃあクリスマスデート。
──詩乃が言うかえ。23なら空いておる、24と25はそれぞれ香蓮とイザベラとクリスマスデートなのでな。
──……一番乗りを喜ぶべきか、クリスマス当日にデートが出来ないことを悔やむべきか。
──流石に1番大事な日はイザベラとでなければならんだろう。勿論香蓮と詩乃が次に大事という訳にはならんがな。
──その辺は割り切ってますので大丈夫ですよ。ね?
──……えぇ、そうね。
──ま、少なくとも私はクリスマス当日まで楽しみにしてるとして。それとリョージ、ちょっと良い?
──何だ?
──渡したい物があるの。
──?
──えーっと…………はいこれ。
──箱?
──開けてみて。
──どれどれ……! これはっ!
──それって、キセルでしたっけ? でも何か長いような。
──ああ、煙管で間違いない。しかしこれ、喧嘩煙管か。
──喧嘩キセル?
──江戸時代などでは町人などが刀や脇差などの携帯が出来なかった頃、旗本奴なる“ならず者”に対抗するために造られた護身具としての色が強い煙管のことだ。……もしや!
──ご想像の通り、こちらに灰吹きとこれがあります。
──おぉ!…………ん? イザベラ、これハーブか。
──私、タバコの臭いは苦手だし健康に悪いのは嫌だけど、ハーブならまだ許せるのよ。それにいつもGGOでだけ葉巻吸ってるから、無意識に葉巻を取るくせが染み付いてるのを見てると少し申し訳ないとも思ってたのよ。
──それでこれか。だがそれでも、ありがとうイザベラ。紛らわすためにカルパスやジャーキーを食わずとも良くなった訳だ。しかも護身具にちょうどいい喧嘩煙管だ、やはりよく俺を理解しているだけある。
──ふふん、リョージとの付き合いの長さは伊達じゃないってことよ。まぁ、今回のは迷惑かけたお詫びって意味があるんだけどね。
──BoBのことか?
──うん。勝手に出場したのは謝らないといけないし、危険なのは分かってたけどさ。
──……イザベラ、お前さん自分の発言を忘れておらんよな?
──さっき言ったから覚えてるけどさぁ、それはそれ。これはこれってヤツよ。それに予選の時に、あとでお詫びするからって言った。
──……ああ、そうだったな。ならありがたく受けとっておこう。では早速だがコイツを一服して
──ちょっと?
──ほ?
──もうすぐベッドに行く時間よね? ならまだお預けよ。
──……嘘だよなイザベラ、明日仕事じゃなかったか?
──それはそれ、これはこれよ。
──!?
──明日は早くから講義ですけど、仕方ないですよね。イザベラさんがそうなら私も乗らなきゃ。
──!?!?
──明日学校だけどやるわよ。
──……嘘だろ?
──嘘に見えるのならそれは幻ってヤツよ。観念しなさい。
──……3日前にやったばかりだろう。