BLEACH ~燕が見る景色~   作:近藤ハジメ

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03 ARETREAT or RETREAT

 あの後、篠崎と二時間近くも話し込んでしまった。

 

 流石にこれ以上、遅れるとマジで怒られるし、それに篠崎は他にも買うものがあるからとその場で別れて、俺だけ瀞霊廷に向かって帰っていた。

 

 そしてその途中で違和感を感じる。

 

「何だよ、あれ……!」

 

 遠目から分かるほどに、瀞霊廷には火の手が上がっていた。それもあちこちに。

 

 瞬歩で急いで瀞霊廷に戻る。

 

 何があったのか、数年前の黒崎一護達の侵入とは明らかに違う。明確な敵対行為。死神を、尸魂界を滅ぼしに来た奴らの仕業だ。

 

 案の定、尸魂界はかなりの被害が出ていた。

 あちこちに死体が転がり、建物が壊れていたりしていた。

 

 ただ、そんな事はどうでもいい。

 

 享楽隊長は!? 七緒ちゃんは!?

 

 他にも交流の深い、仲間達の身を案じる。

 

 第三席の円乗寺辰房が隊の指揮を執っていて、八番隊隊舎にはすでに隊長達はいなかった。

 

 そこらの隊員に話を聞くと一番隊舎に向かったそうだ。

 

 また、そちらに急いで走る。

 

 その途中で嫌でも聞きたくない噂を聞いた。

 

「総隊長が敗北なさったらしい」

「隊長や副隊長も何人も犠牲に……」

「黒崎一護も助けに来てくれたが……」

 

 嘘だ。嘘だ。嘘に決まっている。

 

 総隊長は護廷十三隊最強の死神だ。

 あの人が、あの方が負けるはずがない。

 

 隊長格が簡単に負けてたまるか、だからあの二人だって、いや、他の隊長達だって……!

 

 

 

「隊長!!」

 

 

 

 一番隊舎では隊長格が揃って、会議を開いていた。

 だが無礼だと思いながらも、その扉を開く。

 

 そこにいたのはボロボロの平子隊長、鳳橋隊長、六車隊長、狛村隊長、日番谷隊長、浮竹隊長だけだった。そしてその前に置かれたのは、一振りの焼き焦げた斬魄刀。

 

 一目で護廷十三隊総隊長、山本元柳斎重國のものだと分かった。

 

 全員の顔が物語っている。

 

 何があったのかを。多数の犠牲があったのを。

 

 総隊長が、亡くなったのを。

 

「クソ、クソクソクソクソッ!!」

 

 なんで、なんで俺は瀞霊廷にいなかったんだ!

 

 俺がいれば、何かは――――!

 

 いや、俺なんかが、いたって……。どうせ……。

 

 その時だ。後ろから声が聞こえた。

 

「下を向くな、馬鹿者……」

「砕、蜂……?」

「だから、隊長を付けろと、言って――――」

「っ、砕蜂隊長!!」

 

 二番隊隊長の砕蜂だった。

 彼女とは色々な事情があって、関わりがあったが、顔なじみと言えるくらいには交流があった。

 

 その彼女が、目の前で倒れた。

 

 ちょうど報告にやって来た四番隊虎徹副隊長によって治療が施される。

 

 そして俺は、黙って見ているしかできなかった。

 

 交流が深かった砕蜂が倒れるのはそれだけ衝撃的だった。

 

 あまり笑わらない砕蜂が俺の前でだけ見せる笑顔が素敵だった。

 ある人の背中を負って、誰よりも精進している姿が綺麗だと思った。

 

 俺は――――。

 

 

 

「ほらほら。下を向かない。砕蜂隊長に言われたでしょ」

 

 

 

 パコンッ、と優しく頭を小突かれた。

 その目で確かめるよりも先に、その霊圧が、その声が、教えてくれた。

 

「享楽、隊長」

「隊長なんて付けて呼ばれるの、随分と久しぶりな気がするね~」

「その、右目は……」

 

 享楽隊長の右目は眼帯で覆われていた。

 霊圧の流れから見ても、その目に視力は通っていない、死んだのだと分かる。

 

 どうして、なんで俺は――――!

 

「そんな顔をしないでよ。君が無事で良かった」

 

 優しく、包み込むように抱きしめてくれた。

 

 享楽隊長は本来、こんな事をする人じゃない。特に野郎には。

 

 きっと享楽隊長も動揺している。実の恩師が亡くなったんだ。

 

 でも、それでも、前を向いているんだ。

 

 なら俺が涙を流して、下を向いていてどうする。

 

 抱擁から逃げ出して、両目を涙を拭ってから言った。

 

「享楽隊長、ご無事で、良かったです……!」

「うん。ありがとう」

 

 まだ赤くなっている目を擦りながら、何とか享楽隊長の目を見て言った。

 

 その一言を聞いただけで、享楽隊長は嬉しそうに頷いてくれた。

 

 

 

 

「さて、みんな。砕蜂隊長の言う通りだ。前を向こうじゃないか。僕らは護廷十三隊だろう?」

 

 

 

 その一声で、下を向いていた隊長達の顔が上がった。

 

 

 

 そうだ。前を向くんだ。俺達は護廷十三隊の死神なんだから。

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