インセクター羽蛾「え?オレが聖杯戦争に召喚されたんだって?」 作:妖怪もやし
side インセクター羽蛾
「ひょ? ☆5以上のモンスターを召喚するには生贄が必要?」
「はい。 知らなかったんですか?」
「や、やだなぁ桜ちゃんってば。 知っていたに決まってるだろ? ジョークだよジョークゥ~」
「はぁ…」
し、知らねー…。
くそう、デッキを組みなおすか…。
「ん? なんか倉庫街で戦いが始まってるじゃないか。 騎士と騎士の戦いなんて、なんかロマンを感じるねぇ~」
「そうですね…」
「ひょひょ? なんか変なヤツが現れたぞ?」
「良いトコロだったのに、空気が読めない筋肉デブさんですね」
「そうだねぇ~。 あれ~。 なんかウザい事を言い始めたなぁ、コイツ」
「下らない…。 こんな呼びかけに応じるバカなんて居ませんよ」
「ここに居るよぉ~」
「え?」
「じゃ、行ってくるから。 魔力供給は頼んだよ」
「ちょ、ちょっとインセクター羽蛾さん!? 行っちゃった…。 あの人で大丈夫なのかな…」
side 衛宮切嗣
「聞けぇい! 日和見を決め込んでいる英霊共よ! 貴様らはこの誉れ高き騎士たちの戦いを見てもなお、姿も見せず、その力も振るわずにいると言うのか! 情けない、情けないのぅ! この征服王イスカンダルから見れば、貴様らの姿は実に小さく見える!」
僕は狙撃銃を構え続けながら、苛立ちを抑えるのに懸命になっていた。
ランサーのマスターを始末したいところだが、アサシンの暗躍が鬱陶しい。
それに、アサシンが居なかったとしても、あのエルメロイを仕留めるのは簡単なことでは無い。
まぁ、あの手段を使えば、典型的な魔術師であるヤツを葬る事も可能だがな。
ライダーの妄言など論外だ。
まともな性格のマスターとサーヴァントなら、あんな見え透いた挑発に乗る筈がない。
下らない。
これは戦争。
そこにあるのは、石器時代から何も変わらない、血なまぐさい殺し合い。
エゴの通し合いだ。
それに、僕が召喚したサーヴァントの語る下らない騎士道や、征服王を名乗る侵略者のいう美学などはありはしないのだ。
…その筈、なのだが…。
「ヒョーッヒョッヒョ! では、お言葉に甘えてきてあげたよ」
馬鹿な…。
正気か、あの男…。
「…セイバーにランサーよ。 この結界には不備があったようだな。 子供が迷い込むとは」
「いや…ライダー。 そう思いたい気持ちは分かるが、あれは本当にサーヴァントのようだ」
「…世も末だな」
「子供? 子供がこの戦争に迷い込んだのかい? それは大変だなぁ~。 一刻も早く保護してあげないと! ヒャッヒャッヒャ!!」
「「「お前のことだ」」」
「ぴょー!!」
…頭痛がする。
目の前でコントのようなやり取りをしている連中が、歴史に名を遺した英霊だと?
それに、あのいかにも小物という雰囲気の小男…。
僕自身、戦場の中で少年兵を幾度も見てきたが、あの男からはそういった迫力が微塵も感じられない。
「我を差し置いて王を名乗る不埒者が居たと思えば、道化が現れたか。 この聖杯戦争も底がしれたものだな」
「ほう、役者がさらに一人現れたか」
「ピョピョー? 道化なんてドコに居るんだい? オレさぁ、サーカスとかあんまり行ったこと無いんだよねぇ。 その道化さんに会って、一つ芸でも見せてほしいモノだよ」
この眼鏡をつけた子供にしか見えないサーヴァントは、どこまで本気なんだ…。
全てを投げだしてしまいそうになるのを懸命にこらえ、狙撃銃を構え警戒を続ける。
「道化、あまり調子に乗るな。 王の不興を買った道化がどうなるか、この極東の島国の者でも知っているだろう」
「あれあれー? 道化ってもしかしてオレの事なのかなー? 酷いことをいう金ピカさんだよ。 ヒャヒャヒャ」
「…貴様」
「…で、眼鏡の小僧と、金色の王よ。 一つ名乗りでもあげては貰えんか? コレでは話が進まぬ」
脱線に脱線を重ねる展開にうんざりしたように、ライダーが問いかける。
「貴様ら雑種ごときに、我が名を名乗る必要はない」
「ケチな金ピカさんだなぁ~。 オレは堂々と名乗っておくよ。 オレはキャスターのサーヴァント、インセクター羽蛾サマだ! ヒャーヒャッヒャッヒャ!!! 恐れ入ったか!!」
「…知ってるか?」
「知るわけないだろ」
顔を見合わせるセイバーとランサー。
戦の最中に、さっきまで剣戟を繰り広げていた相手と知識の確認か。
反吐がでるよ、騎士王サマ。
「キミ達さぁ~。 オレの事、舐めてない? オレさぁ、この国のチャンピオンなんだよね。 ヒャッヒャッヒャ! サインでもあげようか?」
「こんな小男が王か…。 この国も終わりだな」
「失礼だなぁ~。 良いよ、イケメンの騎士クン。 君を倒して、俺の存在の素晴らしさってヤツを証明してやるよ」
「やれるものならばやってみろ。 我が剣の錆にしてくれる。 セイバー、この戦い預けたぞ」
「ああ、構わないランサー。 場に相応しくない小物を排除してくれ」
すっかり仲良しモードだな。
だが、まあ良い。
これでランサーがあの男を排除すれば、サーヴァントが一騎、脱落する。
先日、アイリスフィールから一騎のサーヴァントが脱落したと知らされた。
退場したのはバーサーカー。
察するに、魔力量の多さによるマスターの自滅か…。
だとすれば、あのキャスターを倒せば、合計で二騎のサーヴァントが消えることになる。
これ自体は僕にとって理想的な展開。
サーヴァント同士のなれ合いは目に余るがな…。
そんな僕の想像は、半分だけ実現することになる。
確かに今夜、さらに一騎のサーヴァントが脱落した。
だが、そのサーヴァントはキャスターではなく…。
「ら、ランサーが死んだ!」
「ヒャーヒャッヒャッヒャ! 君たちさぁ~、歴戦の英霊の割には大したコト無いね。 『人は見かけじゃない』。 そんなコトさえ知らないんだからさぁ~! ピョピョー!!」
事の流れを、再確認する。
キャスターは「代打バッター」とかいうふざけた名前の蟲を呼び出し、ランサーはそれを容易く切り伏せた。
途端に、代打バッターの死体から巨大な蟲が召喚されたのだ。
ランサーは果敢に立ち向かったが、その強靭な皮膚に攻撃は通じない。
その間にキャスターはさらなる蟲「ビック・アント」を呼び出し、巨大な蟲にそいつを食べさせたのだ。
共食いによって力を増した巨大な蟲「インセクト女王」により、ランサーはあっけなく首を噛みちぎられ、絶命した。
血しぶきが舞い、ランサーの身体が巨大な蟲にくわれていく。
それを僕たちは呆然と見ていることしかできなかった。
「ひょひょー! これでバーサーカーに続き、ランサーまで倒しちゃったよ。 いやぁ~、オレって本当に強いなぁ~!!」
「ランサー…! ランサァー!!!」
「お、おいライダー、これって…」
「…ああ、あのキャスター、見た目通りの小物では無いようだな」
「つまらない戦力分析は終わったかい? さぁてと…」
緑の服を着たキャスターは、眼鏡の位置を指で直し、サーヴァントたちに向き直る。
「女王様がまだ食べ足りないってさぁ! さーて、次は誰がエサになってくれるのかな? ヒャッヒャッヒャ!!」
不敵な高笑いをするキャスターに、僕は自分の分析が甘かったことを再認識するのであった…。
つづく。
ランサー(真名ディルムッド・オディナ) 消滅