「七緒ちゃんには、一番隊三席の沖牙君と一緒に副隊長になってもらうつもりなんだ」
滅却師襲来から、少しの時間が経って享楽隊長の元に一通の指令所が届けられた。「八番隊隊長京樂春水を護廷十三隊総隊長に任命する」という内容の物だった。
当然と言えば当然、必然的だ。
山本元柳斎重國総隊長が亡くなれば、一番最初に後任を任命しなければいけないのは一番隊の隊長だ。指揮者がいなければ死神たちの士気も下がってしまう。
そして、その後を継ぐのは総隊長の弟子でもある享楽隊長が一番の適任だろう。
他にも浮竹隊長や卯ノ花隊長もいるが、前者は身体が弱く、後者は全然いいと思うのだが、何故か断ったらしい。
ただまあ、享楽隊長は色々と言われてはいるが、思慮深く誰よりも人の事を見ている。その実力も折り紙付きだし、他に相応しい人間はいないだろう。
「そこでだ、八神君。君に付いて来て欲しいんだ」
「勿論です」
ほぼ即答だった。
サボり魔の俺だが、尊敬する上司にそこまで言われたらついていくに決まってる。
「本当かい!? それは良かった、君には三席として頑張ってもらうから、そのつもりでよろしくね~」
「え? は? うぇ?」
それは予想外だった。
どうやら零番隊とか言う奴らが来るらしい。
隊長格で動ける人間は全員、開けた場所に集まって来ていた。
七緒ちゃんや沖牙さんは他にやる事があると言うので、俺が代わりに享楽隊長の付き添いで一緒に来た。正直面倒くさい。
ていうか、俺はさっさと砕蜂の見舞いに行きたいんだが?
「ちょいちょい、そんなに殺気を漏らさないの」
「……すみません」
「むすっとしないでよ~、怖いから」
「……すんません」
自分ではわからないが、享楽隊長にそう言われるくらいには、むすっとしていたんだろう。
そんな話をしていると何やら鉄柱みたいなものが降って来た。その中から現れる、無駄に騒がしいお祭り集団。
少しイラっとした。
「いや~~~、零番隊の皆さんは相変わらずだねぇ、和尚。で?今回はどんな要件で来られたんです?」
享楽隊長が話を進めていく。
「……おんしが黒崎一護か」
和尚と呼ばれた禿げ頭の男が瀞霊廷を救ってくれて、そのまま留まっている死神代行の黒崎一護に向けて、そう言った。
「まずは黒崎一護、おんしを霊王宮に連れて行く」
「連行名簿にあったものは全て既に此処に揃えてある」
修多羅千住丸が丸い球体に中には意識不明の重体にまで追い込まれた、朽木隊長や阿散井副隊長を含む、計六人が入れられていた。
その中にはあの後に意識不明となって生死の境を彷徨っている、砕蜂もいた。
「オイ」
「ほう」
「砕蜂に何をしている……? 殺すぞ」
もう、我慢の限界だ。
「今更、何をしに来たんだ!? 山本総隊長が死んで、何百人も死神が死んだ! ふざけるのも大概にしろよ!」
不満が爆発する。これまでの怒りも含めて、自分がやっているこれが八つ当たりだと言う事も分かっていた。
その時、麒麟寺天示郎が凄まじい瞬歩で俺の背後に回った。
だから俺はそのさらに背後に回った。
「見えてんだよ、蠅が」
「あァ?」(コイツ、反応しやがった……)
霊圧を少し上げる。それに呼応する様に麒麟寺も霊圧を上げた。
この場に緊張が走る。
お互いの陣営が睨み合う。
一触即発――――
「はい、おしまい」
「おんしもじゃ、遊びが過ぎるぞ」
京楽隊長と和尚が止めに入る。
俺も麒麟寺もお互いに止められて、霊圧を収めると周りを包んでいた緊張感も和らいだ。
ただ、このままじゃ終われない俺は和尚に向けて言った。
「砕蜂に何かあれば、お前らを全員殺すぞ、覚えておけ」
「……わかっとる」
砕蜂に何かあれば、本気で殺す。
そう殺気を込めて零番隊に言い放った。