少し前に親友が死んだ。
真央霊術院の同期で一番努力して、一番優秀な奴だった。
将来も約束されていて、可愛い恋人もいて幸せ絶頂だった。
「うっ、うぅ……!」
なのに、そいつは死んだ。
目の前で泣いているのはそいつの恋人だ。
遺書を読んで溢れ出て止まらない涙を流しながら、何とか最後まで読み切ると膝を付いて泣いてしまった。
何故か俺はそこから動いてはいけない気がして、恋人が泣き終わるのをずっと待っていた。
自分には涙を拭う資格も無いから。ただ、ずっと見ていた。
遺書を届けた後、俺は流魂街の中でも珍しいほどのどかで人があまり来ない草原で横になった。
「あーー! 疲れた―――!」
柄にもない事をしたから、肩が凝って仕方がない。
そもそも仕事をしたのも久しぶりだった。
「…………何してるの?」
「あ?」
声が聞こえた。
寝転がる俺を見下す様に頭上に立っているのは、死神の女だった。
「寝てる」
「そう」
「…………」
「…………」
「いや、それだけかよ。何か他にもあるだろ!」
「他にも、とは?」
「今日はいい天気ですね、とか……?」
「今日はいい天気ですね」
「そ、そうだな」
「…………」
「…………」
会話が、続かない……!?
いや、別に俺も話したくはないが、ここまで会話が続かないと逆に続けなくては!と躍起になってしまう。
「まあ、座れ」
ぽんぽん、と俺の隣を叩いてやると膝を抱える様にして女は座った。
まあ俺は寝転がったままだがな。起きるのが面倒臭い。
「俺は八番隊所属の八神玄だ。お前は?」
「……十一番隊、篠崎凪」
十一番隊で女の死神とは、珍しいな。
護廷十三隊にはそれぞれの隊に特色があって、四番隊には回復などの後方支援を担当する死神が多くおり、十一番隊は護廷十三隊最強の戦闘集団と言われているくらいに荒くれ者が多い。
だからと言うか、女の死神で十一番隊に所属しているのは見たことが無かった。まあ、例外的に副隊長の草鹿やちるがいるが、あの人は例外中の例外だ。普通に化け物みたいに強いしな。
「十一番隊って事は相当強いのか?」
「…………貴方ほどじゃない」
「俺は弱いよ。まだまだ平隊員だからな」
「嘘」
「いや、本当だって」
「なら、いい」
全く、コイツと話していると調子が狂う。
ただ、見た目は美人なんだよな。
短く切り揃えられたショートボブ、身体の凹凸も少なく身長も俺より少し下くらいだが、それゆえにどこか加護欲をそそられる。
ただ、一つだけ気になった事があった。
「…………目、見えないのか」
篠崎の両目は閉じられていた。
「ん」
なんて事も無いように返答するが戦場で、しかも死神が目が見えないというのは致命的だ。
ただまあ、それでも死神として死んでいないって事は相当な腕の持ち主なんだろう。
「今日は任務で来たのか?」
「そう。副隊長が」
そう言って篠崎が見せたのは流魂街でしか売られていない袋菓子だった。
そして十一番隊の副隊長と言えば――――。
「やちるんさんか」
「そう」
まあ、あの人なら言いそうだ。
見た目通り子供っぽいから――――って、ダメだ。これから先にはしばかれて、最終的にお菓子を買いにいかされてしまう。例え、心の中で言ったとしてもあの人には何故か察知されてしまうからな……。怖い。
「大変だな、あの人が上司だと」
「まあ」
「ウチの所は七緒ちゃんだからなー。仕事も一つもサボれない」
「そう」
……本当に会話が続かない。
ただまあ、これはこれで楽しいな。
そんな感じで俺達はしばらくの間、話をしていた。